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カテゴリー: 会長日記

会長日記

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平成22年度福岡県弁護士 会 長市 丸 信 敏(35期)
自宅から県弁会館へ徒歩で向かう際、六本松の九大教養部跡地の脇を通り抜けます。そこに数あった建物は今や全部解体撤去され、目下、跡地整備作業が進められています。いよいよ当会の新会館に向けた夢が膨らみます。…そんな気持ちで任期末の3月を迎えたところ、思いもかけない激震に相次いで見舞われることとなりました。◆弁護士・弁護士会の真価が問われている3月11日に発生した東日本大震災や巨大津波による被害の惨状には、ただただ呆然と立ちつくすしかない思いでした。被災地の皆さまに心からのお見舞いを申し上げますとともに、犠牲になられた多数の方のご冥福をお祈り申し上げます。われわれは、弁護士として、基本的人権の擁護と社会正義の実現という使命を国民から負託され、日頃、その本分を全うすべく力を合わせて懸命に努めて参りました。今、未曾有の大災害、空前の被害(人権侵害)を前にして、弁護士・弁護士会としての真価が問われています。西日本の雄会としての当会は、率先して、なすべきこと、できることに心を砕き、被災者の救済、被災地の復興、日本の再起に向けて、一丸となって支援のための努力を払って参りましょう。なお、日弁連や全国弁護士会、一部ブロック会では、阪神淡路大震災以降の経験を教訓にして、災害対策や復興支援のための委員会組織を設け、連絡会議などを重ね、災害相談マニュアル等も作成・改善を重ねる等、災害時の対応や災害被害からの復興に向けて、被災地弁護士会を日弁連・他の弁護士会(支援弁護士会)が連携して支援する体制ができております。当会でも、災害対策委員会を中心にしかるべき体制で適時・適切な対応をもって臨むことになります。会員の皆さまのご支援方をよろしくお願いします。なお、3月15日に、当会会員の皆さまからの震災復興支援の義援金の受け付け口座を開設してご案内致しましたところ、最初の2日間で47口、266万円もの善意をお寄せ頂いたことには、執行部一同、感嘆と感激の思いで包まれました。なるべく早期に、被災地弁護士会を介しての被災地支援に役立たせて頂きます。ご協力に感謝申し上げます。◆信頼の回復にむけて3月3日夕刻、執行部に衝撃が走りました。当会会員(北九州部会、30期)が福岡地検に業務上横領罪容疑(平成18~21年頃の事件)で逮捕されたとの報が飛び込んできました。執行部は、当夜直ちに、拘置所にて当該会員との面会をして、逮捕容疑に間違いないことの確認が得られましたので、引き続き、緊急の執行部会議を開き、当会として綱紀委員会に対する調査請求をすることを決定しました。翌4日午前には、その手続を了したうえ、記者会見に臨み、国民の皆さまに向かっての謝罪を致すとともに、綱紀委員会に調査請求をしたことを公表しました。調査請求やその公表は、当会の規定に基づく処置です。当年度は、とりわけ修習生の給費制の問題に会員の皆さまと一緒になって懸命に取り組んで参りました。その運動を通じて、私たちは、法曹そして弁護士は一体誰のものであるのかを強く自問しつづけ、そして、弁護士はこれまでも司法を担う公共財であったし、これからも公共財であり続ける、との決意を新たにしたばかりでした。そのようなさ中のベテラン会員によるよもやの事件は、まことに無念の一語に尽きます。全国のほとんど全てに近い会員は、誠実に職務を遂行し、自己犠牲を厭わずにボランティアでの公益活動にも邁進しています。にも関わらず、ごく一部の例外的な不祥事であってもそれが起こってしまえば、弁護士全体に対する信頼が揺らいでしまうことになります。その信頼を取り戻すためには、再び、会員ひとりひとりが、地道にコツコツと弁護士の本分を全うする日々を積み重ねて参るほかありません。同時に、同じ過ちを決して繰り返さないための会を挙げての取り組みも欠かせません。今回の事件は、弁護士倫理(弁護士職務規程)以前の論外の問題ながら、事件の概要がつまびらかになったところで、今回の事件を検証して、会としてあるいは周囲の仲間として、このような事態を招かないで済むにはどうすればよかったのかをキチンと振り返ってみて、今後の有り様を皆で考えてみるべきはないかと感じております。◆法曹養成制度の改善に向けての正念場今次の司法制度改革の中で、もっとも困難な状況に陥っているのが、法科大学院を中核として制度設計された新しい法曹養成制度と理解します。司法を支える人材をいかに確保し養成して行くかは、極めて重要な国家的課題です。給費制の問題も、適切な法曹人口・弁護士人口の在り方も、養成制度と深く関係します。法科大学院、司法試験などを含む法曹養成制度の改善に向けて、政府のもとにその改善施策の検討・策定に向けたフォーラム(検討会議)が近々発足する予定です。極めて重要な会議になりますので、日弁連は、これに向けて緊急提言や昨夏以降激しく会内論議を重ねてきた法曹人口問題に関する提言をなす予定です。これらについては、当会でも鋭意検討や議論を致して参りましたが、非常にタイトなスケジュールの中で広く十分な会内論議を尽くすことができなかったことを申し訳なく思っております。ただ、内外に向けての運動の本番は、いずれもこれからです。吉村執行部には大変な重要課題が数多控えておりますが、会員の皆さまのご支援のほどをよろしくお願い致します。◆嬉しいお知らせ昨年5月号から続けさせて頂いた私からの会長日記も今回が最後です。最後にうれしいご報告で締めさせて頂きます。1) 福岡市こども総合相談センターの任期付公務員に当会会員報道でご承知の方も多いと思いますが、久保健二会員(福岡部会、62期)が、福岡市こども総合相談センター(児童相談所)のこども緊急支援課長に任期付公務員(任期2年)として採用され、この4月から常勤します。当会の子どもの権利委員会は児童虐待防止活動にもかねて熱心に取り組んできており、福岡市とも連携を強めてきたところ、昨秋、福岡市から推薦依頼が当会になされ、久保会員に白羽の矢が立った次第です。もちろん、全国初のケースであり、弁護士の活動領域の拡大、そしてなにより、弁護士会が取り組んできた子どもの権利の擁護活動が一歩前に踏み出した新たな形として、まことに画期的なことで、全国への波及効果も期待されます。会を挙げて支援すべきです。久保会員におかれては、常に緊急かつ緊張の現場対応が求められるハードな仕事だと察しますが、どうか身体に気をつけて頑張って頂きたいと願います。2) 法教育懸賞論文優秀賞の受賞法教育は、弁護士会が取り組むだけではなく、国(法務省・文科省)もまた日弁連との連携において強力に推進してい
ます。法務省では昨年、法教育懸賞論文を募集したところ(テーマは「学校現場において法教育を普及させるための方策について」)、当会の春田久美子会員(福岡部会、48期)がこれに応募され、この度見事に優秀賞を受賞されました。もちろん春田会員は当会の法教育委員としても熱心に活動されています。近々、法務省のホームページに論文全文が掲載されるとのことですので、是非ご覧ください。そして、当会でこのほど発足した法教育センターにご理解とご支援をお願い申し上げます。3) 委員会活動活性化若手会員が急増するとともに、委員会活動に参画して頂いている会員もまた増えている状況を伺い見て、また各委員会から上がってくる毎月の議事録も拝見致しながら、当会の委員会活動が全体的にかなり活性化しているとの手応えを感じながらこの1年を過ごして参りました。実際、本年度第2回目の委員長会議(2月25日)の報告資料によれば、委員会の本年度の出席者数が前年比で増えた委員会が過半を超え(28委員会)、その余も多くは横ばい傾向であり、執行部一同とても嬉しく思いました。会員数が増えることで、従来は手を回し切れていなかった活動分野にも取り組むことができるようになりつつあります。数は力なりです。地域司法も充実して参ります。(退任のご挨拶は、あらためて次号になるそうですが、1年間、会長日記をお読み頂き、また、会務をお支え頂きまして、会員の皆さま、まことに有り難うございました。)

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平成22年度福岡県弁護士会会長日記会長 市丸信敏(35期)
◆人権白書「人権擁護活動2010」今年度の執行部は何をしたの、と問われると、「給費制で明け暮れました」と、つい口をついてしまいそうです。ですが、給費制の運動のおかげで多くの人の暖かいご支援に接することができて、これまで経験したことがないほどに大きな、そして多くの感激・感動を頂戴しました。本当にありがたく思っています。ただ一方で、街頭行動や各方面への要請活動等を通じて、弁護士そして弁護士会・日弁連の人権活動や公益活動が世間の人にこんなにも知られていないのかと呆然とし、日ごろ会員の皆さんがどれほどの自己犠牲の上にこれら活動に地道に奮励して頂いているかをよく知る一人として、誠に悔しい思いをしたことも少なくありませんでした(このことは、昨年10月号の会長日記に詳しく記させて頂きました)。しかし、これは考えてみれば、端から見ると、単にわれわれの的確な広報の努力がまだまだ足りていなかったというだけのことなのかも知れません。大事なことは何度でも繰り返し伝える努力をしなければダメだ、分かってくれているはずとの思いこみではダメだ、ということも、給費制運動で学んだことの一つです。そこで、今回、ひとつの試みとして、当会の昨年1年間(1~12月)の人権活動の白書を作って、県内の自治体や関係諸団体、マスコミ関係者や議員さんら等々に広く報告(広報)してみてはどうかと企画しました。もしこれを毎年続けて、この冊子を手にしてパラパラ(あるいはチラッ)とでも見てくれる人が少しずつでも増えてくれれば、当会のサポーターがさらにじわりじわりと増えてくれるのではないかとの構想です。常議員会の賛同を得て実行に移し、早速、多くの委員会から快く原稿を寄せて頂き、この度、「福岡県弁護士会の人権擁護活動2010」として刊行できる運びとなりました。本文40ページ程度の簡素な小冊子です。会員の皆さまにも1冊お届けさせて頂きます。ご自分が関係する委員会以外の活動を広くご存じ頂く機会も普段はなかなかないかとも思われますので、是非ご高覧を頂ければ幸いです。趣旨を踏まえて短期間で原稿を寄せて頂いた各委員会や、一手に編集作業を引き受けて頂いた小林副会長に、この場を借りて厚く感謝を申し上げます。◆法教育センター本年4月から、「法教育センター」を当会で発足させることになりました。子ども達などに正義、公平などの法の基本的な価値観に基づき問題の解決を考えてもらう授業などに取り組んで貰うことを推し進めるのが、弁護士会の法教育活動です。子ども達に生きる力を備えて貰うための新しい教育、そして、司法改革が実現を目指す法化社会の担い手としての主権者を育てる教育をサポートするものとして、近年にわかに重要性を帯びてきています。当会では、法教育センターを立ち上げることによって、会員の皆さまにひろく協力を募って、学校への出前講師(ゲストティーチャー=教員とのコラボレーションで授業に参加する)などを少しずつでも担って頂ければと願っております。生き生きと向きあってくれる子ども達と触れ合えて、楽しく、やり甲斐のある活動です。負担が重くならないように、テキスト類の作成作業も進んでおり、研修(オリエンテーション)などと合わせて、どなたにも参画して頂けるようになります。ご案内の節は、是非ともエントリーして下さるよう、よろしくお願い致します。◆ひまわりほっとダイヤル(中小企業支援コールセンター)中小企業にも法の光を!法の支配が中小企業を含めて社会の隅々まで行き届くことは、司法改革が目指す法化社会の実現のために重要なことです。その理念に基づいて、当会では昨年5月の定期総会で「中小企業への積極的な法的支援を行う宣言」をご採択頂いております。昨年4月から活動を開始した、当会の中小企業法律支援センターの取り組みの柱の一つとして、「日弁連ひまわりほっとダイヤル」というコールセンター業務(電話番号0570-001-240)があります。中小企業経営者がこのダイヤルに電話すると、最寄りの弁護士会(相談センター)に電話がつながり、会が相談担当弁護士を割り当て、その弁護士から折り返し連絡を入れて速やかに面談相談に応じる、という日弁連が構築した全国システムです。この事業開始に伴って、キャンペーンとして、全国で、当初は半年間、これを延長して更に半年間、コールセンター利用者に無料相談を実施してきました。当会は、委員会の努力の甲斐あって、全国でも常に上位の好成績を収めてきています。コールセンターの周知・定着のためには、なおしばらくの間のキャンペーン継続が相当であるとの日弁連の要請がなされました。当会では、商工会議所はじめ各種中小企業団体や行政(経産局や県など)・政府系金融機関などとの間の連携関係構築に委員会が地道に取り組んできており、このコールセンター無料キャンペーンはその有力なツールであることも報告されました。それらの結果、無料キャンペーンを更に1年間(24年3月末まで)続けることが常議員会で承認されました。研修等の一定の要件はありますが、希望する会員はだれでもコールセンターの相談員に登録できます。どうか、ご理解・ご協力をお願いします。◆共済制度の廃止について3月9日の臨時総会では、共済制度(共済規程)の廃止・残余財産の一般会計組み入れという重要議題がかかります。保険業法の改正によって、会員数1000名を越えた弁護士会では、保険業法の適用を受けることとなって共済制度の継続が困難となります。そこで、会員1000名を目前にする当会での対応が必要となり、他会での先例を調査し、機構・財務改革委員会からの答申を受ける等して、やむなく、共済制度は廃止をさせて頂くことに致した次第です。なお、この廃止後は、一般会計から社会的儀礼の範囲内での慶弔見舞金をお支払いさせて頂く新たな制度を設ける予定です。◆バトンゾーンをめがけてこの時期、次期執行部メンバーも各種会議に努めて出席を始められる等の光景を目にして、いよいよわが執行部のゴールも間近に迫ってきたなあという実感が湧いてきます。他団体の会長さんなどからは、1年で任期終了という話しをすると羨ましがられたりしますが、全国を見回しても、弁護士会の役員はほぼ例外なく1年任期です。但し、日弁連の会長と事務総長は2年任期であり、また当会でも、昭和60・61年度に田邉俊明会員が最後の2年間の会長をお務めになられましたが、それまではずっと2年任期(事実上の)でした。ところが、世間的には団体役員の1年任期はかなり異例と映るようです。実際に1年近く経ってみてようやく分かってきた事柄も少なくなく、対外的にも、やっと諸関
係者との顔つなぎやパイプができかけたかなという感触があることも否定できません。正直、弁護士会としての執行力の強化という点からは、複数年任期制がベターなのではないかとの感想も覚えます。ただ、現実問題として、本業の傍ら会務に打ち込むには、1年間でも、気力・体力・財力の限界を痛感するに十分な期間と言え、やはり1年交代制が穏当なところなんだろうと感じる次第です(もっとも、今後、上記の3つの力を満たす方にご出馬頂ければ、話しは別でもよいのではないかと思います。)。当会では、従前から新旧執行部の引継ぎが重視され、重点課題を含めしっかりと受け継がれていきます。1年交代で会長が替わるからといって、急に路線が変わる、ということはまずありません。そんなこんなを感じつつ、2月20日に予定されている現次期執行部の引継ぎ会(第1回)に間に合わせるべく、会務引継書の作成作業が急ピッチで進められました。1年前に前年度の池永執行部から引き渡された引継書をベースに、執行部各員が手分けして、1年を振り返りながら作成し、日曜返上の打ち合わせ会などを経て校正を重ねました。最後に井上総務事務局長がつなぎ合わせて完成させてみますと、前年度の引継書から更に100ページほども増えて、総ページ数はついに300ページにも達してしまいました。任期末を間近に、たまっていた諸課題が目白押しに寄せてきて、定例(2週に3回)の執行部会議はついつい長引き、毎月2回の常議員会も議題山積となり、ついに前回(2/7)の常議員会は4時間半(終了は午後7時半近く)ものロングランでした。ダッシュで駆け出す構えの次期執行部が待つバトンゾーンまで何とか無事にたどり着き、しっかりとバトンを手渡すべく、息切れ気味の全身をムチ打ちながら、全員でラストスパートです。

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平成22年度会 長市 丸 信 敏(35期)
弁護士会の公益活動に関する広報について思う◆9月9日、今年度の新司法試験の合格発表が行われました。合格者総数は2074名、福岡県内のロースクール4校からも、まずまずの合格者数でした。修習生の厳しい就職状況、苦戦する法律相談センターなど弁護士人口がすでに飽和状態にあるようにも感じられる昨今の実情下、今年の司法試験で果たして何人の合格者がでるのか気がかりでしたが、結果的には、直近の3年間と概ね同水準でした。ただし、司法改革の結果、本来は、政府目標(閣議決定)では、合格者3000人が本年度での達成予定でしたので、マスコミは、「目標下回る」、「法曹人口5万人遠のく」、「合格率25%、過去最低」等々、一様に厳しい論調でした。◆8月号の会長日記でも簡単にご報告しましたが、日弁連は、今年度、あらたに「法曹人口政策会議」を発足させました。日弁連の宇都宮健児会長は司法試験合格者数を1500人程度にすべきであるとの公約を掲げて当選した経緯があります。これまで2回の会議(8月の第1回政策会議全体会議、9月の理事会内意見交換)では、昨今の弁護士を取り巻く苦境を訴え、また、司法改革の失敗を指弾して大幅減員を主張する強硬な意見や、他方、まだまだ弁護士が対応できていない分野があるのではないか、人権救済のニーズに十全に対応できているのか、初めに数字ありきの議論は正しいのか、等々の意見が相次ぎました。 適正な法曹人口や如何に。本当に難しい問題です。どうすれば、現在の、あるいは将来のあるべき法曹人口を把握できるのでしょうか。また、それを我々自身が声高に唱えるだけで、それが実現できるものでしょうか。しかし、まずは我々自身が問題提起をしなければ、だれも代わりに訴えてくれる人もいないであろうことも確かです。市民を、マスコミを納得させることのできる、客観性をもった議論や論証に努めることが大事です。これからの時代にあって、あるべき弁護士像、あるべき法化社会の姿をどう描くか、つまりは、これまでの司法改革の検証とこれからの課題や達成目標等々と、総体的に絡む問題であり、答えを見いだすのは簡単ではありません。日弁連は、今年度末には一定の中間答申を出す、との目標を掲げています。 因みに、日弁連の将来予測では、仮に2011年以降、司法試験合格者を毎年3000人で継続した場合、法曹三者の合計人口(以下、法曹人口といいます)は2017年には5万人を突破し、その後、2048年頃には法曹人口は12万人前後で安定人口に達するとしています。また、仮に、2011年以降、司法試験合格者が毎年2000人で推移した場合は、2021~2年頃に法曹人口は5万人に到達し、その後、2050年頃以降は8万4、5000人程度で安定人口に達する、としています。(弁護士白書2009年版)。◆そもそも、司法改革では、司法予算(現状は国家予算の0.4%)を大幅に増大させ、弁護士だけでなく、裁判官、検察官も大幅に増員させることが目指されていました。しかし、現実には、増大した法曹人口のほとんどは弁護士会に押し寄せています。司法予算の拡大、それによる裁判官・検察官の大幅増員、支部機能の充実、弁護士偏在の解消、法律扶助予算の抜本的拡大、刑事被疑事件の国選対象外事件に対する援助活動や少年保護付添人活動はじめ、弁護士会が特別会費で支えている各種法律援助事業の早期公費化、企業・官庁内のインハウス弁護士の大幅増員等々、掲げられていた各種の司法基盤の整備課題は、弁護士会の懸命の努力にも拘わらず、なかなか思うようにははかどっていません。しかし、たとえば、裁判所も、労働審判は大成功であったと自賛しているのですから(これにならって迅速トラックという民事訴訟の審理方式が提案されています)、それほど優れたものであれば、国民が平等にこれを利用できるように、裁判所の各支部においてもこれを実施できるよう、早急に裁判所の人的・物的施設を拡充すべきことを、裁判所自ら最高裁・財務省に強く要請すべきではないのでしょうか。◆司法改革は、「市民のための司法」を実現するという理念のもとに、裁判員裁判制度を初めとする諸改革を実施し、また、司法の容量を大きく拡大することを目指しました。私たちは、希望に燃えつつ、歯を食いしばって、市民のために、と司法改革に立ち向かって、これを実践すべく努力を払ってきたのです。 当会の、法律相談センターを県内くまなく設置するという活動も、どこでも、だれでも、いつでも、司法へのアクセスを容易にしよう、と目指して、25年がかりでコツコツと充実を図ってきたものです。この法律相談センターを足がかりとして多種多様なリーガルサービスを供給することができています。当番弁護士活動も、20年前、手あかにまみれた携帯電話を弁護士から弁護士へとハンド・ツウ・ハンドでバトンタッチしつつ、決して一日たりとて途切れることなく活動を続け、そしてこれを全国に拡大させてきたものです。その努力が、ついには被疑者国選弁護人制度というおおきな成果に結実したことはご承知の通りです。昨今では、派遣切り、貧困等の問題状況を踏まえて生活保護申請の援助活動という地道ながらも命を守る活動にも取り組んでいます。当会は、目下56個の委員会を有していますが、そのほとんどは、直接・間接に、市民のための司法を実現するための活動をしています。当会では、会員の総掛かりで市民のための司法を担う活動をしているのです。◆私たち弁護士は、本当に困っている市民のために十分に必要とされる権利擁護活動・人権救済活動に取り組んできたのか、一部の小金持ちの市民だけを市民として自己満足してきていたのではないか、という痛烈な自省の指摘も胸を打ちます。このような指摘を踏まえるならば、確かにもっともっと増員を図ってゆかなければならない、と思えてきます。 しかし、他方、誰からの財政的援助もない弁護士、弁護士会は、まずは自立できるだけの経済的基盤を確立・維持できていることが不可欠です。その基盤があってこその人権救済活動であり、公益的活動であるはずです。 そういった意味で、今後も増員は必要であるとしても急激すぎる弁護士人口の増大は、弁護士全体をいたずらに競争原理に陥れ、多くの弁護士をビジネス優先の心理に追い込む危険があります。司法改革の際の法曹人口のあり方の参考とされたフランスでは、昨今、弁護士の破産が増大している問題を抱えているとの報告もあります。司法基盤の整備状況とのバランスを保ちながらの増員(ペースダウン)の方向性自体では、おおかたの意見の一致を見られると考えてもよいのではないかと感じます。◆しかし、それでもマスコミは、人口増員のペースダウンをいうと、す
ぐに「司法改革の後退」であるとか、「後ろ向き」である等と批判します。そこに、我々の認識とマスコミの見方とのギャップを感じます。我々は、実は大変な努力や犠牲を払って司法基盤の整備、弁護士偏在解消、法律援助活動への取り組み等々をしてきていることが、実は、マスコミにほとんど理解されていないようにさえ思えるのです。 例えば、日弁連では、毎年15、6億円も払って(その主たる原資は、全国の会員が支払っている特別会費です)、当番弁護士、被疑者弁護人援助活動、少年付添人援助活動、犯罪被害者、高齢者・障害者・ホームレス、外国人等々に対する援助活動等を、要するに手弁当で実施しています。しかし、マスコミにはこれら実情はあまり知られていないかのようです。(しかも、日弁連は、これら援助事業費を法テラスに委託して法テラスの窓口を通じて行っているため、弁護士であっても法テラスの事業であると誤解している人が少なくありません。)弁護士偏在を解消するために、日弁連は、公設事務所(ひまわり基金事務所)を全国に100カ所ほども開設し、また過疎地域での弁護士開業を経済的に支援する等してきています。これらにもこれまで莫大な費用が投入されていますが、すべて全国の会員の人的・経済的負担で担ってきているものです。 ちなみに、当会では独自に、8年前から、全会員から毎月5,000円の臨時負担金や管財人報酬から負担金を支払って頂き、「新リーガルサービス特別会計」を維持してきています。これをもって、公益的な相談活動の日当や、当番弁護士、少年保護事件付添人、精神障害者援助などの各種の法律援助活動に関する当会からの活動費の支払い、その他多くのリーガルサービス活動の原資にしております。法律援助活動の多くは、本来的には公費で賄われなければならないものです。それを一日も早く実現させるために、苦しい中、手弁当ながら実践活動を維持し、これを全国的な取り組みにまで昇華させることによって公的制度に持ってゆくことを目指しているのです。なお、当会は、NPO法人福岡犯罪被害者支援センターに対して、長らく財政支援を続けています(過去10年間で3,600万円)。◆私たちは、こうやって頑張って地道に公益活動に邁進していることを、もっともっと上手にPRしておかなければならなかったと、今、痛切に感じています。 この度の、司法修習生の給費制存続に向けての運動に関しても、弁護士会としてのこれまでのPR不足を痛感しました。給費制の維持を訴えていることが、あたかも法曹がエゴによって法曹だけの経済的支援を求めているかのように誤解している、また、給費制の維持を訴えることは司法改革の後退であると断ずるがごとき一部の大手新聞の論調が見られることは誠に残念です。 給費制は、司法を担う法律家は公共財(社会のインフラ)であること、また、戦後民主主義が、戦前の全体主義を反省して、ときに国家を敵に回す弁護士をも国費で養成することによって司法を、ひいては民主主義を健全に保とうとした制度的担保なのです。 私たちは、これまで当たり前と思ってきた給費制を失い掛けて、改めて給費制にトコトン思いを馳せてみて、なぜ、これまで私たちは国民の税金で育てて貰ってきたのか、私たちは何を国民に対して返してゆくべきなのか、大いに考え直してみる契機を得ました。 なにがあっても、その思いはこれからも維持し続けてゆかなければなりません。◆とまれ、会員の皆さまから連日次々とお寄せ頂いた、合計8万1369筆もの署名の数々(もちろん、圧倒的な全国第1位)、誠にありがとうございました。会員の皆さまの深いご理解と熱烈なるご支援、ご協力に、心から感謝申し上げます。 また、給費制に関してのカンパのご協力もありがとうございました。短期間でのお願いでしたが、73口、金額合計118万1,000円ものカンパをお寄せ頂きました。お陰様で、9月16日の東京での全国決起集会・国会パレード・院内集会・議員会館での議員要請行動には、当会から30名を超える会員を派遣して有意義な活動をすることができました。◆先の市民集会の大成功(今回の全国で開かれた数々の集会ではダントツの500名の動員)といい、驚異的な署名数といい、一体どこからそんなエネルギーが湧いてきたのでしょうか。もちろん、給費制対策本部のメンバーはじめ沢山の会員の皆さまによる熱心な取り組みの成果であることは言うまでもありません。しかし、熱心に取り組むだけではこのような大きな手応を感じることはできなかったはずです。修習生の給費制という、ある意味マイナーな問題についてどれほど市民の理解と共感が得られるだろうかと、不安がいっぱいでのスタートでした。しかし、嬉しいことにそれは杞憂でした。この運動を通じて強く実感したことですが、福岡県弁護士会では、これまで、多くの先輩たちや仲間たちが、長い年月をかけて、市民のために、市民とともにとして、熱い思いをもって地道に、また果敢に司法改革を実践してきていたのです。そして、それがしっかりと市民に、地域社会に浸透してきていた、だからこそ、この給費制の問題についても想像もできないほどに多くの市民の理解と協力が得られたのだと、強く実感しています。 市民集会500人、署名8万という数字を、私たちは大いなる誇りとしましょう。この会員一体の運動の熱い思いをベースに、これからも司法改革の残る課題への取り組み、問題点・課題として浮かび上がったこと等についてしっかりと向き合って取り組み、克服して参りましょう。 当会の、会員一丸の精神や伝統をもってすれば、どんな難問もかならずや克服できるものと信じます。◆給費制の問題は、ついに国会を主舞台にした最後の運動の段階にこぎ着けました。ここに来て、覚悟のうえながら、全国紙の論説や最高裁、法務省、財務省などからの強烈な抵抗にも遭っておりますが、それだけ実現可能性が出てきたことの証です。あと一歩の所まで来ております。 どうか、会員の皆さまにおかれては、最後までご支援を賜りますようお願い致します。

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平成22年度会 長 市 丸 信 敏(35期)
はじめに 「会長日記」執筆の命を受けました。元来、遅筆で、広報委員泣かせで恐縮ですが、一所懸命に責めを果たすように頑張ってみたいと思います(実は、早速、初回から大幅な期限遅れです。スミマセン!)。 今年度の重要課題については、先月号の月報(就任挨拶)で簡単ながらご披露させて頂き、また、先日も「2010(平成22)年度重点課題(執行部会務執行方針)」を会員の皆さまにお届けさせて頂いた次第ですので、会務に関するご報告は現時点ではそちらに譲らせて頂き(なお、ご高覧を頂きまして、執行部に対するご意見等、なんでも忌憚なくお寄せ頂きますようお願い致します。)、さしあたりは初心者マーク会長としての雑感を少し述べさせて頂きます。 バトンゾーン 任期が始まってまだ3週間ですが(4/21執筆時点)、すでに半年は優に過ぎたような気分です。この3月も終わりの頃、某副会長(当時はまだ「副会長予定者」)が某会合の挨拶で述べた「この2ヶ月が2年ほどにも感じます。考えてみれば、まだ任期も始まっていないのに…。」という絶句(?)に象徴されるように、準備期間も結構忙しいのです。挨拶回りの時に、弁護士会の役員の任期は全国的にも1年限りであることを弁明しますと、相手先は、大抵は驚かれたり、あきれられたりします。しかし、「1年が限界なんですよ。」と話しますと、「ハハーン」と大方は納得顔です。 私なりには、弁護士会執行部はトラックリレーの走者としてのイメージです。トラック1周を全力で駆け抜けて、次の走者にバトンリレーをする、無限にその繰り返しである、と。そうしますと、2月、3月の準備期間は、さしずめバトンゾーンです。このゾーンでバトンを受けてトップスピードまで持ってゆかねば、と自分に言い聞かせて準備にあたった積もりでした。…が、トップスピードどころか、駆け出してみますと、いかに足腰がか弱いかを早速に痛感しています。分からないことだらけです。そもそも、リレーに加わるまでのトレーニング不足が決定的に響いているようです。そんな訳で、謙遜ではなく、本当に他の執行部メンバーや常議員、各部会長、委員会の皆さん等々、会員の皆さんに支えて頂きながらの会務執行にならざるを得ませんので、どうかご支援の程を重ねてお願い致す次第です。 眠らない弁護士会 8年ぶりの執行部入りで感じていることのひとつに、弁護士会は眠らない、ということがあります。昔ですと、年度変わりの頃に委員会も一息つく、という感じでしたが、今では、すっかり様変わりをしています。いまや多くの委員会で利用されているMLでも、ほぼ24時間近くメールが飛び交っている感じがします(因みに、新執行部専用のMLだけでも、1月末頃に立ち上って以降の80日余でやりとりされたメールが早くも1200通を超えてしまいました)。 シンポジウムその他の行事が4月早々に予定されていたり、日弁連からの意見照会も年度をまたいで4月×日期限での回答を求めてくる等々。まして、この4月1日スタートした「中小企業法律支援センター」事業は、年度またぎ事業の最たるものでした。世の中全体が何かにつけスピードアップしており、日弁連や弁護士会自体が極めて短期日の即応を求められてきているこの時代、当会の常議員会も、やむなく年間23回の開催予定です(常議員の皆様、申し訳ありません)。 あいさつ廻りの苦しみと喜びと (あいさつ廻りの実態) 新執行部にとって、任期中(任期前を含めて)でもっとも忙しく肉体的にもつらいのは、おそらく、執行部立ち上げの準備と就任の挨拶回りが重なるこの時期です。今年度執行部は、初日(3月23日)の県知事、県警本部長などへの訪問から始まって、日程が許す限りは終日を費やして挨拶回りに努めてきました(実は、このスケジュールの調整に追われる井上・吉野の両事務局長がもっとも大変です!)。それでも常議員会の日や執行部会議の日、日弁連理事会出席で留守の日などは予定が組めず、結局、4月21日までの約1ヶ月間で延べ14、5日間ほどしか動けませんでした。しかも、4月に入ってからは第1回委員会が目白押しで始まり、その開始時刻までには会館に戻るように努めましたので、どうしても1日に回ることのできる訪問先数は限られてしまいます。 主な訪問先としては、裁判所・法務検察関係、自治体関係(首長さんや消費者センター)、社協など公的福祉団体、各種経済団体、金融機関、主要企業、政党、労働団体、マスコミ各社、専門職団体、法科大学院等々、約150~160箇所が目標です(4/21現在で140箇所程度の訪問を終えました)。今年は、訪問先を絞り込む作業の一方で、中小企業支援を重点課題に掲げさせて頂いておる関係上、各種中小企業団体や金融機関、各地の商工会議所等10箇所以上を新規の訪問先に加えました。その訪問先の示唆・紹介で新たな訪問先を加えたりしたことも幾度かありました。実は、訪問できていない大事なところがまだありますので、4月末頃までは追加して動き回ります。 (伝統の重み) 最近、幾人かの他会会長と話をする機会がありましたが、他会では、福岡県弁のようには挨拶回りをしていないところが多いようです。知る限りでは、ほとんどが法曹関係者先だけで済ませておられるようです。福岡が100数十箇所に回っていると話しますと一様にビックリされます。そして、名刺交換だけではなく、きちんと15分から20分程度(状況によって30分近く)は話をしている、と話しますと、2度ビックリされます。福岡のやり方が当然と思っておりましたので、他会の実情には、私こそビックリです。 挨拶回りでは、実は、当会の最近の重点活動などをレジュメやパンフレット類などを示しながら、さながらミニ・プレゼンテーションをさせて頂く時間が多くを占めています。当会で抱える委員会が55個に及び、沢山の会員が手分けして人権擁護その他多方面の市民向けリーガルサービス活動等を支えていることをアピールさせて頂きます。首長さん、会長・社長さん、会頭・専務さん、長官・所長・検事長・検事正さん等々、お会いさせて頂くみなさんは、実に誠実に耳を傾けて頂けます。そして、弁護士会に対してお世話になっていることの感謝を述べて頂き、あるいはこれからの期待を述べて頂き…。もちろん課題を頂いて帰ることもあれば、今後の連携強化に向けての有り難い糸口を頂くことも少なくありません。特に、今年は、中小企業支援活動についての今後の各団体等とのパイプ作り、連携について種蒔きができたと思っております。 当会が、日弁連でも、もちろん地元でも、活発な活動振りに高い評価を頂くことができているのも、これまで努力して来られた歴代執行部や本当に多く
の会員の皆様の尽力の成果であり、そして、日頃からの地元の各界各層、市民の皆さんの理解と支援があったからこそであることは言うまでもありません。この挨拶回りを通じて、弁護士会が本当にいろんなところで受け容れられ、支えられているのだということを痛感します。あいさつ廻りは、苦行ではありながらも、実は新執行部のメンバー一同にとって新鮮な感動の日々であり、そして、担うべき責任の重大さが身に染み入ってくる貴重な体験でもあるのです。 (役員就任披露宴にご協力を) 今年は、実は、挨拶回りに際して、来る5月25日の役員就任披露宴(会場:ホテルニューオータニ)の仮案内書をお渡しして参りました。この役員就任披露宴も、弁護士会のことを地元のいろんな方に広く知って頂くための大事な行事にほかなりません。できるだけ多方面から多くの人に足を運んで頂いて、弁護士会・弁護士と接して頂きたいと願ってのことです。どうか、会員の皆さまにおかれましても、当日の総会・記念講演会ともども、是非ともご参加を頂きますよう、最後のお願いです!(今からでも、お申し込みを受け付けます。) 穏やかな船出 さる4月15・16日の両日、日弁連で第1回の理事会が開催されました。注目の宇都宮新会長でしたが、冒頭の会務執行方針の説明を終えた時点で理事席(各会会長)からは拍手が湧きました。また、その後の議事も波乱なく進行し、温かい空気のもとで2日間の審議を無事に終えました。日弁連新執行部の具体的施策については今後順次に繰り出されてきます。当会としても、逐次、ご報告・ご相談を致しながら進みます。

会長日記

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その12  <小さく生んだ器に、新たな酒が盛られることを期待して> 2月15日~3月14日
平成21年度 会 長 池 永   満(29期)
活動を集約しつつバトンを渡す 会長日記も12回目となり最終回を迎えました。(残る3月の半月分については、5月号掲載予定の退任挨拶で触れることになると思います。) 今回の日記期間は、初日(2月15日)に次期執行部への引継書の作成を完了するための執行部会議を開催し、2月21日には執行部各位が分担執筆し冨山総務事務局長が編綴した190ページに及ぶ引継書(門外不出、執行部限りの「平成22年度用福岡県弁護士会会務マニュアル」)を手渡しての引継会議(第1回)と懇親会、2月23日は次期執行部のため県弁各委員会の今年度の到達点と次年度の課題を報告することを主目的とした第4回委員長会議の開催、3月6日は県弁職員の皆さんの1年間のご苦労に感謝して慰労するとともに次期執行部の紹介を兼ねての懇親交流会、そして3月13~14日、大丸別荘で開催された横浜弁護士会、愛知県弁護士会と当会との現・次期執行部メンバーが勢揃いしての3会交流会を前にして13日午前中一杯使っての引継会議(第2回)により執行部としての引継を完了させる期間となりました。 と同時に、この期間は、今期執行部がその実現のために関連委員会の皆さんとともに1年を通じて努力してきた諸課題を総達成して活動を終局させるとともに、次年度執行部における活動の円滑なスタートを支援するための土台を築くという、最後まで「死に体」内閣になれないという過酷さを抱えつつも極めて充足感に満ちた時期ともなりました。   大連市律師協会との交流提携協定を調印 2月26日~28日、張耀東会長を始めとする大連市律師協会代表団18名が来福し、両会の「交流に関する合意書」を調印しました。代表団を歓迎しての記念行事等の詳細については別項記事に委ねますが、北九州で開いた前夜懇親会には北橋北九州市長が、調印式後の記念祝賀会には吉田福岡市長、郭中国総領事館首席領事ら多数のご来賓に出席いただき、また、多くの会員の皆さんが多忙の中、ご参集いただき成功のために尽力いただきましたことに心から感謝申し上げます。 とりわけ両会の調印式と記念祝賀会に、当会との交流提携協定を締結してから満20年が経過する釜山地方弁護士会の代表(2名)に参加いただいて、一衣帯水の間柄である日本・中国・韓国の3国において活動する弁護士会が、国際的な3会交流をスタートさせることにつき、互いに賛意を表明しあったことは極めて重要な意義があることだと思います。次年度は6月と11月に釜山地方弁護士会との間で交流協定20周年記念行事が計画されており、そのいずれかで3会交流を実現できればすばらしいことです。 なお私が記念祝賀会で行った挨拶は後掲のとおりです。 「パパ・ママ弁護士支援」の会費免除制度を創設 ~4月1日から適用へ 朝日新聞で標記の呼び名がつけられた「育児期間中の会費免除規程」が3月11日の臨時総会で採択されました。その実施規則も同日の常議員会で承認されました。1歳未満の子供さんを抱えている会員(男性女性を問いません)が、1月平均で週あたり35時間未満まで就業時間を削減しながら育児に励む場合に、その支援のために会費等を免除する制度です。その申請方法や免除される会費等の範囲等については別途詳細に連絡していますが、当初女性会員のみに対する会費免除提案から出発したものが、両性の平等委員会を中心とする会内討議の中で、男女が共同して育児にあたることを支援するという思想に基づいた会費免除制度として結実できたことに深い感慨を覚えるとともに、男女共同参画時代の弁護士会づくりという観点からも一歩を踏み出すことができたのではないかと喜んでいます。 新規登録弁護士への「指導弁護士制度」を会則に明記 ~新62期以降の新人全員に「主任指導弁護士」を選任します。 3月11日の臨時総会において「会員研修規程」の改正が採択されました。改正点は、新規登録弁護士が研修に励むように援助する「指導弁護士」を配置する制度を会則上明記したことです。 指導弁護士の選任方法等については、同日の常議員会で採択された「新規登録弁護士研修規則改正案」で定められていますが、従前、新規登録弁護士に義務付けられていた個別研修を支援するための個別指導弁護士とは別に、やはり研修が義務付けられている集合研修や会務研修等を含め、1年間を通して新規登録弁護士の研修への参加等を指導援助する役割を持つ「主任指導弁護士」を新規登録弁護士の全員を対象として選任配置することにしたものです。 主任指導弁護士は、事務所に就職している会員については、原則として新規登録弁護士を雇用している弁護士や先輩弁護士が就任することになりますが、同一事務所内に適任者を確保できない場合や即独の会員に対しては会長が適切な主任指導弁護士を選任することとしています。なお、会長は指導弁護士の選任等に関する事務を新規登録弁護士が所属する部会の部会長に委託することができることとされています。 なお新規登録弁護士に対する1年間の研修内容の充実策については、現在、研修委員会を中心として司法修習委員会、法科大学院運営協力委員会を含めた関連委員会の協議会を開催して検討を進めています。また、研修の拡充に必要な予算を確保する方策として、3月11日の常議員会において「財務に関する規則」を改正して弁護士会の一般会計における勘定科目の中に「研修費」の中科目を新設するとともに、執行部において各部会が運営している相談センター会計の中から研修費の実質増額を支えるための一般会計への繰り入れ(600万円前後)を行う方向での予算協議を始めています。5月定期総会において協議の結果を反映した予算が採択され、当会における新人研修を含む会員研修計画を抜本的に拡充していく一歩が切り開かれることを期待しています。 弁護士会として初めて会員に対する義務的研修を定めた従前の会員研修規程は16年前の総会で制定されましたが、実は当時の研修委員会担当副会長であった私自身が起案したものです。会員研修規程に基づいて、会長は毎年「会員研修基本計画」を定めて周知するとともに、それを実行する体制を確立し、予算措置を講じることとされています。 会員研修規程が制定されて以降、研修委員会を中心とする関係者の努力の中で、会員研修自体は年々拡充してきましたが、その制度枠組みにはほとんど手を加えられず、前述のように勘定科目には「研修費」という費目すら設定されないままに推移していました。今回新規登録弁護士に対する研修体制の強化を検討する中で、会員研修規程の改正を総会に提案することになりましたが、何か不思議な因縁のようにも思えます。 地域に開かれた新会館建設への夢を語り合おう 3月12日
、九州大学が六本松跡地をURに売却する契約を締結したと新聞発表されました。法曹三者も、それぞれURとの間で、URが取得する六本松跡地への移転に関する協定を締結しています。新会館を建設するための準備を本格的に、かつ公然と進めることができる段階に入りました。 そうした中で当会の公害環境委員会が、「福岡県弁護士会の新会館建設に関する、地球温暖化防止対策の観点からの提言書」を執行部宛に提出しました。そこでは、・太陽光発電システムを導入すること、・無駄な空調や照明の使用を避けるために、会館自体を自然の風や太陽光等を利用しやすい構造とすること、・その他、二酸化炭素排出量削減の取組に配慮した構造とすること等が提言されています。 私も、提言書が指摘しているように「環境に配慮する弁護士会」を社会にアピールしていくという観点はもとより、弁護士会自身も地域社会を構成する一員として地球温暖化防止のための社会的責任を担うという立場に立って、ぜひともこの提言が生かされることを願っています。また他の委員会や会員におかれても、これから数10年にわたる弁護士活動の拠点となるべき新会館のあり方や備えるべき機能等に関して、多くの意見や希望を持たれているのではないかと思います。 もとより、そうした希望を生かそうとすれば、当然のことながら新会館建設費用の高額化を招き、短期的にはより多額の資金負担を会員にお願いしなければならないということにもなろうかと思いますので、そうした点も含めて、会内における積極的な検討を進めることが不可欠であろうと思います。 併せて考えなければいけないことは、地域に開かれた弁護士会として市民の信頼の中で活動してこそ、弁護士・弁護士会の将来があるとすれば、その活動拠点である新会館の建設に関しては、会内議論だけではなく、末長い隣人となる六本松地域の住民の方々との話し合いも必要不可欠ではないかと思います。その際にも今回の公害環境委員会の提言等をふまえた姿勢を確立しておくことは、地域住民の方達の理解をいただく上で一つのポイントになるのではないかと思われます。 私は、この提言書を常議員会に報告するとともに、新会館取得本部(本部長は会長です)において、なるべく早期に広く会内議論を巻き起こすための重要な討議資料として取り扱っていただけるよう次期会長に対して引継を行いました。 日弁連会長の年度内決定を喜ぶ 史上初の再投票となった日弁連会長選挙。3月10日の再投票でも決まらず、4月の再選挙必至かとの悲観的な予測を覆して、宇都宮健児弁護士が会員票において劇的な逆転勝利をおさめて当選されました。 今後の会務運営という点では、日弁連執行部内の調整はもとより、日弁連執行部と日弁連各委員会、あるいは日弁連と単位会等の間において、司法制度改革課題を推進していく上での方針上の調整など相当困難な事態が予測されますが、私は、日弁連のために、とにもかくにも年度内に決着がついて会長が選出されたこと自体を心から喜んでいる一人です。 いずれにしても、当会選出の田邉宣克日弁連副会長のご苦労が偲ばれますが、健康に留意されて御奮闘いただきますよう祈念しております。 (3月14日記)

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