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改めて生活保護法改正法案の廃案を求める会長声明

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2013年(平成25年)11月13日、「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下「新改正案」という。)が参議院本会議で可決された。

当会は、2013年(平成25年)6月7日、5月17日に閣議決定された「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下「旧改正案」という。)について、「生活保護法改正法案の廃案を求める会長声明」を公表し、厳格な要式行為の追及による生活保護申請の事実上の拒否(いわゆる「水際作戦」)を合法化し、単なる優先関係に過ぎない扶養義務の履行を迫ることによる保護申請への萎縮化を招来するという看過しがたい重大な問題があることから、その廃案を求め、旧改正案については、批判の高まりの中2013年(平成25年)6月26日の第183回通常国会の閉会に伴い廃案となったが、今国会において、再度審議されているところである。

審議の過程において政府は、申請の際に申請書及び添付書類の提出を求める改正法24条については、(1)従前の運用を変更するものではなく、申請書及び添付書類の提出は従来どおり申請の要件ではない、(2)福祉事務所等が申請書を交付しない場合もただし書の「特別の事情」に該当する、(3)給与明細等の添付書類は可能な範囲で提出すればよく、紛失等で添付できない場合もただし書の「特別の事情」に該当する旨答弁した。また、扶養義務者に対する通知義務の創設や調査権限の拡充を定めた改正法24条8項、28条及び29条については、明らかに扶養が可能な極めて限定的な場合に限る趣旨である旨答弁し、以上両趣旨を厚生労働省令等に明記し、保護行政の現場に周知する旨繰り返し答弁してきた。

しかし、改正法の法文が一人歩きし、違法な「水際作戦」がこれまで以上に、助長、誘発される危険性が払拭されたとは到底言い難い。当会では、2006年(平成18年)、北九州市で孤独死していた56歳の独居男性が、生前二度にわたって申請意思を明確に表示していたにもかかわらず、福祉事務所から、子どもに援助してもらうようにと言われて申請を違法に拒まれていた事件も起きている。このような改正法の施行によって、生活保護の利用が抑制され、餓死・孤立死・自殺等の悲劇が増加する事態が強く懸念される。

当会は、憲法上保障された生存権が現実に市民に保障される社会となることをめざし、平成21年度から生存権の擁護と支援のための緊急対策本部を設け、多数の会員が登録する「生活保護支援システム」によって生活保護申請同行など生活保護法の適法な運用を求める活動を行ってきた。当会の立場からは、保護申請権ひいては生存権を侵害するおそれの大きい改正法案は到底容認することができない。

よって、当会は、改正法案について即時の廃案を改めて求めるものである。

2013年(平成25年)11月22日

福岡県弁護士会
会長 橋本 千尋

福岡拘置所小倉拘置支所の建て替えに関する要望書

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平成25年11月21日

内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
法務大臣 谷垣 禎一 殿
法務省矯正局長 西田  博 殿
法務省福岡矯正管区長 横尾 邦彦 殿

福岡県弁護士会
会 長 橋 本 千 尋
福岡県弁護士会北九州部会
部会長 荒 牧 啓 一

福岡拘置所小倉拘置支所の建て替えに関する要望書

第1 はじめに

1 現在の福岡拘置所小倉拘置支所(以下,「小倉拘置支所」という。)は,監獄法(施行日,明治41年10月1日)に基づいて昭和35年に建築された施設であり,既に築後50年以上を経過しているため,建物や施設の老朽化は著しく,未設拘禁者の無罪推定の原則や基本的人権を保障するにふさわしい施設とは言えず,未決拘禁者の防御権や弁護人の弁護権にも支障をきたすという事態が生じている。

2 小倉拘置支所建て替え後の新拘置所をどのような施設にするかは,未決拘禁者の基本的人権や防御権の保障,弁護人の弁護権の保障と密接に関連する。

すなわち,未決拘禁者は,無罪推定を受ける者であり,刑事手続のために身体拘束される他は,一般市民と同様の立場にあることから,未決拘禁者には,拘置所内においても,できる限り一般市民と同様の生活が保障されなければならない。そのためには,新拘置所においては,未決拘禁者の人格を尊重した待遇を行い,その心情の安定を図る必要があり,十分な人的・物的設備を整える必要がある。

また,新拘置所においては,未決拘禁者の防御権や弁護人の弁護権が侵害されることがあってはならず,未決拘禁者の防御権や弁護人の弁護権に十分配慮された施設にする必要がある。

3 そして,新拘置所は,憲法及び刑事訴訟法の精神にふさわしい,現在の人権基準を十分に満たすような施設とする必要があることは言うまでもないが,新拘置所は少なくとも半世紀は利用されることから,単に現在の人権水準を満たす施設とするだけでは不十分であり,50年先の人権水準をも見据えた最先端の施設を築く必要がある。

そのためには,現在軽視されている未決拘禁者の基本的人権の保障に配慮することは当然であるが,それにとどまらず,面会に来る一般市民の利便性や,新拘置所の周辺環境との調和,環境問題への配慮等も盛り込んだ施設とすることが必要である。

4 そこで,当会は,新拘置所を建築するにあたって,無罪の推定を受ける未決拘禁者の基本的人権や防御権,弁護人の弁護権に最大限配慮した施設にするともに,一般市民の利便性,地域との調和,環境問題等にも十分配慮された新拘置所を建築することを強く要望する次第であり,そのために必要と考える具体的な要望事項を以下において述べる。

第2 要望事項

1 未決拘禁者の基本的人権保障・生活環境の改善について

(1)未決拘禁者と既決囚の居住スペースの区別

未決拘禁者と既決囚の居住スペースを別の階にする等,未決と既決を明確に区別する措置を講じることを要望する。

未決拘禁者には無罪推定の原則が及ぶことから,既に有罪判決を受けた既決囚とは明確に区別する必要があるため,未決拘禁者と既決囚の居住スペースを別の階にする等,居住スペースを明確に区別する措置を講じることを求める。

(1)未決拘禁者の居住スペース内の環境について

未決拘禁者の居住スペース内の日当たりと風通しを十分確保するよう配慮し,また,居住スペース内から自然環境等,外の景色が見えるように配慮することを要望する。

未決拘禁者の基本的人権を保障し,その心情の安定を図るためには,居住スペース内の日当たりや風通し等の環境に十分に配慮する必要がある。未決拘禁者は,刑事裁判を控えながら,一日の大半の時間を狭い居住スペース内で過ごすのであり,その環境が未決拘禁者の心情に与える影響は大きい。窓の外に,木々草花等の自然や周囲の風景を見ることができるだけでも,未決拘禁者の社会からの隔絶感・疎外感を和らげることができ,その心情の安定をもたらすことができるのである。

(3)未決拘禁者の居住スペースの広さ等について

決拘禁者は原則として独居房に収容すべきであり,そのために独居房を増設することを要望する。

現在の未決拘禁者の居住スペースは狭すぎるため,現状よりも広くすることを要望する。

未決拘禁者は無罪推定の原則の適用を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の生活ができるように配慮されなければならない。未決拘禁者が,他者と同室で生活をする場合には,著しいストレスを強いることとなるため,原則として独居房に収容すべきであり,そのためには,独居房の増設が必要である。

また,現在の居住スペースは,未決拘禁者の生活環境として十分な広さが確保されているとは言えないため,無罪推定を受ける未決拘禁者の地位にふさわしい一定の広さを確保することを求める。

(4)未決拘禁者の居住スペース内の設備(冷暖房設備・トイレ)について

冷暖房設備を設置し,個々の居住スペース内において温度管理  ができるようにすることを要望する。

居住スペース内のトイレについて,看守から見えない位置に個室のトイレを設置するとともに,洋式(ウォシュレット付)にすることを要望する。

未決拘禁者は無罪推定を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の生活ができるように配慮すべきであるから,冷暖房設備を設置し,個々の居住スペース内において温度管理ができるようにすべきである。

また,現在の居住スペース内のトイレは,看守から見える位置に壁等で仕切られることなく設置されているため,未決拘禁者のプライバシーや羞恥心が著しく侵害されており,居住スペース内に個室のトイレを設置することを要望する。個室であっても,壁上部を透明にするなどして,看守から上半身が確認できるようにすれば,未決拘禁者の監視においても特に問題が生じることはないはずである

さらに,衛生上の観点からは,トイレは,和式でなく洋式(ウォシュレット付)の方が望ましい。

(5)未決拘禁者の心情の安定を図るための各種施設について

未決拘禁者が一定の範囲内を自由に行動して,他者とのコミュニケーションを図ることができるよう,テレビ等の設備を設けた談話室を設置することを要望する。

未決拘禁者が自由に読書ができるための図書館を設置するとともに,未決拘禁者が他者と一緒に食事するための食堂を設置することを要望する。

未決拘禁者は無罪推定を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の生活ができるように配慮すべきである。

我々一般市民は,昼夜とも一人で生活をするのではなく,昼間は外で活動して他者とのコミュニケーションを図り,夜には帰宅して就寝するという生活を送っているところ,未決拘禁者は,ほぼ終日居住スペース内に収容され,誰ともコミュニケーションをとれない状態にあるというのは,未決拘禁者に大きな精神的ストレスを与える。

そこで,新拘置所においては,未決拘禁者が他者とのコミュニケーションを図ることを可能にするためのテレビ等がある談話室を設置することを求める。また,未決拘禁者が本を自由に探せる図書館を設置して,一般市民と同様の権利を保障する必要がある。

さらに,現在,未決拘禁者は狭い居室内で食事をとらざるを得ない状況であるが,広い場所で他者と会話しながら食事をとる方が未決拘禁者の心情の安定に資することから,食堂を設置し,そこで食事をとることを可能にすべきである。

(6)運動スペースについて

現在の運動スペースは狭すぎるため,現状よりも広くすることを要望する。雨天時でも運動を可能とすべく,屋上運動スペースには手動の開閉式の屋根を設置するとともに,複数の未決拘禁者が同時に運動できる十分な広さを持った体育館のような屋内運動スペースを設置することを要望する。

未決拘禁者は無罪推定を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の生活ができるように配慮すべきである。

現在の小倉拘置支所の運動スペースはあまりに狭く,可能な運動も限られている状況であり,未決拘禁者にとって十分な運動環境が整っているとは言えない。

また,現在は屋上に設置された運動スペースしかないため,雨天時には運動することができず,雨天が続けば,事実上運動が不可能となるため,未決拘禁者の運動する機会が十分に確保されていない。

そこで,現在の運動スペースをより広くするとともに,運動スペースに手動で開閉可能な屋根を設置することで,多少の風雨であっても運動をすることが可能にすべきである。

また,雨天でも運動をすることが可能な十分な広さのある体育館のような多目的な屋内スペースを設置するよう求める。そうすることで雨天でも運動を行うことが可能となるとともに,レクリエーション等を行うことにより,未決拘禁者の心情の安定を図ることが可能となる。

(7)浴室について

現在の共同浴槽では,複数の者が同じ浴槽に入ることとなり不衛生なため,浴槽に自動濾過装置を設けることを要望する。

個別の浴室・浴槽を設けるとともに,シャワー室を現状より増設し,未決拘禁者の入浴の機会を増やすことを要望する。

未決拘禁者は無罪推定を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の生活ができるように配慮すべきである。

現在の共同浴槽は,複数の者が同じ浴槽に入ることとなり,入浴の順番が後になるにつれ,浴槽内のお湯が汚れ,未決拘禁者は不衛生な入浴環境を強いられている。そのため,共同浴室については,浴槽に自動濾過装置を設け,浴槽内のお湯を常に衛生的に保つ必要がある。

また,個別浴室・浴槽を設け,未決拘禁者は個別の浴室・浴槽を原則とするとともに,シャワー室を現状よりも増設することにより,未決拘禁者の入浴の機会を増やす必要がある。

(8)施設内の設備・備品について

拘置所内にエレベーターを設置することを要望する。

高齢の未決拘禁者や身体に障害のある未決拘禁者の拘置所内における移動にも十分に配慮する必要があり,そのためには拘置所内にエレベーターを設置することが必要不可欠である。

(9)拘置所内の医療設備の充実について

診察室,検査設備,手術室等の拘置所における内部医療設備を整えるとともに,常勤の医師又は非常勤の派遣医師を配置することによって,内部診療の充実を図ることを要望する。

未決拘禁者は無罪推定を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の医療サービスを受けることができるように配慮すべきである。

未決拘禁者が拘置所に収容されているために,必要な治療を受けることができず,病状の悪化を招く等の事態は絶対にあってはならない。

健康の保持は,未決拘禁者の基本的人権の保障において最も基本となる事柄であるため,早急に,拘置所内の医療設備の充実及び医師等の医療スタッフの十分な人員配置を行う必要がある。

2 弁護人の弁護権の保障について
(1)接見室の数について

接見室を現状の3室から5室に増設することを要望する。

弁護人4~5名程度が着席できる広さの接見室を2室設置することを要望する。

現在,弁護士数の増加に伴い,接見室が全て使用中となっていることも少なくなく,待ち時間が長時間に及ぶことがある。

弁護士は時間に制約のある中で接見に赴いており,待ち時間が長くなると,その後の予定のために接見時間を短縮せざるを得なかったり,接見自体を断念せざるを得ないという事態も生じている。

このような状況は,弁護人の弁護権の保障に著しい支障をきたすものであり,早急に改善する必要がある。

また,今後も弁護士数の増加が見込まれることからすると,現状の接見室数では,数十年後には接見室不足の問題はさらに深刻化し,円滑かつ迅速な接見を実現することが困難となることが予想される。

そのため,弁護人接見室の数を,現状の3室から5室へと増設することを要望する。

また,弁護人が3名以上の事件の場合には,現在の接見室では同時に接見することが困難であるため,4~5名程度が着席できる広さの接見室を2室設置することを要望する。

(2)接見室の遮音性確保及びアクリル板の通音性改善のための措置

接見室における会話の内容が他に漏れることのないよう遮蔽のための措置を講じることを要望する。

現在の接見室では,被疑者・被告人と弁護人との間にアクリル板の壁が設置されているが,通音性に問題があるため,通音性に配慮した措置を講じることを要望する。

被疑者・被告人と弁護人との間のアクリル板の壁がない接見室を1室設置することを要望する。

弁護人の秘密交通権が十分に保障されるためには,接見内容が外部に漏れることのない接見環境は必要不可欠であるところ,現在の接見室は遮音構造となっていないため,接見室内での会話内容が外部に漏れ,外部から容易に聞き取ることができる状況になっている。そのため,接見室内の会話が外部に漏れることのないように遮音のための措置を講じる必要がある。

また,現在の接見室に設置されているアクリル板の壁は通音性に問題があるため,被疑者・被告人や弁護人の会話内容が相互に聞き取りにくいという問題が生じている。そこで,アクリル板に穴を開ける方法ではなく,通音性のよい無数の細かい穴をあけた金属板をアクリル板の下に取り付ける等,通音性に配慮した措置を講じる必要がある。

さらに,現在の接見室には,全ての接見室にアクリル板の壁が設置されているため,被疑者・被告人に直接裁判資料を示して打ち合わせをすることが非常に難しい状況にある。そこで,未決拘禁者の防御権及び弁護人の弁護権の保障の観点から,アクリル板の壁のない接見室を設置することを要望する。

(3)パソコン等使用のための電源設備の設置

接見室内にパソコン等使用のための電源設備を設けることを要望する。

現在の接見室内には,パソコン等使用のための電源設備はない。

被疑者・被告人と接見する際にパソコン等のIT機器を使用する必要性もあることから,接見室内にパソコン等使用のための電源設備を設ける必要がある。

(4)拘置所外での連絡設備について

弁護人から未決拘禁者に対して拘置所外からの連絡を可能とするために,電話,テレビ電話,ファックス,メール等の通信設備の設置を要望する。

現在,未決拘禁者との連絡方法については,弁護人が直接拘置所に出向く他は,手紙・電報に頼る以外に方法がない。しかし,未決拘禁者の防御権や弁護人の弁護権の保障という見地からは,弁護人と未決拘禁者との間の密なる連絡・打合せが非常に重要である。電話,テレビ電話,ファックス,メール等の簡易迅速な連絡方法があることから,新拘置所ではこれらの通信手段を可能とするための通信設備を設置すべきである。

(5)弁護人待合室・接見室内の設備について

弁護人待合室及び接見室に冷暖房設備を設置することを要望する。

また,接見室の机を,裁判資料等を広げるのに適した奥行きのあるものにするとともに,接見室内の椅子を長時間座っても疲れないものにすることを要望する。

弁護人待合室にトイレを設置することを要望する。

現在の弁護人待合室及び接見室には,冷暖房設備がないため,冷暖房設備を整えて,弁護人接見の際の環境を改善する必要がある。

また,弁護人接見室の机には奥行きがなく,裁判資料を広げることもままならないため,十分な奥行きのある机を設置する必要がある。

さらに,現在の接見室内の椅子は簡素なパイプ椅子であり,かつ,接見室の机との高さのバランスが悪いため,腰や背中に負担がかかり,長時間の接見に支障が生じる状況となっている。そこで,接見が長時間となった場合にも疲れにくい椅子を設置する必要がある。

現在の弁護人待合室にはトイレがなく,一般面会者用のトイレまで行くしかないため,極めて不便であり,弁護人待合室にトイレを設置することを要望する。

3 拘置所に面会に来る一般市民の利便性の向上について
(1)一般面会室の広さについて

現在の一般面会室は狭いため,現状よりも広くすることを要望する。

また,4~5名程度の面会者が着席できる広さの面会室を設置することを要望する。

現在の一般面会室は十分な広さが確保されていないため,面会者は,非常に窮屈な状態での面会を強いられており,新拘置所では,一般面会室を現状よりも広くする必要がある。

また,家族等の複数の者が同時に面会する場合に備えて4~5名程度の面会者が着席できる広さの面会室を1室設置する必要がある。

(2)面会室のアクリル板の通音性について

現在の一般面会室では,被疑者・被告人と面会者との間にアクリル板の壁が設置されているが,通音性に問題があるため,通音性に配慮した措置を講じることを要望する。

現在の一般面会室に設置されているアクリル板の壁は,通音性に問題があり,未決拘禁者と面会者との会話内容が相互に聞き取りにくいという問題が生じている。

そこで,アクリル板に穴を開ける方法ではなく,より音を伝えやすいよう無数の細かい穴をあけた金属板をアクリル板の下に取り付ける等,通音性に配慮した措置を講じることを求める。

(3)面会スペースの設備について

一般面会室内に冷暖房設備を設置するよう要望します。

現在の一般面会室内には冷暖房設備が設置されていないため,特に夏場や冬場の面会において十分な面会環境が整備されておらず,面会にも支障が生じている。

そこで,一般面会室内に冷暖房設備を設置し,面会に支障が生じることがないよう配慮することを求める。

4 その他の要望事項
(1)新拘置所の外観を周囲と調和したものとすること

新拘置所には,外塀を設けず,周囲の環境と調和した外観とすることを要望する。

現在の小倉拘置支所は,高い塀に囲まれた物々しい雰囲気の建物となっており,住宅地である周囲の環境からかけ離れた異様な外観となっているため,新拘置所では,外壁をなくすとともに,周囲の環境と調和した外観にする必要がある。

(2)新拘置所の職員数の増員

未決拘禁者の待遇改善のために,拘置所の職員数を増員することを要望する。

未決拘禁者の待遇改善のためには,現状よりも拘置所の職員数の増員が必要である。

(3)太陽光パネル設置等の再生可能エネルギーの積極的導入

新拘置所の屋上に太陽光パネルを設置する,太陽光及び風力をエネルギー源とする街灯を設置する等,再生可能エネルギーを積極的に導入することを要望する。

現在,日本全体において,持続可能な社会の構築を目指すべく,再生可能エネルギーの積極的導入が求められており,新拘置所においても例外ではなく,再生可能エネルギーを積極的に導入するための措置を講じることを求める。

なお,平成21年3月に完成した立川拘置所では,屋上に太陽光パネルが設置され,太陽光と風力を利用した街灯も設置されていたことからすれば,新拘置所においてもこれらの設備を設置することは十分可能なはずである。

(4)建替期間中の問題について

建替期間中においても,未決拘禁者の基本的人権・防御権の保障,弁護人の弁護権の保障に支障がないように配慮することを要望する。

拘置所の建て替えにあたっては,代替収容施設の確保等の様々な問題が予想され,新拘置所の建築期間も長期にわたることが予想される。

そこで,建替期間中の代替収容施設において,未決拘禁者の基本的人権・防御権の保障,弁護人の弁護権の保障に支障が生じることがないよう配慮することを要望する。

以上

商品先物取引について不招請勧誘禁止を撤廃することに反対する会長声明

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 2011年(平成23年)1月1日から施行された現行商品先物取引法は、商品先物取引については、国内公設取引所取引であっても不招請勧誘を禁止する規定を設けた(214条9号)。
 これは、商品先物取引業者が、先物取引のような投機に適合せず、希望もしない者に対して、突然の電話や訪問により、大きな利益が得られることのみを強調し、投資金以上の損失が生じる危険性をほとんど認識させないような不公正な勧誘を行って取引に引きずり込み、深刻かつ悲惨な被害を多数生じさせていた実情に鑑み、消費者・被害者関係団体等の長年にわたる強い要望によって、2009年(平成21年)の商品取引所法改正により、ようやく導入されたものであった。
 ところが、本年6月19日、衆議院経済産業委員会において、証券・金融・商品を一括的に取り扱う総合取引所での円滑な運営のための法整備に関する議論の中で、内閣府副大臣は、委員の質問に対し「商品先物取引についても、金融と同様に、不招請勧誘の禁止を解除する方向で推進していきたい」旨の答弁をした。
 この答弁は、総合取引所において商品先物取引業者に対しても監督権限を有する金融庁が、総合取引所に関する法規制について、不招請勧誘禁止を撤廃することを検討していることを示すものであるが、これは商品先物取引についての不招請勧誘規制が導入された経緯を軽視し、2012年(平成24年)8月に産業構造審議会商品先物取引分科会が取りまとめた報告書の内容にも反するものであり、到底看過できない。
 その後、2012年(平成24年)2月から6月にかけて開催された産業構造審議会商品先物取引分科会における議論に際しては、不招請勧誘規制を見直すべきとの意見が出されたが、日本弁護士連合会が2012年(平成24年)4月11日付け「商品先物取引についての不招請勧誘規制の維持を求める意見書」を公表して同規制の維持を主張し、分科会報告書においても、「不招請勧誘の禁止の規定は施行後1年半しか経っておらず、これまでの相談・被害件数の減少と不招請勧誘の禁止措置との関係を十分に見極めることは難しいため、引き続き相談・被害の実情を見守りつつできる限りの効果分析を試みていくべきである」、「将来において、不招請勧誘の禁止対象の見直しを検討する前提として、実態として消費者・委託者保護の徹底が定着したと見られ、不招請勧誘の禁止以外の規制措置により再び被害が拡大する可能性が少ないと考えられるなどの状況を見極めることが適当である」とされ、商品先物取引についての不招請勧誘規制を維持することが確認されたのである。
 このように、商品先物取引についての不招請勧誘規制は、深刻かつ悲惨な被害の多発を受けて導入されたもので、前記分科会においても、有識者らが様々な角度で議論した結果、規制維持の必要性が確認されたにもかかわらず、それから間もない現時点において、何らの検証もなく、規制を撤廃する方向で検討することは到底容認できない。
 事実、商品先物取引についての不招請勧誘規制の導入以降、商品先物取引に関する苦情件数が減少する一方で、不招請勧誘規制を潜脱する業者の勧誘により消費者が被害を受ける事例がなお相当数報告されており、不招請勧誘禁止を撤廃すれば、商品先物取引被害が再び増加するおそれが極めて高いものである。
前記内閣府副大臣の答弁は、商品取引と証券・金融取引を同じ規制下におくべきとの横並び論から出たものと考えられるが、それぞれの取引が過去どういう営業を行い、どのような紛議を生じていたのかの実情を無視したものであって、それぞれの取引の過去の実情が異なれば、個別の規制の必要性を検討するのが当然である。
 当会は、消費者保護の観点から、商品先物取引についての不招請勧誘禁止を撤廃することに強く反対する。

2013年(平成25年)11月20日
福岡弁護士会 会長 橋 本  千 尋

婚外子の法定相続分についての最高裁判所違憲決定を受け、民法(家族法)改正の早期実現を求める会長声明

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婚外子の法定相続分についての最高裁判所違憲決定を受け、民法(家族法)改正の早期実現を求める会長声明
本年9月4日、最高裁大法廷は、婚外子の相続分を婚内子の相続分の2分の1とする民法第900条4号但書前段について、遅くとも相続が開始した平成13年7月(もう1件は11月)当時において、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反していたとする2件の決定を行った。
これまでも、婚外子の法定相続分を平等なものにするべきとの問題は早くから指摘されていた。また、国連の関連委員会は、本件規定を含む家族法における差別的規定について懸念を表明し、法改正の勧告等を繰り返してきた。しかし、最高裁は、1995年(平成7年)7月5日の決定やその後の小法廷での判決、決定の多数意見において、同規定を合憲としつつ、立法的な解決に委ねてきた。
当会は、2010年(平成22年)4月22日の会長声明において、非嫡出子の相続分差別は、非嫡出子自身の意思や努力によってはいかんともしがたい事由により不利益な取り扱いを行うものであり、憲法13条、14条および24条2項に反するものであるとして、早急に改正することを求めた。しかし、国会では、数次に亘り、両者の法定相続分を平等化する法改正の準備が進められてきたものの、未だ改正には至っていない。
 今回の大法廷の決定は、本件規定の合憲性判断につき、「個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らし、嫡出でない子の権利が不当に侵害されているか否かという観点から判断されるべき法的問題であ」るとした上で、法律婚という「制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正の余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきている」とし、立法府の裁量権を考慮しても、両者の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われているとして、1995年(平成7年)7月5日の大法廷の決定を変更した。かかる判断は、個人の尊厳と法の下の平等を定めた憲法に照らし、人権保障の砦としての最高裁の役割からすれば、当然の帰結である。
 我が国は、自由権規約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約及び社会権規約の批准国である。これまでも国連自由権規約委員会の本件婚外子に対する差別規定の削除勧告、女性差別撤廃委員会の家族法における差別的規定の改正に対する懸念表明、および子どもの権利委員会による「嫡出でない子(非嫡出子)」という用語が差別的であるとして廃止を勧告されてきた。そのうえで、今回、我が国の最高裁判所大法廷で憲法違反との結論が出されたことは、もはや決定的な判断が下ったと理解すべきである。
 また、これにとどまらず、我が国の家族法については、女性差別撤廃委員会から婚外子の相続分差別の撤廃、選択的夫婦別姓制度導入、再婚禁止期間の禁止ないし短縮、婚姻年齢の男女差についても懸念が表明されていることを厳粛かつ真摯に受け止めるべきである。
当会は、政府に対し、あらためて、憲法13条、14条および24条2項の規定に照らし、民法第900条4号但書前段を直ちに改正することを求めると共に、上述の条約批准国として可及的速やかに他の諸問題についての民法(家族法)の改正を行うことを強く求める。
                2013年(平成25年)10月16日
                    福岡県弁護士会 会長 橋 本 千 尋

特定秘密保護法案に関する会長声明

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特定秘密保護法案に関する会長声明
1 特定秘密保護法案を巡る動き
政府は、2013年(平成25年)9月3日に「特定秘密の保護に関する法律案の概要」を、同月26日には特定秘密保護法案(以下「本法案」という。)の原案を公表し、同年10月に開会予定の臨時国会に本法案を提出する意向を示している。
2 本法案の根本的な問題点
本法案は、その個々的な内容でも重大な問題を含んでいるが、そもそも、行政情報は可能な限り主権者である国民に開示されることが原則であり、現状ではよりいっそう情報公開が進められるべきである。しかるに、これを隠蔽し、その情報に国民の側からアクセスしようとする様々な活動を処罰し、またそれによってそのような活動を萎縮させる法制度をつくることは、憲法の保障する国民の「知る権利」の重大な侵害であり、ひいては「知る権利」の行使に基づく主権者たる国民自身による統治という国民主権原理に反するというべきである。
3 法案提出にあたっての政府の対応の問題点と国民の反応
このように根本的な問題を含む本法案であるが、政府は、これに対するパブリックコメントの提出期限を本法案の概要を発表したわずか2週間後に締め切った。
通常は1ヶ月程度はおかれる期間を、本法案のように国民の重要な権利の侵害となる虞れのある法案についてわずか2週間としたことは極めて不当な対応というほかない。
これに対し、国民は、このわずかな期間に約9万件もの意見を寄せ、そのうちの約8割が反対の意見であったことなど、本法案に対し高い関心と危機意識をもっていることを明らかにしている。
4 本法案の内容の問題点
本法案は、行政機関の長が「特定秘密」を指定し、その漏えいやこれを探ろうとした行為を厳罰をもって禁ずるとともに、「特定秘密」を取り扱う者自体の人的管理を行うというものである。
(1)特定秘密の対象の範囲の拡大と不明確さ
本法案は、対象となる「特定秘密」について、①防衛、②外交、③特定有害活動の防止、④テロリズムの防止の4分野を別表で示しているが、特定秘密の範囲については、1985年(昭和60年)に国会に上程されたものの国民世論の反対によって廃案とされた「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」よりも拡大されている。
そして、その内容を特定するためとして各分野の該当項目を列挙した「別表」によってもその記載が包括的であるため対象とされる事項の範囲が不明確である。
(2)特定秘密の指定権者と恣意的運用のおそれ
本法案は、「特定秘密」の指定権限は行政機関の長としているため、行政機関自身が自己に都合の悪い情報を秘匿する手段に利用する虞れがあるにもかかわらず、本法案にはその恣意的運用を防止する制度が何ら定められていない。
(3)重罰化と処罰対象行及び対象者の拡大
本法案では、国家公務員法の法定刑よりも重い刑罰を科すことはもとより、その処罰範囲も故意の漏えい行為だけでなく、過失の漏えい行為、漏えい行為の未遂や共謀、教唆、扇動並びに特定秘密の取得行為とその共謀、教唆、扇動についてまでも処罰対象行為としているうえ、共謀、教唆、扇動は実行行為の着手がなくとも処罰するとしている(いわゆる「独立教唆」等)。
処罰対象者としても、取材活動をおこなうマズメデイア関係者はもとより、国政調査権を担う国会議員をも対象者としているなど、その対象者は広範囲に及ぶ。
(4)適性評価制度
本法案は、特定秘密の取扱者の人的管理のために「適性評価制度」を導入し、過去の懲戒処分歴、非違経歴や信用情報などを対象者の同意を得たうえで調査し評価するとしている。
しかしながら、調査に際しては対象者の知人らに対する聞き込みや公私の団体に照会をすることも可能であり、また調査対象には対象者の家族や同居人まで含まれており、このような極めてセンシティブな情報を行政機関・警察によって収集されること自体が重大なプライバシー侵害に該当する。
5 当会の意見
このように国民主権原理に反し重大な憲法上の権利を侵害する特定秘密保護法の立法化に対し、当会は断固として反対し、政府に対しては本法案の国会上程を速やかに断念することを強く求める。

2013年(平成25年)10月11日
福岡県弁護士会
会長  橋 本 千 尋

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