弁護士法人あさかぜ基金法律事務所・元所員 古賀 祥多(69期)
今回は、あさかぜ事務所の元所員である私より、「あさかぜ基金だより」最終号をお届けします。
さようなら、あさかぜ
平成20(2008)年9月、九弁連は、管内の弁護士過疎対策のため、過疎地赴任者を養成するための事務所として、「弁護士法人あさかぜ基金法律事務所」を設立しました。
以来、あさかぜ事務所は、17年以上もの間、弁護士過疎対策に取り組んできました。また、私たちあさかぜ所員自身も、長年、九弁連管内の司法アクセスを改善すべく頑張りました。
あさかぜ事務所の設立後、第1号所員の井口夏貴会員の入所をはじめ、全国各地からあさかぜ事務所に入所し、のべ29名もの所員が九弁連管内の弁護士過疎地域に赴任しました。卒業生のなかには、ひまわり基金法律事務所、法テラス7号事務所に赴任する所員や日弁連の過疎偏在対策の経済的支援制度を用いて独立開業する所員もいました。私も、平成28(2016)年12月に入所したあと、2年の養成を経て、壱岐に赴任しました。
所員の赴任先をみると、あさかぜ事務所が、九弁連管内の弁護士過疎解消に貢献できたと実感することができますし、自負もしています。
しかし、昨今の新人弁護士登録の東京一極集中の傾向から、所員の確保が困難となり、令和8(2026)年1月末をもってやむなく閉鎖をすることになりました。
皆様、大変お世話になりました!
今振り返れば、あさかぜ事務所の存続は、経済的面で苦難の道でもありました。また、所員自体も、養成を受ける中で、さまざまな苦労・悩みを抱えました。それでも、なんとか17年以上もの間、事務所を存続させ、所員が九州各地の弁護士過疎地域で活躍する機会を得ることができたのは、ひとえに福岡県弁護士会の会員の皆様のご支援のおかげです。ご支援いただき、ありがとうございました。
とりわけ、弁護士法人あさかぜ基金法律事務所運営委員会からは、さまざまな形で事務所・所員をバックアップ・サポートしていただきました。まことにありがとうございました。
また、所員1名につき、3名から5名の指導担当弁護士にサポートしていただきました。指導担当弁護士を引き受けて下さった会員の皆様には、多忙ななか、ご指導・ご鞭撻いただき、まことにありがとうございました。
さらに、あさかぜ応援団として共同受任・事件紹介いただいた会員の皆様にも、OJTによる熱心なご指導・ご鞭撻をいただき、まことににありがとうございました。
今日まであさかぜ事務所が存続し、九弁連管内の弁護士過疎地域に弁護士を派遣することができたのは、皆様のご支援・ご声援、叱咤激励があってこそです。
なお、歴代あさかぜ事務所弁護士の至らない点(所員の至らない点について苦言をお受けしたこともありましたので、なかったとは言えません。)につきましては、所員一同を代表して深くお詫びします。
司法アクセスの維持・改善のために
あさかぜ卒業生としては、あさかぜ事務所の閉鎖は寂しい限りです。でも、感傷に浸る暇はありません。あさかぜ事務所が閉鎖した後も、弁護士過疎地域の司法アクセスの維持・改善のための活動(ひまわり基金法律事務所の所長弁護士を確保する活動)は続きます。
これまで、あさかぜ事務所が壱岐・対馬のひまわり基金法律事務所の所長弁護士の給源として機能してきました。そのあさかぜ事務所を閉鎖する以上、別の方法で、壱岐・対馬の所長を確保していかなければならないと強く感じています。それは、私が壱岐ひまわり基金法律事務所の所長弁護士として活動した経験から感じるものです。
私は、所長弁護士として壱岐の島で2年間生活をしました。壱岐に実際に住んだ身としては、島で法的なトラブルが生じたとき、もし島のなかに常駐の事務所がなかったならば、島の外に出てまで弁護士に相談しようとは思わないのではないか、と感じます。一島民としては、決して安くない船舶料金を払って、1日がかりで島を出て、わずかな時間の法律相談に行くことがどれだけ時間的・経済的に困難で、大変なのかを実感できるからです。そこに思いを致せば、やはり、壱岐の島に常駐型法律事務所はなくてはならない、と思います(この点は、日弁連公式YouTubeチャンネル内にある動画「ここに弁護士がいてよかった~長崎・壱岐編」(https://youtu.be/N7IQzS5fOP0?si=BGfbchBAl7RyBRkw)でもお話していますので、是非ともご視聴いただければ幸いです)。
むろん、オンライン技術が進歩していけば、もしかすると常駐型法律事務所がなくともリーガルサービスを受けられる社会、相談者が安心感を得ることができる社会が実現するかもしれません。ただ、今でも弁護士のことを「怖い」と思う市民の方々が、モニター越しで会話する弁護士を信頼し、安心することができるのか、という問題があると思います。また、デジタルデバイスを用いることができない方々にとっては、オンライン技術がいくら進歩したとしても、その恩恵を得られるわけではない、という問題もあると思います。その意味で、私は、オンライン技術が日々進歩している現在においてもなお、かの地に弁護士が常駐している必要があると確信しています。
あさかぜ事務所が閉鎖したとしても、そうした司法アクセスの維持・改善のあゆみは、止めるわけにはいかないと考えています。
今般、九弁連では、司法過疎対策として、あさかぜ事務所に代わる過疎地赴任者の養成制度を企画しています。新制度では、九弁連管内の特定の事務所に過疎地赴任者の養成を委託し、九弁連がそれを財政的に支援する制度を予定しています。このように、九弁連では、あさかぜ事務所の活動に変えて、司法アクセスの維持・改善に向けた取り組みを続けていくことになりましたので、この新制度が機能するように、微力ながらお手伝いするつもりです。
また、日弁連では、司法過疎対策の一環として、令和7(2025)年6月から、新たに弁護士登録後3年の実務経験を有する弁護士を対象に、赴任のための準備費用として、上限200万円を給付する「経験弁護士準備援助金」制度を設けました。この準備金制度は、ひまわり基金法律事務所における従前の年間所得720万円を補償する制度とは別個の制度であり、経験弁護士でもひまわり基金法律事務所の所長に手を上げやすくするために整備された制度です。
弁護士過疎地対策として、このような制度もありますので、この機に、ひまわり基金法律事務所に興味をお持ちいただき、是非とも、エントリーしていただければと思います。ご興味のある方・ご不明な点は、ご遠慮なく私にお尋ねください。
弁護士過疎地対策に、ご理解と変わらぬご支援・ご声援をお願いします。
これからもよろしく
「あさかぜ基金だより」はこれで終幕です。これまであさかぜ基金だよりをご覧いただきまして、ありがとうございました。
とはいえ、弁護士過疎問題や司法アクセスの改善のための活動を風化させないため、不定期に、弁護士過疎問題に関連した記事を投稿したいと考えています。面白い記事、皆様が興味をそそられるような記事にできれば良いなと思っていますので、掲載の折にはご一読いただければ幸いです。


