北九州部会のすべての性の平等に関する委員会 副委員長 仲地 彩子(71期)
1 北九州市との協議会
北九州部会のすべての性の平等に関する委員会では、毎年、北九州市との協議会を持ち、行政と弁護士会のそれぞれの視点から、家庭に関する問題全般における意見交換を行っています。これまでも、主として子ども家庭局との意見交換を行いたいへん有意義な機会となっていましたが、令和7年は、市民課など複数の担当部署からご出席いただき、特に充実した協議が行えました。弁護士として、家事事件を取り扱う上での学びが非常に多い協議会となりましたので、以下、報告いたします。
2 議題1:住民票および戸籍の取得手続きについて
(1) 住民票や戸籍等(以下、「住民票等」)の閲覧制限等をかけている事例において、住民票等の開示請求がなされた場合、どのような審査のもと対応しているか。
(2) 【回答】
DV等支援措置を受けている事案においては、総務省から住民基本台帳事務処理要領が示されており、これに基づく運用を行っている1。
第三者が行う請求の場合は、もともと慎重に審査を行っているが、DV等支援措置を受けている場合は、請求者の中に、相手方が含まれていないかについて、特に慎重に判断を行っている(契約書など、請求権を根拠づける資料の提示を求めている。請求者が法人の場合は、相手方が法人内にいる可能性もあるので、法人の実在性も含めた確認をしている。)。相手方が第三者になりすましている場合なども念頭においている。
相手方からの請求は、代理人からの職務上請求であっても交付しない。
3 議題2:認知後の親権者の届出について(現行運用、改正後運用)
(1) 現行法下では、婚姻関係にない父母の子で、認知を得ない子は、母親が親権者となる。ただ、父の認知後、父母の協議で父を親権者と定めたときは、父が親権者となることができる(民法819条4項)。認知後に期間がたった後に届出をする場合は、実態としては親権者変更のようにも思えるが、家庭裁判所の許可なく、届出のみで親権者を定めることができるのか(戸籍法78条)。また、4月の改正法施行後も運用はかわらないか。
(2) 【回答】
戸籍法78条の届出をするのに、届出期間の制限はない。認知からどれだけ時間がたっても、父は、届出のみで親権者となることができる。
改正法施行後の戸籍運用については、現行から大きな変更はなさそうではあるが、まだ通達が示されていない(※令和7年10月時点)。
4 議題3:世帯分離について
(1) どのようなときに世帯分離ができるか。離婚後に元配偶者が住民票を異動させない場合はどうか。
(2) 【回答】
婚姻中の夫婦で同一住所であれば世帯分離はできないが、離婚をしていたら世帯分離は可能である。
一方配偶者が事実上は家を出ているが、離婚をしていない場合は、原則として世帯分離は難しい。不現住が確認できる場合には、例外的に、職権消除の対象になる可能性がある(とはいえ、荷物などがあり、客観的に不現住を確認できない場合は、職権消除は難しい)。
5 議題4:各種手当の受給方法について
(1) 【回答】児童手当について
受給者が消滅届を提出し、子を養育している者から申請をするのが原則である。しかし、離婚後の夫婦については、職権で消滅手続をして、子の養育者に支給している。離婚調停中の夫婦については、調停係属証明書があれば、手続き可能である。また、弁護士をつけて離婚協議中の夫婦については、弁護士の書面で足りる(形式は任意であり、書面の内容で離婚協議中であることを確認している)。
(2) 【回答】児童扶養手当について
原則として、離婚が受給の要件となっている。しかし、父又は母から1年以上「遺棄」されている場合も受給の対象となる2。
遺棄の認定については、厚生労働省から基準が示されている3。もともとは、遺棄とは、相手が行方不明など探しても見つからない事態を想定していたが、現在は、父から監護を受けられていない場合には、実態に応じて、遺棄を認定している。たとえば、父が、婚姻費用を支払わず、離婚調停を起こしても、離婚にも応じずに1年以上たっている場合などは、例え面会交流が行われているとしても「遺棄」を認定できるケースがある。
6 終わりに
今回の協議会は、市民課を含む複数部署のご出席により、例年以上に多角的な視点から議論を深めることができ、実務に直結する知見を得る極めて貴重な機会となりました。
当委員会では、今後も本協議会を継続し、北九州市との緊密な連携を図りながら、より良い実務の構築に努めてまいりたいと思います。
1 総行住第20号「住民基本台帳事務処理要領の一部改正について(通知)」https://www.soumu.go.jp/main_content/000929822.pdf
2 北九州市「児童扶養手当の支給」https://www.city.kitakyushu.lg.jp/contents/924_10105.html
3 厚生労働省「児童扶養手当遺棄の認定基準について」https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/teianbosyu/doc/r03/tb_r3fu_12mhlw_116.pdf


