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『五月の雨』上映会&感想交流会 開催報告

ジェンダー平等に関する委員会 副委員長 細永 貴子(62期)

令和8年5月21日(木)、福岡県弁護士会館にて、映画『五月の雨』の上映会および感想交流会が開催されました。本記事では、当日の開催状況やディスカッションの模様、そして実務家としての所感をご報告いたします。

■開催の状況

本上映会は午後1時から午後3時にかけて開催されました。当日は行政関係者から11名、弁護士12名の計23名にご参加いただきました。様々な立場で支援や実務に関わる方々が集い、上映後には活発な意見交換が行われました。

■映画『五月の雨』の概要

本作は、離婚後共同親権が施行された社会を舞台にしたドラマと、DV被害当事者や実務家への綿密な取材に基づくリアルな証言を交差させた作品です。新制度の運用が家族の将来にいかなる影響を及ぼし得るのかを多角的な視点から浮き彫りにしています。劇中では、身体的な暴力に限らず、日常的な支配・従属関係が外からは見えにくいモラルハラスメントの実態や、それが調停などの第三者には「誠実そうな親」と映ってしまう認識のギャップなどが生々しく描かれています。

■感想交流・ディスカッションでの主な意見

上映後のディスカッションでは、多様な視点による意見や問題意識が共有されました。

1 子どもの意見の反映について

作中で子の意見のくみ取り方が描かれず、「新制度下で実際に子の意見を適切に反映できるか」という疑問が呈されました。家裁での「親ガイダンス」等の取組みもありますが、親権は「子の利益のために」行使され「その年齢及び発達の程度に配慮」すべきと明記された今、子の意見形成・表明のあり方をさらに深める必要があります。

2 親子交流における「子の利益」判断と同居親への配慮

親子交流が子の利益となる一方、同居親に多大な負担を強いる可能性もあります。第三者が何をもって「子の利益」と判断するかの基準の難しさが議論されました。調停が説得しやすい側への働きかけに流れがちな傾向も指摘され、不安の内実を丁寧に聴き取り真意の表明を支えるなど、監護の質に直結する同居親の精神的安定へのサポートが不可欠です。

3 長期的影響への想像力と関わり方

共同親権の選択は離婚後も元パートナーとの関係が続くため、実務家や支援者は、当事者が将来の生活への具体的な想像力を持てるような関わり方をすることが重要であるとの認識が共有されました。

4 制度の正確な理解と相談実務での留意点

共同親権制度の導入は「選択肢の追加」を意味するに過ぎないにもかかわらず、一般に「原則として必ず共同親権になる」とミスリードされているのではないかとの懸念も示されました。法律相談等の実務においては、共同親権は選択肢の一つであるという制度の正しい建て付けを丁寧に伝える必要性が共有されました。

■実務家が本作を観ておく意味

本年4月の改正民法施行による「共同親権制度」の導入は、離婚実務の歴史的転換点です。弁護士や裁判所、行政機関などの実務家には、単に制度の枠組みを理解するだけでなく、当事者の主張の背後にある「力関係の不均衡」を的確に読み解き、適切な合意形成を導く深い洞察力が求められています。
本上映会は、モラルハラスメントが潜在する事案の協議のあり方や、共同親権の選択が及ぼす波及効果を検証する目的で開催されました。複雑な紛争の実相を知り、いかに当事者の権利を保護し、適切な解決を導くかを実務家全体で考えていく上で、極めて示唆に富む内容です。

■私個人の感想

本作を通じ、夫婦間の日常的なハラスメントの事象や当事者の恐怖を客観的に伝える難しさを改めて痛感しました。もちろん、互いに尊重し子のために協力できる関係性であれば共同親権に反対するものではありません。重要なのは、従前の関係性や今後の協力可能性を見極め、ケースバイケースで最も「子の利益」に叶う解決を目指すことです。特にハラスメントが潜在し、親が元パートナーに怯えて暮らす状況は決して真の「子の利益」になりません。実務家として、それぞれの家族にとって安心できる解決とは何かを柔軟な視点で問い続け、関係機関とも連携しながら寄り添った支援を続けていきたいと思います。

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