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すべての人にとって平等な婚姻制度の実現を求める決議

カテゴリー:決議
決議の趣旨

当会は,政府及び国会に対し,同性者間の婚姻を認める法制度の整備を求める。

即ち,戸籍上の性別が異なる者の間で認められている婚姻が,戸籍上の性別が同じ者の間で認められていないことは,憲法13条及び憲法24条1項から導かれる自己決定権の一つである「婚姻の自由」 ,及び,憲法14条に抵触する性的指向ない し性自認に基づく不合理な差別であるとの点から看過できない問題である。

実際にも,同性者間の婚姻が認められていないために,婚姻関係にあれば当然受けられるはずの法的保障が受けられず,また,相続や子どもの養育において不利益を強いられ,さらに,病院で立会ができなかったり,公営住宅への入居を拒否され たりするなどの問題も生じている。

国際的に見ても,先進国首脳会議参加国であるG7の中でみると,国レベルで同性婚ないしは,パートナーシップ制等婚姻に準じる法制化を行っていないのはもはや日本だけである。日本は,国連人権理事会におけるLGBT(レズビアン(女性の同性愛者),ゲイ(男性の同性愛者),バイセクシャル(男性・女性,両方を性愛の対象とする者) ,トランスジェンダー(戸籍上の性別と心の性別が一致しない者)を始めとするいわゆる性的少数者)の人々の権利に対する決議に賛成したにもかか わらず,同性婚についての法整備は全く行っていない。

近年,世論調査によれば,日本国内でも同性婚に対する理解は深まり同性婚の法制化について賛成が多数を占めており,自治体においても公に婚姻に準ずる関係として証明する「パートナーシップ制度」を導入するなど,同性カップルを社会的に承認するという流れができており,国民の間にも同性婚を認める素地はできている と言える。

同性者間の婚姻に関する問題は,人権という観点からは無視できない状況にあり, 早期の法制度整備を求めるものである。

2019年(令和元年)5月29日
福 岡 県 弁 護 士 会

決議の理由
1 「同性間の婚姻の自由」の保障

現在の日本において,同性者間の婚姻は,戸籍上の制度として認められていない。そのため,LGBTをはじめとする同性カップルは,自身が愛するパートナーと婚姻し,戸籍上の夫婦となりたくとも,当該パートナーが戸籍上同性であるがゆえに,それが叶わない。このような制度的不備は,憲法や条約に抵触する不合理な差別にあたる。

(1) 「婚姻の自由」が同性間でも保障されるべきこと

憲法13条は,幸福追求権を保障しており,その内容として,個々人の幸福追求のあり方を個々人の決定に委ねるという意味で,自己決定権を保障している。そもそも婚姻するかどうか,誰と婚姻するかという「婚姻の自由」もまた,この自己決定権という憲法により定められた権利として保障されている。婚姻というものが,人生をともに歩み,支え合うパートナーを選択した上で,そのパートナーと継続的に親密かつ人格的な関係を築いていくものであることからすれば,人格的生存に不可欠なものであって,婚姻の自由は異性であろうと同性であろうと同じく自己決定権として保障されるべきものである。

また,憲法24条1項について,最高裁は「婚姻をするかどうか,いつ誰と婚姻をするかについては,当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきであるという趣旨を明らかにしたものと解される。」とし,憲法24条1項からも婚姻の自由が導かれるものと解している。

(2) 平等原則への抵触

憲法14条1項は,法の下の平等を保障している。そのため,正当な理由なく,本人の意思によって左右することができないような事由をもって,国が国民に対し,差別的取扱いを行うことを禁止している。

性自認(自身の性をどう認識しているか) ,性的指向(どの性別を恋愛・性愛の対象とするか)は本人の意思で変えられるものではない。そのため,自身と戸籍上の性が同じ者との間で継続的に親密かつ人格的な関係を築きたいと考えることも,本人の意思で変えられるものではない。
しかし,国は同性者間の婚姻を認めていないため,同性者との婚姻を希望する者に対する差別的な取扱いを行っている。
そしてこのような差別的な取扱いによって,後述するように異性間の婚姻であれば当然に得ることのできる利益を同性カップルは得られない状態にある。

このように,同性婚制度がないことは,同性カップルをその性的指向,性自認を理由に差別していることに他ならず,憲法14条1項に抵触している。

加えて,国際人権自由権規約は,日本政府が批准し,国内法的効力を有するが,同26条もまた憲法14条と同じく,法の前の平等を保障し,あらゆる差別を禁止している。しかし,同性カップルは同性と婚姻できないことによって差別を受けているのだから,現行の日本の婚姻制度は上記条約にも抵触している。

(3) 小括

以上のとおり,憲法や条約といった上位規範により,同性カップルには婚姻の自由が保障され,また性的少数者であることを理由に差別されないこととされているのだから,国は公権力やその他の権力から性的少数者が社会的存在として排除を受けるおそれなく,人生において重要な婚姻制度を利用できる社会を作る義務がある。しかしながら,現状は同性間における婚姻は制度として認められておらず,平等原則に抵触する不合理な差別が継続しているのである。

2 同性カップルが直面する不利益

同性間に婚姻が認められていないことにより,同性カップルは,様々な分野において,法律上・事実上の不利益を受けている。また,このような人々の中には幼少期にその性的指向などを理由に親から虐待を受けた経験を持つ者や差別的対応を恐れて親や親族に公言できない者も多くいるため,親や親族の協力を得る ことができず,不利益はより深刻なものとなっている。

(1) 同性パートナーの死に伴う問題

まず,民法上,同性パートナーは相続人になれない。そのため,共同生活で築いた財産があっても,同性パートナーは遺言がなければ財産を承継することができない。仮に,遺言があったとしても,親族から遺留分減殺請求を受けるおそれがあり,同性パートナーの存在を知らない親族とトラブルになる可能性も高い。上記以外にも,相続税の配偶者税額軽減措置が適用されない,遺族基礎年金・遺族厚生年金が受給できない,生命保険の受取人になれない,慶弔休暇を取得できない,同性パートナーの建墓にあたり墓園の申込みを拒否されることがあるなど同性カップルは同性パートナーの死に伴い 様々な法律上・事実上の不利益を受けている。

(2) 子の養育についての問題

現在,自らもうけた未成年の子を同性パートナーとともに養育しているケースは多く存在する。この場合,異性間であれば,婚姻して養子縁組をすることにより法律上の親子関係を築くことができるが,同性間では,同性パートナーがその子と養子縁組をすると,民法818条2項により実親であるパートナーの親権が失われてしまうため,同性パートナーは事実上養子縁組を結ぶことができない。結果,同性パートナーは,親としてその子を養育しようと思っても活動が制約される。また,実親が先に死亡したときには,養育する者がいるにもかかわらず,未成年後見人が選任されることとなる。これらは同性パートナーが不利益を受けるにとどまらず,子の養育にも影響を与えかねないものである。

(3) 一方が外国人である場合の問題

同性カップルの一方が外国人の場合にも問題は顕在化する。日本人と婚姻した外国人には,「日本人の配偶者等」として在留資格が与えられるが,同性パートナーは,「配偶者等」に該当しないため,その他の長期在留資格を得られなければ,短期滞在の在留資格で日本に滞在するほかなく,オーバーステイのリスクと隣り合わせの生活を余儀なくされる。そして,在留特別許可の審査においても,同性パートナーの存在は特に考慮する要素となっていない。

(4) その他の不利益

上記以外にも,公営住宅への入居が認められない,民間住宅であってもルームシェアが可能な住宅にしか入居できないなどの住居に関する問題,病院でパートナーの病状について説明を受けたり,意識不明状態にあるパートナーの治療方針の決定に関与することが認められないことがあるなどの医療現場での問題の他,パートナーが逮捕された際に留置場所を教えてもらえない,自動車保険の運転者家族限定特約の申込みを拒否されることがあるなど,同性カップルが直面する法律上・事実上の不利益は極めて広範な分野に及ん でいる。

(5) 小括

これらの不利益は,事実上の不利益にとどまるものもあるが,その制度の多くは,法律上の婚姻という強固なつながりを基礎として運用されているものであり,個々の制度の運用を変更することで容易に解消できるものではない。現在においても,厳然として性的少数者に対する社会的差別は存在し,それゆえに当事者は様々な不利益を被っており,同性婚を認めない法制度がこのような差別を温存し助長している面も否定できない。このような同性カップルが直面する不利益を解消するために,同性カップルに婚姻を認める法 制度を構築することが求められる。

3 国際的な状況

同性婚の保障を含む性的少数者の権利保護は,世界的にも共通意識として醸成 されている。

2011年6月,国連人権理事会はLGBTの人々の権利に対する決議を採択し,性的指向や性同一性を理由とする差別や暴力行為等への懸念を表明した。記憶に新しい2014年ソチオリンピックの開幕式では,ロシアが反同性愛を内容とする法案を成立させたことに対して,その批判の意味でアメリカ,フランス,ドイツなど,欧米の首脳が開幕式を欠席する事態となった。そしてこれを受けて,2015年に,オリンピック憲章に性的指向による差別の禁止が明文化された。

2018年12月21日時点において,同性婚を保障する制度を持つ国・地域は人権意識の高い欧米諸国を中心に,中南米や南アフリカ等世界の25か国・地域に及んでおり,同性婚が認められている国・地域は,世界の国・地域の20パーセントを占めることとなった。G7で見ると国レベルで同性婚ないしは,パートナーシップ制等婚姻に準じる法制化を行っていないのはもはや日本だけで ある。

アジアにおいては,台湾で今年5月までに同性婚を認める法が施行される見通 しである。

このように,世界では同性婚の法的保障が次々に進んでおり,今後も同性婚の国レベルでの導入の潮流は続くと予測される中,日本はこのような潮流から立ち 遅れている。

4 国内の状況

2018年10月下旬に,インターネットを通じ,全国の20~59歳の6万人を対象として実施された株式会社電通の調査によると,欧米を中心に広がる同性婚の法制化について,78.4パーセントが「賛成」または「どちらかというと賛成」と答えている。

2015年の国立社会保障・人口問題研究所による調査において「賛成」,「やや賛成」の割合が51.1パーセントであったことや,2017年のNHKによる世論調査において「男性同士,女性同士が結婚することを認めるべき」との問いに「そう思う」と答えた人の割合が51パーセントであったことと比べて,現在は同性婚の法制化への理解が大幅に進んでいることが分かる。

このような世論を背景として,2019年4月17日現在,パートナーシップ制度を導入している自治体は20にのぼり,今後導入を予定・検討している自治体も多数存在する。

更に,2019年2月14日には,各地で13組の同性カップルが,同性間の法律婚の不備という問題点を問うため,同性同士の婚姻届不受理が憲法13条1項,同14条,同24条1項に反することを理由とする損害賠償請求という形で, 国に対して訴訟を提起している。

この訴訟は各種報道機関によって大々的に報道されており,同性婚について国民が改めて考える機会を得たことで,今後更に同性婚の法制化を支持する流れが 加速することも考えられる。

このように,現在同性婚の法制化に対しては,世論の後押しがある。

5 当会の取り組み

当会では,2015年より両性の平等委員会の中にLGBT小委員会が発足(2018年19月より委員会化)し,2016年5月25日には「男女平等及び性の多様性の尊重を実現する宣言」を出し,その中で「LGBTは性の多様性の一部であって,『人権』の問題であり,人権擁護を使命とする弁護士・弁護士会が率先して取り組むべき問題である。」と宣言したうえ,その宣言に基づき,2017年3月22日に「男女共同参画基本計画」において,LGBTの現状と 課題を分析し,具体的施策を行っていくことを決議したものである。

そして,当会はその基本計画も踏まえ,同小委員会が中心となり,当事者団体の集まりであるアライアンス会議への出席,九州レインボープライドへの毎年の出展などを行っており,2017年9月14日には,支援策の一つとしてLGBT無料電話相談を開始した。

その後,当会は,2018年4月,パートナーシップ宣誓制度の開始を始めとして性的少数者の支援策を進めている福岡市と「性的マイノリティに関する支援事業に関する協定」を結び,前述LGBT無料電話法律相談を福岡市との共同事業とし,2018年の九州レインボープライドへの共同出展なども行ってきて おり,今後も福岡市と提携しての当事者支援を行っていく予定である。

当会は,2016年の宣言を踏まえ,各自治体や関係団体と連携しながら,性自認・性的指向にかかわらず,そしてマイノリティ・マジョリティの区別を超えて,誰もが自分らしく生きられる社会の実現を目指した活動を継続していく所存 である。

6 結論

戸籍上の性別が異なる者の間で認められている婚姻が,同性カップルの間で認められていないことは,憲法13条及び憲法24条1項から導かれる自己決定権の一つである「婚姻の自由」の侵害に該当する上,性的指向ないし性自認に基づく不合理な差別として憲法14条に抵触する。

したがって,同性者間においても,戸籍上の性別が異なる者と同様の平等な婚 姻制度を早急に整備する必要がある。

またそれは,現実に様々な困難に直面している同性カップルの権利保護のため にも不可欠なことである。

よって当会は,上記のとおり決議する。

以 上

改めて少年法適用対象年齢引下げに反対する会長声明

カテゴリー:声明

1 はじめに

現在,法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会においては,少年法の適用対象年齢を18歳未満とすることの是非等についての議論がなされており,第14回まで進んでいる。

この会議における議論には様々な問題があるが,当会は,特に下記の理由により,改めて少年法の適用対象年齢の引き下げに断固として反対する。

2 少年法適用対象年齢引き下げ論の理由

上記法制審議会の会議においては,少年法の適用対象年齢を18歳未満に引き下げるべき理由として,下記の3点が指摘されている。

① 選挙権年齢や民法上の成人年齢が18歳となることから,少年法の適用対象年齢も18歳未満に統一することが国民にわかりやすいこと

② 民法上の成人に対して,国家が後見的に介入し少年法上の保護処分の対象とするのは過剰な介入であること

③ 年齢を引き下げたとしても,少年法の対象から外れる18歳・19歳の者が起訴猶予となった場合には,家庭裁判所に送致して少年法と同様の処分を実施するという「若年者に対する新たな処分」で対応すれば問題ないこと

しかしながら,上記の理由は,いずれも少年法の適用対象年齢を引き下げる理由にはなりえない。

3 少年法適用対象年齢引き下げに断固として反対する理由

(1) 現行少年法制度が有効に機能していること

現行少年法は,成長途中の未熟な少年に対して教育によって非行からの立ち直りを目指す健全育成を法の目的・理念として掲げている。非行のある少年に対して,刑罰を科すのではなく,少年の資質や家庭環境に対する家庭裁判所調査官の調査や少年鑑別所での心身鑑別を通じて少年の問題点を明らかにし,個別の少年の抱える問題点に対応するための保護処分によって立ち直りを図っている。

このような趣旨に基づく現行少年法は有効に機能しており,少年の検挙人員は,2003年(平成15年)以降,絶対数だけでなく,人口比でも減少を続けている。

したがって,現状,18歳・19歳の少年をあえて現行少年法の適用対象から外す必要性は全くない。

(2) 民法上の成人年齢と少年法の適用対象年齢を一致させる必要はないこと

法律の適用対象年齢は,個別の法律の趣旨ごとに決められるべきである。実際,飲酒・喫煙・公営競技(ギャンブル)等については,健康被害の防止や青少年保護の観点から適用対象年齢が定められており,民法上の成人年齢の変更に合わせることなく,20歳が維持されている。少年法についても,上記の健全育成の理念によって適用対象年齢が定められているのであるから,選挙権年齢や民法上の成人年齢と一致させなければならない理由はない。

(3) 民法上の成人に対して少年法を適用することに問題はないこと

民法は,私法上の行為を規律する法律であり,成人が親の監護に服さないことは,私法上の取引を自由に行うことができる点で重要な意味をもつ。これに対し,少年法は,民法と全く異なる健全育成という目的・理念を掲げているのであり,民法上親の監護権に服さなくなることが,少年法の適用対象から外すべきであるという理由にはならない。

(4) 現在検討されている新たな処分は現行少年法制度の代替制度とはなり得ないこと

加えて,法制審議会では,少年法適用対象年齢引下げによって少年法上の処遇が受けられなくなる18歳・19歳の若年者に対しては,代替手段として,起訴猶予となった者を家庭裁判所へ送致し,家庭裁判所調査官の調査や,少年鑑別所での鑑別を経て,保護観察処分等の新たな処分の要否を判断することが検討されている。

しかし,かかる新たな処分は,現行少年法と類似の処分といえども,少年法と同様に健全育成という理念に基づいて,少年の資質面・環境面の問題点を明らかにするものではない。すなわち,新たな処分を前提とする調査や鑑別は,上記のように重くとも保護観察処分にとどまる事案に対する調査・鑑別に過ぎないのであるから,現行少年法の健全育成理念に基づく調査・鑑別のように実効性のあるものになるはずもない。そうすると,犯罪に対する非難と再犯防止のための調査・鑑別に過ぎず,教育として個別の処遇をしている現行少年法制度の代替制度には到底なりえない。

そもそも,若年者に対する新たな処分という現行少年法の代替手段が検討されていることは,民法上の成人となった若年者に対して現行少年法で行われている国家の後見的な教育的処分を実施する必要性を認めているに等しく,少年法の対象年齢を引き下げる必要のないことの表れである。

上述の通り,健全育成理念に基づく現行少年法は有効に機能しており,その理念から離れたいかなる制度も代替制度とはなり得ない。

4 最後に

以上のとおり,少年法適用対象年齢を18歳未満に引き下げる理由は全くない。

当会は,2015年(平成27年)6月25日に少年法適用対象年齢を18歳未満に引き下げることに反対する会長声明を出し,2017年(平成29年)5月24日の定期総会においては,少年法の適用対象年齢引下げに反対する決議をしたが,改めて,少年法適用対象年齢引下げに断固として反対するものである。

以上

2019年(平成31年)3月11日
福岡県弁護士会会長 上田英友

「性暴力を抑止し,性被害から県民を守るための条例(案)」 に関する会長声明

カテゴリー:声明

 議員有志からなる福岡県議会議員提案政策条例検討会議は,福岡県2月定例議会に標記条例案を上程し,成立させることを目指している。
本条例案は,性犯罪その他の性暴力を抑止し,性暴力による被害から県民を守ることを目的としており,その目的は理解できるものの,以下の点を含む多数の問題があるので,当会は,本条例案には反対である。
 特に問題があるのは第17条である。同条は,一定の性犯罪を犯して刑期を満了した者に対し,再犯防止及び社会復帰の支援を目的として,その者の氏名,住所,性別,生年月日,連絡先,罪名,刑期満了日の届出義務を課しており,第18条では,その者が申し出たときに,知事が再犯防止指導に準じた指導プログラムを受けることや治療を受けるように支援すると規定している。
 しかし,個人の特定をともなう前科情報は,高度にプライバシー性の高い情報であり,前科となる判決を受けた者が社会復帰に務め,新たな生活環境を形成していた場合に,前科情報を公表されない権利は,憲法第13条によって保障されることが最高裁判決によっても認められている。また,本条例案第18条で,指導プログラムまたは治療を県が提供すると規定しているが,前科を有する者が申し出たときに提供するのであれば,事前に住所や前科の届出を強制する必要はない。したがって,本条例案の目的のためにこのような届出義務を課す必要はない。
 本条例案が,真に加害者の更生への支援を考えるのであれば,前科の届出義務はかえって更生を妨げるものであるから規定するべきではなく,加害者が抵抗なく自らすすんで社会復帰への支援を求めることができるような制度を調査研究したうえで,その制度を具体的に本条例案に規定するべきである。本条例案には,その目的を阻害するような制度が規定されており,適当ではないと思料する。
 また,本条例案第8条には,県民の責務として,性被害の発生の危険がある状況に直面したときには,これを傍観することなく,その発生及び継続を防止するために可能な範囲で積極的に行動するものとすると規定している。
 しかし,被害の発生及び継続を防止するためには,加害者を制止しなければならず,大きな危険がともなう。加害者から被害者を逃がすための援助をする場合にも,加害者から攻撃を受ける可能性がある。このような危険をともなう行為を条例によって法的に義務づけることは相当ではない。しかも,本条例案は,これまで県民に知らされておらず,突然,県民にこのような義務を負わせることは,県民に戸惑いと混乱を招くことになる。
 さらに,本条例案第14条及び第15条は,当会と連携を行うことを定めているが,どのような連携を行うかについて,これまで当会に申し入れは行われておらず,今回の県議会で本条例案を制定するのは性急に過ぎる。
 以上の理由から,当会は,本条例案に反対するものである。
2019年(平成31年)2月7日
                福岡県弁護士会 会長  上 田 英 友

死刑執行に関する会長声明

カテゴリー:声明

2018年(平成30年)12月27日,大阪拘置所で2人の死刑が執行された。うち1人は再審請求中であった。
 本年において死刑が執行された人は計15人となり,法務省が執行の事実や人数の公表を始めた1998年11月以降では,2008年と並んで最多となった。2012年12月の第2次安倍政権発足後,死刑執行は15回目で,計36人が執行されたことになる。
 当会は,本年7月6日及び同月26日の死刑執行に対し,それぞれに抗議する声明を発表し,すべての死刑の執行を停止することを強く要請した。それにもかかわらず,今回の死刑が執行されたことは,まことに遺憾であり,当会は,今回の死刑執行に対し,強く抗議するものである。
 たしかに,突然に不条理な犯罪の被害にあい,大切な人を奪われた状況において,被害者の遺族が厳罰を望むことはごく自然な心情である。しかも,わが国においては,犯罪被害者及び被害者遺族に対する精神的・経済的・社会的支援がまだまだ不十分であり,十分な支援を行うことは社会全体の責務である。
 しかし,そもそも,死刑は,生命を剥奪するという重大かつ深刻な人権侵害行為であること,誤判・えん罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないことなど様々な問題を内包している。
我が国では,死刑事件について,すでに4件もの再審無罪判決が確定しており(免田・財田川・松山・島田各事件),えん罪によって死刑が執行される可能性が現実のものであることが明らかにされた。また,死刑判決を受けた袴田巌氏の再審開始決定は,本年6月11日,東京高等裁判所によって取り消されたが,袴田巌氏は最高裁判所に特別抗告しており,現在でもなお死刑えん罪が存在する可能性は否定できない。死刑事件ではないものの,本年10月に再審開始が最高裁で確定した松橋事件において,本年12月20日の熊本地裁での再審手続に関する協議で,検察が新たな有罪主張をせず,求刑もしない方針を明らかにしたことからも,えん罪の生じ得る危険性は明らかである。
 世界的な視野で見ると,欧州連合(EU)加盟国を中心とする世界の約3分の2の国々が死刑を廃止又は停止している。経済協力開発機構(OECD)加盟国35か国のうち死刑を存置しているのは,日本・米国・韓国であるが,米国は50州のうち19州が死刑を廃止し,4州で知事が執行停止を宣言し,昨年執行した州は8州である。韓国では,20年以上,死刑の執行が停止されている。したがって,OECD加盟国のうち,国家として統一的に死刑を執行しているのは日本だけである。
 国連総会は過去6度に亘り「死刑廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議を採択し,国連人権理事会で実施された過去3回のUPR(普遍的定期的審査)では,日本に対し,死刑廃止に向けた行動の勧告を出している。
 当会は,本件死刑執行について強く抗議の意思を表明するとともに,死刑制度についての全社会的議論を求め,この議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を停止することを強く要請するものである。
         2018年(平成30年)12月28日
                福岡県弁護士会 会長  上 田 英 友

東京医科大学医学部一般入学試験に関する女性差別についての会長声明

カテゴリー:声明

東京医科大学医学部一般入学試験に関する女性差別についての会長声明
 2018(平成30)年8月7日、学校法人東京医科大学内部調査委員会が公表した調査報告書により、同大学医学部医学科の一般入学試験の二次試験(小論文)の採点において、女性受験者に不利益な得点調整が行われていたことが明らかにされた。同調査報告書は、「女子よりも男子を優先すること及びその手法として全員の得点に係数をかけたうえで属性に応じた一定の点数を加算することは、少なくとも平成18年度入試から行われていたようである」等と指摘している。
 憲法第14条が保障する性差別の禁止、男女平等原則は、私人間においても尊重されるべき基本的な社会秩序(民法第90条)を構成しているところ、受験者が女性であることを理由として一律に不利益な点数操作を行うことは、女性に対する重大な差別であり断じて許されない。加えて、公の性質をもつ教育機関である大学が、公正であるべき入学試験においてこのような差別を行うことは、性別によって教育上差別されないとする教育基本法4条1項はもちろんのこと、女性受験者の学問の自由(憲法23条)、能力に応じて等しく教育を受ける権利(憲法26条1項)、ひいては医師という職業選択の自由(憲法22条)等を保障する憲法の趣旨にも反している。
 また、同調査報告書は、同大学がこのような差別を長年にわたり行ってきた理由について、「女性は年齢を重ねると医師としてのアクティビティが下がる、というのがかかる得点調整を行っていた理由のようである」と指摘している。これは女性医師の出産・育児等によるキャリアの中断を指すものと推測される。しかし、仮に女性医師の休職・離職等が多いとしても、その原因としては、いわゆる性別役割分業の考え方に基づく男性医師の過重な長時間労働及び女性医師の家事・育児労働の過重負担など、様々な背景事情があることが考えられる。これらの背景事情を分析・解決することなしに、安易に、労働力という観点で女性は非効率的であるから入学をさせなければよいとすることは、到底許されない。
 公の性質を持つ大学において、入学者選抜という極めて高い公正さを求められる場面で、受験者が女性であることを理由として一律の不利益な点数操作を行うことは、いかなる意味においても正当化できない。
 以上を踏まえ、当会は、国に対し、下記2点を強く求める。
1 学校法人東京医科大学をはじめとした全ての大学の医学部入学者選抜における性別に基づく差別的取扱いの有無及び実態について早急に調査を進め、その結果を公表するとともに、性別に基づく差別的取扱いが認められた場合には、かかる差別的取扱いが行われた原因について究明をし、今後、全ての大学の医学部入学者選抜において、二度と性別に基づく差別的取扱が行われることのないよう、再発防止策を講じること。
2 女性医師が年齢を重ねても働き続けられるよう、過重労働の改善や性別役割分担意識解消のための政策を推進するなど、男性・女性を問わず全ての医師の労働環境の改善を速やかに図ること。
2018年(平成30年)9月18日
     福岡県弁護士会      
      会長 上田 英友

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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