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3月15日「イスラモフォビアと戦う国際デー」講演会 開催報告

ヘイトスピーチ問題対策WG メンバー 仲家 淳彦(60期)

  • みなさま こんにちは。「イスラモフォビアと戦う国際デー」の3月15日(日曜日)に開催した「共に生きる社会を諦めないために イスラム嫌悪とヘイトスピーチの構造を紐解く」講演会について報告します。
  • イスラモフォビアとはイスラム恐怖症(ムスリム嫌悪)のことです。2019年3月15日にニュージーランドでムスリムヘイトの白人至上主義者が銃乱射テロ事件を起こし51名を殺害したことから、犠牲者を追悼するとともに、宗教差別・ムスリムヘイトに抗議する記念日として国連が定めたものです。
  • 当ワーキンググループ(WG)は2022年福岡県弁護士会定期総会宣言に基づいて設置されたWGであり、その名のとおり、ヘイトスピーチ被害の予防・救済といったヘイトスピーチ問題への対策を検討しています。近年、排外主義言動が蔓延する中でムスリムを対象としたヘイトスピーチが増えていることから、当WGは、ヘイトスピーチ規制と多文化共生を考える機会を国際デーに合わせて講演会を設けることにしました。
  • 第一部では私がヘイトスピーチ規制の現状と今後について話しました。現時点で特定個人の権利を侵害しない限りヘイトスピーチを規制する法律はありません。特定の民族を指して「出て行け」「犯罪者集団」などと排斥・誹謗する行為は法律上、規制対象でないのです。ヘイトスピーチを理由に刑事上または民事上の責任を追及できるのは、それが名誉毀損等、特定個人(法人含む)の権利を侵害したと認められる場合に限ります。2016年にヘイトスピーチ解消法が制定されましたが同法は「ヘイトスピーチは許されない」と宣言しているものの罰則などを設けておらず実効的な規制がなされているとは言えません。実効的な規制として参考になるのが川崎市の条例です。当該条例は禁止行為を明記し、勧告、命令、を経た上で命令違反行為に罰金を科す内容となっています。川崎では当該条例施行後、ヘイト街宣が減少しておりその実効性が認められます。
  • 第二部ではイスラム研究者である九州大学の沖祐太郎・特任准教授に登壇いただきました。沖先生からはイスラモフォビアは、宗教的・文化的知識の欠如、ステレオタイプなムスリム観が基礎となっており近年はSNSにより偏見と憎悪が先鋭化しているとの指摘がなされました。沖先生によりますとイスラムと一口に言っても法や食、服装などのあらゆる分野で伝統的に多様性を有しており、現代では更に多様化が進んでいるということです。イスラモフォビアを広げないためにイスラムの多様性を知り、一般化せず、生活や仕事などの場面で直につながりを持つ、その際は「健全な無関心」を意識することなどが提案されました。考えてみますと「福岡県民」や「弁護士」と言っても千差万別なのですから「イスラム」の方々も、信条や性格は多様であることは当然のことと言えましょう。これら提案は、ムスリムのみならずあらゆる方々と接するときの参考になると思います。
  • 続けてインドネシア出身で佐賀在住のムスリム、ガリ・ブディアルトさんや、市民団体umbresのメンバーの方々が登壇しました。ガリさんからは教義はムスリムでも分からないことがある、など率直なお話を、umbresのみなさまからは、社会をよくする活動の在り方などのお話をいただきました。
  • 開催直前の告知であったにも関わらず、講演会では100名を超える市民のご参加をいただきました。参加された市民のみなさま、準備や開催にご協力くださった委員や関係者のみなさま、弁護士会事務局のみなさま、告知にご協力くださった広報委員の先生方にこの場を借りて改めて御礼を申し上げます。
  • 会場には長年、差別問題に取り組んでいるジャーナリストの安田浩一さんも取材に来られたので、急遽登壇いただきました。安田さんのお話で最も印象に残ったのは、関東在住のクルド人女性のエピソードです。駅前でのクルド人へのヘイト街宣を、耳を塞ぐように通り過ぎようとした時、通行人の会話が耳に跳び込んできました。「あれなに?」「クルド人は出て行け、だって」「へ~・・・。実際クルド人なんていらないもんね」
    ヘイトスピーチと同等か、あるいはそれ以上に当事者を傷つけるのは、周囲の「普通の人々」の無自覚な悪意であることを改めて知らされました。
  • ヘイトスピーチはこれまでも排外団体によって、あるいはインターネット上で繰り返されてきましたが、近年は公開の場で堂々とヘイトスピーチがなされる事態が生じています。ヘイトスピーチは当事者の心情を傷つけるのみならず、社会そのものを破壊するものです。川崎市条例は上記のとおり対策として有効と考えられますが、ヘイト団体は条例のない別の地域でヘイト街宣を行うようになったといいます。ヘイトスピーチを規制するために福岡など他県でも条例を制定すること、そして法律で全国的に規制することも必要だと考えます。但し、法規制がなされたらそれで足りるというものではありません。社会の構成員各自が、差別言動が人の心を傷つけ、社会を壊すものであるから許されないという共通の意識を持ち、各人の違いを認めあい相互に理解することこそ、大事なことであると考えます。
  • 記事を読んでいただきありがとうございます。この記事をきっかけにヘイトスピーチ対策に関心を持っていただければと思います。また当WGでは福岡での条例制定に向けた取り組み等を行っています。関心を寄せられた当会会員の先生方の当WGへのご参加を歓迎します。何卒宜しくお願い致します。

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