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カテゴリー: 会長日記

会長日記

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平成24年度福岡県弁護士会 会長 古 賀 和 孝(38期)
 原稿締め切りにまだ間に合うということで、最初に記させていただきます。本年6月7日、当会春田久美子会員の法教育懸賞論文受賞を祝う会が多数の参加者を集めて催されました。この賞は法教育推進協議会、日本司法支援センター、社団法人商事法務研究会の共催で、法教育普及のための方策を研究した論文に対して与えられるものですが、春田会員は2年連続の受賞であり、しかも今回は法教育推進協議会賞という最高ランクの受賞です。ここのところ当会を取り巻く停滞した雰囲気を払拭し、元気づけるお祝い事といって良く、久しぶりに心躍りました。今後なお一層のご活躍を祈念し、また、当会の対外的評価の向上に寄与していただけるものと期待しております。
 さて、樹木の枝一杯に茂っている濃淡それぞれの葉が美しいこの季節、当会緒方研一会員が受傷されたとの第一報が入ったのは5月22日午前のことです。直ぐに、安否を確認するため種々情報収集に努めるものの、なかなか正確な情報に接することができません。当日、ご本人の安否確認ができたことからまずは安堵しましたが、会長声明を発するには事実関係がはっきりしないので当初は会長談話を発表することとし、なお情報収集に努めることとしました。被疑者は事件相手方として自ら代理人を選任した上で和解解決となった事件の相手方であり、刃物を持って殺傷行為に及んでいるとの情報を確認できたことから、5月29日法治国家にあっては紛争の解決のため暴力を持ってする一切の行為に断固反対するとの会長声明を発しました。
 過年度横浜弁護士会で発生した事件相手方による殺人事件はもとより、当会においても過去会員等に対する暴力行為が発生しています。弁護士業務を行う上では、否応なく相手方が存在することがあります。弁護士、弁護士会は断固このような卑劣な暴力に対しては一切屈服することなく戦って行かなければなりません。不穏な動きがあるときには是非とも所管委員会若しくは執行部に一報いただき、万全を期すよう心がけてください。会員各位におかれましても日常の警備にぬかりなきよう、既に配布済のマニュアルを再読していただければと存じます。
 翌5月23日は定期総会が開催され、その後の懇親会では当会の直面する課題、活動方針につきご挨拶させていただきました。福岡高裁長官から、裁判員裁判を例にとり、市民参加、市民目線を意識した司法制度の在り方について、また、九州経済産業局長からは、ダイナミックに変動する社会、経済情勢の中にあって活躍を期待される弁護士、弁護士会の目指すべき方向性のお話をいただきました。基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命としつつ、時代の流れに無関心であってはならず、過去の成功体験に安住せず、国民、社会から求められるところを誠実に受け止め、前向きに進んでいく必要があると再確認した次第です。5月10日、元会員が詐欺容疑で逮捕されるという前代未聞の事件が発生しましたが、毀損された信用を回復する処方箋も、ここにあると確信しています。

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平成24年度福岡県弁護士会 会 長 古 賀 和 孝(38期)
 
 弁護士会活動のアピールを兼ねる役員就任の挨拶回りが終わりに近づく頃から、各部会集会が始まり、役員はこれに出席することになります。本年度は4月18日の筑豊部会(27名)に始まり、20日の筑後部会(81名)、25日の福岡部会(722名)、そしてトリが北九州部会(157名)となりました(なお人数は平成24年5月10日時点のものです)。福岡部会を除く各部会集会は、高い参加率でしかも近時の新規登録者の増加を反映して、大変な盛り上がりです。筑豊部会は27名の会員の内、20数名の参加を得て開催されましたが、さながら若手の決起集会の様子で、法律相談センターの自立化、評議員会の復活など大いに議論されました。筑後部会でも多くの若手会員が参加し、先輩弁護士からこれまでの部会の活動経過が説明されるなどどこか新旧バトンタッチを意識したやり取りがあり、部会の統一性維持のための腐心されている様子が理解できました。北九州部会では、法律相談センターの活動、部会評議員会の持ち方などについて会員間で熱心な討議と共に、北九州部会独立の運動経緯、今後の方針が先達会員から詳細に説明されました。いずれの部会においても、集会後に懇親会が企画され、弁護士会職員を含め部会集会参加者以外の会員も加わり、大変な賑わいです。各部会のことは各部会で議論の上決定し、実践するという、部会制度の長所が良く理解できました。福岡部会はと言うと、正直なところ部会集会参加者も少なく、出席率は低調で一抹の寂しさを感じざるを得ません。1000名に到達しようとしている県弁会員の内、福岡市周辺偏在が如実に現れ、若手と先達との絆の希薄化を痛感したものです。部会制度の長所、利点を生かす部会運営について考えさせられる部会訪問でした。
 今年のゴールデンウィークの初日である4月28日は「秘密保全法に反対するシンポジウム」が、新緑まぶしく、大勢の行楽客でにぎわう福岡市のど真ん中にある天神ビル11階会議室で開催されました。こんな陽気の中で、何故に、連休初日に開催されるのか、と訝しく思われる会員もおられましょう。しかし、シンポジウムの詳細はこの月報にて報告がありますので、そちらに譲りますが、やはり開催しなければならない理由があるのです。一昨年9月の尖閣諸島沖での中国船と海上保安庁の巡視船衝突を契機として、突然、与野党相乗りで提案が予定された同法案は、規制の対象となる秘密の意義、指定方法、対象者、罰則いずれを見ても問題があります。幸い、法案提出は見送られたようですが安心はできません。パネリストとして出席いただいた外務省秘密漏洩事件の当事者である西山太吉氏の発言は強烈です。曰わく、秘密、秘密と言うが都合の良い秘密は当局が意識して漏洩することもある、しかし、秘密の根幹、本質は違法な隠蔽を要する秘密にあるのであって、法案の最終目標はこれに尽きると。そういえば尖閣事件報道の際、思い出すのは政府がそもそも情報収集を含め無策状態で、右往左往する姿を国内外に露見させたところにあります。自らの失策を露見させることを防止することが秘密保全法制定の発端とも言えます。旧ソ連のジョークで、政府中枢が馬鹿であると呼ばわるのは国家の存亡を危うくする極めて重要な国家機密の漏洩に当たる、よって厳しく処罰される、というものがあったように記憶しています。全く笑えない話です。
 5月1日、2日に開催される日弁理事会に出席するため、4月30日から上京しました。物見遊山で完成したばかりの東京スカイツリーをほんの近くから見物してきました。高いわ高いわ天をも突き通さんばかりで偉容を誇っています。是非とも上って関東一円を望んでみたいと思います。さて、日弁理事会では先に実施された2回目の会長選挙の結果を受けて、宇都宮前会長、山岸会長予定者の挨拶がありました。もともと旧知の仲ということで選挙戦を振り返っての話しは殆ど出ませんでした。選挙管理委員会による確定前であったため、今回の理事会までは宇都宮前会長が議長を務め、山岸会長予定者はオブザーバーとして傍聴されておりました。中途半端なキャスティングで、議論は東京スカイツリーには到底及ばない、見通しの良くないものに感じました。詳細は秋月副会長のご報告を。

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平成24年度福岡県弁護士会 会 長 古 賀 和 孝(38期)
例年行っている県弁役員交代に伴う挨拶回りを、今年は3月26日から4月半ばまでの予定で始めました。件数にして約160カ所、裁判所、検察庁の他、県内地方公共団体、国の出先機関、マスコミ、商工団体、財界、労働団体、NPOなど市民の生活に関わる団体、在福領事館を回ります。会長の私と、訪問計画に沿って数名の副会長、事務局長が挨拶回りグッズを持参して行きます。これだけの訪問先となると、訪問地域を考慮しながら挨拶回り先との日時の調整を同時並行的に行わなければなりませんので、担当の安原総務事務局長は複雑なパズルを解くに等しく、大変なご苦労をお掛けしております。しかしながら、訪問先との短い時間ではありますが、有意義な意見交換ができたときには爽やかな達成感もあり、ご苦労の賜としてなお一層感謝する次第です。
訪問先では、役員全員の交代を案内するのですが、弁護士会が1年の役員交代であることにつき2年乃至3年としても良いのではないかとのご意見を頂戴することがあります。1年の任期では協働した事業の実施状況や今後の展望を語るのに継続性が薄くなるとの懸念を述べられているものと思われます。このご意見に対しては、尤もなことではあるけれども、事務所を構える役員の本業に与える影響があることを笑顔をもってご説明し、続けて、1年という短い期間を認識して役員が全力で対応を取る決意であること、弁護士会活動は多数の委員会の継続的な活動に支えられているので、決して、継続性は損なわれないことをご説明しております。弁護士会への期待の大きさと言っても良いと思います。
挨拶回りに当たっては、弁護士会役員紹介書、弁護士会で行っている各種法律相談センターパンフレットの他、法教育案内、中小企業向け初回無料相談を記載したひまわりホットダイヤルのパンフレット、「福岡県弁護士会人権擁護活動2011」を持参します。相手先に合わせて、適宜使い分けています。今回の説明で、特に訪問先の強い関心が窺えるのは、「人権活動2011」です。弁護士は敷居が高い、弁護士、弁護士会はどのような具体的な活動をしているのか分からないとの意見を多く耳にしますが、弁護士会の人権擁護活動の説明をすると身を乗り出して聞いてくれるのです。私が冊子の1ページ目を開き、生存権を守る活動、子どもの権利を守る活動、両性の平等に関する活動、高齢者・障害者の権利を守る活動等々を行っており、これらの活動がほとんど福岡県弁護士会会員が負担する月額6万円超の会費に支えられていること、熱意ある会員が日常業務と併行してこれらを担当する委員会に所属して活動を行っており、公益活動は弁護士、弁護士会の使命であると説きます。子どもの権利に関わってきた橋山副会長や法教育に関わってきた甲木事務局長が同行してくれているときには、それぞれ二の矢、三の矢を速攻のごとく詳細に説明してくれます。
弁護士は敷居が高いとの認識を解消する方法の1つは、正に、この公益活動の充実・広報ではないかと一層想いを強くしているところです。感心しておられる訪問先に、つい弁護士は奥ゆかしく公益活動を行っているところをひけらかすことが苦手ですと言葉を添えますと、財源の確保・媒体の選択に苦慮するところは共通するのか、広報の難しさに会話は進みます。ひとえに委員会活動を行っていただいている会員の方々の弛まぬ活動に頭が下がる思いで一杯です。
本稿を作成している段階では予定している訪問先の6割ほどを回っています。ところで、去る4月12、13日の両日、第1回日弁連理事会が開催されましたが、理事会2日目の朝は九弁連管内の理事(会長兼務)が参集し、意見交換を行うことが慣例となっております。その席で、弁護士業務の周知、拡大に関し意見を求められ、前記したところをご説明しました。多数に上り、多方面に渡る訪問先、長期に及ぶ訪問期間つき、他会の理事から関心とともにそこまでやるかと言った驚嘆の声が上がりました。同席されていた当会選出市丸信敏日弁連副会長より、福岡県弁護士会会長は、トップセールスを行う重要な役割・責務がありますとの極めつけの補足がありました。この声に押されて、今一度、心を引き締めて、今後も予定されているところを精力的に訪問し、意見交換を行って参ります。また、就任挨拶終了後も、弁護士会活動に関わり、連携することにより市民の権利擁護の前進に繋がる関係団体については意見交換を重ねて行きたいと考えております。

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平成23年度 福岡県弁護士会 会長 吉 村 敏 幸(27期)

1.今年度最後の日記になります。ちょうど3月下旬のこの時期は、会館東口の沈丁花が甘い香りを放って陽春をたたえています。

執行部に入ると、たくさんの会員の方々が献身的に弁護士会のために粉骨砕身努力しておられることに驚きます。皆様に感謝申し上げます。

また、今年度実現できなかった各委員会の課題は、次年度の課題と引き継いでいかざるを得なかったことをお詫び申し上げます。

2.好きな本のこと

3月に入り、弁護士会の全県職員と現・新執行部との懇親会が開かれ、その折に女性職員から会長日記の本の話を読んでいること、とりわけ上橋奈緒子の「守り人」シリーズが好きで嬉しかったとのお話を伺うことができました。プライベートと会務メッセージとの調整に若干気を遣いながら日記を書いています。

子どもの絵本で気づくのは、大人が求めるのは人生に役立ちそうな、教育的・教養的なものになりがちですが、子どもが好きになるのは単純にかわいらしい、楽しい、面白い(驚きのあるもの)、絵がきれいなものです。

自分は子どものころ、動物ものがすきで、椋鳩十やシートンの動物記を好んで読んだ記憶がありました。ときどき読み返してみたいなと思っていたのですが、本の文庫棚には見当たらないので忘れていました。ところが、娘が小3になり、いろいろな本を漁っているうちに、児童書コーナーにはたくさんの椋鳩十とシートンシリーズがあることに気づきました。狼王ロボ、キザ耳坊や(うさぎ)、熊野犬、愛犬カヤなどの短編です。自分で読み返すつもりでも、心は親子の会話を求めているので、動物ものを好きになってほしくて読んであげます。動物ものは生きるために他の生きている動物を襲い、食らう行為の連続ですから残酷です。ここに人間の行為(狩り)が関わりあいます。生き延びるためには動物の生存本能、智恵が発揮され、相手の裏をかき、九死に一生を得ます。ギザ耳坊や(うさぎ)は前進した足跡をそのまま後進して戻り、途中で横道にステップして枯れ木の上に飛び乗り、あるいはイバラの茂みに隠れて逃げます。熊野犬の物語は、戦時中の食糧難を理由としてすべての飼い犬を殺した話で、犬は頭部を棒で殴打されて頭から血を流しながらも自宅にたどり着いて息絶えたという、涙なくしては読めない物語でした。

このような話を読むと、子どもはやはりギザ耳坊やのようなかわいらしい話は好きなようですが、凄惨・残酷な殺戮場面は苦手です。しかし、共通の話題ができて、一時の幸せを得ました。

3.この月報が出るころには、私たち執行部はすでに退任し、古賀和孝新会長の執行部がスタートしています。平成23年1月から3月、市丸前会長と引き継ぎ作業で併走しながらの助走期間を経て、早1年間が過ぎました。怒涛のような1年間でした。

記憶に残るのは、日弁連レベルでは給費制存続および少年事件全件国選付添人実現のための国会議員あての要請行動、法曹人口政策会議の取りまとめにあたっての議論の経過、死刑廃止についての意見書の採択、ひまわりホットダイヤル無料期間延長の可否の議論、裁判員裁判3年目検証の意見書採択、脱原発へ向けた意見書、などです。このように書いてくると、そのほかにも布川事件の弁護人の活動についての批判意見書や、公訴時効廃止に関しての捜査終結宣言なども含めて、たくさん思い出されてきます。

県弁レベルとしては、新会館建設へ向けての土地取得の総会議決と、北九州部会所属の会員の刑事事件と福岡部会所属会員に対する会立件を行なったことです。しかし、非違行為を疑わせる事例はほかにもあり、私たちとしては重大な関心をもって一般市民、依頼者の信頼を損ねたり、損害を与えたりすることのないように会員を監督し、指導していかなければなりません。しかしながら、弁護士会は強制捜査権を有していませんので、現実に非違行為の存否確定は困難です。弁護士会および日弁連に対する信頼と信用は、個々の弁護士に対する一般市民の信頼と信用を源泉としているものと理解しています。したがって、会員は依頼者の信頼を損ねることのないように、一層、密な経過報告と連絡、および(方針策定にあたっての)相談(打ち合わせ)を励行していただくようお願いします。/

4.3月19日の朝刊に、民主党は秘密保全法の今通常国会への提出を断念したとの記事が掲載されていました。

「新聞等マスコミ、日弁連などの反対が強く、党内にも反対論が強いため、消費税乗り切り策としての決断」との報道です。当会は既に平成24年1月の常議員会において、もしも秘密保全法案が国会に上呈された場合に備えて反対決議の承認をいただいていましたが、平成24年3月8日の常議員会に於いては、法案上呈前に反対決議をなすべきとの判断に基づいて承認をいただき、直ちに会長声明を出していました。この法案の問題点は、秘密の内容そのものが不明確であり、構成要件が特定できないことであり、共謀・共犯として一般市民も犯罪主体となりうる恐れがあることです。新聞報道によると、今通常国会への提出は断念されたとのことであっても、その以後に提出される恐れがあることから、当会としても反対運動は継続する必要があると思います。当会は、平成24年4月28日に秘密保全法反対の市民集会を開催する予定ですので、多くの会員のご参集をお願いします。

5.破産事件の減少

金融法務事情(1941号2012.3.10号91頁)によると、福岡地方裁判所における破産事件の運用状況が紹介されています。「新受事件数は平成17年から減少を続け、平成21年、22年とわずかに増加したが、平成23年は大幅に減少した。法人の件数は、この間大きな変動はないが、自然人の減少が大きい。平成23年自然人件数は平成22年の84%」とのことです。

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この意味は、結局、貸金業法の総量規制の効果が表れて来たものと前向きに評価することができると思います。現在、法人破産には大きな変動はないということですが、これは中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)のもとで、元金支払の繰り延べ猶予がなされている状況もあり、あと1年後にソフトランディングの政策がとられない場合は、一挙に事業者の支払困難事例が表面化してくる恐れもあり、貸し渋りや貸しはがし等、重大な懸念を抱いています。

6.タスキをつないで

私たち執行部の活動は駅伝がタスキをつないでいくのと同じような継続的運動です。

今年度の重点課題であった取調べの全過程可視化と少年の全件国選付添人制度は、いずれも実現には至りませんでした。しかし、まさにタスキをつないで次年度に託します。取調べ可視化の検察事案については、たとえば特捜事件、障害者事件等については、全過程の可視化へ向けた取組みが相当に進んでおり、すべての事件、全過程可視化へ向けての活動がさらに必要とされます。

これに対して、少年事件のほうは、年間約10億円の予算規模にて実現との国会議員の理解も相当に進んでおり、2~3年後には実現しそうな勢いであるとの感触です。給費制は一層運動を盛り上げる必要があります。

これらについてもさらに全会員のご支援をお願いします。

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平成23年度 福岡県弁護士会 会長 吉 村 敏 幸(27期)
1.冠雪の富士山と人口政策会議の議論の応酬
福岡では、2月中旬からずっと雨天続きでした。2月15日の夜から上京したところ、東京でも曇天が続いたのですが、やっと18日の土曜日から快晴になりました。
いよいよ、土曜日は法曹人口政策会議の第8回全体会議(今年度最終日)が四谷の主婦会館で開催されました。日弁連の正副会長、各地単位会会長や委員ら、110名ほどの人員の会議です。
冒頭、議長代行が「窓の外には富士山が見えますので、カーテンを開けました。議論疲れの折は富士山をご覧ください」と発言されました。昼食の後、冠雪の富士山をくっきりとみることができました。なぜかしら、心が浮き立ちます。
ところが、その後の会議は激しい議論のやりとりが続きます。当会は司法試験合格者数について「段階的1500人説」を採択していましたので、日弁連案の「まず1500人説」に大筋賛成であり、34会は日弁連案に賛成でした。しかし、12ないし16会は「1000人説」の意見を提言していましたので、これをどのように日弁連案に取り入れてまとめるのかが議論になりました。しかし、現状2000人合格者に対して1500人へと減員することすら困難が予想されるのに、一挙に1000人へと減員を提言することは到底現実的な対応とは考えられず、私は「1000人説は単なる量的減員ではなく、質が異なる。よって1000人説は提言の趣旨の中に入れるべきではない。せめて、入れるならば理由中である」と述べました。この見解は、静岡、和歌山、京都、沖縄、一弁等の会長も同旨であり、激しい議論の応酬があり、結局最終的には多数決をとって、日弁連の原案賛成多数(賛成76・反対28・棄権5)により採択されました。これが、人口政策会議の最終とりまとめとして3月の日弁理事会に正式提案されることになりました。
2.未成年後見人の責任軽減の提言
2月16日の日弁理事会において、子どもの権利委員会から「未成年後見人の業務は身上監護と財産管理があるが、身上監護については被後見人の不法行為に基づく損害賠償責任が過大であるために、受け皿となる弁護士人員が準備できないでいる。よって、未成年後見制度を改正して、この責任の軽減を求める」という趣旨の意見書の提案が出され、採択されました。
昨年の東日本大震災により、両親のうちどちらか一方の親を亡くした子ども(ただし18歳未満)は、岩手、宮城、福島の被災三県で1,295人(2011年7月29日現在)、両親を亡くした子ども、あるいは一人親を亡くした子ども(いわゆる震災孤児)は229人(同日現在)といわれているところ、弁護士も未成年後見人になっているとのことでした。
岩手県弁護士会の会長は「自分も未成年後見人になっている。子どもは施設に入っているが、ときどき会って身上監護をしている」との発言をされました。
3.「養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表」に対する意見書(案)について
2003年3月、東京・大阪養育費等研究会が、判例タイムズ1111号で発表した「簡易迅速な養育費の算定をめざして―養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案」(以下「研究会提案」といいます)は、弁護士ならば皆様ご存知のことでしょう。
この算定表は、その目標どおりに迅速な算定という結果をもたらし、実務に定着しました。しかし、その表の根拠となった計算方法は多々問題点が指摘されていました。つまり、算定される養育費額が、最低生活水準にすら満たない事案を多数生み出し、母子家庭の貧困を固定又は押し進め、特に子どもの教育環境を両親家庭に比して著しく低い水準に固定化し、事案によっては離婚を契機に就学を断念するなど教育の機会を失わせる酷な結果をもたらす一因となっていたのです。この意見書(案)が提案され、3月理事会で審議されることになりました。以下、意見書(案)を抜粋します。
「1年間の間に両親の離婚を経験する未成年子は、252,617人(2010年人口動態統計)であり、この10年、この数字は横ばいの状況にある。2011年の年間出産数は、約106万人であり減少の一途をたどっているから、すべての子の4分の1近くが両親の離婚にさらされる傾向にあるといっても過言ではない。成人化に20年を要することから、単純に20年を乗ずると、両親が離婚している未成年子が約500万人存在することとなる。
一方、その約8割は母が親権者となっており、この点もここ10年変化がない(同人口動態統計)。しかし、その母子家庭の平均就労収入は、171万円であり、全世帯の平均年収564万円の3割にすぎない(2006年度全国母子世帯調査)。未成年子を監護する母子世帯の2010年の貧困率は48%にも及んでおり(国立社会保障・人口問題研究所)、養育費額の公正な算定は、多くの子の成長発達の保障、子の福祉の増進に不可欠であるだけでなく、教育力は国の力の基本となるものであることを考慮すると日本の将来を決するほど重要なものといえる。そこで、当連合会は、次のとおり提言する。
1 当連合会を含め、裁判所及び厚生労働省等の養育費実務関係機関は、子どもの成長発達を保障する視点を盛り込んだ、研究会提案に変わる新たな算定方式・算定表を作成すること。
2 養育費等に関わる実務関係者は、研究会提案の簡易算定方式・簡易算定表の仕組みと問題点を認識し、新たな算定方式・算定表が作成されるまでの間、研究会提案の簡易算定表を慎重に使用するものとし、同簡易算定方式の考え方(双方の総収入について、標準化した公租公課・職業費・特別経費を控除して、各基礎収入を算出しその合計額について、指数化した生活費指数を用いて按分する考え方)を流用する場合には、子どもの福祉の視点を踏まえ、少なくとも公租公課を可能な限り実額認定し、特別経費を控除しないなどの修正を加えて算定すること。
3 新たな算定方式・算定表が作成されるまでの間、研究会提案の簡易算定方式・簡易算定表の問題点について、裁判所及び養育費相談支援センター等厚生労働省の事業等での周知を図ること。」
私も上記提言の趣旨は実感として抱いていたために、早急に当会の両性の平等委員会において算定表の修正点についての検討をお願いし、会員に使い勝手のよい提案をしていただきたいと願っています。
4.帰途の日本アルプス
2月19日日曜日の午後から、県弁会館で新旧執行部の引継会があるため、早朝、帰福しました。飛行機から見る富士山は頭を雲の上に出し、あたりを睥睨しています。
意外にも中央アルプスの峻険な稜線にはわずかな雪しか残っておらず、太陽の光に照らされて美しいです。ところが、中国地方、九州は厚い雲に覆われていました。前日まで大雪が降ったとのことでした。
あと1か月余で会長職も終わりとなります。

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