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あさかぜ基金だより

カテゴリー:月報記事

弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 小島 くみ(75期)

豊前の西村弁護士に会ってきました

去る7月28日、豊前総合法律事務所を訪問、見学し、西村弁護士から、司法過疎地域である豊前市において事務所を開設してからの弁護士活動などについてお話を聞いてきました。

あさかぜ基金法律事務所は、九弁連管内の司法過疎地に派遣する弁護士を養成する公設事務所です。あさかぜ基金法律事務所で養成を受けた弁護士は、九弁連管内のひまわり基金法律事務所などに赴任します。そして、ひまわり基金法律事務所での任期を終えた後は、別の一般事務所に就職する弁護士や別の場所で独立する弁護士など様々ですが、なかには、そのまま現地に定着する弁護士がいます。

西村幸太郎弁護士(66期)は、あさかぜ基金法律事務所で養成を受けた後、平成28年10月に福岡県豊前市の豊前ひまわり法律事務所を開設して赴任し、任期を終えた後の令和元年10月、福岡県豊前市において豊前総合法律事務所を開設して同地に定着しました。

豊前市での弁護士活動

豊前市は、福岡県の東端に位置しており、人口2万3000人、南には修験道の遺跡で知られる求菩提山や天然記念物ツクシシャクナゲの群生地のある犬ヶ岳を望み、北は波静かな周防灘に面している緑豊かな田園都市です。

そして、豊前市は、行橋市及び苅田町などの京都郡、吉富町などの築上郡などとともに福岡地方裁判所行橋支部管轄である司法過疎地です。

西村弁護士は、3年間にわたる豊前ひまわり基金法律事務所においての執務を継続した後、豊前市での活動を継続したいとの思いを強くしたことから、同地に骨をうずめるべく定着し、現在は、豊前市に隣接する吉富町に新居を構えて子ども2人の子育てをするなど、自然に囲まれた同地での生活を家族4人で満喫しているとのことです。

西村弁護士は、豊前市や築上町、上毛町、吉富町にとどまらず、周辺地域で弁護士の少ない地域にお住いの人々からの依頼も受けているとのことです。そして、多くの人々が、気軽に法律相談をすることができるように工夫して交通事故、相続、離婚、労働事件、債務整理及び刑事事件など、幅広い分野において、地域在住の人々の意向に沿うような解決を目指しているということや、地域のニーズに応えて、終活セミナーを開催するなど新たなる客層の開拓にも意欲的にとり組んでいるということ、他士業と連携して依頼を増やしているということなどの話を聴くことができました。今後の課題は、司法過疎地域で業務を引継いでくれる弁護士を得ることであるとのことでした。

多くの事件を抱え、豊前市で活躍している西村弁護士の話を聴いて、司法過疎地域における弁護士の存在意義及び今後の課題というものを実感することができました。

地域に根差した弁護士を目指して

私は、令和6年2月にあさかぜに入所し、司法過疎偏在地域への赴任に向けて養成を受けてきましたが、来年早々、長崎県壱岐市にある壱岐ひまわり基金法律事務所に赴任させていただけることとなりました。

西村弁護士をはじめ、司法過疎偏在地域で活躍されている諸先輩弁護士をお手本として、地域の人たちから頼りにされる存在となれるよう、より一層の研鑽を積んでいかねばならないと、決意を新たにしています。

会員の皆様には、今後とも私たちあさかぜ所員への温かいご支援とご指導をお願いいたします。

豊前総合法律事務所

中小企業法律支援センターだより 中小企業の日全国一斉シンポジウム『挑戦を止めない経営者たちへ』

カテゴリー:月報記事

中小企業法律支援センター 委員 平田 亘佑(76期)

1 はじめに

令和7年7月18日(金)午後4時から午後7時まで、福岡信用金庫本社ツインビル14階会議室にて、7月20日の「中小企業の日」を記念した全国一斉シンポジウム『挑戦を止めない経営者たちへ。事業承継・新規事業、突破する力を学ぶ日~経営者の挑戦に終わりはない~』が開催されました。この場をお借りして、本シンポジウムの実施内容についてご報告させていただきます。

2 参加状況

本シンポジウムは、Zoomでの同時配信も行われ、総勢66名の方にご参加いただきました(福岡会場50名、筑後会場1名、Zoom15名)。ご参加いただいた経営者の方々の業種は、金融、不動産、コンサル、福祉など多岐に亘りました。

福岡会場の様子

3 講演(1)「挑戦を止めない経営者たちへ~第二創業・新規事業への挑戦~」

e-FitsLab株式会社代表取締役籾山英宗様より、「挑戦を止めない経営者たちへ~第二創業・新規事業への挑戦~」と題して、ご自身の経験を講演いただきました。

籾山様は、大学在学中にお父様が急逝されたことで実家の保険代理店を急遽承継することになったことから始まり、数々の困難を経て、現在ではe-FitsLab株式会社代表取締役という地位を確立された方です。講演では(1)事業承継と新規事業、(2)第二創業、(3)第三創業といったフェーズごとに分けてお話しいただきました。これまでの輝かしい成功の数々をお聞きできると思いきや、むしろ私の体感としては、8割方が失敗や後悔からくるエピソードだったような印象で、かなり赤裸々に語っていただきました。籾山様のお人柄と巧みな話術もあり非常に内容の濃い講演でしたが、紙面の関係もありますので、以下、概要だけ記載致します。

(1) 事業承継と新規事業(21歳から31歳まで)

上記の通り、籾山様はお父様の急逝により急遽保険代理店業を承継する。承継後、自らの経験を活かして保険SHOPやマネースクールを開講するも、リーマンショックを受けて頓挫。

(2) 第二創業(32歳から46歳まで)

それでも中小企業同友会の仲間たちと励まし合い、切磋琢磨しながら、会社合併をして、何とか会社としては軌道にのせる。しかし、マーケティング担当と現場とのギャップ、経営陣内での考え方の相違などから、必ずしも順調とはいえない状況が続く。そんな中、中小企業同友会の仲間たちのアドバイスもあり、「思考の習慣」に気づく。「思考の習慣」から脱却することで、確定拠出型年金の導入支援や投資教育に事業を展開し、軌道に乗せる。

(3) 第三創業(46歳から「今」)

第三創業として、中小企業同友会や福岡信用金庫との連携を通じて、さらなる発展を目指す。これからも「何のための経営か」を自問し続ける経営者として、e-FitsLab株式会社籾山英宗氏の挑戦は続く。

講師の籾山英宗様

4 講演(2)「金融機関から見た事業承継支援」

福岡ひびき信用金庫ソリューション部林貴寛様より、「金融機関から見た事業承継支援」と題して、同金庫が行っている事業承継支援について実際の事例を踏まえてご説明がありました。

福岡ひびき信用金庫は、事業承継に関していうと、日本政策金融公庫と、令和4年4月26日に「事業承継支援に関する連携協定」を締結しており、日本公庫と連携して中小企業・小規模事業者の円滑な事業承継のサポート及び地域経済の活性化を目指して活動されています。林様は同金庫に入庫以来、営業店で融資窓口・渉外活動を10年経験した後、本部の企業コンサルティング部に配属されてからこれまで9年間事業承継M&A業務に従事されてきた方です。

今回紹介された事案は、どれも後継者の不在や債務超過などといった中小企業ならではの課題を抱えた事案といえ、福岡ひびき信用金庫の方々は単に融資の判断をするだけでなく、事業承継後の持続的な経営を確保するための方策を事業者と一緒になって検討されていました。

事業承継を成功させるには、各機関が一体となって協力体制を構築することが大切であると実感するとともに、今回のようなイベントを通して、各関係機関の交流の場を設けることで、人と人との輪を広げることも事業承継の一助になっていると確信します。

講師の林貴寛様

5 事業案内
(1) 福岡信用金庫

百周年プロジェクトチームの皆様から、創業100周年を記念したキャンペーンについて紹介されました。お客さまとともに次の100年へと共に歩んでいきたい気持ちを込めて考えられた創業100周年のブランドコンセプト「きになるしんきん」のポエムをパッケージしたプレゼント企画をされているそうなので皆様ぜひご参加ください。

(2) 福岡県事業承継・引継ぎ支援センター

当会所属の会員でもある福岡県事業承継・引継ぎ支援センター統括責任者補佐安東翔太弁護士より、同センターの事業内容と実績についてご紹介がありました。同センターは親族承継、社員承継、第三者承継といった各種事業承継に関する相談をワンストップで対応する機関であって、後継者や譲渡先をお探しの事業者とのマッチングから事業承継後の経営者のことまで考えたサポートをされています。民間のM&A仲介業者と比べて、小規模事業者や債務超過の事業者からの相談の割合が多い印象であると言われておりました。安東弁護士はまだまだ認知度が不十分であると言われておりましたが、年々右肩上がりの実績をあげられていて、今後ますます活躍が予想される機関の1つです。私も同センターのサブマネージャーの方と協力して事業承継事案を担当させていただいたことがありますが、非常に頼もしかった印象が今でも残っています。

福岡県事業承継・引継ぎ支援センター 安東翔太弁護士

(3) 福岡財務支局

福岡財務支局理財部金融調整官の安田恭輔様より財務局の事業者支援に係る取組について紹介されました。財務局は財務省の総合出先機関として、全国に9か所設置されており、各地域の特性を踏まえた財務省・金融庁の施策を実施、広報する機関です。事業承継との関係でいうと事業者支援態勢構築プロジェクトと題して、各地域の事業者の実情に応じたきめ細やかな支援を行っています。具体的には商工会議所の経営指導員と官民金融機関の営業店職員等を対象に意見交換会を実施したり、事業承継に関する各種関係機関の説明会を開催したり、情報共有のための場を「福岡地域しんこうコンソーシアム」として提供されています。当会もこのコンソーシアムに参加させてもらっています。

福岡財務支局理財部金融調整官 安田恭輔様

6 懇親会

シンポジウムの終了後は、同会場内で名刺交換会が行われ、その勢いのまま、近くのお店で懇親会が開催されました。お店が貸し切りであったこと、お互いお酒が入っていること、席が近く物理的距離感も近かったこと等から、講演及び事業紹介を聞いてさらに深堀りしたくなった話について尋ねたり、より内情に踏み込んだ話を聞けたりと、懇親会もシンポジウムに負けず劣らない盛り上がりでした。

7 おわりに

今回の全国一斉シンポジウムは、アンケート結果を見ても、好意的なコメントばかりで、当センターとしても来年以降のモチベーションに繋がるところです。とりわけ、毎年7月20日が「中小企業の日」であることだけでも覚えていただけると幸いです。当センターは引き続き各種関係機関とのイベント・勉強会を開催して参りますので、興味をお持ちの先生方がおられましたら是非ともご参加いただけたらと存じます。

最後にはなりますが、本シンポジウムの実施にあたって御協力いただいた各関係機関の方々に改めて深く御礼申しあげます。ありがとうございました。

あさかぜ基金だより

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弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 社員弁護士 滝本 祥平(75期)

引継式がありました

令和7年5月26日、対馬グランドホテルにて対馬ひまわり基金法律事務所の所長弁護士引継式がありました

対馬ってどんなとこ

対馬は、南北に82キロメートル東西に18キロメートルと細長いです。そのため、島の北側にある韓国展望所付近の住民が対馬ひまわり基金法律事務所へ法律相談に行くときの負担は軽視できません。

福岡でたとえると、どうなるでしょうか。グーグルマップで調べてみました。六本松の福岡県弁護士会館から北九州部会までの車での移動距離とおおよそ一致しました。

地域特性を踏まえたあいさつ

佐古井弁護士は、2年間で344件の相談を受け、うち156件を受任しました。対馬において弁護士が果たすべき役割を十分果たしたと言えると思います。

しかし、「自分が成しえなかった、上の地域の相談需要の掘り起こしにも力を入れてもらいたい」という地域の特徴に由来する課題までは解決できなかった旨反省を述べ、後任の藤田弁護士にその課題を委ねました

藤田弁護士も、この課題について「赴任して3か月。対馬が広いことを実感して、単純に対馬に法律事務所があるというだけでは、対馬の皆さんの話は聞けないということ。出張相談等積極的に事務所外に出る活動をすることが必要だと思います」と決意を表明しました。

藤田弁護士らしい引継式

写真は、藤田弁護士らしい引継式での様子です。
藤田弁護士の幼い娘さんが「パパ」と言ったのに対し、「パパだよ」と対応した瞬間です。

引継式からつながるご縁

引継式には、あさかぜのOBもたくさん参加しました。引継式後、OBの一人である伊藤拓弁護士から、5月30日の開所披露会に誘ってもらいました。

伊藤弁護士の開所披露会でのご縁

伊藤弁護士がこのたび開設し、披露した事務所は、大野城市に所在しており、市民・国民の司法アクセスの改善に資する立地だからでしょうか。司法アクセスの改善に関心のある私だけでなく、司法アクセスの改善のために行動されている他県の弁護士も多数参加していました。他県の弁護士からひまわりでの赴任経験、事務所の運営方針など、将来設計にきっと役に立つ話をいろいろと聞くことができました。

また、県外で活躍されているOB/OGや委員会の異なる福岡部会の弁護士からも望ましい後輩弁護士のふるまい方など、興味深く、かつ、ためになる話をたくさん聞くことができ勉強になりました。

近況

壱岐ひまわり基金法律事務所へ私は、応募しました。同僚の小島くみ弁護士と競合することになります。私は、壱岐の青い海と山がないことによる冷涼さに非常に心打たれ、是が非でも壱岐に赴任したいと考えています。

新人を紹介してください

今後とも、会員の皆様には、弊所へのご支援とご指導をどうぞよろしくお願いします。とりわけ、新人採用が行き詰っています。司法過疎問題に関心のある修習生やロー生・学部生が身近にいたら、ぜひ紹介してください。お願いします。

福岡県弁護士会 あさかぜ基金だより

2025年度女性の権利ホットラインを実施しました

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会員 井芹 美瑛(67期)

1 はじめに

6月23日から6月27日まで、全国で一斉に実施された女性の権利ホットラインの一環として、福岡県弁護士会でも弁護士会館及び福岡県内各所の共同参画センター各地12箇所で、女性の権利ホットラインを実施しました。

女性の権利ホットラインでは、女性に対する暴力(DV、ストーカー、セクシュアル・ハラスメント)や離婚に関する諸問題、職場における差別など、女性の権利一般に関する無料電話相談を実施致しました。また、性的マイノリティに関する同様の問題の相談も受け付けておりました。

2 相談件数

ホットライン初日に福岡県内で報道された効果もあってか、5日間で合計92件の相談がありました。

私は、6月23日初日の午後、弁護士会館にて相談を担当しました。電話3台・弁護士3人体制で行い、常にどこかの電話が埋まっているという状況でした。

6月23日 福岡県弁護士会館 12
6月24日 筑後弁護士会館 5
6月24日 筑後市(サンコア第3講習室) 5
6月24日 田川市男女共同参画センター(ゆめっせ) 4
6月24日 福岡県男女共同参画センター(あすばる)(春日市) 14
6月24日 大牟田市男女共同参画センター 2
6月25日 直方市役所 3
6月25日 ハートピアぶぜん(豊前市) 6
6月25日 北九州市立男女共同参画センター(ムーブ) 15
6月26日 飯塚法律相談センター 8
6月27日 福岡市男女共同参画センター(アミカス) 12
6月27日 大野城まどかぴあ男女平等推進センター(大野城市) 6
合 計 92
3 相談内容

相談内容として、以下のとおり夫婦関係に関する相談が最も多く、DVや職場でのセクシュアルハラスメントといった女性に対する暴力に関する相談も多く寄せられました。

  • 夫婦関係(離婚の可否・婚姻費用・財産分与等) 70件
  • 女性に対する暴力(DVや職場でのセクハラ) 12件
  • 労働問題 3件
  • その他(親子関係・相続・借金問題等) 15件
4 おわりに

体調不調で面談相談に行くことができなかったので今まで法律相談をしたことがなかったけれども、無料電話相談と聞いて相談しようと思ったという方もいらっしゃいました。お一人あたりじっくりとお話を聞き相談に応じることで相談者の不安を解消し、必要であれば面談相談へ繋げるなど対応しています。女性の権利ホットラインとして実施することで、なかなか弁護士による法律相談に繋がらない方であってもまずは電話で気軽に相談するということができ、ご本人の問題解決に役立つことができたと感じております。来年度以降も引き続き実施していく必要性を強く感じました。

福岡県弁護士会 2025年度女性の権利ホットラインを実施しました

研修委員会だより「インクルーシブ教育」をご存知でしょうか。

カテゴリー:月報記事

子どもの権利委員会 委員 武 寛兼(69期)

1 はじめに

刑事弁護等委員会から引続き、子どもの権利委員会の研修会・勉強会を紹介させていただきます。

子どもの権利委員会では、少年付添人に関する分野、子どもの福祉に関する分野、子どもの学校・教育問題に関する分野等を扱っており、多岐にわたる研修会・勉強会を開催しております。委員会では常に何かしらの研修会や勉強会に関する議題が上がっているので、正直、研修企画数1位は子どもの権利委員会だと思っていましたが、1位は刑事弁護等委員会ということで流石です(子どもの権利委員会の研修企画数を調べると順位が確定してしまいそうなので、あえて数えることは控えておきます。研修企画数は、1位でなくても2位でなくても何位でもいいのです。)。

さて、子どもの権利委員会で実施している研修会や勉強会は、福岡部会で国選付添人名簿の登録更新研修となっている少年付添研究会をはじめ、子どもの権利110番相談名簿登録のための学校問題対応研修、いじめ重大事態調査委員会候補者名簿登録のための研修等の登録研修のみならず、近時見聞きすることが多くなった「ヤングケアラー」や「インクルーシブ教育」に関するものがあります。これらの研修会や勉強会は既に過去の月報でもご報告いただいておりますが、この中から、「インクルーシブ教育」に関する勉強会についてダイジェスト的に紹介させていただきたいと思います。

2 インクルーシブ教育勉強会(令和6年6月6日実施)

令和6年6月6日に、新潟県弁護士会の黒岩海映弁護士をお招きして、インクルーシブ教育の勉強会を実施しました。

そもそも皆さんは、インクルーシブ教育をご存知でしょうか。インクルーシブ教育とは、障害の有無などさまざまな違いや課題を超えてすべての子どもが一緒に学ぶ教育のことです。

講義の内容は、日本が批准している障害者権利条約や法律でインクルーシブ教育が求められているということから始まり、スウェーデンやノルウェーの学校の様子や大阪府豊中市の小学校の様子などの視察報告をいただきました。

この勉強会で印象的だったのは、障害の「人権モデル」という考え方です。障害についての考え方として「医学モデル」と「社会モデル」という概念があることは何となく知っていたのですが、機能障害を含めた「ありのまま」を人権として、尊厳として、多様性として、価値あるものとして認める(機能障害は人権の能力を否定しない)「人権モデル」という考え方は、非常に重要なものだと思いました。

なお、この勉強会については、2024年8月号の月報(31頁~)で鶴崎陽三会員からの詳細なご報告がありますのでそちらもご覧ください。

3 子どもの権利条約批准30周年記念イベント(令和6年7月27日実施)

令和6年7月27日には「子どもの権利条約批准30周年記念イベント」を実施し、インクルーシブ教育をテーマに取り扱いました。

このイベントの目玉は、「みんなの学校」という映画の上映でした。この映画は、「すべての子どもの学習権を保障する」という理念のもと、インクルーシブ教育を実践している大阪市住吉区にある大空小学校の日常を描いたドキュメンタリー映画です。参加者の中には、この映画のためになんと鹿児島から来られた方もいらっしゃいました。

インクルーシブ教育の重要性は理解しつつも、いざ実践するとなると様々な問題が生じるのではないかということは気になるところです。この映画でも様々な特性を持つ子どもたちがいるがゆえに様々なトラブルが起きてしまいます。そのトラブルを通じて子どもたちが学ぶ姿や変わっていく姿には考えさせられるものがあります(実は涙をこらえるのに必死でした)。

このイベントについては、2024年9月号の月報(32頁~)で長本祐佳会員からの詳細なご報告がありますのでそちらもご覧ください。

4 インクルーシブ教育勉強会(令和7年2月13日実施)

令和7年2月13日には、福岡県立大学助教の二見妙子先生と医療的ケアが必要なお子様を育てられた橋村りかさんを講師にお招きして、再び、インクルーシブ教育勉強会を開催しました。

二見先生からは、「インクルーシブ教育について考える―1970年代の大阪府豊中市における原学級保障運動」という表題で、大阪府豊中市が、「共に生きる教育」の運動と実践に対する国家の分離教育制度の強制を一定程度回避することに成功した過程についてご講演いただきました。

続いて、橋村さんから、橋本さんのお子さん(ももかさん)のお話をいただきました。ももかさんは、妊娠時には何の問題もなく育っていたそうですが、出産時のトラブルで重度の仮死状態で生まれ、一命は取り留めたものの、重度の障害が残ってしまいました。橋村さんは、ももかさんの命が助かったという喜びよりも、この子を一生背負って生きていかなければならないという思いだったそうです。橋村さんは、当初、ももかさんは養護学校しか行くところがないと思い込んでいたそうです。しかし、周りの子どもたちやその子どもたちに対するももかさんの反応をみてその考えは変わっていきました。橋村さんのお話の中で特に印象的だったのは、橋村さん自身もそうであったように、障害を持つ子どもが出会う最初の差別者、最初の差別の大きな壁は親だという言葉でした。私も自分の子どもが同じような状況になれば、橋村さんのような考えになっていたと思います。

この勉強会や橋村さんのお話については、2025年4月号の月報(28頁~)で鶴崎陽三会員からの詳細なご報告がありますのでそちらをご覧ください(特に、橋村さんのお話のところは必読です!)。

5 さいごに

ご存知の方も多いと思いますが、来る令和7年12月11日から長崎県で開催される第67回人権擁護大会では、第1分科会で「分ける社会を問う!~地域でともに学び・育つインクルーシブ教育、ともに生きる社会へ~」というシンポジウムが開催される予定です。それに先立ち、福岡県弁護士会でも、令和7年8月10日にプレシンポを行う予定です。

冒頭でもお伝えしましたように、子どもの権利委員会では、これまで多岐にわたる分野の研修会や勉強会を実施しており、これからも多くの会員にとってためになる研修会や勉強会を実施する予定です。その中でも、特に今年は「インクルーシブ教育」に関する企画についてご注目下さい。

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