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「共通番号法」制定に反対する声明

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「共通番号法」制定に反対する声明
 今国会において、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」案(いわゆる「共通番号法」案。以下、「本法案」という。)が提出され、昨日衆議院で可決された。
 本法案は、全ての国民と外国人住民に対して、社会保障と税の分野で共通に利用する識別番号を付けて、これらの分野の個人データ(納税情報、健康保険情報、年金情報等)を、情報提供ネットワークシステムを通じて確実に名寄せ・統合(データマッチング)することを可能にする制度(社会保障・税共通番号制度)を創設しようとするものである。
 共通番号が用いられる行政分野(年金、労働保険、健康保険、生活保護、介護保険、税務等)の情報は、私生活全般に及び、その中には、障害、病気、貧困、無資力などの極めてセンシティブな情報も含まれている。
 共通番号制度により、これらの情報が名寄せ・統合されると、収集・蓄積された個人の情報が次々と番号で特定され、連結されていくことで、その人物の行動全般を把握し、分析することが可能となり、プライバシー権を侵害するもので、国家による国民監視の道具として利用されるおそれがある。
昨年廃案となった同名の旧法案に対し、2012年(平成24年)8月7日に当会は反対する会長声明を表明したが、上記問題点は、本法案にそのまま引き継がれている。
本法案は、旧法案における危険性をさらに増大させており、到底容認できない。
 すなわち、「番号の利用に関する施策の推進」を基本理念として掲げ(3条2項ないし4項)、法律の施行後3年を目途として番号の利用拡大を検討する(附則6条1項)など、官民を通じて、社会保障や税にとどまらない番号の利用拡大を強く指向しており、プライバシー侵害の危険は著しく大きい。個人の収入・資産情報が漏えいしたり、アメリカで1年あたり1兆円以上といわれるなりすまし犯罪による財産的損害が我が国でも増大するおそれも大きい。
そもそも共通番号制度は、手段にすぎず、実体法である税法や社会福祉立法がない限り、公平な税制や充実した福祉が実現しないことは以前から政府も認めてきた。しかも、旧法案で採用するとされていた給付付き税額控除制度は、現政権は採用しない方針であり、共通番号の必要性はますます乏しくなっている。
 本法案は、立法目的として、法1条で、行政効率化や利便性の向上を掲げながら、2000億円もの導入コストによって得られる効果について、何らの説明も行っていない。住基ネット導入に際しては、試算が示されたが実現せず、巨額な税金の無駄遣いに終わったばかりであるにもかかわらず、このまま導入を急ぐ必要性は全く示されていない。
従って、当会は、従前から表明しているとおり、国家による国民監視のシステムにつながる本法案に反対し、参議院において否決され、廃案とされることを求める。
              2013年(平成25年)5月10日
               福岡県弁護士会会長 橋 本 千 尋

死刑執行に関する会長声明

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死刑執行に関する会長声明
1 本日,東京拘置所において,2名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
  本年2月21日に3名の死刑執行がなされたばかりであり,わずか2ヶ月後に死刑執行が強行されたことになる。
2 我が国では,過去において,4つの死刑確定事件(いわゆる免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件)について再審無罪が確定している。また,2010年(平成22年)3月には足利事件について,2011年(平成23年)5月には布川事件について,いずれも無期懲役刑が確定した受刑者に対する再審無罪判決が言い渡されている。これらの過去の実例が示すとおり,死刑判決を含む重大事件において誤判の可能性が存在することは客観的な事実である。
  そして,今回死刑執行されたいずれの死刑確定者も上告審まで事実誤認及び量刑不当を理由に争い,うち1名は2009年(平成21年)6月に,もう1名は2011年(平成23年)12月にそれぞれ死刑確定しているが,死刑確定から短期間で死刑執行している点も冤罪・誤判の観点から極めて問題があると言わざるを得ない。
3 しかも,我が国の死刑確定者は,国際人権(自由権)規約,国連決議に違反した状態におかれているというべきであり,特に,過酷な面会・通信の制限は,死刑確定者の再審請求,恩赦出願などの権利行使にとって大きな妨げとなっている。この間,2007年(平成19年),刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律が施行されたが,未だに死刑確定者と再審弁護人との接見に施設職員の立ち会いが付されるなど,死刑確定者の権利行使が十分に保障されているとは言い難く,このような状況の下で死刑が執行されることには大きな問題があるといわなければならない。
4 日本弁護士連合会は,本年2月12日,谷垣法務大臣に対し,「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し,死刑の執行を停止するとともに,死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を直ちに講じることを求める要望書」を提出して,死刑制度に関する当面の検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し,死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し,死刑制度に関する世界の情勢について調査のうえ,調査結果と議論に基づき,今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと,そのような議論が尽くされるまでの間,死刑の執行を停止することを改めて求めたところであった。
  この要請の直後である本年2月21日に死刑執行がなされた際も,日弁連及び当会は,死刑執行に強く抗議するとともに,一切の死刑執行を停止するよう求めていたのであり,この要請を再度無視した今回の執行は到底容認できない。
5 当会としては改めて政府に対し強く抗議の意思を表明するとともに,今後,死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ,それに基づいた施策が実施されるまで,一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。
                    2013年(平成25年)4月26日
                    福岡県弁護士会会長 橋 本 千 尋

公契約法及び公契約条例の制定を求める会長声明

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公契約法及び公契約条例の制定を求める会長声明
平成25年3月4日
福岡県弁護士会会長 古 賀 和 孝
第1 声明の趣旨
当会は,福岡県内の各地方自治体に対し,公契約により民間の企業や団体が受注した業務に従事する労働者の労働条件の適性を確保することを目的とする条例(公契約条例)を制定すること,ならびに国に対し,これら趣旨を踏まえた法律(公契約法)を制定し,公契約条例の制定へ向け,各地方自治体を支援することを求める。
第2 意見の理由
1 公契約をめぐる労働者がおかれた状況
(1)公契約とは,国や地方自治体が行政目的を達成するために,公共工事の発注や様々な事業(サービス,物の調達等)を民間企業などに発注・委託する契約をいうところ,近年,行政改革ならびに規制緩和の下,あらゆる部門にわたって民間委託・発注等が増加しており,そのため,実に広範囲の事業を対象とするようになってきている。
一方,公契約は,談合等を防止する必要から,多くの場合,受注先企業や団体が競争入札等で決定されており,最近の不況ならびに国および地方自治体の財政難の下,効率化やコストダウンが強く求められ,とりわけ地方自治体における発注工事では,競争入札参加企業が激増し,低コスト競争が激しさを増している。
(2)このような公契約は,受注先企業・団体のみならず,その傘下に多くの下請・孫請の企業が連なる重層下請構造となっているケースが多く,こうした重層下請構造の中で,低コスト競争は,公契約に従事する労働者の労働条件の悪化を招いている。すなわち,元請・下請・孫請という重層構造の中で,下請や孫請は受注価格が削減され,その受注企業の経営を圧迫し,その業務に直接従事する労働者に低賃金が押しつけられる状況にある。とりわけ,末端労働者の一人あたり労務単価が当該地域の最低賃金を下回る事態が出現したり,末端労働者に賃金が支払われないまま,受注企業が経営破綻を引き起こして,賃金支払が不能となるなどの事例も指摘されている。
2 公契約法・公契約条例制定の意義
(1)国及び地方自治体は,法治主義の下,労働基準法等の法令の遵守が求められることはいうまでもないが,それにとどまらず,貧困を撲滅し,生存権を擁護するという憲法上の責務を担っているというべきである。
そのため,公契約実施にあたっては,当該事業に従事する労働者の労働条件が労働基準法等の法令に適合することはもちろん,公契約に従事する労働者の労働条件の適正を確保し,ひいては生存権を擁護しなければならないというべきである。
(2)また,公契約に従事する労働者の労働条件は,今や国民生活のあらゆる部面に広がっていることから,その基準が民間一般の労働条件にも広く影響する状況となっており,そのため公契約に従事する労働者の労働条件が劣悪であることは,民間一般の労働条件の基準を引き下げてしまう効果を押し及ぼすことにもつながっている。今や「官製ワーキングプア」とも呼ばれる,こうした状況を一刻も早く是正することが求められている。
(3)「官製ワーキングプア」を是正していくとりくみとして,入札にあたって最低制限価格を設定するとりくみもすでに行われているところもあるが,前述した重層下請構造の中では,元請の利益確保のために,下請や孫請は受注価格が削減され,実際に現場で業務に従事している労働者に低賃金が押しつけられるという問題を解決するには,最低制限価格を設定するだけでは足りず,そのため,公契約法や公契約条例によって,直接受注企業(元請)の責任を明確にすることが求められているといわなければならない。
3 公契約法・公契約条例の現状
(1)すでにわが国でも,千葉県野田市が平成21年9月に公契約条例を全会一致で成立させたことに始まり,神奈川県川崎市,東京都多摩市,神奈川県相模原市などが,相次いで公契約条例を制定しているところである。
特に,千葉県野田市では公契約条例施行後,清掃委託業務に従事した労働者の賃金が1時間あたり101円上昇するといった効果が報告されるなど,確実にその地域の労働者の賃金水準の引き上げに寄与している。
(2)ILO94号「公契約における労働条項に関する条約」は,入札する企業間で人件費が競争の材料にされている現状を一掃するため,すべての入札者に最低基準を守ることを義務づけ,公契約によって,賃金や労働条件に下方圧力がかかることのないよう,公契約に基準条項を確実に盛り込ませることを目的としている。
わが国は当該条約に批准していないものの,すでに世界中で60カ国を超える国々が批准しており,フランス,アメリカ,イギリス,ドイツなどでは,国レベルでの公契約規整を行っている。
4 まとめ
当会では,昨年10月より,県下19箇所で開設している法律相談センターに寄せられる労働者側の労働相談を全件無料化するとりくみを始めた。
当該とりくみを始めて,当会に寄せられる毎月の労働相談件数が3倍にも上る状況となっているが,このことは,いかに労働者が困難な状況に置かれているかを示すものである。
公契約に従事する労働者の現状は,上記に見たとおり,生存権を侵害された状況にあることから,当会は,ここに公契約法及び公契約条例の制定を求めるものである。
以上

死刑執行に関する会長声明

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死刑執行に関する会長声明
1 本日,東京,名古屋及び大阪の各拘置所において,それぞれ1名の死刑確定者に対する死刑が執行された。
  自民党政権の復活後初めて,かつ,3名もの死刑確定者に対する執行という極めて遺憾な事態である。
2 我が国では,過去,4つの死刑確定事件(いわゆる免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件)について再審無罪が確定している。また,2010年(平成22年)3月には足利事件について,2011年(平成23年)5月には布川事件について,いずれも無期懲役刑が確定した受刑者に対する再審無罪判決が言い渡されている。これらの実例が示すとおり,死刑判決を含む重大事件にも誤判の可能性が存在することは客観的な事実である。
3 日本弁護士連合会は,本年2月12日,谷垣法務大臣に対し,「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し,死刑の執行を停止するとともに,死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要望書」を提出して,死刑制度に関する当面の検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し,死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し,死刑制度に関する世界の情勢について調査のうえ,調査結果と議論に基づき,今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと,そのような議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を停止すること等を求めていた。その直後,この要請を無視してなされた死刑執行は,到底容認することができない。
4 死刑の廃止は国際的な趨勢であり,昨年12月20日には,国連総会において,全ての死刑存続国に対し,死刑廃止を視野に執行を停止するよう求める決議が,過去最多の111か国の賛成多数で採択された。こうした状況において,死刑制度を存置し,かつ死刑の執行を繰り返す日本の姿勢は際立っており,日本政府は,国連関係機関からも繰り返し,死刑の執行を停止し,死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう勧告を受けてきた。昨年10月31日に実施された国連人権理事会作業部会による日本の人権状況に対する第2回目の普遍的定期審査(UPR)においても,24カ国もの国が,日本の死刑制度及びその運用の変更を求めて勧告を行っており,これは,日本が抱える最大の人権問題の一つが,死刑であることを顕著に示している。
  しかも,今回執行された3名のうち,2名は,自ら控訴を取り下げたことにより死刑が確定しており,国連条約期間等から繰り返し求められている必要的上訴の要請を充たしていない。また,他の1名は,第一審の無期懲役刑判決が検察官の控訴によって覆されており,審理に携わった職業裁判官の間でも量刑判断が分かれた事案である。谷垣法務大臣は,死刑制度の運用に当たっては,「十分慎重に考える」旨表明してきたが,就任してから僅か2か月足らずで,はたして真に慎重な検討がなされたか否か,大いに疑問である。
5 当会は,改めて政府に対し強く抗議の意思を表明するとともに,今後,死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ,それに基づいた施策が実施されるまで,一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。
                         2013年(平成25年)2月21日
                     福岡県弁護士会会長 古 賀 和 孝

投票価値の較差是正を求める会長声明

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2012年10月17日、最高裁判所大法廷は、2009年8月30日施行の衆議院議員総選挙に続き、2010年7月11日施行の参議院議員通常選挙においても、各選挙区間で最大5倍の投票価値の較差が生じたことについて、「投票価値の不均衡は、投票価値の平等の重要性に照らしてもはや看過し得ない程度に達しており、これを正当化すべき特別の理由も見いだせない以上、違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態に至っていたというほかはない」との判決を言い渡した。
そして、衆議院と参議院の権限及び議員の任期等における差異は、それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって、国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところにあるのであるから、参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難いとした上で、現行の仕組みに依拠する結果、その間の人口較差に起因して投票価値の大きな不平等状態が長期にわたって継続していると認められる状況の下では、上記仕組み自体を見直す必要があるとして、違憲の宣言にとどまらず、より積極的に現行の選挙制度の仕組み自体の見直しをも要請している。
そもそも、投票価値の平等、即ち議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等は、憲法上の要請であり(憲法14条1項、44条)、
「国権の最高機関」(憲法41条)たる国会に国民の意思を的確に反映するための重要な条件であって、議会制民主主義、ひいては国民主権を支える要である。
一連の最高裁判所判決は、遅々として進まない投票価値の較差是正をめぐる選挙区割にメスを入れたといってよい。
特に、田原睦夫裁判官の反対意見において指摘されているように、福岡県は議員一人あたりの選挙人数の較差が4倍を超える5選挙区のうちのひとつである。当会にとって、今回の最高裁判所判決は他県にも増して意義深いものである。
当会は、今回の最高裁判所判決を重く受け止め、国会に対し、速やかに公職選挙法等関連法を改正し、衆議院議員総選挙のみならず参議院議員通常選挙における投票価値の較差を是正するための措置をとることを強く求めるものである。

2012年(平成24年)11月 9日
福岡県弁護士会会長  古賀和孝

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