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カテゴリー: 月報記事

法教育委員会

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会 員 菅 藤 浩 三(47期)

約1か月半前の5月21日に開催した法教育研究会では、新聞メディアの取材を受けながら、修猷館高校で実施した福岡県弁法教育委員会開発の新教材の感触や改良点を、教師側・弁護士側という立場から検証しました。
今回は、北九州市のひびき高校で、教師独力で、弁護士の力を借りずに、日本における死刑制度の存廃に関する授業を実施したという報告をもとに、授業の際に生徒が示した反応と弁護士が関与することで授業内容をどう改良できるかについて検討しました。
例えば、教師がオフィシャルに入手できる資料の1つに死刑制度の存廃に関するそれぞれの主張の対照表があるにはあるそうですが、その対照表では意見の相違が、刑罰の本質に関するものなのか、死刑執行の方法に関する非難なのか、誤判のおそれにウェイトを置くからなのか、釈放無き終身刑を採用することと極刑とはいえ時間をかけず贖罪させることとの価値相対なのか、要するに倫理の問題か手続の問題か、近代刑法における刑罰の目的の問題かそれらが意識して整理されて対照されるとは言い難いという問題をはらんでいるようです。どうも対照表の作成者が死刑制度の存廃の論点を正確に意識しないまま作成しているようだと弁護士側から指摘したところ、当該教師からやはりそういう視点は弁護士でなければ適切に生徒に授業で提示できないと感心されました。
社会の授業でとりあげる司法の領域に関連して、現代社会の教科書で太字キーワードになっている「罪刑法定主義」や「適正手続の保障」についても、教師から、なぜそれらの原理が大事なものと扱われるべきなのかを生徒にピンとくる形で教えることが容易でないので弁護士からのサジェスチョンを請いたいとの提案があったのに対し、弁護士からは違法収集証拠排除法則の事例などを用いるやり方を紹介したり、さらに、立憲主義の歴史的背景を踏まえて『目的は手段を正当化する、目的のためには手段を選ばない』マキャベリズムが世上まれに横行することの危険にも発展させて生徒と一緒に考えていく授業の進め方を提案しました。
もちろん研究会ですから、教師が質問者・弁護士が回答者という場面ばかりではありません。今夏、西南学院大学LSの教室を借りて行うジュニアロースクールの教材の中身や進行方法も課題にあがったのですが、教育界では当たり前となっているアイスブレーキング(会議やセミナーや体験学習でのグループワークなどの前に、初対面の参加者同士の抵抗感を無くす為に行われる、コミュニケーション促進のために、つかみのゲームなどを行うこと)の利用も教えてもらいました。
改めて法教育を実践していくにあたり、法律家が教育者から学ぶことは接する機会を重ねる中でまだまだたくさんあることを痛感した、お互いにとって非常に有意義な研究会でした。次回研究会は9月17日(土)午後3時から福岡県弁の本庁会館2階で行われます。

修猷館高校での出前授業のご報告

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法教育委員会委員
会 員 高 山 大 地(58期)

法教育委員会では、小中高校生を対象とした法教育の普及のために、平成23年4月1日に法教育センターを立ち上げる等、法教育の普及に取り組んでおります。その一環として、法教育委員会では、平成23年5月の17日、18日及び20日に、修猷館高校で出前授業を行ってまいりました。

出前授業というのは、実際の授業の現場に弁護士がゲストティーチャーとして参加し、担当教師と協力して、ルール作りや憲法、民事(契約など)、刑事手続(裁判員裁判や少年事件など)等のテーマに沿って、さまざまな教材をもとに法教育の授業を行うものです。今回の修猷館高校では、憲法上の平等権の学習の一環として、男女差別をテーマに授業を行いました。

生徒は、あらかじめ平等権の条文の内容について学校の通常の授業の中で勉強した上で、法教育委員会の方で用意した事例と設問について、まず自分なりにある程度の答えを出して、出前授業の本番に臨みます。今回用意した事例は三つで、まず一つ目は、女子トイレに入ろうとした12歳の男子を係員が制止することの合憲性、二つ目は、女子校において男子の入学を拒否することの合憲性、三つ目は、受付担当職員の募集を女性に限ることの合憲性を問うものでした(詳しい事例につきましては福岡県弁護士会のホームページ中の法教育センターのページをご覧ください)。

当日は、まず生徒にいくつかのグループに分かれてディスカッションをしてもらい、その後各グループの意見をまとめて発表してもらい、最後に弁護士が総括を行う形式で行われました。弁護士的な発想からすれば、事例1は合憲、事例3は違憲で、事例2が微妙なのでこちらを議論しましょうという話になりそうな感じですが、生徒たちは、初めての法教育の授業ということもあって、事例1から活発な議論が交わされ、グループによっては事例1の議論だけでディスカッションの時間が終わってしまったところもありました。

その後各グループの発表に移るのですが、生徒たちの意見は私にとっては非常に新鮮で、意外な発見がたくさんありました。事例1については、12歳ってことは小学生なので、小学生だったら女子トイレを使わせてあげてもいいのではないか、あるいは、おなかが痛くて我慢ができなかったりしたら女子トイレを使うのもやむを得ないのではないか、といった議論が出され、グループによっては違憲の結論を出すところもありました。事例3についても、受付はやはりいかつい男性よりきれいな女性の方がいいから女性限定だったとしてもやむを得ないといった議論や、女性の雇用創出のためといった理由があるかもしれないから、そのような理由であれば許されるはずだ、といった議論が出されました。どれも確かにもっともな面もあり、これを限られた時間内でどう法律的に整理して生徒たちに説明すればいいのか、今後法教育委員会としても、私自身としても、考えていかなければいけないと強く実感しました。

法教育センターでは、2011年5月9日から、学校からの出前授業の申し込みの受け付けを始め、2011年9月1日から順次実施していく予定です。出前授業のゲストティーチャーは、法教育委員会の委員でなくても事前に簡単な研修を受ければ登録することができます。出前授業は、生徒たちの法的素養を磨くだけではなく、ゲストティーチャーにとっても、生徒たちの自由で新鮮な発想は大きな刺激となり、得難い経験となることは間違いありません。ぜひ皆様ゲストティーチャー名簿にご登録をよろしくお願いいたします。

災害地の現場から

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会 員 佐 藤 力(60期)

1 未曾有の大災害
平成23年3月11日、我が国を未曾有の大災害が襲いました。報道によると平成23年6月5日現在の死者は1万5365人、行方不明者は8206人で、約9万8500人の方が避難所生活を強いられています。
私の出身地である茨城県の(現在は潮来市)は、もともと干拓地のため今回の震災で、両親の住む実家の敷地も含め町全体が液状化、地盤沈下の被害を受けました。しかも、かつてゼロワン地域と呼ばれる司法過疎地域でもあったため、地元の先生方と連絡をとり、Jリーグチームになぞらえて「アントラーズ・ホームタウン・協力弁護士ネット」を立ち上げ、弁護士として地元をサポートすることを開始しました。
2 被災地へ
震災から二ヶ月近くが経過し、ライフラインが復旧しはじめたことから、福岡に避難していた両親も帰宅することになり、併せて私も地元に出向くことになりました。事前に避難所を担当している部署に確認したところ「法律相談の案内はしましたが、どなたも相談はない、とのことでした」という回答でした。とはいえ、たとえゼロであっても話をするだけでも意味がある、と思い、5月5日、6日に避難所や自治体に出向くことにしました。避難所は、当初300名から10数名に避難者が減少していましたが、せっかくなので避難者の女性に話しかけてみました。
私が、「こんにちは。私はこの地域出身の弁護士です。今日は九州から来ました。」と、挨拶すると、女性は「弁護士さんに頼むようなことはないけどね。ははは」ということでした。そこで、世間話のつもりで「お住まいはどのような状況ですか」と質問すると、避難者の方は「アパートに住んでんだけどさ。ドアが壊れて入れないから住めないのよ。それでも大家は家賃を下げてくれなくて、毎月払わされてるのよ。」という話をされたのです。私は驚きました。避難者の方は法律的な被害を受けているにもかかわらず、そのことに気づいてさえもいないのです。ただでさえ弁護士のいない地域ですから、これでは相談など来るはずもありません。そこで私の方から、「お仕事は」「お住まいは」「ご家族の状況は」と質問すると、不動産トラブル、雇用問題(便乗解雇、派遣切り)、消費者トラブル、保険など、次から次へと法律問題が山のように出てきたのです。
私は近隣自治体(潮来市、、神栖市、、鹿嶋市)をすぐに訪問し、市民への法教育、情報提供の必要性を訴え、各地の広報誌などに「震災における法律問題Q&A」を連載すること、今後地域フェスタなどで法律に関する講演会をボランティアで行うことで合意することになりました。
3 弁護士が手を差し伸べることの意味
久しぶりの故郷を歩いて見ると、さながらパニック映画のように変わり果てた街の姿に驚いて言葉を失いました。これだけの被害を受けていながら、まだ多くの人々が弁護士のサポートを受けられることに気づいてさえもいないのです。
私は法テラスのスタッフ弁護士として高齢者、障がい者、ホームレス、外国人の方の事件を常時50~60件ほど抱えていますが、この仕事を通して「本当に困っている人は、無料法律相談にさえもたどりつくことができない。」ということを何度も痛感させられました。私たちが手を差し伸べなければ救われない人たちは、まだまだたくさんいるのです。そして、実際に被災地に出向くことで、この思いが一層強くなった気がします。
被災地での経験を生かして、福岡市に対して「私たちが避難者に手を差し伸べてはどうでしょうか」と申し入れたところ、早速避難者を対象に避難者の集いが始まることになり、弁護士もアドバイザー参加が認められました。
被災地の現場で学んだこと、それは弁護士が手を差し伸べることの重要性ではないかと思います。今後も出来る限り地域の人々の支援に取り組んでいきたいと思います。

福岡県弁護士会のロゴマークについて

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対外広報委員会
古 賀 克 重(47期)

当会のロゴマークが決定しましたので、ご報告します。
1 意義
対外広報委員会およびHP委員会は、当会をイメージとして認知してもらうとともに、他の広報手段と連携されることによって広報効果をより高める目的から、ロゴマークを提案しました。
ちなみにロゴマークは、日弁連、東京弁護士会、大阪弁護士会、福井弁護士会、東京3会の法律相談センターなどが導入しています。
なおHP委員会からは合わせて「キャラクター」の提案もなされましたが、具体的に利用できる場面が現時点では限られるため、今回は見送りました(キャラクターを採用する弁護士会も見受けられ、岡山弁護士会「たすっぴ」、兵庫県弁護士会「ヒマリオン」などがあります)。

2 採用の経過
ロゴのイメージとしては、対外広報委員会およびHP委員会において、「様々な分野で全国をひっぱってきた進取の気質」、「市民に開かれた地元の法律家」などの意見が出ました。
そのイメージも参考に、広告代理店から10種類以上の案を提案してもらい、常議員会でも議論した上、会員に対するアンケートを実施しました。
アンケートでは3つのロゴマークに票が集中しましたので、最終的に、常議員会で決を取り、今回のロゴマークを採用したものです。

3 採用されたロゴ「開かれた扉」
扉(ドア)をモチーフにした今回のロゴマークは、弁護士が気軽に相談できる存在であることを表現したもので、市民の皆さんに気軽に相談して頂きたいとの思いが込められています。
そしてシンプルで覚えやすくこちらの意図が伝わりやすく、弁護士会の新しいイメージを醸成することを狙っています。

4 利用方法
利用方法としては、以下のようなものが考えられます。
当会執行部の名刺、弁護士会の封筒、記念品、レターヘッド、プレスリリース、チラシ、パンフレット、月報、ウェブサイト、テレビCM、パブリシティ(無料広告)、電話帳、省庁訪問資料、他県弁護士会への配布資料などです。
なお、あくまで「弁護士会」としてのロゴマーク・ロゴタイプですので、会員が個人の名刺・封筒・サイトなどに利用することは想定していませんのでご注意ください。

5 他広報との連携
西日本新聞に毎週掲載している弁護士会コラム「ほう!な話」では早速ロゴマークが利用されているほか、6月4日に開催した「法曹養成制度について考える市民集会」翌日の新聞でも、ロゴマーク入りバックボードを背にするカラー写真付き記事が掲載されました。
今後も様々な広報活動とも連携させることによって、福岡県弁護士会の存在、そして地元の弁護士が市民に開かれた頼れる存在であることを一層訴えていきたいと思います。

法教育センター登録説明会ご報告

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会 員 渡 邊 典 子(61期)

1 はじめに
平成23年4月、福岡県弁護士会内に法教育センターが設立されました。法教育センターでは、講師のあっせん等を行うため申込窓口を設置し、担当する弁護士名簿から講師を配転するシステムが整えられました。多くの北九州部会の弁護士にも登録していただけるよう、4月27日、法教育センターの登録説明会が北九州弁護士会館にて開催されました。

2 説明会の内容
登録説明会には、19名が参加されました。
説明会では、北九州部会法教育委員会の末廣委員長が、そもそも「法教育」とはなんぞやというところから説明されました。
法務省が発足させた法教育研究会が、平成16年に提出した意見書では、法教育とは「法律専門家ではない一般の人々が、法や司法制度、これらの基礎となっている価値を理解し、法的なものの考え方を身につけるための教育を意味する」と定義づけられています。生徒・児童たちに、法律の条文や、法的な知識を学んでもらうものではないという点を強調されていました。
資料として配布された弁護士白書2010年版では、法教育は『個人が尊重される自由で公正な社会』の構成員としての市民を育てることが目標であり、そのような市民として必要な技能や知識とは、・事実を正確に認識し、問題を多面的に分析する能力、・自分の意見を明確に述べ、また他人の主張を公平に理解する能力、・多様な意見を調整して合意を形成し、また公平な第三者として判断を行ったりする能力があげられています。

3 感想
私は、先ほど・から・であげられた能力について学校で学んだ記憶がありません(教えられていたかもしれませんが、記億に残っていません。)
以前、何かの調査で、親が子どもに期待する性格について、日本では「思いやり」や「規則を守る」などが上位であるのに対し、アメリカでは、「責任感」や「正義感・公平性」が上位であることを目にしました。特に、日本では、「公平性」への意識が低い点が印象に残っていました(平成17年 子供と家族に関する比較調査概要 総務省青少年対策本部に同旨の内容が見つかりました。)
私の学生時代を振り返ると、きまりを守ることは教えられましたが、問題を解決するため事実を分析し、利害を調整してきまりを作ることや、既存のきまりを批判的に検証し、作り替えるなどの経験は乏しかったように思います。
しかし、よりよい社会を作り、その社会で主体的に生きていくには、言われたとおりにしているだけでは足りないはずです。・から・の能力を身に付けておくことは、別に法律専門家だけに必要なものではなく、社会の一員として生活していく中で、有意義なことではないかと思います。よく、法教育の目標を語るとき「生きる力を育てる」と表現されていますが、まさに、法教育の成果は生きていく糧になると思いました。
説明会では、実際の授業風景のDVDも視聴しましたが、生徒たちが積極的に楽しそうに議論している姿が印象的でした。
このような経験を重ねる中で、生きる力を身に付けてくれることを期待し、私も少しでも役に立てればと思いました。

4 おわりに
平成23年5月9日から、出前授業の無料キャンペーンの受付が始まりました。北九州エリアでもたくさんの要請があるようおおいに期待しています。私も、生徒たちと議論して、活力をいただいてきたいと思います。

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