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ヤミ金対策法成立す!!  

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石田光史

第1節 先の国会において、いわゆる「ヤミ金対策法」が成立しました。この主要部分は、既に九月一日から施行されています。みなさん新聞報道等でご存じかとは思いますが、紹介と解説をさせていただきたいと思います。

第2節 ヤミ金対策法の内実は、貸金業法と出資法の改正です。内容は多岐にわたっていますが、主なところを挙げると、貸金業登録の拒否事由の追加、無登録業者の広告等の禁止、貸金業者に使用人等への従業員証明書の携帯義務を負わせたこと、出資法に定める金利違反の罰則強化などです。

第3節 しかし何と言っても本法の眼目は、契約無効規定を置いたことでしょう。貸金業法四二条の二は、次のように定めます。

貸金業を営む者が業として行う金銭を目的とする消費貸借の契約において、年一〇九・五%を超える割合による利息の契約をしたときは、当該消費貸借の契約は無効とする。

ここで言う「貸金業を営む者」とは、登録業者に限りません。したがって、我々が日常相手をするいわゆる「ヤミ金」の契約は、利息部分だけでなく消費貸借契約全体が無効となります。

第4節 ところで、債務者がまだ元本分の返済も終えていない場合、どう処理すべきことになるのでしょうか。

この点、一部では、「元本分を返済すれば利息分は無効となる」といった報道がなされ、また某庁のホームページにはわざわざ「元本の返済義務はある」と記載されていました。会員の中にも、この点で混乱された方もおられるのではないでしょうか。

しかしこの報道・解説は明らかに誤りです。正解は、「この法律は、元本分の返済については何も言っていない」です。返せとも返さなくてもいいとも言っていない。つまり、元本分については、通常の不当利得法理によって処理されることになります。不法原因給付の適用も排除されません。衆議院法制局職員による解説も同旨です(金融法務事情一六八三号三七,三八頁)。したがって、ヤミ金による数百・数千%にも及ぶ超高利の貸付は、不法の原因によって給付されたものであり返還義務はない、としてきた従来の我々の主張に、何ら変更の必要はありません。

第5節 立法過程で、元本の返済不要も明記すべきとの意見もありましたが、今回は見送られました。この点を曲解して、立法により元本分は返済しなければならなくなったとする向きもあるようです。

しかし前述のとおりそれは誤りですし、実質的に考えても、ヤミ金「対策」立法が成立したことにより、従来我々が貫いてきた「ヤミ金に対しては一切返済しない」との原則が否定されるというのはおかしな話です。少なくとも、数百・数千%の超高利を取っている「ヤミ金」の貸付については不法原因給付に該当するとして、従来どおり一切返還しないという立場を貫くべきですし、それは全く可能であると考えます。

第6節 今回のヤミ金対策法には、物足りないとの批判もあります。その批判も解るのですが、ただ「『返済しない』という理屈は立つのか。立つとしても実際にはヤミ金とどう闘うのか。」などという議論をしていた当時(ほんの二年程度前です)からすれば、隔世の感があります。

近頃ヤミ金はだいぶおとなしくなり、数も減ったという印象があります。あと一歩です。このヤミ金対策法を活用して、ヤミ金を撲滅しましょう!

「弁護士報酬の敗訴者負担」に反対する署名3517人分集まる   

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安部 千春

1 黒崎合同法律事務所では、依頼者や相談者に年賀と暑中お見舞いの「事務所だより」を発送し、31号になります。

内容の一は裁判の報告で、今回は東敦子弁護士が麻生知事に1億円の支払いを命じた県同教の裁判を、内容の一は「法律相談シリーズ」を田邊匡彦弁護士が、内容の一は政治に関するもので「有事法制三法案と日本の未来」を横光幸雄弁護士が書きました。

これだけでは面白くないので、もう一つは何か依頼者や相談者が面白く読んでくれるようなもの、例えば弁護士宅訪問や子ども時代の思いでなどを書いています。田邊匡彦弁護士の「私の双子時代」というのは評判がよかった。

田邊弁護士は一卵性双生児で2人とも弁護士です。幼稚園、小学校、中学、高校、大学と同じで、いつも比較され続け、匡彦弁護士の最大のライバルは弟だったそうです。弁護士になりたてのころはよく知らない人から声をかけられたが、今は体型が違って双子時代は終わったとまとめてありました。

弟君から「安部先生、兄が事務所ニュースは私のことを書いて面白かったといわれるが、私は読んでいませんので送って下さい」と頼まれて送った。

「事務所ニュース」は、4人の弁護士がそれぞれ書いており、今回は私が面白い記事として2003年憲法集会を書いたが、あまりこんな報告文は面白くなかった。やむなく、もう一本「行列のできる法律事務所の北村晴男弁護士、交渉のために黒崎合同法律事務所に来る」を書いた。こっちはまあまあでした。

2 今回、この事務所ニュースに「弁護士報酬の敗訴者負担」に反対する署名を同封し、返信をお願いしたところ、587人から3517人分の署名が集まりました。私が書いたお願いの文章を参考のためにお知らせします。

『私達の事務所では、筑豊じん肺訴訟や過労死認定訴訟、オンブズマン訴訟など、国や北九州市を相手にした訴訟や、新日鉄などの大企業を相手にした配転無効、出向無効の裁判をしています。

通常の訴訟では、依頼者から着手金をいただいて裁判を始めますが、これらの訴訟は手弁当で行っています。それは、依頼者に着手金を支払う資力がなく、その裁判は人権を守るために私達が弁護士としてやらなければならないと考えたからです。

これらの裁判は、勝か負けるかやってみなければわかりません。大変難しい裁判です。 筑豊じん肺訴訟では、一審では国に敗訴し、控訴審では勝訴しました。

弁護士報酬の敗訴者負担が決まれば、私達は「この裁判を私達は、勝つために必死に闘いますが、敗訴することも考えなければなりません。私達の着手金はいりませんが、敗訴したときには相手の弁護士報酬を支払わなければなりません。」と説明しなければなりません。

こんなことを説明したら、私達に弁護を頼む人がいるでしょうか。

通常の事件でも、敗訴したときには相手の弁護士報酬を支払わなければならない場合に、それでも私達に依頼する人がいるでしょうか。

弁護士報酬敗訴者負担は、結果として国民が国や県や北九州市を被告とする裁判や、医療過誤や労働裁判など被告の方が圧倒的に資力がある裁判ができにくくします。市民を裁判からしめ出すことになります。

日本弁護士連合会では反対署名に取り組んでおります。

お忙しいこととは存じますが、ご家族、友人、知人、ご親戚の方々に反対署名をしていただいて、同封の返信用封筒にて事務所までご返送下さい(できましたら8月末日を目処に)。他の方にご依頼できない方は、自分の分だけでも結構です。

ご協力お願い致します。』

ADRの研修に参加して

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松原妙子

1 ADRとは何ぞやと思われている方のために。

簡単に言うと、紛争を早期に解決するために裁判所以外で解決しようという制 度で、民間紛争解決センターのことです。

研修は、本当にびっちりと12日は午後一杯、13日も午前9時から午後1時 まで。議論の内容は、主に、今後制定されるADR法がどう規定されるべきかに ついてであり、参加者は、皆各地でADR設立、運営について活動されている方 ばかりでした。

主な問題点は、ADRに申し立てたことについて、時効中断の効果を認めるか、 成立した和解に執行力を付与するかでした。

私は、時効中断の効果を認めなければ利用価値がないと思います。

そして、そのためには、ADR制度そのものが、信頼されるものである必要が あると思います。

その後、各地からの活動報告があり、石橋先生が立派に発表されました。

福岡は、医師、建築家等各種の専門家との連携を取れる体制になっているとの 発表で、福岡が1番整備されていると各地の先生が羨ましがっておられました。

福岡は、様々な制度で先駆者の役割を果たし、且つ、その制度を円滑に活用し ていることは誇りに思って良いことだと思います。

ところで、私が今回の研修に参加して1番感動したことは、結構お年の先生方 が参加しておられ、熱心に疲れを知らずに議論されていることでした。

ADRの設立準備の時から関与され、これまで熱心に活動され、さらにこれか らの制度、体制等を良くしようと考えておられる情熱は素晴らしく、法律家は何 時までも精神を若々しくしていなければいけないと刺激を受けました。

毎日、仕事に追われる生活ではありますが、そのような生活の中でも、余力を 残し、人のため、社会のために貢献せねばと思わせられた研修でした。

最適IT度

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中野

ITコラムの原稿依頼を受け,ITに詳しくもない私としては困りましたが,「ITに関する雑感でも何でも良いから」と言われ,引き受けることにしました。

このコラムでITの新活用法や裏ワザが分かるのではないかと思って読まれる方は,参考になりません。以下は全くの雑感です。

私の事務所にも数台のパソコンはあり,簡単なワープロ,表\計算,インターネット,Eメール程度はできますが,それ以上に精通はしていません。携帯電話も一応持っていますが,電話の受発信だけでメールのやりとりなどはしていません。私はITにも各人ごとに「これくらいが丁度良い」というIT度(最適IT度)があるように思うのです。

先日,北九州部会で新弁護士会館が完成したので,記念誌を作ろうということになり,記事にするため,弁護士会館のこれまでの歴史を大先輩の先生方にお聴きする機会がありました。そのとき,昭和30年頃の書面作成などの興味深い話をうかがうことができました。その当時はパソコンは勿論,複写機もありませんでしたので,写しを作成するときなどは複写紙を間に入れて手書きで作成していたとのことでした。複写機,パソ\コン,プリンターなどがなかった時代を経験された先生から見ると,ボタン一つで写しができ,簡単に修正できる文書が即座に印刷されて出てくるなどというのは全く夢の話で,その意味では革命的に便利になったが,他方,何でもコピーしたり,書面を書くにも後から修正すれば良いとして筋立てもそこそこにパソコンで打ち始め,印刷して活字になると何か出来上がったような気になって,そのまま提出してみたりというように仕事に対する「集中度」が希薄になったような気がするという趣旨の話も出ました。

私は弁護士登録前に企業に就職していたのですが,いわゆるワープロ専用機が出始めの頃で,新人の頃は上司からワープロ専用機(それも各部で2台くらいしかないので予約制でした)での書面作成を頼まれたものですが,ほとんどが手書きメモを清書するというパターンでした。パソ\コンやワープロ専用機がひとり一台時代になって,資料や文書をパソコン画面で推敲しながら考えるという執務形態に変わっていきました。パソ\コン等が出まわり,これで文書作成が楽になると思ったら,文書作成や修正が容易なので,かえって上司に何回も修正を命じられたり,上司も膨大なワープロ作成資料を見せられたりして,何がポイントなのかが分からないまま,資料・情報に埋もれてしまうことが多くなったような気がします。電子メールも便利ですが,他方,朝メールを開くとたくさんのメールが入っており,その内容をみるだけで時間がたち(しかも不必要な情報が多い),添付ファイルで取捨選択もないまま膨大な付属書類が流されてくることも多く,辟易することもあります。親指をつかっての携帯電話でのメールの頻繁なやりとりや電子メールでのチャットなどは個人的にはどうも違和感を覚えます。

このようにIT機器には功罪両面あり,また好悪もあり,やはり,各人の人生経験,仕事作法,性格などから,最適IT度には個人差があるように思います。だから,ITを駆使している方を見ても焦る必要はないと思います。ただ,「IT機器を扱ってみたが自分としてはここまでにしておく」という姿勢が大事で,初めからIT機器に近寄りもしないというのでは,最適IT度も分かりません。

「IT機器はどうも」という先生方もおられるかもしれませんが,まずトライしてみて(さしあたり弁護士会のホームページを見ることができるくらいまでは),その上で自分なりの最適IT度に落ち着くというのが良いのではないでしょうか。

裁判員ドラマ上映会

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徳田宣子

5月24日、中央市民センターにおいて、日弁連作成のドラマ「裁判員〜決めるのはあなた」の福岡上映会が開催されました。その模様をお伝えしようと思います。

当日は、集客に多少の不安はあったものの、160名を越す方々の参加がありました。私は司会をしていたため、ステージの上から会場にいらした方を見ていましたが、大学生風の人から年輩の方まで、幅広い層の市民の方々に参加していただいたという印象を受けました(残念ながら会場を満員にすることはできなかったのですが)。

さて、当日のプログラムとしては、まず今回の目玉である日弁連作成ドラマ「裁判員〜決めるのはあなた」の上映が行われました。見ていない方というのために簡単に説明しますと、嫁が姑を殺したとされる殺人被告事件において、石坂浩二扮する裁判長とともに選挙人名簿から無作為に選ばれた個性あふれる7人の裁判員が審理をしていくという内容のものです。見どころは何と言っても審理の過程です。始めは、被告人が故意に被害者を突き落としたと考えていた裁判員が議論を深めていく中で次第に考えが変わり、最後には被害者は誤って転落したにすぎず被告人は無罪であると全員一致で判断するに至ります。和製「12人の怒れる男たち」といったところでしょうか。かなり本格的な作りです。参加者の方からも大変好評で、協力いただいたアンケートでは、「裁判員1人1人の描写が深く表現されていて感動的で説得力のあるドラマだった」「予\備知識なしでも十分楽しめるし、裁判員制度についても身近に感じられると思う」といった感想が寄せられました。

ドラマの上映に続いては、福岡上映会の独自の企画として、関西学院大学の丸田隆教授に「市民が参加しやすい裁判員制について」と題する特別講演を行っていただきました。丸田教授は、法的観点から市民が利用しやすい裁判員制度と言えるためには、人数・対象事件・評議方法・評決方法などの点でどのような制度が望ましいかということや、現実的に市民が使いやすい制度と言うためには、どのような補償が必要となってくるかということなどを、流暢な関西弁に乗せて、大変わかりやすく説明してくださいました。もちろん参加者の方からの評判も大変よく、会場のあちらこちらから「わかりやすかった」という声が聞こえてきました。

最後に、船木副会長から、閉会の挨拶に代えて、「より良い制度の実現に向けて」として、裁判員制度導入にあたって、捜査の可視化が不可欠だという提案がされ、裁判員ドラマ福岡上映会が幕を閉じました。あっという間の三時間。参加された方は、時間を忘れて裁判員制度の理解を深められたのではないかと思います。

平成13年6月、司法制度改革審議会から裁判員制度を取り入れた意見書が答申され、裁判員制度の導入がいよいよ現実化しようとしていますが、正直なところ、私自身は恥ずかしながらどのような制度が導入されるのか、よくわかっていませんでした。しかし、今回の上映会を通じて少しではありますが、イメージすることができました。もちろん、これまでとは全く違う制度が導入されるのですから問題がないということはあり得ないと思います。しかし、よりよい制度にするためにできることとして、まずは1人1人が関心を持つことが何より大事なのではないかと思います。私を含めて少なくとも上映会に参加された方は裁判員制度に関心を持ち、自分なりに「理想的な制度とは?」ということを考えた1日だったのではないかと思います。

さて、裁判員ドラマ上映会は、6月27日は久留米で、また本稿執筆段階では日程は未定ですが、北九州でも開催されます。また、ご希望の方がいらしたら再度の上映会の開催も考えています。まだ裁判員ドラマをご覧になっていない方はぜひご覧頂きたいと思います。

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