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大連律師会訪問と交流会の報告

カテゴリー:月報記事

会員 中原 幸治(64期)

8月1日から3日まで、中国大連律師協会への定期交流訪問について、本会より山口会長をはじめ総勢16名の会員で実施しましたので、報告いたします。

本会と大連律師協会の交流は1992年から開始され、2010年に正式の交流提携を締結し、以来隔年で相手方を訪問しており、今年は本会が大連を訪問しました。

1 一行は8月1日16時に大連国際空港に到着し、本会との交流に長年あたられている大連律師協会の劉挪弁護士と、同協会宣伝交流工作委員会の劉艶弁護士が花束で歓迎してくださいました。

大連律師会訪問と交流会の報告

2 法律事務所訪問および企業見学
(1) 遼寧恒信法律事務所

翌日午前は1時間の市内観光(旧日本人街、旧ロシア人街、満鉄本社など)を行ったのち、遼寧恒信法律事務所を訪問しました。

大連律師会訪問と交流会の報告

同事務所は中国国内に3拠点、70人の登録弁護士、会社法務、海事など6つの業務セクションを有し、顧問先としては主に重工業企業、金融機関、大連市政府などがあるとのことでした。

本会から、中国の輸入促進策等について質問したのに対し、大連市は、北京上海等と比較すると経済的地位が低下しているとの認識のもと、特に日本企業への優遇政策をとって投資を誘致する施策をとっているとの説明がありました。また、中国政府としても関税の引き下げ、食品輸入規制を緩和するなど輸入を増加させバランスを取りながら、輸出入の拡大を図っているとの説明がありました。

青果物の具体例としてはJAとの連携による日本米の輸入、青森県産ナマコの輸入、ワサビの日本への輸出などの例が挙げられていました。

(2) 大連華信

2件目の訪問先として午後、市内から1時間程度の郊外にある大連華信計算機技術股分有限公司というソフトウェア開発企業を訪問しました。冒頭の劉挪弁護士が社外取締役を務められていることから訪問先となったものです。

同社は売上のうち64%が海外向け、うち9割が日本向けであり、特に日本の地方自治体の8割が行政情報システムの運用において同社のサービスを利用している状況とのことです。そのため、同社はデータセンターにおいて常時、日本の行政情報システムの運用状況をモニターしているとのことでした。アクセスには限界はあるはずとはいえ、日本の基幹情報システムが中国と常時接続されているという実態に驚きました。

このような事業に関して同社は日本の地方行政に関わる法改正の最新情報を常にフォローしていると、同社総裁自身が極めて堪能な日本語で説明されました。

8000人の従業員を収容できる広大な敷地建物の様子にIT分野での中国企業の隆盛を強く印象付けられました。

(3) 遼寧君連法律事務所

さらに2件目の法律事務所として、遼寧君連法律事務所を訪問しました。同事務所は、大連市の南部の星海湾地域(福岡の百道浜か)の高層ビルに所在しています。

同事務所内には中国国旗と中国共産党旗が掲揚されるスペースが設けられており、中国政府の「一帯一路」政策に関連する業務を行っているという説明にもなるほどと思いました。

約15分程度の短時間の訪問になったため、一帯一路政策に関わる業務の詳細に聞くことができなかったことは残念でした。

3 交流セミナーおよび懇親会

(1) その後、遼寧君連法律事務所階下のグランドハイアット大連の会議室において両会の共同セミナーが開催され、大連側からは輸出入および投資規制の法体系、知的財産権保護法制についての発表があり、福岡側から多数の質問が出されました。

(2) 福岡側からは尾畠弘典国際委員会事務局長が、「日本における株式取得及びその制限等について」の表題で発表されました。

これは、日本進出の法律相談を受けることが多いという大連律師協会側の要請に応えるものでした。

また、同発表の内容は中村亮介国際委員会委員が中国語への通訳をされました。

(3) 懇親会では、山口会長と大連律師協会楊家君会長との間で記念品贈呈が行われた後、中国語・日本語のできる弁護士間では直接に、または通訳を介しての交流となりました。

4 今後の交流に向けて

(1) 今回の訪問日程は実質2日でしたが、中国の法律事務所を見学できるともに、共同セミナーでは中国の輸出入・投資規制の法体系、知的財産権保護法制の概要を学ぶことができました。

また、企業訪問では、中国のIT分野の日本への影響力の大きさを肌で感じることとなりました。

このような事務所訪問、企業訪問は今後もさらに内容を充実深化させて実施すべきだと考えます。

(2) 今回の訪問団のうち、意外にも多くの先生方が中国を訪問すること自体が初めてとのことでした。隣国である中国の実情を、長い友好関係にある大連律師会の方々から直接聞くことができるというのは本会会員にとって極めて貴重な機会と思われます。

過去の大連訪問に参加された先生方にも、中国を定点観測する機会と考えていただき継続的に参加していただき、大連とのパイプを当会として太く築くことが必要なのではないでしょうか。

(3) また、交流会のセミナーについても、国際委員会以外の委員会からも参加していただき、より幅広い分野での意見交換ができればさらに内容を充実できると思います。

この点については、2016年釜山弁護士会訪問の際の、交流会のテーマ(面会交流、家庭内暴力被害者保護制度)と現地施設3か所の視察の例が参考になると思われます。

中国法制や比較法的な関心をお持ちの先生方にはぜひ、大連律師協会との交流会に参加していただきたいと存じます。

(4) 交流を発展的なものとしていくため、例えば、毎月大連律師会と電話会議を行い、相互に法制度や実情について質疑応答を行い、交流を定期的に続けるといった新たな方策が必要かもしれません。

(5) 来年は本会と大連律師協会との友好協定締結から10周年の節目にあたり、大連律師会が福岡を訪問する回となりますので、ぜひ多くの先生方に交流会に参加していただきたいと存じます。

大連律師会訪問と交流会の報告
大連律師会訪問と交流会の報告
大連律師会訪問と交流会の報告

福岡銀行産業金融部「事例に基づいたM&Aセミナー」

カテゴリー:月報記事

会員 原 隆(68期)

1 福岡銀行産業金融部「事例に基づいたM&Aセミナー」の開催について

中小企業法律支援センターは、福岡銀行の方に以前海外進出に関する講演をお願いした経緯がありますが、今回は産業金融部ファイナンシャルアドバイザリーグループ部長代理の武重太郎様に令和元年9月4日(水)17時から「事例に基づいたM&Aセミナー」と題してM&Aセミナーに関する銀行実務についてご講演頂きました。

2 M&Aについて
(1) マーケット動向

全国のM&A件数は増加の一途たどり、平成26年には合計で1400件だったのが平成30年には2180件に大幅に増加しています。また、九州においても平成26年には買い56件、売り80件であったのが、平成30年には買い84件、売り108件に増え、増加基調にあります。

(2) M&Aの流れ・企業価値算定について

M&Aの一般的な流れとしては、スキーム等の条件検討、アドバイザー契約締結、価格分析、譲渡先選定、アプローチ・交渉、意向表明・基本合意、買収監査・条件調整、最終契約締結、クロージング、引継ぎ経営統合という流れを経ます。

買収価格決定のための企業価値算定手法としてはインカムアプローチ(DCF法・収益力をベースに評価する方法)、マーケットアプローチ(株価倍率法・市場価格をベースに評価する方法)、コストアプローチ(修正純資産法・純資産をベースに評価する方法)が検討され、最も適切と思われるアプローチを選択あるいは組み合わせることにより評価を行うことが一般的です。

(3) 買い側の人気業種について

全体として、現在のM&A市場においては売りを希望する側よりも買いを希望する側の方が大幅に多いようですが 特に買い手が多い(売り手が少ない)市場としては、ソフトウェア開発・IT関連、ビルメンテナンス・マンション管理、調剤薬局・ドラッグストア、人材派遣、業務請負等があるようです。また、他にも買い手候補が多い業種としては飲食チェーン、食品スーパー、医療関連、介護関連、学習塾・専門学校、通信販売、Eコマース、物流・運送会社、健康食品・化粧品関連、建設業、ホテル業等があり具体的なシナジーが出やすい業種の買いM&Aニーズが多いようです。

(4) 売り側の主な売却理由について

売り手が事業を売却したいと考える理由には、①後継者不在企業型(後継者が不在で外部売却を検討)、②ハッピーリタイア型(株式譲渡で多額のキャッシュを得る)、③カーブアウト型(グループ関連会社の売却。選択と集中を実施し、経営資源を割り振る)、④オーナー経営の限界(資本面、技術面、商圏などを理由に自力での成長に限界を感じており、大手グループ傘下入やファンドによる経営参画を検討)、⑤アライアンス型(業界先行きが不透明な中、単独での事業運営について不安を感じている。売却まではいかないが、他社と資本業務提携を検討)、等に分類できるようです。

3 おわりに

ここではご紹介が難しいのですが、当日の講演では、福岡銀行で実際に扱った11件のM&A案件について具体的な背景事情、苦労した点、後日談等を詳細に生々しくご紹介頂き、聴講者にとって非常にわかりやすい形でご説明いただきました。

福岡銀行産業金融部「事例に基づいたM&Aセミナー」
福岡銀行産業金融部「事例に基づいたM&Aセミナー」

弁護士と商工会職員との勉強会

カテゴリー:月報記事

会員 寺尾 功(71期)

1 勉強会の開催

令和元年8月23日、福岡県商工会連合会研修室にて、「事業承継の相談で何を聞いたらいいの?」というテーマで弁護士と商工会職員との勉強会を開催しました。勉強会では、弁護士を代表して舛谷隆輔先生が講師として事業承継の相談を受ける際に留意すべき事項等を講演されました。

2 事業承継とは

本講演は、そもそも事業承継とは何か、というところから遡って始まりました。以下、本講演の内容を箇条書きにて要約してお伝え致します。

(1) 「事業承継」、「事業承継対策」とは何か

事業承継とは、「経営(社長のイス)と所有(自社株)の承継」である。

(2) 事業承継の必要性

事業承継対策をしていないと、①後継者や相続人の間で内紛が起こる可能性、②取引先や銀行からの信用が失墜する可能性、③会社の資金繰りへの影響がでる可能性、④後継者に大きな負担を与える、などのリスクが生じる。

(3) 事業承継で検討すべきこと

事業承継にあたっては、①経営権を渡す相手と渡す時期、②後継者の育成、③関係者の理解、④経営体制の構築、⑤株主構成の検討、⑥自社株を後継者に渡す方法など検討しなければならないことが多岐にわたる。

(4) 事業承継の相談で行うべきこと

事業承継の相談では、まず、経営者に事業承継の話を切り出していいのか確認する必要がある。経営者によっては、事業承継の話はイコール自身の引退の話であると肝に銘じ、言葉遣いに慎重にならなければならない。

次に、事業承継の必要性を認識してもらう必要がある。経営者の中には、自分はまだ現役でやれるので事業承継など必要ないと感じている方も多く、弁護士として、そのような経営者に対し、事業承継が経営者の引退を意味するものではないことや事業承継には長期間を要することなどを説明し、その必要性を認識してもらう必要がある。

また、相談に臨む側としては、経営者の話を聞くことも重要である。

(5) 経営者のあるある発言とその対応

その他、勉強会では、①「事業承継はまだ早い」、②「まだまだやりたいことがたくさんあって引退なんて考えられない」、③「事業承継は顧問税理士に頼んでいる」、④親族でない役員に継がせるから大丈夫」、⑤「潔く辞める(会社をたたむ)つもりだよ」、といった発言が経営者からあった場合の対応について、弁護士と商工会職員とディスカッションを行い、議論しました。

3 勉強会後の懇親会

勉強会後には懇親会を開催しました。商工会職員の方は気さくな方が多く、懇親会も勉強会以上に盛り上がり、会の終盤では、今後、弁護士会と商工会がどのように連携していけるかなどについても議論がされていました。

4 おわりに

この勉強会も今年で10年目を迎えるとのことで、当センターとしては、今後とも、商工会及びその他の各連携先との関係を深めつつ、会員の皆様に有益な情報提供を行うことができるよう、活動を続けてまいりたいと考えております。

弁護士と商工会職員との勉強会

民事介入暴力対策全国拡大協議会旭川の報告

カテゴリー:月報記事

民事介入暴力対策委員会 甲谷 健幸(62期)

1 はじめに

本年7月19日、北海道の旭川市にて開催された、民事介入暴力対策全国拡大協議会旭川に参加してきましたので報告いたします。

協議会のテーマは、「給付行政等における反社会的勢力排除」と「暴力団排除条項の裁判規範性に関する諸問題」であり、昨今何かと話題となっている反社会的勢力の排除に重点が置かれた内容となっていました。

2 テーマ設定の背景

21世紀最初の民事介入暴力対策大会は、平成13年(2001年)5月に旭川で開催されています。この18年前に開催された大会において、旭川の民暴委員会は先進的に暴力団排除条項をテーマとされました。

暴力団排除条項については、平成19年6月19日の政府指針が、世間へと浸透していく契機となったのですが、その約6年前にはすでに旭川で開催された民事介入暴力対策大会において提言がされていたのです。

今回の拡大協議会では平成13年(2001年)5月に旭川で開催された民暴大会の経緯を踏まえ、契約関係の解除などの現実に問題となる場面が裁判の場に持ち込まれた場合に暴力団排除条項が裁判規範としてどの程度機能するのか、暴力団排除条項を遡及的に適用することに問題はないのかといった視点から「暴力団排除条項の裁判規範性に関する諸問題」のテーマが設定されました。

また、北海道では約2億4000万円もの生活保護費が不正受給されるという事件が発生し世間に大きな衝撃を与えたこともあり、生活保護費の不正受給に関する事例等を分析して諸論点を取りまとめ、特に、暴力団員という属性認定の判断要素はどのようなものなのかについて検討すべきとして「給付行政等における反社会的勢力排除」のテーマが設定されました。

3 協議会の内容
(1) 給付行政等における反社会的勢力排除について
  • 生活保護制度を所掌する厚生労働省は、暴力団員は稼働能力の活用要件、資産・収入の活用要件を満たさないとして、生活保護の受給を基本的に認めないという通知を発出しています(以下「平成18年通知」といいます。)。そのため、暴力団員が生活保護の受給申請をするに当たっては、暴力団員ではない又は既に離脱した等の虚偽の事実を述べて申請することになり、これが発覚した場合には、詐欺事件として取り扱われることとなります。他方で、真実暴力団員ではない者や、暴力団を離脱し生活に困窮した者が生活保護の受給申請をする場面もあることから、生活保護の現場においては、不正受給を目論む暴力団員を排除しつつ、暴力団員ではない者や暴力団を離脱し生活に困窮している者に適切な保護費を支給する必要があり、暴力団員という属性認定が重要な課題となっています。
  • このテーマについては、札幌、函館、釧路の各弁護士会の民暴委員が担当し、生活保護申請者が真実暴力団を離脱したかが争われた事例、離脱の真実性ではなく現役の暴力団員かどうかが争われた事例をそれぞれ検討の上、論点整理と暴力団員の属性認定の判断要素について整理がなされました。
    暴力団員該当性の判断においては、①警察における暴力団員登録の有無、②当該人物の外部からの評価・認識、③当該人物の活動実態、④当該人物の交友関係、⑤当該人物の外形的特徴、⑥当該人物の生活状況を要素とし、①の要素については推認力が強く、その余の要素については事実関係によって推認力の軽重は生じるものの、概ね、この6要素によって、暴力団員該当性の判断されるのではないかとの報告がされました。
  • 協議会ではさらに進んで、仮に、誤情報により生活保護申請を却下し、後に国家賠償請求がされた場合には、どのような判断がされるのかという点の検討もされました。
    国家賠償請求においては、職務行為基準説により違法性が判断されることは周知のことですが、警察の依頼に基づく口座凍結について銀行の不法行為責任が争われた事例において、銀行の不法行為責任を否定した裁判例とパラレルに考察することができるのではないかという視点で報告がされました。
(2) 暴力団排除条項の裁判規範性に関する諸問題について
  • 平成3年5月に暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律が制定され、その後、同19年6月の「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」の公表によって、企業に反社会的勢力との一切の関係遮断が求められ、さらには同年23年10月までに全国の都道府県に暴力団排除条例が施行されるに至ったこと等を契機に暴力団排除条項の導入が広がりました。もっとも、暴力団排除条項を具体的に適用する場面、特に契約関係の解除の場面において、どこまでの効力が認められるかについてなお具体的検討が必要な重要な課題となっています。
  • このテーマについては、旭川弁護士会の民暴委員が担当し、法人内部における暴力団等反社会的勢力の排除、金融取引における暴力団等反社会的勢力の排除、不動産取引における暴力団等反社会的勢力の排除について、それぞれ暴力団排除条項の裁判規範性の視点から検討がなされました。
    加えて、ゴルフ場からの暴力団等反社会的勢力の排除と保険契約における暴力団等反社会的勢力の排除(重大事由解除)についても検討がなされました。ゴルフ場からの暴力団等反社会的勢力の排除と保険契約における暴力団等反社会的勢力の排除(重大事由解除)については、実務経験豊富なパネリストとのパネルディスカッションの形式で行われました。
  • 法人内部からの暴排については定款や就業規則に暴力団排除条項を加えた場合の効力、金融取引からの暴排については改正民法下で定型約款に暴力団排除条項を加えた場合の効力、不動産取引からの暴排については不動産流通4団体作成のモデル条項例や国土交通省作成のマンション標準管理規約の暴力団排除条項の効力が、それぞれ報告されました。
  • ゴルフ場からの暴力団等反社会的勢力の排除については、具体的な事例の寸劇が披露され、特に暴力団排除条項を導入する前から当該ゴルフ場の会員になっていた暴力団員(既存会員)を排除できるかについて検討がされました。これについては、そもそも暴力団排除条項の導入が既存会員に及ぶかについて難しい論点があり、最高裁判所平成12年10月20日判決(判例タイムズ1046号89ページ)、最高裁判所昭和61年9月11日判決(判例タイムズ623号74ページ)、東京地方裁判所平成22年7月30日判決(ウエストロー・ジャパン2010WLJPCA07308002)、東京地方裁判所平成22年11月4日判決(ウエストロー・ジャパン2010WLJPCA11048002)などの裁判例の検討、さらに暴力団排除条項の導入に加えて、受付において表明保証や誓約等を求めることにより暴力団等反社会的勢力の排除の実効性がより高まるという整理がされました。
  • 保険契約における暴力団等反社会的勢力の排除(重大事由解除)については、暴力団員と判明した時点と解除行使の時点、保険金支払いの有無などの内容により場面を分け、具体的な検討がされました。これについては、解除すべきか否か、どの時点で暴力団員であることが必要か、支払った保険金や弁特保険金の返還請求ができるかなどの検討がされました。
4 最後に

今回の拡大協議会は、反社会的勢力の排除について基本的なところを押さえつつ、現時点における到達点が報告され、資料もよくまとまっており非常に有益なものでした。

反社会的勢力の排除は近時でも某芸能事務所で問題になったように実際には様々な論点の絡み合う解決困難なテーマです。反社会的勢力なのか否かの判定や、反社会的勢力の排除が、これを逆手に取った「ゆすり」や「たかり」などの材料にされないような配慮も必要です。

反社会的勢力の排除を少しでも容易にし、かつ、仮に反社会的勢力であることが発覚した場合にも適切な対応をするための道具として反社会的勢力排除条項が生み出され、今日まで様々な場面で活用されてきました。今回参加して、同条項の適用には、なお検討の余地もあることや、(折しも某芸能事務所で問題となっている)反社会的勢力とのかかわりが発覚した場合の適切な対応とは何なのかについて、深く考えさせられました。

反社会的勢力排除の問題はこれから先もまだまだ議論の発展がなされるものと思われます。議論に遅れることなくアップツーデートで対応できるよう今後も研鑽を続けていきたいと思います。

最後に、令和元年11月15日に第89回民事介入暴力対策大会が、大分市で開催されます。この大会のテーマは「暴力団の資金に対する課税について」となっています。暴力団の資金を根絶することは、暴力団被害の根絶の最たる方法と考えられます。暴力団資金への課税の場面に弁護士として関与することはなかなかないことではありますが、暴力団への金銭請求に弁護士が関与することはあり得るところです。かかる場面における一助となり得るテーマと思いますのでふるってご参加ください。

民事介入暴力対策全国拡大協議会旭川の報告

旭川会場

民事介入暴力対策全国拡大協議会旭川の報告

旭川垂れ幕

外国人相談研修のご報告

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国際委員会 仁田畑 莉加(70期)

1 はじめに

令和元年7月22日、福岡県弁護士会館にて外国人相談研修が行われましたので、ご報告いたします。

第1部は、福岡出入国在留管理庁就労・永住審査部門の総括審査官、入国審査官をお招きし、入管手続についての基礎知識及び改正入管法の概要についてご解説いただきました。第2部前半は、国際委員会川上誠治先生より、外国人相談・入管相談において注意すべきポイントについて、後半は同委員会松井仁先生より退去強制手続と在留特別許可・行政訴訟についてご解説いただきました。

2 福岡出入国在留管理庁によるご講演

第1部では、入管手続の基礎知識として、外国人の入国(上陸)審査手続から在留手続・退去強制手続までの一連の手続をご説明いただき、「特定技能」に関する入管法改正についてご説明いただきました。

入管法改正で新設された在留資格「特定技能1号」は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格で、「特定技能2号」は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。特定産業分野は介護、ビルクリーニング等の14分野とされています。

特定技能1号は在留期間を通算5年とし、技能水準・日本語能力水準は試験等で確認されます。また受入機関等による支援の対象となり、受入機関は支援計画の作成、支援を行うことになります。これに対し、特定技能2号は、技能水準は試験等で確認し、日本語水準は試験等による確認が不要で、受入機関又は登録支援機関による支援の対象外となります。

外国人増加に伴い、外国人の受入環境の整備・支援の方向に進んでいるとのことでした。

3 川上誠治先生によるご講演

第2部前半では、入管業務に関して、①入国・上陸、②在留、③出国・退去強制・出国命令手続の各時点における具体的設例の解説をいただきました。さらに帰化手続業務に関する具体的設例を解説していただきました。

まず入国・在留手続に弁護士が関与するにあたり、弁護士会を経由して各地方入国管理局庁に事前届出をすることで、各種手続において、申請者本人の出頭を要することなく申請等を行うことができるとのことでした。届出手続、届出済証明書の発行までには1~2ヶ月を要するそうです。

在留期限が近づいており、在留期間の更新許可申請をせずに永住許可申請のみを行う場合、永住許可がなされなければ帰国しなければならなくなるため、永住許可手続と更新許可手続が独立の手続であることに注意して対応をしなければならないとのことでした。

外国人に対する政策や出入国管理庁の方針は、国際情勢等によっても変化する可能性があることに留意して活動をすることが大切だそうです。

4 松井仁先生によるご講演

松井先生からは、実際にご経験された2つの事例をご紹介いただき、詳細な対応方法についてご紹介いただきました。

1つ目の事例は、専従資格外活動をしたとして、退去強制事由該当性が問題となった事案での立証資料準備、退去強制手続の流れについてご説明いただきました。退去強制事由に該当する容疑がある場合、収容令書により収容され、仮放免許可を受けると在宅手続になりますが、仮放免中は就労はできず保証人等の扶助で生活し、原則として一月毎の更新手続のために入管に出頭する必要があるそうです。

2つ目の事案は、オーバーステイの外国人について、在留特別許可申請をし、その後行政訴訟、執行停止の申立、そして再審情願をされた事案をご紹介いただきました。退去強制事由に該当する場合であっても、在留特別許可手続があり、在留特別許可についてはガイドラインがあり、法務省サイトで事例集が毎年発表されているそうです。

5 おわりに

本研修で入管法を始め、様々な外国人の法律関係について広く学ぶことができる貴重な機会となりました。今後、実務に活かしてまいります。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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