法律相談センター検索 弁護士検索
アーカイブ

司法修習生の給費制を取り巻く現状について

カテゴリー:月報記事

司法修習費用給費制復活緊急対策本部 副本部長
千 綿 俊一郎(53期)

1 はじめに

2011年に司法修習生の給費制が貸与制に移行して以降、まもなく2年が経過しようとしています。2011年に採用された第65期(2012年修習修了)と、2012年に採用された第66期(現在修習中)の修習生が、無給での修習を余儀なくされています。

しかるに、弁護士会員の大半には、「司法修習生の給費制問題は既に終わった問題である。」と受け止めていらっしゃる方も少なくないようです。

特に、2011年5月に設置された「法曹の養成に関するフォーラム」と、その後の2012年8月に設置された「法曹養成制度検討会議」において、いずれも「貸与制を原則とする。」と取りまとめられたために、「日弁連は敗北した。」との雰囲気も一部に漂っているかのようです。そのような雰囲気の中、弁護士会における給費制復活運動は、かつてほどの熱気を維持することが困難となっています。

しかしながら、司法制度を担う法曹の養成は国の責務であり、司法修習生の給費制復活は、法曹養成制度として本来あるべきものと言えます。また、1年間もの研修期間中に、給与を支払わない会社があれば、それは違法なブラック企業であり、国が司法修習生に対してこれを強いるのは明らかに誤っています。

そのため、「貸与制は誤っている」という声は挙げ続けなければならないと考えています。

もちろん、「司法制度改革の失敗」は「失敗」として受け止めて、貸与制以外の諸課題も改善されなければならないことは当然のことです。ただ、諸課題が改善されないまま遺っているからと言って、同じく問題を遺している貸与制が是認されて良いことにはなりません。また、なにより、給費制の復活に向けてはなおチャンスが残されている目下の状況にあることも後述致すとおりです。

本稿では、引き続き給費制復活への運動を継続することに対して、会員各位のご理解を得て、再び関心を持っていただきたく、給費制を取り巻く最近の状況について、ご報告したいと思います。

2 2013年7月16日法曹養成制度関係閣僚会議決定「法曹養成制度の改革の推進について」

法曹養成制度関係閣僚会議は、2013年6月26日付の「法曹養成制度検討会議」の取り纏めを受けて、同年7月16日「法曹養成制度の改革の推進について」を決定しました。

そこでは、第67期司法修習生(2013年11月修習開始)から、(1)分野別実務修習開始に当たり現居住地から実務修習地への転居を要する者について、旅費法に準じて移転料を支給すること、(2)集合修習期間中、司法研修所内の寮への入寮を希望する者のうち、通所圏内に住居を有しない者については、入寮できるようにすることが求められました。

他方で、(3)司法修習生の兼業の許可について、法の定める修習専念義務を前提に(中略)、司法修習に支障を生じない範囲において従来の運用を緩和する。具体的には、司法修習生が休日等を用いて行う法科大学院における学生指導をはじめとする教育活動により収入を得ることを認めるという提案をなしています。これは、「生活ができないなら、ほかに働けばよい」という提案ですが、修習期間が1年と短縮されているにもかかわらず、その専念義務を緩和するのは、かえって有害でさえあると言えます。

この点、2012年7月27日に可決した「裁判所法及び法科大学院の教育と司法試験等との連携に関する法律の一部を改正する法律」において、修習資金の貸与制について、「司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から、法曹の養成における司法修習生の修習の位置づけを踏まえつつ、検討が行われるべき」と明記され(同法第1条)、この改正に際しての国会質疑では、将来の給費制復活も排除されていない旨の答弁がなされていました。

また、この法改正を受けて設置された「法曹養成制度検討会議」では、新たなメンバーからの給費制復活を求める声や、従来からの委員からさえも貸与制の問題状況を踏まえて少なくとも一定額の手当の支給などを求める声も多く挙がっていました。

そのため、個人的には、一足飛びに給費制復活とはならなくとも、その足がかりくらいにはなる手立てがなされるのではないかという期待は有していました。

しかしながら、現実には、上記の(1)、(2)の改正に止まるものであり、そのあまりに「しょぼい」内容に驚きを隠せませんでした。かえって、有害な(3)のような内容まで提案されているのです。

「どうしてかかる結果になってしまったのか」については、様々な分析があるところです。例えば、「法曹養成検討会議」に寄せられたパブリックコメントは3119通あったところ、そのうち法曹養成課程における経済的支援に関する意見は2421通にも上り、そのほとんどが給費制を復活させるべきという内容であったとのことですが、これらは何ら反映されませんでした。

ただ、検討会議の議論状況からは、この取りまとめは、法改正を要せずに直ちに実施できる最低限の措置であったところです。貸与制の問題状況を改善すべく、検討会議に続く次の検討体制において、修習生に対する経済的支援策を引き続き検討してもらうことを求める旨が共通認識となっています。この点は今後に希望をつなぐ足がかりと言えます。

3 2013年6月18日自民党司法制度調査会「法曹養成制度についての中間提言」

そして、2013年6月18日の自民党の司法制度調査会による「法曹養成制度についての中間提言」では、司法修習生の給費制について、その復活を求める声も多かったことが触れられています。

具体的には、「司法試験合格者数の動向や生活実態も踏まえつつ、司法修習の位置づけや司法修習生の地位のあり方を再検討し(ただし、給費制については復活すべきという意見と、これまでの経緯からあり得ないという両論があった旨両論付記する)、修習生の過度な負担の軽減や経済的支援の必要性について、真剣かつ早急に検討し、対策を講じるべきである」とされています。

4 2013年6月11日公明党法曹養成に関するPT「法曹養成に関する提言」

また、2013年6月11日の公明党の法曹養成に関するプロジェクトチームによる「法曹養成に関する提言」でも、踏み込んだ指摘がなされています。

すなわち、「司法試験に合格した法曹有資格者に対し、国家が特別の義務として課する実務研修である司法修習においては、少なくとも研修医に準じてその経済的支援を行うべきである。」「実務庁の近くに住居を移すことに伴う引越代や、修習中に生じる通勤・交通費等の実費的支出の補填がなされるべきである。また、司法研修所の集合修習において、寮に入れない人が生じている事態の解消も図られるべきである。」「国家公務員、地方公務員に対し認められている旅費法上の『研修日額旅費』を参考に支給することを検討すべきである。」などとされています。

5 今後について

今後は、上記の2013年7月16日法曹養成制度関係閣僚会議決定「法曹養成制度の改革の推進について」を受けて、内閣に関係閣僚で構成する会議体(閣僚会議)を設置し、その下に事務局を置いて、各施策の実施をフォローアップするとともに、2年以内をめどに課題の検討を行うとされています。残る課題についての検討作業は、ほどなく開始される予定です。

給費制問題は、公式には決着済みの論点であり、法曹人口論、法曹資格者の活動領域、法科大学院のあり方、司法試験のあり方、司法修習の充実などをメインに議論される予定ですので、そこにおいて、日弁連が給費制復活を主張し続けることの賛否、様々な勢力がいる中でのかじ取りの難しさはあろうかと思います。

しかしながら、救いは、上記3、4のとおり、給費制復活を熱烈に支持して頂ける国会議員が少なからず存在することであり、それは、「司法制度を担う法曹の養成は国の責務である」という認識を持っていただいているからこそと言えます。また、上記2の通り、法曹養成制度検討会議も、次の検討体制において更なる経済的支援策の検討を求めつつ閉幕したことも忘れられてはなりません。

そのような中、この問題について、我々弁護士自身が関心を失くして、その燈火を消してしまうことがあってはなりません。

上記のとおり、その中間提言で給費制について両論併記とした自民党の司法制度調査会では、近く議論を再開したうえで最終提言を取りまとめるものと見込まれます。政権与党の自民党や公明党の意向は重大です。当会の対策本部や日弁連の対策本部においては、この数ヶ月間をとりわけ重要な時期と認識し、国会議員要請や世論喚起に注力する決意です。

どうか、会員の皆様の一層のご理解、ご協力を頂きますようお願い申し上げる次第です。

◆憲法リレーエッセイ◆ロックと憲法のコラボ

カテゴリー:憲法リレーエッセイ

会 員 後 藤 富 和(55期)

6月20日、フライングダッチマンのライブ「つゆのはれま九州ツアーin福岡」に参加しました。出演アーティストは、フライングダッチマンの他にRIKI a.k.a.Ozonbaby、SUNDRUMと私です。私に来たオファーは、ライブの合間に原発と憲法のワークショップをやるというもの。

講演を聴きに来た人にお話しするのとは違い、観客はロックのライブを観に来ています。その中で原発と憲法の話。厳しすぎます。アウェイ感満載です。

どうしたら短時間でライブの観客の心に響く訴えができるのか考えました。そして、15秒くらい考えた末、中国人留学生の宋さんにアシスタントを頼むことにしました。開演前のリハーサルでは、出演アーティストから「今日は弁護士さんの話しが聴けるので楽しみにしています。勉強させて下さい」との暖かい(?)言葉。めっちゃプレッシャーです。

ライブが始まると、ミュージシャン達は曲の合間のMCで原発や憲法改正の問題に触れ「この後、弁護士さんが話ししてくれるから、みんな真剣に考えようぜ」ってな具合に、盛り上げていきます。

こんなに期待させちゃってどうするんだよと内心ドキドキ。

RIKIの演奏が終わり、MCが私のことを紹介。

プロジェクターで写し出した映像を、観客は静かに注視します。お喋りをしたりする人はいません。さっきまで踊っていた観客たちが福島の映像に食い入ります。

昨年福島に行った際の写真を見せながら解説し、風船プロジェクトや原発なくそう!九州玄海訴訟の写真を示し「憲法が改正されれば脱原発の歌やデモなんかは国益に反するという理由で禁止されるだろう、だから今、憲法とは何かについて考えて欲しい」と言って、憲法の紙芝居に移ります。

憲法紙芝居は宋さんにお願いしました。宋さんの舌足らずな可愛らしい日本語に、観客は惹きつけられます(これも狙いのひとつでした)。

そして、国際貢献の名の下にアメリカが世界中でやっている戦争、そして犠牲になるのはいつも子ども達。その子ども達は選挙権もなく戦争についてyesもnoも意思表示できなかった。その子ども達の命を私たちは左右しようとしている。ちょっと立ち止まって憲法について考えようと訴えました。

最後まで観客は集中して話を聴いてくれました。

そして、フライングダッチマンのライブ。原発反対、憲法改正なんてあり得ねえ、選挙行こうぜ、と訴えてくれます。彼らの音楽に引き込まれてしまい、最後までずっと踊っていました。ミュージシャンって、憲法改正がヤバイって気付く鋭い嗅覚を持っていますね。

宋さんにアシスタントを頼んだ理由はもう一つあります。

日本は、憲法9条2項で、軍隊持たない、交戦権も持たないと誓っていることから、軍事力によって国を守るというシステムをとっていません。では、どうやって国民の安全を守るのか。憲法前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」とあります。ポイントは「諸国」ではなく「諸国民」となっている点です。中国の脅威とか、嫌韓国というと、つい勇ましい意見が出てしまいます。でも、あなたの友人である中国人や韓国人のことを具体的に思い浮かべてください。彼らがあなたやあなたの家族を殴ったり殺したりするのを望んでいると思いますか。逆もそうです。あなたが友人である中国人やその子どもを殺したいと思いますかと。そうであるならば、戦争になった時にどうやって中国を叩き潰すかを考えるのではなく、どうやったら戦争にならないように仲良くできるのかを考えましょう。それが日本国憲法の理念です。と僕は講演で訴えています。

今回、中国人である宋さんに憲法の紙芝居を読んでもらったのは、彼女が私達を殺すと思いますか。また、彼女を殺したいと思いますか。ということを少しでも感じてもらえればと思ったからです。

ロックのライブと憲法のコラボ。やる前はどうなることかと思っていましたが、意外にうまくいったと思います。

災害対策委員会報告

カテゴリー:月報記事

会 員 吉 野 大 輔(64期)

1 はじめに

平成25年6月17日に、日本弁護士会連合会、四国弁護士会連合会、高知弁護士会主催によるシンポジウムが、高知市で開催されました。シンポジウムのタイトルは、「災害時における個人情報の適切な取り扱い~高齢者・障がい者等の安否確認、支援、情報伝達のために~」というものです。

現在、災害対策委員会・東日本大震災対策本部の委員を中心に、東日本大震災・原発事故による被災者支援活動として、東日本大震災被災者のための無料相談会を定期的に行っています。多くの被災者及び自主避難者が、福岡県内にも避難しています。私たちは、福岡県への避難者に向けて無料相談会が開催されることについて自治体への広報や記者レク等を活用して広報を行ってきました。しかしながら、多くの避難者へ広報が届いているのか、確認できないまま広報の方法を模索している状況です。被災者を支援する上で、支援者側が避難者へのアクセスをする上で障害となっているのが、個人情報保護法です。支援者側の立場からは支援を望む被災者へのアクセスを要望しても、行政側の立場からは、個人情報保護の観点から被災者の個人情報の開示に消極的になるという問題があります。東日本大震災から2年以上経過しましたが、東京電力への損害賠償請求の消滅時効問題、不動産等の賠償問題、慰謝料の算定の問題など様々な問題が新たな問題として浮上してきています。新しく発生する法的問題について、被災者への広報を続けていくことが必要です。そこで、被災者へのアクセスの現状を考えるために、シンポジウムに参加して来ました。

2 基調報告について

東日本大震災における高齢者・障がい者や避難者の個人情報取り扱いの実情について、基調報告がありました。まず、避難者をサポートするNPO法人の代表者より支援者側からの話がありました。震災の際に大きな被害を受けた人達は、サポートなくして避難することが困難な高齢者や障がい者でした。支援者側としては、高齢者や障がい者等を支援するためには、住所や病状等の個人情報が必要でしたが、個人情報保護法が壁になって、スムーズな支援ができなかったようです。次に、行政側の立場から報告がありました。行政側の立場から被災者支援のために個人情報を開示するためには、目的外利用については原則として本人の同意が必要という問題がありました。行政側に震災が起きたときに個人情報を開示する準備ができていなかったことが大きな原因だったようです。

支援者側も行政側も、被災者を支援する目的を同じくしていたにもかかわらず、個人情報の開示制度の不備のためにスムーズな被災者支援ができず、特に支援が必要だった高齢者や障がい者に支援が行き届かず不幸な結果が生じたことが理解できました。

3 平成25年災害対策基本法について

東日本大震災の個人情報の取り扱いについての教訓を踏まえて、災害対策基本法一部改正法が平成25年6月17日に成立しました。かかる改正で、震災における個人情報の取り扱いの交通整理が行われました。この改正では、地方自治体に、震災が起きたときのために、事前に個人情報を開示するルール等を準備することが求められるようになりました。

4 最後に

私たち支援者側としては、スムーズかつ安心して個人情報を開示してもらうためには、個人情報の管理体制を築き被災者や行政側との信頼関係を築くことが必要です。このシンポジウムから得たことを、無料相談等の被災者支援に結びつけていきたいと思います。

あさかぜ だより

カテゴリー:月報記事

会 員 島 内 崇 行(65期)

1 はじめに

昨年12月の弁護士登録と同時にあさかぜ基金法律事務所に入所しました65期の島内崇行と申します。弁護士登録して既に半年以上経過し、月日の経過の早さに驚いております。

さて、私が所属するあさかぜ基金法律事務所ですが、どういった事務所であるのかについてまだまだご存知ない方もいらっしゃると思いますので、この場をお借りして当事務所をご紹介させていただきたいと思います。

2 あさかぜ基金法律事務所について

あさかぜ基金法律事務所は、九州弁護士会連合会の支援の下に設立された、九弁連管内の司法過疎・偏在地域へ赴任する弁護士を養成することを主たる目的とする法律事務所です。

これまでには、五島、対馬、阿蘇、西都、島原、壱岐、小林、指宿といった九州管内の司法過疎地に設置された法テラスやひまわり基金法律事務所に、当事務所で養成を受けた弁護士が赴任しました。

現在、当事務所には64期の弁護士2名、65期の弁護士2名の合計4名が所属しており、事務局2名と力を合わせて仕事をしています。

3 事務所の日常について

当事務所の弁護士は、1~2年間の養成期間の後、九弁連管内の司法過疎地等へ赴任することになっています。したがって、当事務所には、若手弁護士しか所属しておらず、処理に悩む機会は日常茶飯事であり、自分で調べ物をするだけでは対応を決めかねることも多いです。実際の業務は、これまでの勉強だけでは対応できない部分が非常に多いことを実感します。

そのようななか、指導して下さる先生方に質問したときには、自分では思いつかないような解決方法や実務的な感覚まで教わることができとても勉強になります。

このように、当事務所に所属する弁護士は、九弁連の管理委員の先生方、福岡県弁護士会の運営委員の先生方、福岡県の指導担当の先生方など、多くの先生方からのご支援、ご指導によって日々の業務を進めています。

4 大川市での事務所披露パーティー

本年度4月より、当事務所に所属していた63期の油布貞徳先生が、独立して、福岡県大川市に「ゆふ法律事務所」を開設しました。6月に事務所披露がありましたので、所属弁護士全員で参加しました。

大川市は、家具の大生産地であり、また「のだめカンタービレ」の主人公、野田恵が同市出身の設定ということもあり、認知度は低くないと思います。しかし、人口は年々減っており、弁護士も現在油布先生1人という弁護士過疎地でもあります。大川市は、交通の便があまり良くないため、市内に弁護士が存在することの意味は大きいと思われます。

あさかぜ基金法律事務所出身の油布先生が、大川市唯一の弁護士という極めて重要な立場になられたということで、私も、いずれ司法過疎地に赴任してリーガルサービスを提供する立場になることを改めて認識し、今後もさらに精進していく決意を致しました。

5 おわりに

まだまだ弁護士として至らない点ばかりではありますが、1~2年など直ぐに経過してしまうことを肝に銘じ、日々の業務に取り組むつもりです。この報告をご覧になっておられる先生方からも、ご指導、ご鞭撻のほど、どうかよろしくお願いいたします。

日弁連刑弁センターだより

カテゴリー:月報記事

会 員 丸 山 和 大(56期)

6月7日、8日の二日間にわたり日弁連刑弁センター全体会議が開催されました。同会議の議題のうち、実務上重要と思われる二点についてご報告します。

1 取調べDVDの実質証拠化について

捜査機関の取調べについて、その全過程を録画・録音して可視化しようとする動きが、法制審特別部会「新時代の刑事司法制度特別部会」でようやく実現する機運が高まっていることは周知のことと思われます(もっとも、捜査機関側の委員は未だに「捜査官の裁量」論を唱えており、予断を許しません。)。

そのような中、可視化の成果物である「取調べDVD」について、これを自白調書に代えて請求するなどして積極的に罪体立証に使用しようとする動きが検察庁にあります。

かかる「取調べDVDの実質証拠化」の動きについては、「法廷のビデオ上映会化」を招くなどとして裁判所は否定的な立場に立っていると解されていましたが、最近になって、裁判所が取調べDVDを実質証拠として採用した事例が複数報告されるようになりました。

取調べDVDの実質証拠としての証拠能力については、これを認めるのが現在の多数説(伝聞証拠にあたらず刑訴法322条の要件を要しないとする説。ちなみに、個人的には、取調べDVDに実質証拠としての証拠能力を認めない説が妥当であると考えています。)と思われ、現行法上、法廷顕出を妨げることは困難な状況です。

従って、実務にあたる弁護人としては、将来の公判において、取調べDVDが実質証拠として請求されることを見越して捜査弁護にあたる必要があります。

なお、取調べDVDの実質証拠化に対応する弁護手法については、10月22日に予定されている日弁連ライブ研修において検討が行われる予定ですので、ぜひご聴講ください。

2 拘置所弁護士待合室における携帯電話の預け入れについて

拘置所による、接見室における写真撮影に対する接見妨害についての全国的状況については、本誌2月号の田邉国賠訴訟の紹介記事においても触れたところです。

拘置所による接見妨害に関して、もう一つ全国的に顕在化している問題が、拘置所による、弁護人の接見室内への携帯電話の持込みに対する妨害です。

福岡拘置所においても、接見室に携帯電話を持ち込むことは出来ません、ロッカーに預けて下さい、という趣旨の張り紙が掲示してあり、これ見よがしにロッカーが備え付けられていることはご存知のことと思います。

そして、実際に、拘置所職員から「携帯電話はロッカーの中に入れて下さい」と声を掛けられ、預け入れている弁護人の方々も散見されます。

しかし、拘置所が、弁護人に対し、ロッカーに携帯電話を預け入れることを強制する法的根拠はありません(もっとも、拘置所側は、「刑事収容施設・処遇法は拘置所の「施設管理権」の存在を前提としており、かかる施設管理権に基づいて持込を禁止することができる」、と主張するようです。あるいは、「被疑者の外部交通の規制のために弁護人の携帯電話の持込を禁止することができる」、とも主張するようです。)。

従って、携帯電話をロッカーに預け入れるか否かの判断は弁護人に委ねられており、携帯電話をロッカーに預け入れるにせよ、それは弁護人の自発的意思に基づいてなされなければならない、という点に留意する必要があります。

些細なことかもしれませんが、このような些細な点から国による接見妨害が始まり、そこから接見妨害の範囲が拡大されていく危険性があることに注意を払う必要があります。
なお、接見における電子通信機器の使用に関しては、接見の補助手段として使用することは許され、秘密交通権の保障が及ぶ、とする研究者の論文も発表されているところですのでご参照ください(葛野尋之「弁護人接見の電子的記録と接見時の電子通信機器の使用」季刊刑事弁護72号)。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.