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カテゴリー: 声明

死刑執行に抗議する会長声明

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 本日、国内において1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。今回の執行により、今世紀において合計95人もの死刑確定者が、国家刑罰権の発動としての死刑執行により生命を奪われていることになる。
 たしかに、突然に不条理な犯罪の被害に遭い、大切な人を奪われた状況において、被害者の遺族が厳罰を望むことはごく自然な心情である。しかも、日本においては、犯罪被害者及び被害者遺族に対する精神的・経済的・社会的支援がまだまだ不十分であり、十分な支援を行うことは社会全体の責務である。
 しかし、そもそも、死刑は、生命を剥奪するという重大かつ深刻な人権侵害行為であること、誤判・えん罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないことなど様々な問題を内包している。
 人権意識の国際的高まりとともに、世界で死刑を廃止または停止する国はこの数十年の間に飛躍的に増加し、法律上及び事実上の死刑廃止国は、2020年12月31日時点で、国連加盟国193か国のうち144か国にのぼる。2020年12月には、国連総会本会議において、史上最多の支持(123か国)を得て死刑廃止を視野に入れた死刑執行の停止を求める決議案が可決され、2021年7月1日には、米国連邦政府において、司法長官が連邦レベルでの死刑執行の一時停止を司法省職員に指示する通知を公表した。このように死刑廃止は世界的な潮流という状況にある。
 
 当会においても、1996年以降、死刑執行に対し、都度これに抗議する会長声明を発出してきたほか、2020年9月18日に「死刑制度の廃止を求める決議」を採択し、2021年8月25日には「米国における連邦レベルでの死刑の執行停止を受け、日本における死刑制度の廃止に向けて、死刑執行の停止を求める会長声明」を発出している。
 そこで、当会は、国に対し、今回の死刑執行について強く抗議の意思を表明するとともに、日本が、基本的人権の尊重、特に生命権の不可侵性の価値観を共有できる社会を目指そうとしている国際社会と協調し、国連加盟国の責務を果たせるよう、あらためて死刑の執行を停止することを強く要請するものである。

2022年(令和4年)7月26日
福岡県弁護士会会長   野 田 部 哲 也

力強い司法を実現するため、司法を支える、いわゆる谷間世代への一律給付実現を求める会長声明

カテゴリー:声明

1 司法は、三権の一翼として、法の支配を実現し国民の権利を守るための枢要な社会インフラであり、法曹はこの司法の担い手として公共的使命を負っている。そこで国は、高度な技術と倫理感が備わった法曹を国の責任で養成するために、現行の司法修習制度を、1947年(昭和22年)、日本国憲法施行と同時に発足させ運営している。この制度の中で、司法修習生は、修習専念義務(兼職の禁止)、守秘義務等の職務上の義務を負いながら、裁判官・検察官・弁護士になる法律家の卵として、将来の進路如何にかかわらず、全ての分野の法曹実務を現場で実習し、法曹三者全ての倫理と技術を習得してきた。
 このように、司法修習制度が修習専念義務等を課したうえで国の責任で法曹を養成する制度である以上、修習に専念できるに足る生活保障を行うのは当然である。そのために戦後60余年にわたり維持されてきた司法修習生への給費制が2011年(平成23年)に廃止されたことにつき、日弁連や当会をはじめとする全国の弁護士会はその復活運動に取り組み、その結果、これを見直して、2017年(平成29年)に裁判所法改正により新たに修習給付金制度が創設された。当会は、これに理解、尽力を頂いた国会議員、政党、最高裁判所、法務省、そして何より多くの国民、諸団体の皆様等々全ての方に、改めて深く感謝を申し上げる次第である。
2 もっとも、修習給付金は、司法修習に専念するには不十分な金額に留まる等、従前の給費制には及ばない内容となっている。そのうえ、給費制が廃止されていた2011年(平成23年)度から2016(平成28年)度までの6カ年間に、無給制(希望者には貸与金あり)のもとで、従前どおりの修習専念義務、守秘義務を負って同じ内容の修習を遂行した新65期から70期の司法修習生(いわゆる「谷間世代」)が何らの生活保障を受けられないまま修習を強いられたという不条理のままに取り残され、かつ、旧65期以前及び71期以降の修習修了者に比して著しく不公平・不平等な立場におかれるという事態が発生している。この谷間世代の法曹は約1万1000人に達し、全法曹(約4万8000人)の約4分の1を占めるもので、その規模や枢要性に鑑み、もはや司法制度(これを支えるソフトインフラである法曹全体)に内在する制度的不備ともいうべきである。
 国の責任で司法修習という制度を設置・運営している以上、このような不条理かつ不公平・不平等な事態を放置することは容認できない。2019年(令和元年)5月30日に名古屋高等裁判所が言い渡した給費制廃止違憲訴訟判決においても「例えば谷間世代の者に対しても一律に何らかの給付をするなどの事後的救済措置を行うことは、立法政策として十分考慮に値するのではないか」と言及されている。立法政策の誤りは立法政策をもってこそ是正されるべきである。
3 当会では、2017年(平成29年)8月、谷間世代の声を聴く会を開き、また同年11月には「修習給付金の創設に感謝し、谷間世代1万人の置き去りについて考える福岡集会」を開催するなど、谷間世代の会員の切実な声に耳を傾けた。2018年(平成30年)1月には、「給費を受けられなかった6年間の司法修習生(「谷間世代」) が被っている不公平・不平等の是正措置を求める会長声明」を発するとともに、是正施策の一環として、日本弁護士連合会が創設した谷間世代弁護士に対する一律の給付金(20万円)制度に加えて、当会独自策として、5年間で総額上限30万円の給付金を支給する制度を実施している。また、昨今のコロナ禍による経済的困窮に対応するため、2020年(令和2年)6月には、「緊急声明 ~修習資金の貸与を受けた元司法修習生に対する貸与金返還の一律猶予を求める~」会長声明を発出するなどの活動を行ってきた。
 2019年(令和元年)と2021年(同3年)に、当会を含む各地の弁護士会で行われた谷間世代に対するアンケートでは、当会会員からも、貸与金返済のための生活への影響や不安から志した弁護士としての活動が十全には果たし得ていないとの声をはじめ、無給制(貸与制)そのものへの不条理感をぬぐい切れていないとの声や、給費制が不十分ながらも給付金制度として事実上復活したことへの不公平感を訴える声など多数みられた。
4 経済的・精神的な足かせを余儀なくされている谷間世代ではあるが、もはや法曹の中核的存在として司法を支えている。近年、各地で繰り返される大規模自然災害やコロナ禍等により困難を抱えた人々のために献身的に活動している者も多い。また、日弁連が創設した「若手チャレンジ基金」制度では先進的ないし公益的取り組みとして多数の谷間世代の会員が表彰されるなど、基本的人権の擁護と社会正義の実現にかける意欲は全く他の世代と同様である。日弁連の上記2019年アンケートによれば、その多くが、経済的困難が解消されれば、法曹を志した当初の志に即して活動範囲を広げたいと考えていることが明らかになっている。全法曹の約4分の1を占める谷間世代には、これからの司法の中心的な担い手として、より一層、社会の不公正や権利侵害に立ち向って法の支配を実現し、国民のための力強い司法を体現することが強く期待されている。谷間世代が抱える経済的・精神的足かせを国による一律給付の実現により是正することは、谷間世代の法曹の活躍の幅や量を広げることにつながり、司法機能の強化に役立ち、これが国民的利益に結び付くものであることは明らかである。
 当会は、これらの点について、地元選出国会議員をはじめさらに広く理解を得るべく、本年8月20日に「谷間世代への一律給付実現全国リレー集会in福岡」を開催する予定である。
5 以上の次第であるので、当会は、政府・法務省、最高裁判所、国会に対して、谷間世代が不条理に経済的負担を強いられたままであり、かつ、これが旧65期以前及び71期以降の司法修習修了者に比して不公平・不平等な事態となって続いている問題の解決のために、谷間世代への一律給付を実現するよう強く求めるものである。

2022年(令和4年)7月13日
福岡県弁護士会  
会 長  野 田 部 哲 也

中小企業への支援策の拡充と最低賃金額引上げを求める会長声明

カテゴリー:声明

 福岡地方最低賃金審議会は、今後(例年どおりであれば8月頃)、福岡労働局長に対し、2022年度福岡県最低賃金の改正の答申を行う見込みである。昨年度、同審議会は前年度比28円増額の時間額870円とする答申を行い、当該答申どおりの改正が行われた。
 しかし、時給870円は、未だ、年収200万円以下のいわゆるワーキングプアと呼ばれる水準にとどまっており、この水準では、労働者の生活を安定させつつ労働力の質的向上を図ることは実際上困難である。また、原油価格の高騰やロシアのウクライナ侵攻等の影響により、食料品や光熱費など生活関連品の価格が急上昇している。労働者の生活を守り、新型コロナウイルス感染症に向き合いながら経済を活性化させるためにも、最低賃金額を大きく引き上げることが必要である。
 最低賃金額について、フランスでは、2021年1月に10.25ユーロ(約1473円※本日時点の為替レートによる。以下同じ)に引き上げられ、さらに同年10月から10.48ユーロ(約1507円)に引き上げられた。ドイツでは、2021年7月に9.60ユーロ(約1380円)、2022年1月に9.82ユーロ(約1411円)と引き上げられ、同年7月には10.45ユーロ(約1503円)へと引き上げられる。さらに同年10月から12ユーロ(約1725円)に引き上げることについて国会で審議中である。イギリスでは、2021年4月から23歳以上の労働者の最低賃金が8.91ポンド(約1493円)に引き上げられ、さらに2022年4月から9.5ポンド(約1592円)に引き上げられた。韓国では、2021年1月に8720ウォン(約922円)に引き上げられ、2022年1月から9160ウォン(約968円)に引き上げられた。
 このように多くの国で、コロナ禍で経済が停滞する状況下においても最低賃金の大幅引上げが実現しており、我が国においても、コロナ禍であることが、最低賃金の大幅引上げを不可能ならしめるものとはいえない。
 また、最低賃金の地域間格差が依然として大きく、格差が是正していないことは重大な問題である。2021年の最低賃金は、最も高い東京都で時給1041円であるのに対し、最も低い高知県と沖縄県は時給820円(福岡は870円)であり、221円(福岡県とは171円)の開きがある。最低賃金の高低と人口の転入出には強い相関関係があり、最低賃金の低い地方の経済が停滞し、地域間の格差が縮まるどころか、むしろ拡大している。都市部への労働力の集中を緩和し、地方に労働力を確保することは、地域経済の活性化のみならず、都市部での一極集中から来る様々なリスクを分散する上でも極めて有効である。
 地域別最低賃金を決定する際の考慮要素とされる労働者の最低生計費は、研究者らによる最近の調査により、都市部か地方かによって、ほとんど差がないことが明らかとなっている。これは、地方では、都市部に比べて住居費が低廉であるものの、公共交通機関の利用が制限されるため、通勤その他の社会生活を営むために自動車の保有を余儀なくされることが背景にある。そもそも、最低賃金は、「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために必要な最低生計費を下回ることは許されない。労働者の最低生計費に地域間格差がほとんど存在しない以上、最低賃金の地域間格差を維持することは適切ではなく、地方の最低賃金を都市部の水準まで引き上げることが求められる。
 最低賃金の大幅な引上げの実現のためには、十分な中小企業への支援が必要である。現在、国は「業務改善助成金」制度により、影響を受ける中小企業に対する支援を実施しており、従前、その利用件数は低調であったが、令和3年度中央最低賃金審議会の「業務改善助成金について、特例的な要件緩和・拡充を早急に行うことを政府に対し強く要望する」との答申を受け、2021年8月以降、その利用要件の緩和や支援対象の拡充が行われた。政府が、答申に応じ、業務改善助成金の拡充等を行ったことは高く評価すべきであるが、今後も、最低賃金を引き上げても円滑に企業運営を行えるよう、中小企業へのさらなる支援策を講じることが求められる。この点、昨年度の福岡地方最低賃金審議会の答申においても、国及び地方自治体所管の各種支援策の拡充・強化、特に「コロナ禍において直接間接を問わず影響を受けている中小・小規模事業者に対しては、特例措置として賃金引上げ幅に見合った新たな直接的給付金等支援策の創設を早急に検討すること」を求める極めて適切な付帯決議がなされており、国はこの付帯決議の趣旨を尊重し、早急な対応を行う必要がある。最低賃金の引上げには地域経済を活性化させる効果もある。当会は、引き続き国に対し中小企業への充分な支援策を求めるとともに、労働者の健康で文化的な生活を確保し、地域経済の健全な発展を促すため、福岡地方最低賃金審議会が、本年度、最低賃金の大幅な引上げを答申すべきことを求めるものである。

2022年(令和4年)6月22日
福岡県弁護士会       
会 長  野 田 部 哲 也

外国人留学生や朝鮮大学校に通う困窮学生に対する学生支援給付金の平等な給付を再度求める会長声明

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1 2020年(令和2年)5月19日、政府は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で世帯収入、アルバイト収入等が激減し、経済的困窮に陥った学生に対し、「『学びの継続』のための学生支援緊急給付金」(以下「本給付金」という。)を創設した。
ところが、同制度は、①外国人留学生に対してのみ「学業成績優秀者」の要件を課し、支給要件を加重していること、②本給付金の対象学校から朝鮮大学校を除外していることから、憲法第14条の平等原則,人種差別撤廃条約5条(e)(v),社会権規約第2条第2項,第13条第1項,第2項(c)に違反する合理的理由のない差別を内容とする、看過できない問題を有するものであった。
そこで、当会は、2020年(令和2年)12月9日、「学生支援緊急給付金に関し困窮学生への平等な給付を求める会長声明」を発出し、政府に対し、以上の差別を直ちに是正すべく、外国人留学生や朝鮮大学校に通う困窮学生に対しても、他の学生と平等に給付する制度を設けた上で、速やかに給付するよう求めた。
また、同制度が差別的な内容を有しているという問題については、当会だけでなく東京弁護士会、第二東京弁護士会等全国の複数の弁護士会及び関東弁護士会連合会が、憲法の平等原則等に反するとして声明を発出し、政府に是正を求めた。
2 2021年(令和3年)11月26日、政府は、いまだ流行する新型コロナウイルス感染症による対応のため、改めて「『学びの継続』のための学生支援緊急給付金」として1人10万円を支給することを閣議決定した。
しかし、今般決定された上記制度においても、前回の制度に対して当会を含む複数の弁護士会等が是正を求めた点について、以下のとおりほとんど改善されていない。
⑴ 外国人留学生に対する支給要件がそうでない学生と比べて厳しいこと
本給付金は、①「高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金)」の利用者であるか、②一定の困窮状況を前提として、「第一種奨学金(無利子奨学金)等の既存の制度を利用していること又は利用を予定していること」を、支給の対象の学生の要件としている。
しかし、外国人留学生はそもそも高等教育の修学支援新制度の対象になることはないため、①を満たすことはできない。
また、②についても、「学生等の学びを継続するための緊急給付金に関するQ&A(2021年(令和3年)12月20日版)」問2-6-1によれば、「既存の制度」とは、高等教育の修学支援新制度、第一種奨学金(無利子奨学金)、民間等による支援制度、大学等独自の奨学金制度、外国人留学生学習奨励費とされ、民間等による支援制度、大学等独自の奨学金制度を利用あるいは利用を予定している外国人留学生も対象になりうるとされたことは前進ではあるものの、それ以外の方法となると、外国人留学生が高等教育の修学支援新制度、第一種奨学金(無利子奨学金)を利用することはできない以上、支給の対象となるためには、外国人留学生学習奨励費を利用することしか残されていない。
そして、この外国人留学生学習奨励費の利用要件として、「前年度の成績評価係数が、大学院レベル、学部レベル、日本語教育機関とも2.30以上であり、給付期間中においてもそれを維持する見込みのある者であること。」が必要とされている。
そうすると、本給付金も構造としては、外国人留学生に対してそうでない学生と比べて厳しい学業成績要件を課しているという点では、前回の制度とほとんど変わっていない。
改めて述べるが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により経済的困窮に陥った学生に対して「学びの継続」を支援し、教育を受ける権利を保障すべき必要性は、外国人留学生であっても何ら変わることはない。
そして、「学びの継続」を支援するという本給付金の趣旨からすれば、外国人留学生に対してのみ、実質的に過重な要件を設定する合理性はない。
⑵ 給付金の対象学校から朝鮮大学校を除外していること
本給付金は、国公私立大学(大学院含む)・短大・高専・専修学校専門課程・法務省告示に指定された日本語教育機関、文科省が指定している外国大学日本校に在学する学生のみを給付金の対象としたため、各種学校である朝鮮大学校は、対象外とされた。
しかし、前回の声明でも指摘した通り、朝鮮大学校は、1998年(平成10年)に京都大学が朝鮮大学校卒業生の大学院受験を認め合格したことを契機に、1999年(平成11年)8月、文部科学省が学校教育法施行規則を改正して大学院入学資格を拡充し、外国大学日本校とともにその卒業生に大学院入学資格が認められている(学校教育法第102条第1項・同施行規則第155条第1項第8号・学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行等について(1999年(平成11)年8月31日文高大第320号)第一の二)。また、2012年(平成24年)には社会福祉士及び介護福祉士法施行規則が改正され、朝鮮大学校卒業生にも受験資格が認められている(社会福祉士及び介護福祉士法第7条第3号・同施行規則第1条の3第3項第3号)。
このように、他の外国大学日本校と同様に、朝鮮大学校を日本の高等教育機関として認める法制度が存在している。
そして、朝鮮大学校の学生も他の高等教育機関に在籍する学生と同様、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により経済的に困窮しているという事情は何ら変わることはない。
それにもかかわらず、各種学校の認可を受けていない外国大学日本校は本制度の対象とするのに、朝鮮大学校のみを本制度から除外する合理的理由はない。
これまでも政府は、各種学校に属する朝鮮学校に対し、高校無償化制度(2010年~)でも、幼児教育・保育無償化制度(2019年~)でも除外する方針をとってきた。
この方針の問題性については、当会の会長声明(平等な高校無償化制度の実施を求める会長声明(2010年(平成22年)3月29日)、外国人学校の幼児教育・保育施設を幼保無償化の対象とすること等を求める会長声明(2020年(令和2年)7月3日)等)のみならず、国連による勧告(子どもの権利委員会勧告(2019年(平成31年)2月7日)等)等、多くの機関から再三にわたり指摘、批判がなされている。
それにもかかわらず、政府が、改善をするどころか、同様の除外、差別政策を繰り返していることについては、当会としても、改めて強く批判せざるを得ない。
3 前述のように外国人留学生に対する支給要件の加重や朝鮮大学校の排除は、憲法第14条の平等原則、人種差別撤廃条約第5条(e)(v)、社会権規約第2条第2項、第13条第1項、第2項(c)に違反する、合理的理由のない差別である。
 よって、当会は、政府に対し、以上の差別を直ちに是正すべく、外国人留学生や朝鮮大学校に通う困窮学生に対しても、他の学生と平等に給付する制度を設けたうえ、速やかに給付することを、繰り返し求める。

2022年(令和4年)4月27日
福岡県弁護士会  
会 長  野 田 部 哲 也

旧優生保護法訴訟において国の賠償責任を認めた大阪高裁及び東京高裁違憲判決を踏まえて、被害者の全面救済を求める会長声明

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本年2月22日、大阪高等裁判所は、旧優生保護法違憲国家賠償請求大阪訴訟について、続いて、本年3月11日、東京高等裁判所も、同東京訴訟について、いずれも一審の原告敗訴判決を変更し、請求を一部認容するという画期的な判決(以下「大阪高裁判決」、「東京高裁判決」という。)を言い渡した。
両判決とも、旧優生保護法の違憲性を明確に認め、大阪高裁判決はそのような憲法違反の法律を立法した国会議員の責任を肯定し、東京高裁判決は同法に基づいて違憲・違法な優生手術を実施せしめた厚生大臣の責任を肯定したという相違はあるものの、いずれも国の国家賠償責任を認めた。その上で、これまで一審判決が除斥期間をもって原告の請求を斥けたのに対して、そのようなことは正義・公平の理念に反するとして、除斥期間の適用を制限することとしたものである。
これまで各地の同種訴訟では旧優生保護法の明確な違憲性が肯定されながらも、除斥期間が高い壁となって、請求棄却判決が相次いでいただけに、大阪高裁判決及び東京高裁判決がこの壁を乗り越えて、被害者の願いに寄り添う判決をしたことについては、高く評価できる。
とりわけ、東京高裁判決は、憲法違反の法律に基づく施策によって生じた被害の救済を、憲法の下位規範である民法724条後段を無条件に適用することによって拒絶することは慎重であるべきで、憲法17条により保障された国家賠償請求権を実質的に損なうことがないよう留意しなければならないことにも言及している。除斥期間の適用に関して、このような憲法に立脚した法論理が語られたことは画期的である。
そこで、当会は、国に対し、旧優生保護法に基づく過酷な被害をもたらしたことを真摯に反省し、大阪高裁判決に対する上告受理の申立てを取り下げるとともに、東京高裁判決に対する上告又は上告受理の申立てを断念し、両判決を速やかに確定させた上で、旧優生保護法の問題の全面解決に向けて、両判決が示した法的な賠償責任を前提に、被害を償うに足りる十分な賠償・補償はもちろんのこと、責任の明確化と謝罪及び真相究明・恒久対策について早急に検討し、一人でも多くの被害者に被害回復の途が開かれるよう積極的な対応を行うよう求める。
当会としては、今後も、旧優生保護法の問題について、あまねく被害回復がなされるよう必要な提言を適時行っていくとともに、旧優生保護法により侵害された尊厳の回復を含む真の被害回復の実現に向けて、真摯に取り組んでいく所存である。

2022年(令和4年)3月16日
福岡県弁護士会     
会長 伊 藤 巧 示

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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