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カテゴリー: 会長日記

会長日記

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平成23年度福岡県弁護士会 会 長吉 村 敏 幸(27期)
1. 今日は、仙台で日記を書いています。8月19日金曜日に日弁理事会が終わった足で、夜、仙台に赴き、8月20日土曜日、仙台からJR仙石線(センセキ線)と石巻線に乗り継いで、被災地石巻市と女川町に行ってきました。今年5月の県弁総会で報告をいただいた石巻市の前田拓馬弁護士が3月11日の講演時、被災した施設(健康センター)はかろうじて残っていましたが、他はすべて瓦礫と化し、女川町の中心部はまさに無人の土地でした。グーグルでも状況を見ることが可能です。JRも寸断され、途中、代行バスに2回乗り換えて、仙台から女川町の避難所(高台の総合体育館。ここには今でも体育館の中で約160人の町民が避難生活をしておられました。他に約15か所の避難所あり)まで片道4時間要します。線路は赤さびて途中のバス道路から見える建物も壁が壊れ、朽ちています。女川町の避難所にはボランティアの医師やNPOの若者たちが数人残っており、運動場で4~5人の若者がトランペットやサックス等で演奏の練習をし、その横で7~8人の若者がダンスのドール踊りなど練習をしています。お年寄りは数人が体育館の玄関に出て、この練習風景を眺めているだけで、多くは施設の中のようです。施設の中は小さくパーテーションされ、たくさんの衣服やタオル等が無造作に掛けられています。町の中心部の廃墟、重機だけが動いている様子とは、対照的でした。思い立ったのは、7月の生存権委員会の合宿のときに井上英夫金沢大学教授から「絶対に被災地に行きなさい」と強く言われたことが心に残っており、やって来ました。もともとは、当会の震災復興本部としても、東北三県の弁護士会と提携して法律相談活動の支援をする必要があるだろうと考えて、震災対応の研修を行なってきたものの、東北三県からは自前の対応のみで手一杯であり、他の多くの単位会の支援要望に応える体制が作れないために、すべて謝絶され、結局、当会は現地の支援に赴く必要性がなくなってしまいました。もっとも、福岡県における被災移住者の集いや交流会には委員会から積極的に出かけて行って、自治体やNPOと連携しての相談活動を始めています。東京を出るときに、福島で震度5弱の地震があり、仙台に来てからも日に数回の地震が続いています。このような中で、石巻線沿線や女川町の瓦礫を取り除いた後、町はどのように再興がなされていくのでしょうか。今までと同じ仕事と安心できる住居の確保がなされることを願っています。仙台駅にはカメラを抱えた若者が多く、ボランティア受付のブースもあります。途中の矢本町はちょうど夏祭りのため若者が多く、浴衣姿の女性たちがたくさん談笑しています。子どもや若者たちの屈託のない笑顔と元気にホッとしました。
2. さて、給費制の問題がまたもや国会の中で活発になっています。政府の「法曹養成に関するフォーラム」は、当初から貸与制の問題についてのみ議論し、8月末までに結論を出すことになっていましたが、8月4日の第4回フォーラムでは貸与制を前提とした佐々木座長の取りまとめがなされました。これについては、直ちに地元の国会議員要請活動を福岡および東京の議員会館でも行ないました。ビギナーズネットは連日国会周辺で給費制存続を求めた朝のビラ配りを行なっています。全国的に国会議員の給費制に対する理解も進んでおり、8月2日、18日と、相次ぐ私たちの訪問についても快く応じていただき、また、院内集会への参加者も多く、積極的な発言がなされています。昨年と同じような時間切れにならないよう、また、仮に時間切れになったとしても、給費制が存続されるまで戦い続けるとの強い覚悟でいることをお伝えします。
3. 法曹人口問題政府のフォーラムは給費制だけではなく、法曹養成にかかる問題全体について議論する場です。この期間としては概ね2~3年くらいではないかと予想されています(ただし正確な情報ではありません)。したがって、日弁連としても、それ以前に一定の方向性を打ち出す必要があります。当会としてもこの問題について広く会員の意見を取りまとめる必要から、11月上旬に法曹人口問題シンポジウムを開催予定です。現在、シンポ準備会の中で連続勉強会を開いています。最終的に重要な事柄は「市民にとって適正な法曹人口」は如何にあるべきか、その判断要素は何か、ということだと思います。これが大変に難物です。かつて司法改革審議会において法曹人口5万人、毎年3000人合格説が主張された根拠は、フランス並みにということだったと聞いています。しかし、この根拠は、・法律関連の隣接職種を加算していないことの誤り、・法曹需要-事件数比較がなされていないことの誤り、があります。隣接関連職種は、司法書士(2万人)、行政書士(4万人)、税理士(7万人)があります。対象の諸外国には、これらの隣接関連職はありません。米英独仏日弁護士人口(2010年)110万人12万人15万人5万人2.8万人関連職司法書士2万人行政書士4万人税理士7万人事件数比較(2009年)1837万件194万件163万件155万件90万件人口10万人あたりの事件数5,8383,1601,9932,500708日本を1とした場合8.24倍4.46倍2.81倍3.53倍1以上から明らかなように、我国では事件数から見て諸外国のように法曹需要は存在しないということがいえます。また、我国の隣接法律関連職業人口を加算すると、司法書士を加えて、フランス並みのおよそ5万人となります。

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平成23年度福岡県弁護士会会長 吉 村 敏 幸(27期)
1.「皆さんは、憲法の自由権保障は大変重要だと考えているでしょう。じゃ、社会権保障についてはどうですか。最高裁や有力学者はこの点の違憲審査基準について二重の基準を作ったのが誤りです。自由権=厳格基準、社会権=合理性基準=緩やかな基準、という二重の基準です。食うに困らない人は自由権を重要だといい、社会権保障を緩やか基準でいいといいます。しかし、食うに食えない人、生きていけない人は自由の前に食うこと、生きていくことのほうが大事なのです。したがって、違憲審査基準の二分論は誤りなのです」。  これは、委員会合宿の講師の先生のご発言です。久しぶりに憲法の講義を聞いています。  今日は、生存権本部委員会の夏合宿帰りに、この日記を書いています。場所は、佐賀古湯温泉でした。金曜日に日弁理事会から帰福し、土曜日午前は九弁理事会があり、午後から松井副会長の車に便乗しての古湯行きです。久しぶりの委員会合宿なので、若かったころの委員会共同作業を思い出し、気分が高揚してきました。  参加者は約20名。登録2~4年目前後の人が多く、10年、20年、30年前後の会員が各1名ずつくらい。今回は、金沢大学大学院人間社会社会環境研究科長、井上英夫教授の講演も予定されており、大変楽しみでした。この合宿は9月17日13時15分(天神センタービル8階)からの人権大会プレシンポ(生存権)に向けての準備作業も含まれています。シンポの獲得目標は次のとおりです。・ 日本の社会保障がどうあるべきか、普通に働けば普通に生きていける社会を作るためにはどうすべきかというのが大テーマ。・ 大テーマを基本において、あるべき社会保障ないし国の進むべき道-労働を基本にして国をどう持っていくかを議論する。また、東日本大震災を契機とする生存権保障にかかわる価値の転換、今後の日本の在り方を問う。・ 働いて生活していける国づくり-ナショナルミニマム、最低賃金、年金、税と社会保障の一体的改革、規制緩和、地方分権、福祉国家型の社会保障とは何か。・ 社会保障の重要テーマである労働現場、雇用関係はどうあるべきか。市民・弁護士はどういう視点を持つべきか。・ 労働と社会保障との密な連携が前提になるという視点。労働市場の健全性、就労支援、社会保障という3つが揃うことが必要不可欠であること。 人権大会プレシンポは、ほかに、  9月5日18時(アクロス円形ホール)「死刑制度の我国における現状と国際的動向」等、  9月10日13時30分(博多区千代町ガスホール)「患者の権利の法制化を目指して」等 が予定されています。
2.執行部に入ると、自分の個人的業務のみではおよそ関与しないはずの文書に接することが多くなります。私の分野では、憲法に関する講演録や公害、環境に関するものです。  秋田弁護士会から平成18年3月11日に樋口陽一教授を招いた憲法講演会講演禄が送られてきました。明治憲法制定時「臣民ノ権利」を入れるか入れないかに関して闘わされた伊藤博文と森有礼との論争、夏目漱石の個人主義的人権観などが述べられていて面白かったです。可能であれば、追而月報等に転載できればと考えています。  公害、環境に関するものとして、日弁連は7月15日理事会で、原子力発電と核燃料サイクルからの撤退を求める意見書を採択しました。この問題は、今年の九弁連大会の宣言・決議にも提案されることになると思われます。  原発は補償問題もあり、発電と送電網を分離しての売却論など初めて聞く議論であり、興味深い論点がたくさんです。
3.東日本大震災の問題については、二重ローンからの解放の問題に漸く目途がつきそうです。  7月15日日弁理事会における報告によると、ADRにおいて債務者と金融機関、保証会社と合意することによって債務免除を認める方式とすること、当該保証人に対しても求償しないこと、とされています。多くの金融機関、リース会社、保証会社、信用保証協会も同意しています。以上が骨子です。ただし、3月11日以前に既に期限の利益を喪失する等の遅滞者の場合は利用ができないこととなっています。  この問題は、震災直後に復興のためには避けて通れない重要な課題として宇都宮日弁連会長がマスコミ等にアピールし、政府、国会等に働きかけてきたものであり、今回、漸く実現に向けた見通しがたち、日弁連として復興への重要な役割が果たせたことを嬉しく思います。
4.給費制問題7月13日法務省の検討会議(フォーラム)において、貸与制の問題の議論がなされました。日弁連からは丸島委員と川上明彦委員が意見を述べましたが、法務省からは弁護士登録5年目会員の平均所得が約1,100万円であることの報告がなされたそうです。このことが、多くの委員に驚きとともに、充分返済可能であり、貸与制が大勢であるとの佐々木毅座長の意見に連なったとの報告もありました。しかし、このアンケート報告は、わずか回収率が13%であることから、日弁連としては早急かつ正確なアンケートのやり直しをすることを決めて、直ちに作業に入りました。対象会員は、57期、62期です。次回のフォーラムは8月4日ですので、執行部としても全力をあげて、対象会員にはアンケートの作成報告の協力をお願いするつもりです。
5.夏は合宿の季節です。九弁連理事会も鹿児島合宿です。テーマは法曹人口問題、原発問題等です。生存、消費者、刑弁なども合宿をします。この合宿は若手会員が基礎的問題から応用まで幅広く研究し、かつ意見交換できる場として、大変重要な機会です。ここから委員会と弁護士会、日弁連を牽引していく会員が育っていきますので、多くの会員の参加を願っています。古湯合宿では、近くの渓流で2日続けて24cm、25cmのやまめをゲットした幸せな弁護士もおられました。

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福岡県弁護士会会長日記
平成23年度 会 長  吉 村 敏 幸(27期)
福岡家庭裁判所からお濠を隔てた南側に平和台陸上競技場があります。福岡高裁から西側へ約500mの場所です。福岡国際マラソンの開催場所でお馴染みです。
以前、ここでは春から秋にかけて中高生たちの競技会がよく開かれていました。赤いトラックが周囲の緑とフィールドの緑に浮かび上がり、美しいです。芝生の土堤に座って子どもたちの走る姿を見る。するとスタート直後からスッ、スーッと一瞬のうちに集団から抜け出し、あっという間に後続を引き離す選手がいます。この当時は筑紫女学園高校全盛の時代で、速いのは大抵筑女の学生で、圧倒的な差をつけての1位でした。
これが実業団レベルになると、圧勝はあまり見られないと思っていたところ、今年の日本陸上の女子ショートスプリンター福島千里選手はぶっちぎりの優勝でした。為末選手は全くダメ。先天的な能力に優れた選手であっても、努力不足や精神面の不調などから、好不調があるとか。
(今、ほとんどの陸上競技会は「博多の森」へ移っており、平和台ではあまり実施されないとか。残念です)
たまたま先日、東京帰り便飛行機の中で「一瞬の風になれ」(佐藤多佳子著・講談社文庫)を読みました。高校生の陸上競技部の400mリレーを中心とした物語でしたが、バランスの良い走法を作り上げることによって走力がかなりつくことを知りました。その努力のうえに、精神面の充実も伴うという。
私たちの執行部活動も、努力努力の二文字です。
最近は、移動の交通機関の中では女性作家の文庫ばかりを読んでいることに気づきました。男性とは異なる視点やスタイルが多く、あまり考えないで、スーッと読めるのが多いです。
会務報告です。
◆ 毎年、新執行部は3月から5月にかけては、会務引継ぎ、新執行部の課題設定、委員会人事、あいさつ回り、予算、定期総会など、課題山積で、怒涛の毎日を過ごすといわれます。
  今年は大震災と原発事故の対応がさらに重い課題となり、加えて、困難な状況下での給費制の運動があります。
  6月4日の法曹養成を考える市民集会は、給費制をメインテーマとして開催したところ、西日本新聞会館にて約350名の参加者があり(「ホウな話」を読んで参加したという一般市民もおられました)。また警固公園→国体道路→昭和通り→天神交差点→アクロス前公園へと至るパレードにも約130名の参加者が元気一杯で行進し、通りの一般市民のビラ受取りの反応も良く、市民から激励を受けたという会員の報告もありました。
  6月16日、17日、18日は日弁の理事会と法曹人口政策会議ですが、私は市丸前会長と高橋副会長の3名で、福岡県選出の全国会議員あて6月4日給費制市民集会の報告書を携えて、更なる協力依頼のあいさつ回りをしました。
  衆議院18名、参議院8名。早朝8時30分に集合し、10時までに足早に回ります。議員がいるところではじっくり話ができましたが、多くは勉強会や外出中のため、秘書に冊子を渡し「今年8月末日の検討会議(フォーラム)において給費制廃止の結論にならないよう」念押しの口上を申述します。
  時間が足りなかったのですが、市丸前会長は理事会昼食時間に一人で残り全議員を回っていただきました。頼もしい限りです。
  回った限りでは、議員や秘書は問題の所在を概ね理解しておられ、反応も大変良かったとの印象を受けました。
  この視点は、・給費制が戦後間もない昭和22年5月に統一修習制の採用とともに給費制が始まった歴史的経緯、・弁護士、弁護士会の公益性、・修習生の修習専念義務、・ロースクール生、修習生の置かれた現状、などです。これらから金持ちだけしか受け入れない貸与制は廃止すべきことを訴えていきました。
  しかし、フォーラムの第1回議事録(公開)を読む限りでは、桜井財務副大臣の感情的反発などが露わであり、歴史的経緯と現状に対する分析と評価が明確になされるか否かについて議論の行方が懸念されます。まだまだ10月末日まで運動を盛り上げなければなりません。
◆ 当会独自の問題としては、共済規定廃止の問題と、新会館建設に向けた取組みに取りかからなければなりません。
  共済規定については、前年度執行部が3月の臨時総会で成立を目指したものの、会員への周知が不足しているのではないかとの問題提起がなされたため、一旦撤回され、今年度へと引き継がれた課題です。
  現在、共済会費は毎月1,000円をいただいています。この積立金が現在約9,000万円近くに達しています。以前は各部会互助会において積立金から慶弔、退会等の事由に対して一定の金員が支払われてきたわけですが、平成8年4月1日から県弁全体として一本化しました。ところが、会員が1,000名を超えると保険業法の適用対象となることから、大きな単位会はこの規定の改廃を余儀なくされています。
  方法としては、・これまでの積立金の一定割合を返還するのか、・これを一般会計に繰り入れて基金的に運用するために、共済会費は受領せず、従前積立金のみから出損することとして、今後の払戻金を少額とする方式、などです。
  臨時総会で指摘された周知方法については、登録歴30年以上等、一定年限以上の登録会員を対象とした説明会を開催するか、またはアンケート方式とするか、いろいろと方法があると思われますが、ともかく今年中には当会会員数は1,000名を超えることが見込まれますので、早急に皆様にご提案したいと考えます。
◆ 新会館問題
  この問題は、会員の会費負担とも絡んでおり、広く皆様のご意見をお聞きしながら会館の機能と規模を判断していくことになります。
  月報6月号に山口雅司会員のアンケート分析報告がなされていますが、これを受けての新会館委員会の検討結果を踏まえて、秋ごろには一定のご提案を出さなければいけないと考えています。
  現在は、会員の活動が活発で部屋が足りずに執行部は困ることが多く、かといって賃貸も空きがなくて困ることが多いというのが実状です。
  皆様のご理解をよろしくお願いします。

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平成23年度福岡県弁護士会会長日記会 長吉 村 敏 幸(27期)
1、5月になると、風が新緑の薫りを運んできます。
  およそ20年程前であったか、6月上旬ごろ、筑後川下流の土堤下(いわゆる後背湿地という場所です)の家で友人の母親の「えつ」の手料理フルコースをご馳走になったことがありました。淡水と海水のまじりあう付近でとれるカタクチイワシ科の魚で、硬い小骨が多いために、小さくたたいて食べやすくするとか、弱い魚のためすぐ死んでしまい、新鮮さを保って刺身で食べるためには予め漁師に注文しておかなければ入手できない珍品、などとの話を聞きながら、筑後川の土堤を吹き渡ってくる風にえつと城島のお酒がうまく合い、ゆったりと時間を過ごしたことを思い出しました。  ところが、会長になった今、一日中部屋に閉じこもり、会議室で短い休憩時間を取って会席弁当を食べ、またその後会議に没頭するという日常が多くなりました。
2、日弁連理事会についてご紹介します。
1)日弁理事会は月1回開催木曜日 午前10時15分から10時45分まで常務理事会午前10時45分から17時30分ごろまで理事会午後7時から九弁連理事者懇談会金曜日 午前10時から17時30分ごろまで理事会土曜日 午前10時から15時30分ごろまで法曹人口政策会議全体会議(土曜日は偶数月のみ)のスケジュールです。全体で10cmくらいの厚さの資料が配布され、日弁連各委員会から種々の声明、決議文、意見書が提案され、質疑・応答・討論・議決されていきます。
2)5月理事会でも議題はてんこ盛りでした。私の印象に残った議題のうち、次をご紹介します。足利事件に関しての日弁連(公式)調査報告書です。これは、一審弁護人批判および一、二審裁判批判が厳しいです。この報告書をこのまま承認できるか否か、あらかじめ読了し、関係委員等に意見をお聞きして理事会に臨みます。この報告書は追而会員に配布されることになると思いますので、ぜひ皆様も読んでいただきたいと思います。弁護士が陥りやすい誤りと注意すべき点がきちんと指摘してあります。
3)菅家さんは、事件(1990年5月12日)の約1年半後(1991年12月1日)早朝に任意同行を受け、深夜に自白、翌日未明に逮捕。その3日後にF弁護人が弁護人選任届を提出。その6日後に接見。さらにその6日後に再接見。菅家さんは第1回公判前に足利事件以前に発生した別件2件の幼児誘拐殺人事件も自白。 1991年 12月12日 菅家さん足利事件で起訴 12月27日 G弁護士選任 1992年 1月15日 別件のうち1件は処分保留保釈 1月27日 菅家さんはこのころから断続的に「逮捕に納得できない」旨家族あて手紙を書く「自分は無実」 2月13日 足利事件で第1回公判「犯行を認める」 12月22日 第6回公判。家族への手紙が公開されて、菅家さんが犯行を否認(この間、F弁護人が否認撤回(自白)を勧める…後述のとおり) 1993年 1月28日 第7回公判。再び犯行を認める 2月   栃木弁護士会がF弁護人に支援を申し入れるもF氏拒絶 2月26日 別件2件とも不起訴処分 3月25日 第9回公判。結審 5月31日 菅家さんは弁護人あて無実の手紙を書く 6月14日 F弁護人弁論再開申立 6月24日 第10回公判。被告人質問で再度否認 7月7日 無期懲役判決 9月6日 L弁護人、M弁護人を選任 1994年 4月28日 控訴審第1回公判   ~     (控訴審は佐藤博史、神山哲史、岡慎一、上本忠雄ら4人の弁護人) 1996年 5月9日 第18回公判。控訴棄却(判例時報1585号136頁) 2000年 7月17日 上告棄却 2002年 12月20日 日弁連再審支援決定 12月25日 再審請求 2008年 2月13日 宇都宮地裁再審棄却 2月18日 即時抗告 12月24日 東京高裁DNA再鑑定採用 2009年 6月23日 東京高裁再審開始決定 2010年 3月26日 第7回公判。無罪判決以上が大まかな経過です。
4)日弁の調査報告書は、一審の第6回公判時点で菅家さんが犯行を否認した後の弁護人の対応を特に問題としました。  同書27頁・「F弁護人は、公判終了後、新聞記者に対し『信頼関係が崩された気分だ。24日に菅家被告と面会し、もう一度確かめる。それでも起訴事実を否認するなら、辞任もあり得る』(1992年(平成4年)12月23日付朝日新聞栃木版)などと述べた。そして、F弁護人は、同月24日、菅家さんと面会した。菅家さんは、同月25日に、裁判所あてに、犯行を再度認める内容の上申書を提出した。このころ、第6回公判で菅家さんが否認したという報道などを受けて、栃木県弁護士会がF弁護人に弁護活動支援の申入れを行なったが、F弁護人は自白事件であるから支援は不要であると断った」  第7回公判「1993年(平成5年)1月28日の第7回公判で、菅家さんが家族にあてた14通の手紙が証拠物として取り調べられた。しかし、被告人質問において、裁判所、検察官および弁護人から、手紙についての質問がなされた際、菅家さんは上申書に記載された内容のとおり、家族に心配をかけたくなかったので無実と書いたのだと述べた。菅家さんは再び、本件犯行を認める供述に転じた」  F弁護人は、なぜこんなことをしたのか。  私は、菅家さんが逮捕された当日の新聞報道を念のためにインターネットで見てみました。  報道内容は、*幼女誘拐殺人事件の犯人が逮捕された、*DNA鑑定は一千人に1人の確率でほぼ同一人物、*1年半に及ぶ地道な捜査、*14時間の取調べで自供、*自宅からは幼児のポルノ発見押収、という見出しです。  菅家さんの話によると、警察は自宅にやってくるなり肘鉄やひっくり返すなどの暴行を加えたようですが、最初の高裁判決は、警察の暴行の点は認定していません(判例時報1585号150頁)。  F弁護人は最初のDNA鑑定と自白の重みには抗しきれなかったのでしょうか。  また、さらには新聞報道やTVワイドショー等からくる連続幼児誘拐殺人事件の重圧。1件だけなら死刑回避との弁護方針なのか。それでも、第6回公判前に家族にあてた無実との真摯な訴えの手紙をなぜきちんと受け止めなかったのか。  疑問は残るものの、当時の状況におかれた弁護人として、マスコミなど大勢の敵を前にして、唯一の味方として必死に戦う弁護人魂こそが弁護士としての命であることを改めて自覚させられる調査報告書です。  この報告書は、裁判所批判もきちんとしています。  しかし、マスコミ批判はありませんでした(なお「自宅から幼児ポルノ等を押収」との報道も事実無根であったことが後に判明しました)。
5) 私は、当会刑事弁護委員会の船木、林、甲木委員らのご意見を受け、一審弁護人がなぜこのような対応を取ったのかについての背景事情をいくらかでも入れないと、弁護人の対応としては理解しがたい点がある旨、意見を述べたところ、その点は修正されることになりました。  少々くどくなりましたが、日弁連理事会報告の一コマでした。

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平成23年度 福岡県弁護士会 会 長吉 村 敏 幸(27期)
東北地方では四月に入っても被災の現場に雪が降っていました。寒い春の訪れでした。一方、福岡は四月も下旬になると暖かな陽光とともに新緑が芽吹き、一気に初夏の装いを始めました。1、私たち執行部の今年度の課題はたくさんありますが、そのうちの第一順位に対応を求められたテーマが、東日本大震災、原発事故を巡る復興支援活動でした。  4月2日に「東日本大震災復興支援対策本部」を立ち上げ、以下の活動を始めました。・ 被災移住の人たちを対象とする無料相談活動・ 中小事業者を対象とする「ひまわりほっとダイヤル」を通じての取引関連の無料相談活動・ 震災・原発事故に対応する研修活動・ 義援金募集・ 将来の現地派遣に向けた弁護士の応募体制づくりの検討  これらの諸活動は、多くの会員の皆様からの強い要請に基づくものでした。  義援金は4月23日現在149件、合計908万円が寄せられています。  この使途は会長一任とされていますが、執行部としては、かつての阪神淡路大震災当時の日弁連の方針を参考にしたうえで、大方の目安として半額を被災弁護士会、半額を被災者の方々へと考えています。  岩手、宮城、福島の東北三県の弁護士会では、多くの会員が事務所機能を喪失しながらも、自治体と連携して被災現場での無料法律相談活動を継続しており、資金的に困難であるということから、4月8日までに各三県の弁護士会から義援金の要請がありました。  そこで、同日時点の約半額分として、各県弁護士会あて各100万円、合計300万円を送金しました。  研修活動についても、・災害救助法、・災害弔慰金の支給に関する法律、・被災者生活再建支援制度に基づく救済、・雇用保険の失業等給付制度(労働者)、・雇用調整助成金制度(事業者)、・死亡認定制度、・その他労災認定にあたっての通達や生保・損保の対応策など、従来、一般的な法律相談では必要とされない法制度が多く、またメンタルサポートも重要であるため、弁護士としても人格面も含めた総合的な対応能力が試される現場になることが予想されます。  また、5月25日午後1時からホテルニューオータニにおいて、定期総会前に被災現場から2名の弁護士を招いての被災現場の状況と相談事例等の報告会を受け、当会として復興支援活動の具体策をさらに充実させたいと考えています。  ぜひ、多くの会員の皆様のご協力をお願いします。2、給費制の運動  前記のとおり、現在東北三県の弁護士会はボランティアで多くの被災者と向き合い、彼らとともに悩み、同時に権利擁護活動を行なっています。  阪神大震災のときも、この度の東日本大震災のときも、常に弁護士会は早い時期に救済体制をとり、国民とともにあり続けました。  もともと、司法修習生の給費制というのは、昭和22年の敗戦後の国の財政窮乏化において、採用された経緯があります。すなわち、昭和22年5月裁判所法の改正により、法曹養成を司法修習に一元化したことです。現下の国難ともいうべき時期にあっても、法曹を養い育成する義務は国にあります。より良い法曹を育てることは、ひいては国民全体の利益になることを訴えていくことが大事だと思います。  給費制の催しは6月4日土曜日西日本新聞会館において開催されます。多くの会員の参加をお願いします。3、私たち執行部は、すでに2月から前年度執行部の引き継ぎを受けつつ、助走を始めました。感じることは、業務の多さです。  会務の継続性は委員会の継続活動により保たれますが、1年任期の執行部は継続性を検証しつつ、各委員会間の調整役となり、また社会状況の変化に応じて新たな課題を見出して、委員会での議論をお願いしています。  今年度は、第一に国際委員会と中小企業支援センター委員会にまたがるテーマとして、国際取引問題を調査してみたいと思っています。  これは、とりわけ福岡の中小企業が対アジア方面に向けての取引において弁護士としてどのような関与が可能なのかについての勉強会を行なうというものです。  第二に現在、執行部では当会会員が任期付公務員として採用された場合において会費免除が可能とならないかどうかについての検討を行なっています。  これは、本来は所管委員会の検討を踏まえて常議員会等での議論を行なうべきことであると思いますが、5月の定期総会が目前に迫っていましたので、執行部において早急にご提案することとしました。  また第三に、会長として将来の執行力を考えたとき、業務の多さに対して現行の副会長体制のままでいいのかどうか、また副会長は多くは義務的に選出されつつも、さらに自ら多額の執行部活動費を拠出しながら、職務に専念しています。  私は、このような執行体制は改めるべきではないかと考えています。今年度、議論をお願いしたいと思います。4、私は会長になって、変わったこと、気を付けるようになったことがあります。  あらためて言うまでもないことですが、会長職は公人です。  そのため、身だしなみに気を配るようになりました。  以前は、ネクタイなど気に入ったものがあれば1年中同じものを、まさに擦り切れるまで使っていましたが、気を付けるようになりました。洋服や整髪も今まであまり気にしませんでしたが、いろいろな催しがあるので気を付けるようにしました。  最も気を付けるようにしたのは、言動です。できるだけ舌禍事件を起こさないように、慎重に配慮すべく心がけていきます。

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