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米国における連邦レベルでの死刑の執行停止を受け、日本における死刑制度の廃止に向けて、死刑執行の停止を求める会長声明

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1 当会における「死刑制度の廃止を求める決議」の採択
当会は、2020年(令和2年)9月18日、生命に対する権利が人間の尊厳に由来する固有の権利であり、すべての人権の基盤となる根源的な基本的人権であるとし、政府及び国会に対し、死刑制度の廃止並びにこれが実現するまでの間、死刑の執行を停止することなどを求める「死刑制度の廃止を求める決議」を採択した。
2 米国における死刑執行のモラトリアム通知の公表とその意義
2021年(令和3年)7月1日、米国連邦政府において、司法長官が連邦レベルでの死刑執行のモラトリアム(一時停止)を司法省職員に指示する通知を公表した(以下「モラトリアム通知」という)。
この点につき当会は、モラトリアム通知が米国における連邦レベルでの死刑執行を停止させるだけでなく、死刑廃止の第一歩となるのかを注視していきたい。なぜなら、死刑の執行停止が死刑制度の廃止に至る過程で表明されることが多く、特に米国においては、現大統領が選挙中から連邦レベルでの死刑廃止を公約に掲げていたからである。
また、国際社会における日本と米国両国の立ち位置にも留意すべきである。2019年(令和1年)12月末時点で、国連に加盟する193か国のうち死刑制度の存在しない国(法律上または10年間以上死刑執行をしていない事実上の廃止国)は142か国であり、経済協力開発機構(OECD)加盟国38か国に限ってみると、死刑執行を容認してきたのは日本と米国の連邦及びその一部の州だけになっている。こうした状況下で、日本に先んじてモラトリアム通知が出されたからである。
3 日本における死刑制度の廃止に向けて、死刑執行停止を求める
1989年(平成1年)12月、国連総会において自由権規約第二選択議定書(死刑廃止条約)が採択され、同条約は1991年(平成3年)7月に発効した。そうした中、日本では、同条約の採択直前である1989年(平成1年)11月に福岡拘置支所(現福岡拘置所)で死刑が執行されてから、同条約発効をはさんで1993年(平成5年)3月まで、3年4か月にわたり死刑が執行されない期間があった。ただ、日本では、これまでモラトリアム通知のように、政府として死刑制度に関する明確な政策判断に基づいて死刑執行を停止したことはない。
 そこで、当会は、日本が、基本的人権の尊重、特に生命権の不可侵性の価値観を共有できる社会を目指そうとしている国際社会と協調し、国連加盟国の責務を果たせるよう、政府及び国会に対し、死刑制度の廃止に向けた第一歩として、死刑執行の停止を求める。

2021年(令和3年)8月25日
福 岡 県 弁 護 士 会
会 長  伊 藤 巧 示

早期に民法を改正し、選択的夫婦別姓制を導入するよう求める会長声明

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 2021年6月23日、最高裁判所大法廷(大谷直人裁判長)は、夫婦同姓(夫婦同氏)を強制する民法750条と戸籍法74条1号について、憲法24条に違反するものではないと判断しました。
 夫婦同姓を定めた民法規定については、2015年12月16日に「合憲」とする最高裁判決が存在します。今回の大法廷決定は、2015年の判決以降の社会や国民の意識の変化等を認めながらも、同判決を引用したのみで実質的な検討は行わず、夫婦同姓を強制し別姓夫婦に法律婚の効果を認めないことがなぜ許されるのかという本質的な問いには答えませんでした。多数決原理で是正されにくい少数者の権利侵害状況を救済するのがまさに司法の役割であり、最高裁判所がその任務を果たさなかったことは、極めて不当です。
 しかしながら、2015年の最高裁判決では、5人の裁判官が、夫婦同姓の強制は憲法24条違反であるとの意見を述べています。今回の大法廷決定でも、4人の裁判官が網羅的な検討を行い、夫婦同姓の強制は憲法24条違反であると述べ、国会が長期間に亘りこの問題を放置してきたことを厳しく批判しています。さらに、いずれの多数意見も、制度の在り方は国会で論ぜられ判断されるべきと、立法府の取組みを促しています。
 もとより氏名は重要な人格権であり(1988年2月16日・最高裁判所判決参照)、改姓は、望んで行う場合は別として、アイデンティティの喪失に加え、個人の識別を阻害し、結果として、変更前の氏名に紐付けられていた当該個人に対する信用や評価が損なわれる等の重大な不利益をもたらします。現行法下では、婚姻によって当事者の一方がこの不利益を被り不平等な状況が生じさせられます。現時点でも婚姻時に改姓する大多数は女性である実情は変わらず、性別による不平等が存在しています。
 選択的夫婦別姓制は、1996年に法制審議会によって答申されているにもかかわらず、四半世紀を経ても未だ成立していません。
 当会は、これまで、夫婦同姓の強制(民法750条)が憲法第13条、第14条及び第24条に反するものであることを繰り返し指摘し、是正を求めてきました(2010年4月22日会長声明、2015年5月27日総会決議、2015年12月17日会長声明)。
 国際的に見ても、民法制定当時(1947年)と異なり、夫婦同姓を強制する法制度を残すのは日本の他にありません。国連女性差別撤廃委員会からは、女性に対する差別を助長する制度として、2003年から2016年までに3度に亘り是正勧告がなされました。これに対し、政府は法改正をする方針であると説明してきましたが、現在までの間、国会に改正法案を提出するには至っていません。
 もはや先延ばしは許されません。当会は、あらゆる形態の家族が尊重され、性別による不平等が解消されることを目指して、改めて、民法750条を改正し、望む人だけが改姓し望まない改姓が強制されない選択的夫婦別姓制を導入する立法を速やかに行うよう、強く求めます。

2021年(令和3年)7月7日   
福岡県弁護士会 会長 伊 藤 巧 示

マイナンバーカードの義務化とデジタル関連法案に反対する会長声明

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1 はじめに
  本年3月,マイナンバーカードと健康保険証の一体化の試験運用が開始され,今秋にも本格運用が開始されようとしている。さらに,特別定額給付金の支給が迅速に行われなかったことの改善などを目的として,マイナンバーカードの積極的な活用を一つの柱とするデジタル関連法案が国会に提出され,すでに衆議院で一部修正の上承認され,参議院で審議されている。これらには,以下に述べる問題点がある。
2 マイナンバーカードの義務化について
 (1) 権利が義務になる問題点
健康保険証の一体化に加え,マイナンバーカードと運転免許証の一体化も,2024年度を目標として進められている。健康保険証については,現行のものを廃止することにより,政府は2022年度末にはほぼ全国民がカードを取得することを目標にしている。医療サービスを受けようとする者の全員が持たざるを得ないのなら,利便性を求めるものの権利ではなく,事実上の義務化に逆転すると言うほかない。
当会は,マイナンバー制度に対して,病気や障がいなどのセンシティブな情報の収集・蓄積と名寄せの手段となり,プライバシー権を侵害するとして反対してきた(2013年(平成25年)5月10日「共通番号法」制定に反対する声明等)。マイナンバーカードが任意の制度とされている趣旨は,プライバシー権を重視する市民に「カードを持たない自由」を保障するというプライバシー保護が根幹にある。事実上の義務化は,このプライバシー保護の根幹を犯すものとして許されない。
また,入力ミスにより,本人の患者情報が確認できない不具合のほか,他人の患者情報がひも付けされるなどの重大な問題事象が生じたため,本年3月の本格運用がいったん延期されている。本格運用がなされれば,同意を前提として患者の投薬状況等について照会が可能となるが,内容が誤っている場合,他の患者のプライバシーを侵害するばかりでなく,誤認により本人の適切な治療が妨げられる恐れすらある。ヒューマンエラーを前提とすると,利便性があるとは到底考えられず,生命健康の利益を上回るはずがない。
これに対し,健康保険証との一体化のメリットとして資格過誤の防止が挙げられているが,係る資格過誤の割合はわずかに0.27%にすぎない。しかも,現行の健康保険証が併用されること,なりすまし防止のためには目視でもよいことからすると,患者の指紋を逐一チェックするに等しい顔認証チェックは過剰なプライバシー侵害として,いわゆる比例原則に反している。
さらに,法律で厳重な管理を要するとされるマイナンバーが記載されたカードを,日常生活で頻繁に利用され,携帯されることも多い健康保険証と一体化することは,制度的に矛盾しており,紛失や漏洩の機会が飛躍的に増大する。
(2) 顔認証チェックの既成事実化について
  また,マイナンバーカードのICチップには顔画像データが登載されているところ,医療機関の窓口では,カードリーダーによってこの顔画像データから顔認証データ(目・耳・鼻などの位置関係等の特徴点を瞬時に数値化したもの)を生成し,顔認証チェックによる本人確認を行うことになる。
しかしながら,顔認証データは,指紋の1000倍の本人確認の精度があるため,我が国でもこれを用いた本人確認が実用化されているが,その収集・利用が強制である場合,必要性・相当性が欠ければ違法なプライバシー侵害となりうる。
この点,当会は,2014年(平成26年)5月27日に,警察が法律によらず顔認証装置を使用しないよう求める声明を発した。罪もない市民の行動を監視することが容易になり,プライバシー侵害ばかりでなく,市民の表現の自由を萎縮させる危険が大きいからである。
EU(欧州連合)では,GDPR(一般データ保護規則)9条1項で顔認証データの原則収集禁止を掲げ,空港やコンサート会場での顔認証システムの使用に際しても,同意していない客の顔認証データを取得しないようにしなければならない。
我が国でも,顔認証チェックによる本人確認について,民間における顔認証データの利用場面においても,利用できる条件等についてのルールを法律で作成しないまま運用されるべきではない。
3 デジタル関連法案について
 また,すでに衆議院を通過し,参議院で審議中のデジタル関連法案は,当会が一貫して反対しているマイナンバーの利用拡張を内容とする預貯金口座の管理法案を含んでおり問題がある。
この点,デジタル関連法案には行政機関が保有する個人情報を,省庁の垣根を越えて共同でクラウド管理する(ガバメントクラウド)ことが含まれている。そのため,行政機関が保有する個人情報は,今後市民が知らない間にさらに自由に利用される懸念がある。現状でも,国が保有する個人情報について,匿名加工をして民間での利活用を図るとして,すでに国を被告とする訴訟の原告団情報が対象とされているとも言われている。
しかし,国が取得した情報は,国が自由に処分してよいわけではない。医師や弁護士が取得した情報は,守秘義務で守られ,勝手に処分されないルールにより,市民はプライバシー侵害を恐れずにサービスを受けることができるのである。
形式的には,ガバメントクラウドの対象となるのは,行政機関個人情報保護法の解釈で適合したと行政機関自身が判断したものとされるが,個人情報保護法適合性とは別の枠組みとして,プライバシー権侵害の必要性・相当性の観点から,不法行為が成立する可能性があることに配慮しておらず,適当ではない。国に対する市民の裁判を受ける憲法上の権利(憲法17条,32条)の保障に抵触する可能性すら考えられるのであり,到底許されない行為である。
現状の行政機関個人情報保護法においては,「相当の理由」さえあれば個人情報を本人の同意なく目的外利用できる条項が定められており,これを市民がチェックする機会もなくクラウドでさらに利用範囲を拡大することは危険を伴う。このようにプライバシー侵害を防ぎ得ず,拡大しかねないデジタル関連法案について,その危険性を十分に市民が理解していないまま成立させることには重大な問題がある。
そもそも,デジタル関連法案は,多くの法案と条文の変更を含んでいるにもかかわらず,全体像の主権者へのわかりやすい開示はなされておらず,リスクが周知されているとは到底言いがたい。当会としても,判明した問題点の1部を指摘できただけであり,全体像とその問題点には未だ解明できていない部分も残されている。
4 結論
よって,マイナンバーカード保有の事実上の義務化のみならず,法律による限定のないままの顔認証チェックを既成事実化することは,重大なプライバシー侵害と監視社会状況を招く懸念があり,許されない。
また,デジタル関連法案は,拙速な審議で可決されるべきではなく,参議院において否決され,廃案とされたうえ,十分な周知と主権者が同意・不同意を検討する時間が付与されるべきである。

2021年(令和3年)5月6日

福岡県弁護士会会長 伊 藤 巧 示

札幌地裁判決を受けて、改めてすべての人にとって平等な婚姻制度の実現を求める会長声明

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1 2021(令和3)年3月17日、札幌地方裁判所で、同性間の婚姻ができない現在の婚姻に関する民法及び戸籍法の諸規定(以下「本件諸規定」という。)は憲法14条1項に反し、違憲である旨の判決が言い渡された。
2 同判決において、札幌地裁は、まず、同性愛者であっても異性とは婚姻できるから区別取り扱いにはあたらないとする国の主張を退けて、同性愛者のカップルは自分の性的指向に沿った相手と婚姻することができず、婚姻によって生じる法的効果を享受することができない点で、異性愛者との区別取扱いがあるということを認めた。
 そして、性的指向は、性別や人種と同様に自らの意思に関わらず決定される個人の性質であり、このような人の意思によって選択・変更できない事柄に基づく区別取扱いが合理的根拠を有するかの検討については、真にやむを得ない区別取扱いであるかの観点から慎重になされなければならないとした。
 その上で、婚姻によって生じる法的効果を享受することは重要な法的利益であるところ、異性愛者と同性愛者との差異は性的指向が異なるのみであり、かつ、性的指向は人の意思で選択・変更できるものでないことから、そのような法的利益は同性愛者も異性愛者も等しく享受し得るものと解するのが相当であり、本件諸規定は、同性愛者と異性愛者について区別取扱いをするものであると認定した。そして、立法府は同性婚について否定的な意見や価値観を持つ国民が少なからずいることを斟酌することはできるとしたが、同性愛者が圧倒的多数の異性愛者の理解又は許容がなければ重要な法的利益である婚姻によって生じる法的効果を享受できないとするのは自らの意思で同性愛を選択したのではない同性愛者の保護にあまりにも欠けるところ、性的指向による区別取り扱いを解消することを要請する国民意識が高まっており、今後も高まり続けるであろうことや、外国においても同様の状況にあることからすれば、立法府の裁量権を行使するにあたっては限定的に斟酌されるべきとし、結論として、本件諸規定が、同性愛者に対しては、婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは、立法府の裁量権の範囲を超えたものであり、合理的根拠を欠く差別取扱いに当たり、憲法14条1項に違反すると認めた。
3 本件諸規定が同性間の婚姻を認めないことにより、結婚を望む同性カップルはきわめて広範な分野に及ぶ法律上、事実上の不利益を被ってきた。本判決は、憲法第13条及び第24条1項違反を認めなかった点では不十分であるが、これまで長きにわたり同性カップルが被ってきた不利益を、憲法14条1項に違反する差別であると断じた点で画期的なものである。
さらに、マイノリティであるがゆえに立法の過程で実現することが困難な権利が問題となる本件につき、違憲判断を行い、人権の最後の砦としての司法の役割を正しく果たした点で、高く評価すべきものである。
4 当会は、2019(平成31)年5月29日の定期総会において、本件諸規定が同性間の婚姻を認めないことは人権侵害であり、かつ、差別であるから、政府及び国会に対して同性間の婚姻制度を整備するよう求める「すべての人にとって平等な婚姻制度の実現を求める決議」を採択した。
本判決は同決議とその方向性を一にするものであり、当会が求める同性間の婚姻制度の実現に向けて重要な意味を持つものとして歓迎する。
5 当会が「すべての人にとって平等な婚姻制度の実現を求める決議」を採択してから既に2年近くが経過し、その間、パートナーシップ制度の拡大など、社会の理解は大きく進んだと言えるが、未だに同性間の婚姻制度は整備されておらず、政府・国会において、少なくとも公式には同性間の婚姻制度の整備に向けた議論の着手すらなされていない。
  その間、同性カップルに対する差別は継続し、放置されてきた。
  そこで、当会は、本判決により本件諸規定が憲法違反であると認定されたことを受けて、政府及び国会に対し、本判決を真摯に受け止め、同性間の婚姻制度を直ちに整備することを改めて求める。

2021年(令和3年)4月28日  
福岡県弁護士会 会長 伊 藤 巧 示

東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長の女性差別発言に抗議し,すべての個人が尊重される社会の実現を目指す会長声明

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1 2021(令和3)年2月3日,公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「組織委員会」という。)会長である森喜朗氏は,報道陣に公開されたオンラインの公益財団法人日本オリンピック委員会の臨時評議員会において,「女性理事を4割というのは,文科省がうるさく言うんです。」「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。」「女性は競争意識が強い。」「数で増やす場合は時間も規制しないとなかなか終わらないと困る。」「私どもの組織委にも女性は何人いますか?(中略)みんなわきまえておられる。」などと発言した(以下「森氏発言」という。)。
かかる森氏発言は,「女性」を一括りにした上で,女性の人数が増えることを問題視し,また女性の発言時間を規制すべきというもので,女性を意思決定から排除したいとの偏見および差別意識を表明したものといえる。
2 この点,日本国憲法は個人を尊重し(第13条),性別による差別を禁じ(第14条),国際人権規約(自由権規約第3条,第26条等)でも,性別による差別を禁じ,男女に同等の権利を確保することを求めている。
そして,組織委員会が拠り所とするオリンピック憲章においても,オリンピズムの根本原則第6項で,「このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種,肌の色,性別,性的指向,言語,宗教,政治的またはその他の意見,国あるいは社会的な出身,財産,出自やその他の身分などによる,いかなる種類の差別もうけることなく,確実に享受されなければならない。」と規定し,性別による差別を禁止している。
また,日本国内では,男女共同参画社会の実現に向け,2003(平成15)年に内閣府男女共同参画局が「社会のあらゆる分野において,2020年までに,指導的地位に女性が占める割合が30%程度になるよう期待する」という目標を決定し,関係機関への働きかけ・連携が行われてきた。
国連が2030年までに達成をめざす「持続可能な開発目標(SDGs)」(2015年9月の国連サミットで採択)でも,目標5として「ジェンダー平等」が掲げられている。
以上のように,意思決定手続に多様な意見を反映させ,十分な議論を経て結論を得るために女性を含め多様な人々が積極的に関与すべきことは,国際社会における普遍的な価値というべきである。
森氏発言は,日本国憲法や国際人権規約の理念に反し,国際社会における普遍的な価値にも反するものであり,個人の尊重に基づく社会の在り方自体を否定するものである。
3 世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表しているジェンダー・ギャップ指数(各国における男女格差を測る指標。経済活動や政治への参画度,教育水準,出生率や健康寿命などから算出。)の2020年版で,日本は153か国中121位である。日本社会が男女共同参画社会にはほど遠い現状である中,森氏発言は,差別の解消に努力しないという誤ったメッセージを世界に発信するものにほかならず,国際社会の中での日本の信用を損なわせるものである。
4 さらに,森氏発言とその後の謝罪会見,森氏発言を事実上黙認していたと取られかねない組織委員会の対応については,国内のみならず海外メディアや市民からの批判,多くのボランティアの辞退,スポンサー企業の抗議などの世論の強い反発があった。これを受けて森氏は会長辞任を表明するに至ったが,その経過を見れば,森氏のみならず組織委員会自体において問題の理解が不十分であるとの疑いを持たざるを得ない。
森氏発言や組織委員会の対応は,単に偶発的なものではなく,日本社会にいまだ性別による差別が根強く蔓延していることの表れである。組織委員会は,森氏の辞任によってこの問題の幕引きをすることなく,ジェンダー平等,男女共同参画及び多様性の尊重に向けた抜本的な改善策を示すべきである。
5 以上の次第で,当会は,森氏発言及び組織委員会の対応につき強く抗議するとともに,組織委員会に対し,再発防止の徹底と,ジェンダー平等、男女共同参画及び多様性の尊重のための抜本的な改善策の提示を求める。
また,国においては,ジェンダー平等,男女共同参画及び多様性の尊重の理念に反する行為を決して放置,容認せず,これらが尊重される社会を主体的に実現する姿勢を示すことを求める。
当会は,2016(平成28)年5月に「男女平等及び性の多様性の尊重を実現する宣言」を行い,2017(平成29)年3月に「福岡県弁護士会男女共同参画基本計画~誰もが活躍できる開かれた弁護士会であるために」を策定している。当会としても,あらゆる差別的発言を放置・容認せず,全力をあげて,すべての個人が尊重される社会の実現のために取り組む決意である。

2021(令和3)年2月17日
福岡県弁護士会   
会長 多 川 一 成

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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