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福岡商工会議所との勉強会 第8回 「ITに関する法律問題」

カテゴリー:月報記事

会員 丸山 和大(56期)

1月24日、「福岡商工会議所との勉強会」第8回が福岡商工会議所ビルにて行なわれました。この勉強会は、中小企業の事業承継に関する法的問題を研究することを主な目的とし、福岡商工会議所職員と当会会員とが参加して月に1回開催されている勉強会です。

第8回勉強会は、事業承継から少し外れて「ITに関する法律問題」というテーマで行なわれました。というのも、昨年12月に行なわれた懇親会の二次会において、福岡商工会議所職員の土斐崎美幸氏が、「意外とITに関する法律相談も多いんですよ。」と発言した(口を滑らした)ことから、その発言を聞きつけた池田耕一郎弁護士が「じゃあ、次回はそのテーマでやろう。発表者は土斐崎さんと…(たまたま近くにいた私に目を付け)丸山さんね。」と決定したからでした。

当日の勉強会は、私が「情報システム開発取引契約における留意点の概要」を報告した後、福岡商工会議所経営支援部主任土斐崎美幸氏が「商工会議所におけるITに関する相談事例」について報告し、相談事例を出席者で検討していくという形式が採られ、午前10時から正午まで行なわれました。出席者は福岡商工会議所の職員が6名、当会会員が8名、合計14名でした。

まず、私の「情報システム開発取引契約における留意点の概要」についてですが、これは昨年4月に経産省の「情報システムの信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会」が公表した「情報システム・モデル取引契約書」をもとに、若干のアレンジを加えて講義しました。

情報システム取引の特徴は、無から有を作ることも珍しくなく、ユーザとベンダ(情報システム会社=開発受託者)の情報格差もあって開発当初においてはユーザが成果物の最終的な完成形を認識していないことも多いということです。このため、ユーザがベンダに開発を丸投げすることが多く、その結果、「自分が想像していたものが違う」「成果物では業務上の使用に耐えられない」といった紛争が頻発することになります。

上記モデル契約書では、このようなリスクを低減させるため、開発のフェーズごとに契約を締結する「多段階契約方式」をとることが提唱されています。例えば、企画プロセスにおいては準委任契約としてのコンサル契約を、開発プロセスでは請負契約としての設計契約を締結するなどです。段階ごとに契約を締結することで、ユーザにとっては開発フェーズごとに自己の注文・委託範囲を認識し、ベンダと交渉することができ、ベンダにとっては自らの受注・受託範囲を明確にすることで責任範囲を限定することができます。

その反面、多段階契約方式ではベンダが自己の責任範囲を小さく「切り取る」ことができ、不当にベンダの責任を軽減することになるのではないか、といった問題点も指摘されています。当日の勉強会においても、弁護士会出席者からこの点を指摘する意見が出されました。個人的意見ですが、ベンダの責任範囲が明確になることはユーザにとっても好ましい側面があること、多段階契約方式は継続的取引における基本契約・個別契約を垂直方向に引き直したものともいえ、従来の継続的取引論に親和性があるように感じられること、などからデメリットよりメリットが大きいと思われ、実際に私は実務で多段階契約方式を推薦しています。

次に、福岡商工会議所の土斐崎主任から、ユーザがベンダを変更した際にベンダが情報システム内の個人データの引渡を拒否するなどした事例など、福岡商工会議所に寄せられた最近の3例のITに関する相談事例が紹介されました。そして、3例を概観したときの問題点として、契約書がないか、あっても極めて杜撰であること、ユーザの問題としてユーザの要望がころころと変わること、ベンダの問題としてベンダの担当者がすぐに変わることなどが報告されました。

土斐崎主任の報告の後は、相談事例の解決方法についてのディスカッションが行なわれ、予定していた2時間を使い切って勉強会が終了しました。

福岡商工会議所との勉強会は毎月開催されており、最近2回は福岡商工会議所に寄せられた具体的相談を題材として議論を交わす形式が採られ、開始当初に比べより中身の濃い勉強会となっています。興味のある方は、ぜひ一度ご出席ください!

憲法リレーエッセイ 第10回憲法と私

カテゴリー:憲法リレーエッセイ

会員 近藤  真(33期)

私の手元に、オーストラリア人権委員会編集にかかる「みんなの人権−人権学習のためのテキスト」(明石書店、福田弘・中川喜代子訳)という80頁余りの小冊子があります。ここに次のような趣旨の話が出てきます。

「AB2人の裁判官が、夕食後、仕事のことで語り合っています。『今日の裁判の男をどうしましょうか?もし、あなたが私だったら、どのように裁きますか?』とAがBに話しかけました。『あなたは、私が答えられないということを知っているはずです。彼の父親は5年前に死んでしまったというだけでなく、彼は私の息子でもあるのです。』とBは答えました。しばらく、このことについて、考えてみて下さい。分かりますか?Bは、どうして“私の息子”と言い得たのでしょう?だって、話に出た男の父親は、既に死んでいるのですよ。」

この本の設例(Bの話がおかしくないか)は、人権の極めて重要なことを教えてくれます。それは、差別等の反人権的意識は、自分自身の気がつかないところで醸成されているということです。皆さんは正解はわかりますか?そう、「Bは女性裁判官」というのが正解です。10年以上前に大分県で教頭先生以上を対象とした人権の講演をした時に、冒頭の設例の回答を求めてみましたが、正解率は50%を大きく下回っていました。やはり男社会の中で育った中高年世代にとっては、正解に行き着くのが意外と難しかったようです。私のここ数年の関心事は、このような偏見を気付かせてくれる教材、或いは自分自身の偏見度を数値で分からせてくれるような教材がないかなあ、ということです。司法試験の短答式問題のようなものをイメージしています。

ところで、私と憲法の出会いは、大学で杉原泰雄教授のゼミで2年間憲法を勉強したことに遡ります。杉原先生は、「国民主権の研究」等フランスの歴史に基づく重厚な研究で高い評価を得ている憲法学者ですが、他方その授業やゼミは、これほど明解かつ厳格な解釈論はないというほど歯切れがよく、いつも教室は超満員でした。その杉原先生が、ある日、朝日新聞の論壇に、「憲法より国際人権規約の方が人権規定が豊富であり、人権については憲法とともに国際人権規約も学ぶべきである」という趣旨の論考を寄稿されました。「国際人権」などが議論されるようになるずっと以前の1970年代だったと思いますので、今から考えると、杉原先生の炯眼に驚くばかりです。それ以降私の関心事は、国際人権規約を中心とする国際人権条約に移っていったのですが、意識の中では、勉強としての国際人権法よりも、本当に人権が分かる又は本当に人権を実践するということは、もっと身近な、地に足のついたものではないのか、といったようなことを考えてきました。そういう問題意識の中で、1998年12月に、九州弁護士連合会と福岡県弁護士会共催で開催した「親子で学ぶ人権スクール−人権って何だろう」の総合企画をさせていただきました(この内容は、花伝社から同名の本が出版されています)。この時に講演していただいた作家の小田実氏の次のような話も、地に足がついた人権を考えるのに役立ちます。

「私は、子どもたちに人間は助けあわないといけないと教えてきました。…私が一つ失敗したことがあります。太平洋の真ん中の小さな島に行ったときのことです。重そうな荷物を抱えたおばあさんが来たから、私は持ってやりました。そしたら、おばあさんは『ありがとう』とも言わないで去って行きました。…別の人の荷物を持ってやったときにも、『ふん』と行ってしまったのです。『礼儀も知らないな』と私は思いました。そしたら、今度は私が荷物を担いでいたら、だれかがさっと持っていってくれました。そして、ぽんと荷物を置いてさっさと行ってしまいました。それで分かったことは、私のほうが遅れていたということです。つまり、この島では、そんなことは当然のことをしたにすぎないんです。『ありがとう』を言うに値しないのです。…これには驚きました。すばらしい社会です。」

冒頭の裁判官の話や小田実氏の話のような話を沢山掲載した「人権小話集」や「人権意識チェック問題集」のようなものがどこかにないですかね…知っている人は教えて下さい。

法教育・消費者教育授業の現場から

カテゴリー:月報記事

法教育委員会  委員 ? 優香 (60期)

1 【はじめに】

平成19年11月29日及び12月13日、春日西中学校において行われた消費者教育授業に、岡精一先生及び千綿俊一郎先生と参加致しました。私にとって、法教育委員会の委員として初めての活動でしたが、法教育の現場を見ることでその重要性や面白さを肌で感じることができ、大変貴重な経験となりました。

2 【授業の概要】

第1回では、友人間でのゲームソフトの売買といった身近な具体例について生徒達に議論をさせた後、契約の拘束力という法律の基本的な考え方を説明しました。その上で、契約を解消できる場合について具体例を通して生徒達に議論させ解説しました。第2回では、クレジット契約のしくみとクレジット契約における三者それぞれのメリット・デメリットを理解させた上で、クレジット契約トラブルの具体例について議論させ、クレジット契約の危険性やトラブルの解決方法を説明しました。

今回の授業の対象は中学3年生で、「よのなか科」という社会科の選択教科を選択した生徒達でした。「よのなか科」とは、よのなかと学校の授業を結び付ける授業で、中学校で学んでいることと実社会を結ぶことを目指して全国規模で行われているそうです。自ら興味を持って授業を選択していたということもあり、生徒達は積極的に議論に参加して意見を述べていました。

3 【現場に参加して】

今回の授業で難しかったことは、(1)教育現場と法律家の役割分担と(2)法教育と消費者教育の観点をうまく取り入れた授業を組み立てることです。

(1)について、中学校の先生が司会進行をし、生徒達が中心となってディスカッションをし、弁護士が解説をするという授業の進め方をしました。生徒を主体としながら、生徒の能力を把握し、生徒の意見の引き出し方に長けている学校の先生が中心に授業を進行し、法的な側面は専門家である弁護士が解説するという役割分担です。法律について基本的な考え方から解きほぐして、中学生でも理解できるようなわかりやすい言葉で伝えることで、自分の足下を見つめ直すよい機会となりました。

(2)について、法教育は、条文や法律知識を教えるのではなく、法律の背景にある基本的な価値観(正義・公平・権威・プライバシー)やそれら価値観を確保し調整するためのルールを学ぶことを主眼としています。一方で、消費者教育は、消費者としてトラブルに巻き込まれないように注意し、巻き込まれた場合の具体的な対処方法を学ぶことを主眼としています。今回は、消費者教育授業ではありましたが、対象が中学生であり、法教育委員会の活動として行われたこともあって、法教育の観点を特に重視しました。消費者としてトラブルに巻き込まれないようにするためには、まずは法律の基本的な価値観やルールを理解していることが大切ですから、消費者教育の前提として法教育が大切だとも言えます。

当初は、「契約書がないと口約束だけではだめじゃない?」等、契約の意味も十分に理解できていなかった生徒達が、次第に「契約は守らないといけないのが原則。でも今回は守らせると〜だからかわいそうじゃない?」等、利害の対立にも目を向けながら議論するとができるようになっていく姿を見て、法教育として一定の効果があったことを実感しました。

4 【最後に】

消費者問題の他、身近な契約トラブル、凶悪な刑事事件等様々な事件が日々起きていますが、法律の背景にある基本的な価値観やルールを理解していれば防ぐことができる事件は多く、そのためにも法教育は重要だと言えます。また、裁判員制度のスタートを控え、法律が国民にますます身近なものとなってきた現在において、私たち法曹には、個別具体的な紛争を解決するだけでなく、より広い視点から、法律の背景にある基本的な価値観やルールを国民に広めていく役割が重要になってきていると思います。法教育は新しい分野として多くの可能性を秘めており、様々な分野をつなぐ架け橋になると思います。今後、法教育が広く認知され浸透していくために積極的に活動に取り組んでいきたいと思います。

当番弁護士日誌

カテゴリー:月報記事

会員 柳 優香(60期)

1 【初めての当番弁護士出動】

「当番が入ったんだけど、明日行ってくれない?」。ボスの一声に「はい!」と答える(しかない)私。

こうして、期待と不安の入り交じった中、私の初めての当番弁護士活動が始まりました。

2 【接見〜受任】

被疑者XさんはA国へ密航をしようとしたA国人を案内役の男性とともに、車で港まで送迎し、不法出国を手伝ったとして、入管法違反幇助の容疑で逮捕されました。

Xさんによれば、友人に観光案内の運転手のアルバイトと聞いて行ったのであり、密航しようとしていたことは知らなかったとのこと。しかし、私が接見に行った時点では、警察官に「今思えば、密航かもしれないと思うだろう。」「観光旅行者にしては荷物が少ないと思っただろう。」等誘導され、既に「おかしいな、まさか密航するつもりかなと思いました。」「観光旅行者にしては荷物が少ないと思いました。」といった自白調書をとられていました。

私は、Xさんに、黙秘権、署名押印拒否権、調書訂正申立権があること等を説明して、今考えたことではなく当時思っていたことを言うこと、自分の言い分を貫くことを言い聞かせました。Xさんには十分な資力がなかったため扶助で受任することになりました。

3 【弁護活動】

私は、Xさんは留学生であることから、起訴されてしまうと学生の身分を失い、在留資格をも失う恐れがあったため、何としても不起訴にすることを目標に活動を始めました。

まず、否認事件であったこともあり、被疑者ノートを差し入れて取調べ状況等を記録させました。また、身柄拘束中は学校を無断欠席という状態でしたし、年明けには進級試験を控えていたため、早期に身柄解放しなければならないと思い、捜査状況等を見ながら勾留期間が延長された場合には準抗告をすることにしました。まず、準備として、Xさんのアルバイト先の雇用主に身元引受人になってもらい、友人に嘆願書を書いてもらいました。

また、念のためにXさんに運転手のアルバイトを紹介したという友人に話を聞いて、Xさんの言い分の裏をとっておきました。そうしているうちにあっという間に10日間が経過し、勾留期間が延長されたのですぐに準抗告をしました。Xさんには犯罪の嫌疑がないこと、勾留延長をしなければならない「やむを得ない事由」がないこと等をしつこく書いたのですが、棄却されてしまいました。残念な結果でしたが、アルバイト先の雇用主や友人の協力を得ることで、Xさんを勇気づけることができましたし、Xさんとの信頼関係を築く上でも一定の成果があったと思います。

4 【最終結果】

勾留満期の前日、担当検事から「明日の午前中に釈放します。」とのうれしい連絡がありました。最後に、Xさんが、学校や在留資格の関係で今後のことを不安に思っていたので、念のために「不起訴処分告知書」の交付請求をして、私の弁護活動は終わりました。初めて単独で刑事事件をして、最初に勾留状謄本を取り忘れたり、準抗告すべきなのか迷ったりと、失敗もたくさんしましたが、Xさんや関係者に御礼を言われたときには心からうれしく思いました。

今回の事件を通して、刑事事件は処分結果次第で、被疑者の将来を大きく左右すること、被疑者段階で弁護人が付くことが重要であることを実感し、その責任の重さを痛感しました。今後も、刑事弁護に関わってその責任を全うしていきたいと思います。

憲法リレーエッセイ 第9回憲法と私

カテゴリー:憲法リレーエッセイ

会員 木下 隆一(36期)

大学で法律を勉強したわけでもなく、まして憲法の講義を受けたこともない私にとって、憲法は司法試験受験のためだけの遠い存在だったように思います。

そのような私が憲法「改正」の問題を本気で考えようと思うようになったきっかけは、40年くらい前にお会いした1人の人との係わりがずっと念頭にあったからです。その人は、もちろん多くの人がご存知ですが、加藤周一さんです。大学闘争の真っ只中にいたころ、どういう係わりでそうなったのか、ほとんど記憶に残っていませんが、私は数人の仲間と一緒に加藤さんの自宅を訪ねたのです。何をテーマに話したのかもほとんど記憶にありません。ただ残っているのは、とても怜悧な人だという印象です。

その加藤さんが、「九条の会」のメンバーの一人に名を連ねられ、社会に向かって護憲をアピールされたのです。折しも、私も改憲をめぐるいろいろな動きの中で悶悶とするところがありましたので、我が意を得たりの気分になりました。早速、ほんの数人ですが、仲間と語らって久留米でも「九条の会」を作ろう、その発足の会合には加藤さんにきてもらってはなしをしてもらおう、ということになりました。

もっとも、加藤さんに来久していただくという計画は実現しませんでした。しかし、このことがあって、「子どもたちの未来を守る九条の会」ができました。平成18年1月のことです。

私は、「九条の会」は、広がりを持つものでなければならないと考えています。関心を持つ人が集まって議論を深めることはもちろん大事ですが、それだけでは改憲を止めることはできません。国民的な広がりをもつこと、1人でも多くの人が関心を持ち、その1人1人が自分の立場で判断すること、そのことが大事だと考えてきました。

それでは何をやってきたかと言えば、そうそう胸を張れるものでもありませんが、そのうちの2つについて紹介します。ひとつは、「九条ウォーク」です。久留米市東部耳納山麓の善導寺周辺をウォーキングしながら9条を肴にいろいろ話しをし、その行先の造り酒屋さんで満州からの引揚者の方の体験談を聞かせていただき、その後、「九条」というラベルを貼った酒を飲みながら語り合うというものでした。若い人から年配の方まで、酒を奮発してもらったこともあって盛り上がりました。

もうひとつは、出水薫九州大学大学院教授をお招きして「商店街空洞化から透ける国際情勢−冷戦崩壊が生んだグローバル化、競争社会、そして憲法−」というテーマで話をしていただきました。全国的な現象である地方都市における商店街の衰退が何に起因するのか、グローバリズムの内実は何なのかなど、グローバリズムを唱える大国の世界戦略の要は何なのか、等々、目からウロコが落ちるような分かりやすいはなしでした。

改憲断行を旗印にした政権が頓挫し、他方、私も多少疲れてきましたので、この問題はとにかく肩肘張らずに、息永くやっていきたいと思っているところです。

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