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災害地の現場から

カテゴリー:月報記事

会 員 佐 藤 力(60期)

1 未曾有の大災害
平成23年3月11日、我が国を未曾有の大災害が襲いました。報道によると平成23年6月5日現在の死者は1万5365人、行方不明者は8206人で、約9万8500人の方が避難所生活を強いられています。
私の出身地である茨城県の(現在は潮来市)は、もともと干拓地のため今回の震災で、両親の住む実家の敷地も含め町全体が液状化、地盤沈下の被害を受けました。しかも、かつてゼロワン地域と呼ばれる司法過疎地域でもあったため、地元の先生方と連絡をとり、Jリーグチームになぞらえて「アントラーズ・ホームタウン・協力弁護士ネット」を立ち上げ、弁護士として地元をサポートすることを開始しました。
2 被災地へ
震災から二ヶ月近くが経過し、ライフラインが復旧しはじめたことから、福岡に避難していた両親も帰宅することになり、併せて私も地元に出向くことになりました。事前に避難所を担当している部署に確認したところ「法律相談の案内はしましたが、どなたも相談はない、とのことでした」という回答でした。とはいえ、たとえゼロであっても話をするだけでも意味がある、と思い、5月5日、6日に避難所や自治体に出向くことにしました。避難所は、当初300名から10数名に避難者が減少していましたが、せっかくなので避難者の女性に話しかけてみました。
私が、「こんにちは。私はこの地域出身の弁護士です。今日は九州から来ました。」と、挨拶すると、女性は「弁護士さんに頼むようなことはないけどね。ははは」ということでした。そこで、世間話のつもりで「お住まいはどのような状況ですか」と質問すると、避難者の方は「アパートに住んでんだけどさ。ドアが壊れて入れないから住めないのよ。それでも大家は家賃を下げてくれなくて、毎月払わされてるのよ。」という話をされたのです。私は驚きました。避難者の方は法律的な被害を受けているにもかかわらず、そのことに気づいてさえもいないのです。ただでさえ弁護士のいない地域ですから、これでは相談など来るはずもありません。そこで私の方から、「お仕事は」「お住まいは」「ご家族の状況は」と質問すると、不動産トラブル、雇用問題(便乗解雇、派遣切り)、消費者トラブル、保険など、次から次へと法律問題が山のように出てきたのです。
私は近隣自治体(潮来市、、神栖市、、鹿嶋市)をすぐに訪問し、市民への法教育、情報提供の必要性を訴え、各地の広報誌などに「震災における法律問題Q&A」を連載すること、今後地域フェスタなどで法律に関する講演会をボランティアで行うことで合意することになりました。
3 弁護士が手を差し伸べることの意味
久しぶりの故郷を歩いて見ると、さながらパニック映画のように変わり果てた街の姿に驚いて言葉を失いました。これだけの被害を受けていながら、まだ多くの人々が弁護士のサポートを受けられることに気づいてさえもいないのです。
私は法テラスのスタッフ弁護士として高齢者、障がい者、ホームレス、外国人の方の事件を常時50~60件ほど抱えていますが、この仕事を通して「本当に困っている人は、無料法律相談にさえもたどりつくことができない。」ということを何度も痛感させられました。私たちが手を差し伸べなければ救われない人たちは、まだまだたくさんいるのです。そして、実際に被災地に出向くことで、この思いが一層強くなった気がします。
被災地での経験を生かして、福岡市に対して「私たちが避難者に手を差し伸べてはどうでしょうか」と申し入れたところ、早速避難者を対象に避難者の集いが始まることになり、弁護士もアドバイザー参加が認められました。
被災地の現場で学んだこと、それは弁護士が手を差し伸べることの重要性ではないかと思います。今後も出来る限り地域の人々の支援に取り組んでいきたいと思います。

◆憲法リレーエッセイ◆「ひまわり憲法劇のこれまでとこれから」

カテゴリー:憲法リレーエッセイ

会 員 原 田 純 子(62期)

1 ひまわり一座とは?
皆様、憲法劇のひまわり一座をご存じでしょうか。「劇団ひまわり」と間違えられることも多いそうですが、全くの別団体、弁護士が中心となって、毎年5月の憲法記念日の前後に、憲法劇を行っている団体です。
始まりは1989年、憲法のすばらしさについて、おもしろく、分かりやすく、多くの方に伝えようという思いから、結成されたと聞いています。これまでに、PKO問題、改憲問題、諫早湾の開拓問題などをとりあげてきました。昨年は、ペシャワール会の医師中村哲さんをモデルに、「真の国際貢献とは?」を問う内容の劇でした。メンバーも、弁護士、会社員、学生、地元の劇団員など、総勢40人を超えております。
ところで、ひまわり一座の憲法劇をご覧になったことがなくても、昨年の給費制維持集会の寸劇、というとお分かりになる方も多いのではないでしょうか。人権擁護と社会正義の実現を目指していたのに、給費制が廃止された未来で借金返済に苦しみ、悪徳弁護士になってしまった!という寸劇で、中山篤志弁護士の見事な悪徳弁護士っぷりに笑いを誘われた記憶はございませんか?ひまわり一座は、こんなところでも活動しています。

2 今年の憲法劇
私は、昨年からひまわり一座の憲法劇に出演させていただいております。今年のテーマは、『米軍基地問題』でした。福岡県の能古島に、米軍基地が移設されることになったという設定で、平和な島を愛しながらも様々に揺れる島民たちが、最終的には、米軍基地はいらない!と一致団結して闘うという内容です。題して、「へ?能古に基地がやってきた」。解説するまでもありませんが、「辺野古(へのこ)」と「能古」をかけています。
私自身は、昨年は、舞台に出て、一言しゃべって退散、というのを2回しただけのチョイ役でしたが、今年は重役を仰せつかりました。夫の故郷である沖縄の宜野湾市で基地反対運動をしていた女性が、出産のために地元の能古島に戻っていたところ、能古島に基地移設案が持ち上がります。揺れる島民に対して、夫とともに、基地のある生活の現実を訴えるという大変重要な役柄です。
ちなみに、夫役は、迫田学弁護士。当初私は妊婦役ではなかったのですが、練習途中に脚本が変わり、出産のために途中から出番がなくなったので、私の台詞まで学先生が引き受けてくださることになりました。そのため、迫田学弁護士の台詞はとても長かったのですが(しかも沖縄出身で基地反対運動を続けてきた人として、皆さんを説得する役なので、台詞がとっても難しい。)、練習では私よりも先に台詞が入っており、頭が下がる思いでした。
それでも、私なりに、夫や夫の家族がこれまで基地に生活を脅かされてきたこと、出産のために戻って来た故郷が基地の危険に曝されていること、これから産まれてくる子どものために、自分はどういう未来を残したいと考えるのか等、自分がその女性だったらと考えながら、演じさせていただきました。役をいただいたことで、沖縄の問題を、これまでよりも少し、身近に感じることができました。

3 憲法講座
劇で米軍基地問題をとりあげるにあたって、沖縄のこと、米軍基地のことについて、年間を通じて簡単な学習会も行ってきました。「チビチリガマから日本国を問う」という沖縄の被害、基地問題を追ったDVDの上映会、そのDVDを作成された監督を招いての講演会等々…。迫田学弁護士の台詞の一部には、その学習会の中で、沖縄出身の天久泰弁護士のご講演に出てきたエピソードが使われております。そうやって、いろいろな話を見て、聞いて、演じる人たちが問題意識を深めるとともに、それを劇中にも取り込みながら、一つの劇が作られていったのです。
上演後に回収したアンケートには、迫田学弁護士の台詞が印象的だったというご意見も多く、実際にその出来事を体験した人、身近な経験としての実感を持っている人からの話は、やはり訴えかける力が全然違うんだろうな、と感じました。

4 大きな出来事
ひまわり一座の憲法劇を当初から支えてくださった、高尾豊さんが、今年の憲法劇が終わった直後に、突然、他界されました。演劇の世界に身をおきながら、平和、人権等にも高い意識を持っておられた方で、練習中にも、「この劇であなたたちが訴えたいことは何か、一人一人がよく考えなさい。それがないと伝わらない。」とよく言われました。
高尾さんの笑顔がもう見られないと思うと、本当に寂しいです。弁護士は、演劇のことには素人ですから、高尾さんという大きな存在を失って、今後どうなるんだろうという大きな不安も、当然あります。それでも、ひまわり一座は、これから上演するテーマや体制について話し合いを始め、もう来年に向かって歩き出しています。きっと、高尾さんも、あのニコニコした笑顔で、私たちを見守ってくださっていることでしょう。
最後の最後まで、ひまわり一座のメンバーと、劇のこと、そして平和について語り合って下さった高尾さん、本当にありがとうございました。心からご冥福をお祈りするとともに、これからも私たちを見守ってください!とお願いをして、筆を置かせていただきます。

5 追記
筆を置いたつもりでしたが、一言忘れていました。憲法が大好きな方、憲法について改めて考えてみたい方、舞台に立って目立ってみたい方、ぜひひまわり一座にご参加ください!裏方でのご参加も大歓迎です。
来年もGWのころに劇を行いますので、ぜひ、観客としてもご来場ください。よろしくお願いいたします!

福岡県弁護士会のロゴマークについて

カテゴリー:月報記事

対外広報委員会
古 賀 克 重(47期)

当会のロゴマークが決定しましたので、ご報告します。
1 意義
対外広報委員会およびHP委員会は、当会をイメージとして認知してもらうとともに、他の広報手段と連携されることによって広報効果をより高める目的から、ロゴマークを提案しました。
ちなみにロゴマークは、日弁連、東京弁護士会、大阪弁護士会、福井弁護士会、東京3会の法律相談センターなどが導入しています。
なおHP委員会からは合わせて「キャラクター」の提案もなされましたが、具体的に利用できる場面が現時点では限られるため、今回は見送りました(キャラクターを採用する弁護士会も見受けられ、岡山弁護士会「たすっぴ」、兵庫県弁護士会「ヒマリオン」などがあります)。

2 採用の経過
ロゴのイメージとしては、対外広報委員会およびHP委員会において、「様々な分野で全国をひっぱってきた進取の気質」、「市民に開かれた地元の法律家」などの意見が出ました。
そのイメージも参考に、広告代理店から10種類以上の案を提案してもらい、常議員会でも議論した上、会員に対するアンケートを実施しました。
アンケートでは3つのロゴマークに票が集中しましたので、最終的に、常議員会で決を取り、今回のロゴマークを採用したものです。

3 採用されたロゴ「開かれた扉」
扉(ドア)をモチーフにした今回のロゴマークは、弁護士が気軽に相談できる存在であることを表現したもので、市民の皆さんに気軽に相談して頂きたいとの思いが込められています。
そしてシンプルで覚えやすくこちらの意図が伝わりやすく、弁護士会の新しいイメージを醸成することを狙っています。

4 利用方法
利用方法としては、以下のようなものが考えられます。
当会執行部の名刺、弁護士会の封筒、記念品、レターヘッド、プレスリリース、チラシ、パンフレット、月報、ウェブサイト、テレビCM、パブリシティ(無料広告)、電話帳、省庁訪問資料、他県弁護士会への配布資料などです。
なお、あくまで「弁護士会」としてのロゴマーク・ロゴタイプですので、会員が個人の名刺・封筒・サイトなどに利用することは想定していませんのでご注意ください。

5 他広報との連携
西日本新聞に毎週掲載している弁護士会コラム「ほう!な話」では早速ロゴマークが利用されているほか、6月4日に開催した「法曹養成制度について考える市民集会」翌日の新聞でも、ロゴマーク入りバックボードを背にするカラー写真付き記事が掲載されました。
今後も様々な広報活動とも連携させることによって、福岡県弁護士会の存在、そして地元の弁護士が市民に開かれた頼れる存在であることを一層訴えていきたいと思います。

法教育センター登録説明会ご報告

カテゴリー:月報記事

会 員 渡 邊 典 子(61期)

1 はじめに
平成23年4月、福岡県弁護士会内に法教育センターが設立されました。法教育センターでは、講師のあっせん等を行うため申込窓口を設置し、担当する弁護士名簿から講師を配転するシステムが整えられました。多くの北九州部会の弁護士にも登録していただけるよう、4月27日、法教育センターの登録説明会が北九州弁護士会館にて開催されました。

2 説明会の内容
登録説明会には、19名が参加されました。
説明会では、北九州部会法教育委員会の末廣委員長が、そもそも「法教育」とはなんぞやというところから説明されました。
法務省が発足させた法教育研究会が、平成16年に提出した意見書では、法教育とは「法律専門家ではない一般の人々が、法や司法制度、これらの基礎となっている価値を理解し、法的なものの考え方を身につけるための教育を意味する」と定義づけられています。生徒・児童たちに、法律の条文や、法的な知識を学んでもらうものではないという点を強調されていました。
資料として配布された弁護士白書2010年版では、法教育は『個人が尊重される自由で公正な社会』の構成員としての市民を育てることが目標であり、そのような市民として必要な技能や知識とは、・事実を正確に認識し、問題を多面的に分析する能力、・自分の意見を明確に述べ、また他人の主張を公平に理解する能力、・多様な意見を調整して合意を形成し、また公平な第三者として判断を行ったりする能力があげられています。

3 感想
私は、先ほど・から・であげられた能力について学校で学んだ記憶がありません(教えられていたかもしれませんが、記億に残っていません。)
以前、何かの調査で、親が子どもに期待する性格について、日本では「思いやり」や「規則を守る」などが上位であるのに対し、アメリカでは、「責任感」や「正義感・公平性」が上位であることを目にしました。特に、日本では、「公平性」への意識が低い点が印象に残っていました(平成17年 子供と家族に関する比較調査概要 総務省青少年対策本部に同旨の内容が見つかりました。)
私の学生時代を振り返ると、きまりを守ることは教えられましたが、問題を解決するため事実を分析し、利害を調整してきまりを作ることや、既存のきまりを批判的に検証し、作り替えるなどの経験は乏しかったように思います。
しかし、よりよい社会を作り、その社会で主体的に生きていくには、言われたとおりにしているだけでは足りないはずです。・から・の能力を身に付けておくことは、別に法律専門家だけに必要なものではなく、社会の一員として生活していく中で、有意義なことではないかと思います。よく、法教育の目標を語るとき「生きる力を育てる」と表現されていますが、まさに、法教育の成果は生きていく糧になると思いました。
説明会では、実際の授業風景のDVDも視聴しましたが、生徒たちが積極的に楽しそうに議論している姿が印象的でした。
このような経験を重ねる中で、生きる力を身に付けてくれることを期待し、私も少しでも役に立てればと思いました。

4 おわりに
平成23年5月9日から、出前授業の無料キャンペーンの受付が始まりました。北九州エリアでもたくさんの要請があるようおおいに期待しています。私も、生徒たちと議論して、活力をいただいてきたいと思います。

精神保健当番弁護士活動報告

カテゴリー:月報記事

会 員 坂 巻 道 生(62期)

1 はじめに
平成22年4月、精神保健相談の申込みを受け、出動しました。私にとっては、始めての精神保健当番の出動でした。バックアップについて下さったのは鬼塚恒先生です。始めてのことで要領の分からない私が何とか最後までたどり着けたのは、鬼塚先生の貴重なアドバイスがあってのことでした。鬼塚先生にはこの場を借りて御礼申し上げます。
2 自分の一生は自分で決める
相談者は65歳、統合失調症の診断を受け、医療保護入院として、既に12年ほどの入院期間が経過しており、今回は退院請求を希望しています。
始めて精神病院に足を踏み入れると、独特な匂いにも、閉鎖病棟の鍵を閉める音にも、反応してしまいます。相談者に会って驚いたのは、本人に病識は全くなかったことでした。「電波障害」を口にしながら、自分がなぜ入院しているのか、自分は病気ではない、と口にしています。
ただ、今回退院請求をする理由を尋ねた時、相談者はそれまで下に向けていた視線をわずかに上げ、静かに答えました。
「自分の人生は残り少なくなってきた。自分の一生は自分で決めたい」
相談者のこの言葉は、今回の活動の全体を通じて、私の脳裏から消えることはありませんでした。
3 何かあったとき、あなたに責任がとれるのですか?
面談を終え、相談者の保護者であるお兄さんに連絡を取りました。主に対応されたのはその奥さんです。奥さんは私に対してまくし立てました。「今まであの人のためにどれだけ苦労してきたか分かっているのですか」「娘の夫には身内に精神病患者がいることを隠している、出てきたらどうするのか」「大事な家族を守るためなら、あの人を殺して自分も自殺する」。現在の病状はとても落ち着いています、と申し向けても、言われたことは一言。「何かあったとき、あなたに責任がとれるのですか」。
保護者のご家族とは何度もお話しました。電話の奥で、夫婦間の諍いを聞き取る時もありました。私自身、この幸せな家族にとって、災いでしかないことを自覚しました。
保護者、主治医からは、退院請求を取りやめるよう言われましたが、請求は行うことにしました。請求の可否について見通しが立たなかったこともありますが、相談者の今後のためにも、退院を判断すべき人間は私でないと考えたからです。
保護者にも、その旨伝えました。私の「立場」は理解していただけたと思っています。
4 電波障害は止まりました
現地調査の期日、相談者は、「電波障害は止まりました」と言いました。私と話した際に、「電波障害」のことを絶えず口にしていただけに、私は驚きました。これが、本当に治まったのか、審判を有利に進めるために口にしたことなのか、私には今でも分かりません。
5 朝から寝込んでおります
退院請求の結果は「6か月を目処に他の入院形態(任意入院)への移行が適当である」。
早速、保護者の方に結果報告のために連絡をとりました。保護者の奥さんは「予想外…、ショックのあまり朝から寝込んでおります」と力なく話しました。
相談者に対し結果の説明のため、病院に行きました。病院に着くと、相談者はなにやら電話をしており、しばらく私は待合室で待っていました。電話が終わった後、電話の相手は誰ですかと尋ねました。相手は、保護者で、「今後は一切の縁を切る」と言われたそうです。私は、相談者に対して、かける言葉が見つかりませんでした。
6 その後
結果の通知から、6か月が経ち、私は担当のソーシャルワーカーの方に連絡を取り、相談者の現状を尋ねました。相談者は、現在、病院を退院し、グループホームにおり、保護者との関わりあいを少しでも持たせるため、保護者を説得しているとのことでした。

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