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2026年8月 の投稿

2026年度女性の権利ホットラインの実施

カテゴリー:月報記事

ジェンダー平等委員会 委員 西田 舞季(76期)

1 はじめに

6月22日から6月26日まで、福岡県内各所の男女共同参画センター等と共同で、女性の権利ホットラインを実施しました。
女性の権利ホットラインは、女性に対する暴力(ドメスティック・バイオレンス、ストーカー、セクシュアル・ハラスメント)、離婚に関する諸問題、職場における差別など、女性の権利一般に関する無料電話相談をするものです。また、性的マイノリティーに関する同様の問題の相談も受け付けております。
実施に関する報告をいたします。

2 相談体制・件数

相談は、下記の通り、福岡県内12箇所の相談場所で行いました。
5日間で合計71件の相談がありました。
開始早々、相談の電話が入り、予め質問事項を詳細にまとめている様子で相談される方もいました。

6月22日福岡県弁護士会館11
6月23日筑後弁護士会館3
6月23日直方市役所1
6月23日筑後市(サンコア第3講習室)2
6月23日田川市男女共同参画センター
(ゆめっせ)
1
6月24日福岡県男女共同参画センター
(あすばる)(春日市)
13
6月24日ハートピアぶぜん(豊前市)2
6月24日北九州市立男女共同参画センター(ムーブ)13
6月24日大牟田市男女共同参画センター5
6月25日飯塚法律相談センター6
6月26日福岡市男女共同参画センター
(アミカス)
8
6月26日大野城まどかぴあ男女平等推進センター(大野城市)6
合計17
3 相談内容

相談内容は以下の通りです。
夫婦関係に関する相談が最も多く、DVや職場でのセクシュアル・ハラスメントといった女性に対する暴力に関する相談や、解雇等の労働問題の相談も多く寄せられました。
中には、相談内容が複数にわたる場合もあり、悩み・問題に関連する支援団体や支援施設を知りたい、という相談もありました。
相談を聞いて面談相談が必要な場合は、面談相談へ繋げる等の対応しています。

  • 夫婦関係(離婚の可否・婚姻費用・財産分与等)60件
  • 内縁・男女関係 1件
  • 女性に対する暴力(DVや職場でのセクハラ)6件
  • 労働問題 8件
  • その他(親子関係・相続・借金問題等)10件
4 相談員の方々との交流

相談のきっかけとしては、各種相談機関から当該ホットラインの存在を教えてもらったという方が多かった印象を受けました。各種相談機関への周知の重要性を感じました。
また、共同参画センターの相談員の方々と、相談内容や新法のことで意見交換したり、法律相談への連携について共に考える機会もありました。相談員の方々と交流し、連携した体制を構築することで、充実した問題解決につながるのではないかと考えました。

5 当該ホットラインの意義

相談者の中には、様々な要因で外に出られない方や、対面での相談に行く時間を確保するのが困難な方、今悩んでいることが法律の問題なのかわからずに相談を躊躇している方、経済的な理由で相談や法的手続を行うことが困難だと感じている方がいました。
具体的には、女性に子育てや介護の負担が偏るために労働の機会が妨げられている方の相談や、ワークライフバランスに配慮した職場との謳い文句を信じて就職したのに、実際は子育てのために必要な配慮をしてもらえず労働条件が合わずに解雇され、経済的にも精神的にも困っている方の相談、養育費の金額が十分でないうえ、取り決めした金額の支払いがないために困窮しており法律相談費用等の負担が大きいという方の相談が目立ちました。中には、できるだけ早く面談相談をした方が良いと思わざるを得ない深刻な相談も多くありました。女性であること、女性として周囲から求められていることによって悩んでいる方々が、負担なく相談できる場所を作り出し確保する必要性を感じました。
当該ホットラインは、上記のような、弁護士による法律相談に繋がることが難しい方々と繋がることができるものです。当該ホットラインを実施することで、まずは電話で気軽に相談するということができ、問題解決に向けたアドバイス等を通じて役立つことができたと感じております。
来年度以降も引き続き実施していく必要性を強く感じました。

手錠腰縄問題の歴史と将来~福岡県弁護士会の取り組み

カテゴリー:月報記事

手錠腰縄問題PT 副座長 市場  輝(66期)

1 はじめに

刑事法廷内の手錠腰縄の問題は、法廷内で被疑者、被告人(以下「被告人等」といいます)に手錠腰縄が使用されたときから人権問題として生じているものです。そして、手錠腰縄姿をみだりに晒されないこともまた、そのときから人権問題として生じてきました。手錠腰縄の問題は歴史的にみて古くから存在していた人権問題であったにもかかわらず、近年まで、国(国会、検察庁、拘置所等)、裁判所、弁護士会から置き去りにされていた感が否めません。
ようやく令和8年1月26日最高裁通知により、傍聴人に手錠腰縄姿をみだりに晒されない問題が大きく改善することになりました。そこで、今回の最高裁通知を機に、手錠腰縄問題の歴史と将来について、福岡県弁護士会の取り組みをご紹介しながら申し述べたいと思います。

2 令和8年1月26日最高裁通知

令和8年1月26日、最高裁判所は手錠腰縄に関する通知を発しました。被告人等の手錠腰縄姿を傍聴人に見られないようにするため法廷内に衝立を設置する具体的イメージを共有するものです。これにより被告人等の手錠腰縄姿が傍聴人にみられないようにする具体的な方策が示され、手錠腰縄問題は大きく改善されることになりました。
しかし、この最高裁通知が発せられるまでに、平成5年7月19日の最高裁通知から実に30年以上もの月日が経過しています。

3 平成5年7月19日最高裁通知

平成5年7月19日、最高裁判所は手錠腰縄に関する通知を発しています。この通知は、最高裁判所事務総局刑事局と法務省矯正局が協議した結果として、今後、特に戒具を施された被告人の姿を傍聴人の目に触れさせることは避けるべきであるという事情が認められる場合には、被告人を傍聴人より先に入廷させ、被告人を傍聴人より後に退廷させて、傍聴人のいない所で解錠・施錠することを原則とし、これによることができない特段の事情がある場合には、被告人の入廷直前又は退廷直後に法廷の出入口の所で解錠し又は施錠させるという方法その他適切な方法を執ることとされたというものです。これにより手錠腰縄問題は裁判所の積極的な訴訟指揮のもと個別具体的に解消されるかと思われました。
しかし、全体的にみて裁判所による積極的な訴訟指揮がなされてきたとはいえません。
平成18年6月の刑事被収容者処遇法成立時の付帯決議では「拘禁されている被告人が法廷に出廷する際には、逃走等の防止に配慮しつつ、…捕縄・手錠を使用しないことについて検討すること(参議院附帯決議第十一項)が明記されていましたので、これを契機として、裁判所による積極的な訴訟指揮も期待されましたが、依然として変化はみられませんでした。結局、刑事法廷内の手錠腰縄問題の全体的な改善は、前述のとおり、30年以上の月日を待たなければなりませんでした。
一方で、この間、福岡県弁護士会はどのような取り組みをしてきたのでしょうか。

4 福岡県弁護士会の取り組み

平成5年最高裁通知当初から福岡県弁護士会が手錠腰縄問題について積極的に取り組んできたのかというと、必ずしもそうではなかったようです。福岡県弁護士会においては、令和2年10月の勉強会を経て、手錠腰縄PTが発足したのが令和3年8月です。
しかし、PT発足してからの福岡県弁護士会は、手錠腰縄問題を改善するために、以下のとおり、積極的に取り組んでまいりました。

  • 令和3年11月の「第一審強化方策福岡地方協議会刑事部会」において手錠腰縄問題を議題として提案
  • 手錠腰縄不使用の申入れを促進するための申入書の書式作成、申入れ及び裁判所の措置等実態を把握するための申入れ結果報告書、被告人等アンケートの作成、周知
  • 令和3年10月以降、福岡県弁護士会会員である弁護人が裁判所に対し手錠・腰縄不使用の申入れを積極的に行うように働きかける呼びかけ
  • 令和5年8月5日にローエイシア福岡人権大会プレシンポジウム「刑事法廷内の手錠腰縄問題に関するシンポジウム」の開催
  • 令和7年5月28日に福岡県弁護士会総会にて、刑事法廷内の入退廷時に被疑者・被告人に対して手錠・腰縄を使用しないことを求める決議
  • 令和7年10月から令和8年3月までの間、手錠腰縄不使用申入れ等を行った弁護人に対する援助金の支給に関する制度の創設及び規則の作成
5 取り組みの成果

以上の福岡弁護士会の取り組みにより、弁護士会内外で手錠腰縄問題が人権問題として取り上げられ、反響を生みました。弁護人の手錠腰縄問題の意識も少しずつ高まり、弁護人が裁判所に対し、手錠腰縄不使用の申入れがなされるようになりました。また、申入れに伴う申入れ結果報告書や被告人等アンケートの提出も個々の弁護人から福岡県弁護士会にされるようになり、裁判所の刑事法廷内での手錠腰縄不使用に関する訴訟指揮の有無や被告人等の手錠腰縄に対する気持ちや考えが少しずつ明らかになってきました。
確かに、福岡県弁護士会に所属する弁護人の裁判所に対する手錠腰縄不使用の申入れ件数は、会全体の弁護人が担当する刑事事件の件数からすると少ないかもしれません。しかし、令和3年にPT発足して福岡県弁護士会が手錠腰縄問題に取り組まなければ、何ら変化はみられなかったでしょう。30年以上とはいわず何十年も現状は何ら変わらなかったかもしれません。福岡県弁護士会が積極的に取り組みを始めたからこそ、少しずつ変化の兆しが生まれたと思います。
このようは変化の兆しは福岡県弁護士会だけでなく、日弁連をはじめとする他の単位会でも同様にみられたものです。これらの変化の兆しが少しずつ積み重なり、最終的には令和8年1月26日の最高裁通知につながったものと思われます。

6 将来に向けた今後の課題
(1)令和8年7月1日の会長声明

前述のとおり、令和8年1月26日最高裁通知により手錠腰縄問題は大きく改善されることになりました。しかし、課題も残されています。
今回の最高裁通知によっても、裁判官には被告人等の手錠腰縄姿が見える位置に衝立が設置されることが予定されているため、裁判官はじめ訴訟関係人にも手錠腰縄姿を晒される状態は依然として残っており、被告人等が対等な当事者として扱われているとはいえず、いまだ被告人等の人権侵害状態が続いています。
そこで、令和8年7月1日、福岡県弁護士会は裁判官、裁判所及び国に対し、以下のとおり、会長声明を発しました。

  1. 裁判官は、刑事訴訟法287条1項但書が規定する事由があり、必要やむを得ない場合以外は、刑事法廷内で手錠・腰縄を使用しないこと。
  2. 国は、刑事訴訟法287条1項本文が規定する刑事法廷内における身体不拘束原則を入退廷時の被告人等に対しても確実に保障するため、同法に287条の2を新たに設ける等して、入退廷時の被告人等に対しても身体不拘束原則が及ぶことを明記すること。
  3. 国及び裁判所は、被告人等の入退廷時に手錠・腰縄を使用しないための施設整備(例えば、手錠・腰縄の着脱が可能な待機室あるいはスペース等の設置)を講じること。また、たとえ上記最高裁事務連絡・法務省通達を前提にする場合であっても、裁判官はじめ訴訟関係人が被告人等の手錠腰縄姿を見えないような位置に衝立を設置すること。
(2)いま一度光を当てるべき平成5年時当初の最高裁判所の考え

前述でご紹介しました平成5年7月19日の最高裁通知に表れている当初の最高裁判所の考えに、いま一度光を当てるべきです。
当初、最高裁事務総局刑事局は、法務省矯正局に対し、「傍聴人を退廷させずに戒具を施された被告人の姿を傍聴人の目に触れさせないようにするための一つの方策として、被告人の入廷直前又は退廷直後に法廷の出入口の所で解錠し、又は施錠させるという運用を一般化すること」を打診していたのです。
この運用の一般化こそ、刑事法廷内の手錠腰縄問題を解決するカギとなるものであり、この度の会長声明に適うものと考えられます。確かに、逃走防止の観点もありますが、運用の一般化と逃走防止を両立させるための施設整備は十分に可能であり、このことは会長声明にも盛り込まれています。
歴史を振り返り、光を当て、将来に向けた問題解決のために知恵を出していくことが、先人たちによって築き上げてきたものを壊さないためのわれわれの使命なのかもしれません。

7 さいごに

手錠腰縄問題の歴史と将来について、福岡県弁護士会の取り組みをご紹介しながら振り返りました。将来に向けた今後の課題の改善がまた何十年も先にならないように、近年までの無関心さを改め、国(国会、検察庁、拘置所等)、裁判所、弁護士会がそれぞれ取り組んでいかなければならないと思います。

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