会員 平尾 真吾(66期)
1 はじめに
令和8年2月14日、北九州市立男女共同参画センター・ムーブにて九州弁護士会連合会拡大協議会が開催されましたので、報告します。この拡大協議会は、九州弁護士会連合会高齢者・障害者の支援に関する連絡協議会が、各県弁護士会(福岡は福岡部会と北九州部会)にて年1回持ち回りで行っている市民向けのシンポジウムです。今回は、北九州が担当となり、「空き家を生まないためのシンポジウム~次の世代へのバトンの渡し方」と題してシンポジウムを開催しました。
2 基調講演
岡山県で空き家の対策をされている岡山大学学術研究院准教授の氏原岳人さん、中電技術コンサルタント株式会社織田恭平さん及び岡山住まいと暮らしの相談センター代表理事の石田信治さんの3名にご登壇いただき、基調講演を行っていただきました。氏原さん、織田さん及び石田さんは「岡山・空き家を生まないプロジェクト」のメンバーとして、岡山県内で空き家の発生を抑制するための取り組みをされています。
お三方には、空き家が発生してしまう原因やそれに対する対応の方法として、空き家の所有者の方に対する行動変容を促す仕組みづくりが重要であるとのご指摘をいただきました。特に空き家の所有者の心理として、後で起こる問題を想像できていないため、その結果、行動に至っていないというお話がありました。さらに、空き家になってから3年までは、空き家所有者の管理があるものの、それを超えると管理頻度が大幅に下がるとの指摘がありました。このような空き家所有者の心理を分析したうえで、岡山では、空き家所有者に対する情報提供と機会提供を行い、空き家所有者の行動変容を促す取り組みを行っているとの説明がありました。特に岡山では、この数年で空き家がこれから増えそうな地域を抽出し、その地域の世帯にアンケートを送付して、その世帯が空き家の問題に気付いてもらうという、珍しい情報提供の取り組みをしていることが説明されました。そして、リアクションのあった世帯に対して案内を行うという方法で、情報提供をしていることがわかりました。岡山では、さらに進んで、リアクションのあった世帯をホームページに誘導し、ウェブ上で質問に答えてもらった後に、「カルテ」を提供するという方法をとっています。これは、質問に回答した直後に、質問に答えてもらった世帯の置かれている状況をウェブ上で示すともに、どのような対応をすればよいか、相談する専門家がだれであるのかを案内するというものです。さらに、行動経済学で取り上げられる「ナッジ」という理論を使って、送付する文書をできる限りわかりやすく工夫したり、広報に力を入れているとの説明もありました。
このような手法を利用して、岡山では、空き家所有者の方に対して行動変容を促していることがわかりました。
3 パネルディスカッション
その後、基調講演をしていただいた3名に加えて、北九州市都市戦略局都市再生推進部空き家推進課で空き家対策係長を務めている森迫英夫さん及び当部会の小野純司さんを交えて、パネルディスカッションを行いました。
森迫さんからは、北九州市の空き家の現状をお話いただくとともに、「面的対策推進事業」という北九州での特色のある政策をお話しいただきました。これは、空き家が複数みられる地域について、北九州市が空き家の所有者の割り出しを行うなど支援をし、不動産業者が空き家を買い取るなどして開発を推進するという政策です。また、小野さんからは、弁護士として空き家問題にかかわる中で、信託や任意後見、成年後見という方法を紹介していただくともに、遺言を利用した方法が効果的であるとのお話がありました。
空き家の解消という命題は重要である一方、空き家所有者の方の意向に沿って空き家を未然に防ぐには、行動変容のアプローチが重要であることが改めてわかりました。また、継続的に空き家所有者に関与するとともに、遺言書を活用した方法がよいという認識を共有しました。
空き家については、現在様々な団体が活動をしていますが、弁護士会が遺言書の作成など、組織的かつ継続的に支援をしていくことの必要性を感じました。
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