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「消費者契約法」研修会報告

カテゴリー:月報記事

平岩 みゆき

1 平成16年4月16日吉岡隆典会員による「消費者契約法」研修会が行われました。

当職は吉岡会員と同じ事務所に所属しているため、同会員に対しては、困ったことがあれば何でも簡単に相談することができますし、相当嫌な顔をされることさえ覚悟すれば、確実に知恵を拝借することができるので、研修会費を取り立てられてまで同会員による研修を受けることには強い疑問を感じましたが、その価値については間違いないという確信がありましたので、出席することにしました。

2 講演は、事例をもとに、どのように消費者契約法を利用するか、その際どのような点に注意すべきかについて、説明がなされました。

事例は大雑把に言うと、次のようなものです。

(事例一)

Xは、日当たりの良いマンションを購入しようと考え、「陽差したっぷり」を謳い文句にするマンションを、その旨の記載があるパンフレットをもとに分譲担当者から説明を受け、購入したが、夏至においてはベランダの物干し部分に日光が全く当たらず、冬至においても室内にわずかに日光が届く程度というかなり日当たりの悪いマンションであった。

(事例二)

Xは、Y社が日当たりと眺望の良好をアピールするマンションを購入する際、Y社担当者に「近隣にマンションが建つことはないか」と聞いたところ、Y社担当者は「私共が知る限りそのような情報はありません」と言ったため、購入した。ところが、その一か月後、Y社は南側約五〇メートル離れた土地を購入し、高層マンションを建てる計画を発表した。

3 こんな相談がきたとき、みなさんはどうしますか。

当職の場合は簡単です。吉岡会員に共同受任してもらえばいいのです。そんな失礼な冗談はさておき、事例では消費者契約法四条の取消権が問題になります。

事例一では、契約締結勧誘における重要事項に関する不実告知(法四条一項一号)の適用、「勧誘」「重要事項」の意義が問題になり、事例二では、利益事実の告知かつ不利益事実の不告知(法四条二項)の適用、事業者の「故意」の意義が問題になります。

また、両事例に共通する問題として、六か月という時効期間の定めがあります。

馴染みのない法律であるが故に、文言の解釈が問題になった場合、一冊の文献を調べて、この文言はこう解釈するのかと単純に納得してしまいそうですが、それではまだまだ甘いようです。

特に、当職は、監修、編者として「最高裁判所事務総局民事局」や「経済企画庁国民生活局消費者行政第一課」などという言葉が出てくると非常に弱いのですが、「日本弁護士連合会消費者問題対策委員会」も忘れてはなりません。

講演では、異なった立場から三冊の参考文献が紹介されましたが、その違いを理解し、事案に応じてより説得的な論理展開ができるようになると、敵はあっと驚くでしょう。

4 講演は、消費者契約法にとどまらず、詐欺、錯誤、減額・相殺の主張についても及び、事件の経緯に沿って、詳細な説明がありました。

当日は、多数の会員の出席があり、非常に熱心に講演を聴かれていました。

当職は、会場後方にて講演を拝聴しましたが、当初、研修会費の支払に強い不満を抱いていたことを深く恥じ入った次第です。

第五回刑弁研究会報告 〜刑事事件におけるマスコミヘの対応〜

カテゴリー:月報記事

曽場尾 雅宏

 1 昨年十月、私が弁護士登録してはじめて経験した刑事事件は、新聞等で大きく報道された事件だった。この事件を通じて、私は、被疑者を誤った報道から守ることも、重要な弁護活動の一つではないかという問題意識を持った。そこで、このテーマを取り上げた。

今回は、佐賀新聞社の森本貴彦記者、大鋸宏信記者を講師としてお招きして、お話をうかがうとともに、活発な質問にもお答えいただいた。また、今回の研究会では、多くの大先輩の先生方にご参加いただき、研究会の議論がより深いものになった。
 遠路おいでいただいた佐賀新聞社のお二人と、ご多忙の中ご参加いただいた先輩の先生方には、深く感謝したい。

2 前述の、私が経験した事件の概要は次のとおりである。
 被疑者の逮捕後、余罪に関するスクープ記事が、一紙のみに大きく掲載された。被疑者は、真実を報道されるなら仕方ないが、報道されたスクープの内容はほとんどが間違いであるとし、強い不満をもっていた。新聞に大きく報道されたことで、家族は深く傷つき、住居も転居せざるをえなくなった。

私は、報道した新聞社に対し、被疑者の言い分も聞いて欲しい旨を連絡した。すぐに記者の方が事務所に来られ、話を聞いてくれた。記者も、相手方の言い分はじっくり聞こうという姿勢を持っているものだと感じた。同時に、もっと早い時期に記者と接触できていれば、誤った報道を防ぐことはできたのではないかと感じた。

3 私の経験の発表の後、お招きした記者の方々の講演が行われた。ここでは我々にとって大いに有益な、刑事事件の取材や紙面構\成等の実務の話をしていただいた。

また、記者から弁護人に対して求めたい情報としては、第一に、被疑者の認否と、否認ならば詳しい供述内容とのことだった。

記者の方々が強調していたのは、記者と弁護士との間により強い信頼関係を構築する必要があるということだった。

4 講演後の討論の際の発言の一部を、以下にランダムに並べる。

  • 認否といっても、逮捕の段階では、否認に近い自白もあれば、その逆もある。また、公判で不利にならないようにするため、逮捕時には認否を明らかにできないこともある。
  • 一時期、被疑者の言い分も記事にするという流れができつつあったが、今はそれが停滞している感がある。
  • 弁護士会で広報担当者を定めて一元的に情報提供する方法は、メリットとデメリットがある。広報が形だけの情報提供をすると、無意味になる。
  • 少年犯罪について、実名で報道する会社もあるが、実名報道は弊害が大きい。
  • マスコミも弁護士も、もっと双方がお互いを利用しあってもよいのではないか。
  • 否認事件の場合は、見出しに否認している旨を書いて欲しい。。

5 記者の方々や先輩の先生方からは、他にも多くの有益なお話をお聞きできた。

結論としては、月並みではあるが、弁護人がマスコミに対しどのような情報提供をすべきかは、非常に難しい問題であるということになろう。

以下は、私個人の私見である。

被疑者・被告人のために、その言い分を積極的にマスコミに伝える必要性のあるケースもある。また、国民の司法参加が進められている今日、刑事事件に関する情報は広く国民に伝える必要がある。その意味で、弁護人は、個々のケースの特殊性に配慮しながら、提供すべき情報は積極的にマスコミに提供する必要があると考える。そして、適時の有効な情報提供のためには、普段から記者と弁護士との間の信頼関係を構築しておく必要があると考える。

「こどもの日記念無料相談」開催される

カテゴリー:月報記事

池田 耕一郎

平成16年5月8日(土)午前10時から午後3時半にかけて、電話による「こどもの日記念無料相談」が開催されました。当日は、福岡県弁護士会館二階会議室に受付電話回線を設置し、子どもの権利委員会の委員が午前と午後に分かれて張り付き待機しました。

この無料電話相談は、日弁連主催で、毎年5月のこどもの日前後に全国の各単位会で一斉に行われる恒例行事ですが、当会は、地元新聞、テレビ等の報道関係各位のご理解とご協力のもと、例年、全国の単位会の中でも上位の相談件数があり、本年度も昨年度の件数には及ばなかったものの、一二件の相談がありました。

今年の相談内容は、例年になくバラエティに富んでいたように感じます。

具体的には、近所の中学生男子から幼児(女子)への性的ないたずら行為に関する幼児の母親からの相談、息子と同じクラスに暴力的な同級生がおり危険であるから何らかの対策を講じたいという母親からの相談などがありました。他にも、保護者からの相談としては、中学生女子の不登校問題、担任教師からのいじめ問題、少年事件(傷害)の被害者となった中学生男子の示談交渉の相談などがありました。特筆すべき相談として、高校生本人から、学校の部活動の顧問教諭が部員間で差別的対応をするので、教育委員会に直訴したいというものがあり、子どもの権利委員会委員一同、思わず考え込まされました。

以上の相談どれをとっても、保護者あるいは子ども自身が、どこに相談してよいのかとまどう内容ばかりであり、本企画の存在意義をあらためて強く感じた次第です。

この「こどもの日記念無料相談」は、本年度で一四回目を迎え、市民の間に少しずつ定着してきた感がありますが、今後とも、当会会員、報道関係各位のご理解とご協力を得て、市民のみなさんがより一層利用しやすい企画にしていく所存です。

なお、当会では、今回の「こどもの日記念無料相談」とは別に、毎週土曜日午後0時半〜3時半の時間帯で、「子どもの人権110番」として、子どもの権利委員会の委員を中心とした担当弁護士が当番制で電話相談を受け付けています(電話番号092-752-1331)。これについても、積極的に市民への周知を図っていきたいと考えています。

想えば遠くへ来たもんだ 〜弁護士会ホームページに関与して〜

カテゴリー:月報記事

堀 孝之

1 ホームページ委員会(HP委員会)が立ち上がり、

当会のホームページ(HP)がリニューアルされて早くも二年弱が経ちました。私はHP委員会創設時からのメンバーとして関与して参りましたが、振り返ってみると、山あり谷あり、本当にいろいろなことがあったように思います。

今回、HP委員会だよりの原稿執筆依頼を受け、せっかくの機会だから、これまでの当会HPの歩みを、私が知る限りで振り返ってみたいなと思いました。しばしお付き合いいただければ幸いです。

2 草創期(旧HP時代)

当会HPは、平成10年ころに産声を上げたと聞きます。平成10年といえば、私が司法試験に合格したその年です。貧乏受験生だった私はパソコンなんて持ってませんでしたし(でもそう言えば昔事務職員として勤務していた事務所からもらい受けたDOSのパソ\コンがあったなあ・・・この子は今は自宅で永い眠りに就いています。本当におつかれさま)、HPなんて言われても「何それ?」というていたらくでした。司法修習生になって、夏のボーナスで初めてウィンドウズシステムのパソコンを手に入れました。こわごわインターネットに接続したのを覚えています。当時は常時接続といえばNTTのテレホーダイというサービスを使わなければならない状態で(私は利用しませんでしたが)、プロバイダの料金も接続時間に応じて課金されるシステムでしたから、ネットサーフィンをダラダラやってるととんでもない料金請求が来たりして・・・いかんいかん、テーマは私の歴史じゃなくて、当会HPの歴史だった。本題に戻りましょう。

修習生時代に弁護士会関連のHPで最初にアクセスしたのは確か日弁連のHPだったと思います。そこからリンクをたどって、当会のHPにたどり着きました。初めてみた印象は・・・実はそんなに悪いものではなかったです。デザイン的には、いわゆる「フレームページ」というやつで、開いたら表紙部分がジワジワと下からロールして上がってくるという、なかなか凝ったものでした。当時のコンテンツ(内容)を覚えていらっしゃるでしょうか?私もずいぶん記憶が薄れましたが、会長挨拶、「こんなときどうする?(これは今でもありますね)」、法律相談センター紹介、弁護士費用説明、市民向けイベント情報、委員会紹介、九弁連コンテンツ(所属単位会の紹介のみ)、会員情報、リンク(工事中)、「月報記事から」、だいたいこんなところだったかなと思います。ただ、修習生なりに仕入れていた情報として、すでに「元気な福岡県弁護士会」というイメージがあったのですが、当時のHPからはあまりそのようなイメージが伝わってこず、意外に思った記憶があります。

3 改革停滞期(HPPTの立ち上げ)

私が平成12年10月に当会に入会してからすぐに、ある一枚のペーパーがレターケースに投げ込まれました。内容は「当会HPについて意見交換するから言いたいことあるヤツは誰でも集まれ」という趣旨でした。思えばこのペーパー(発信元は執行部か業務委員会だったと思うけど忘れちゃいました)が、私が当会HPに関与する最初の機会でした。この会合には、今思い出せば、古賀克重会員、菅藤浩三会員、関口信也会員など、現在のHP委員である会員も多く集まっていました。

この意見交換会の直後、当時の植松功業務事務局長を座長とする、HPプロジェクトチーム(PT)が立ち上がり、私もこのメンバーに加わることになります。またこれと並行して、平成13年度からは主任・幹事会でもHP刷新についての話がなされるようになり、アクセス数の少なさに業を煮やした野田部哲也業務事務局長(当時)が「古賀克重のHPを超えよう」と唱え、これが合言葉になりました。ただここでの刷新作業は、いくつかのコンテンツを立ち上げはしましたが、全体としては遅々として進みませんでした。やはり最大の原因は技術情報の不足でしょう。克重会員は当会HPに対する独自の考えからPTには不参加でしたし、今のような業者との連携も全くありませんでした。更新作業は松本寛朗職員がコツコツやっていましたが、松本職員も技術情報に必ずしも詳しいわけではないし、何より業務の合間を見てやらざるを得ない。というわけでアイディアだけはたくさん出るのだけど実現の目処が立たないという何とももどかしい日々が続きました。

4 改革転換期(西日本新聞社訪問〜HP委員会発足)

平成13年八¥8月、HPPTと主任幹事会とで大挙して西日本新聞社にお話を伺いに参りました。このときの原田真紀メディア部長(当時。ちなみに男性です)の話は非常に示唆に富むものでした。いわく「もっと市民・住民に開かれたページを作らなければ」「現状は役員による役員のためのHP」「読んでもらえる、使ってもらえる、使って便利、という側面がないとだめ」「『一緒に考える、一緒に楽しむ』 という視点が不足」と次々に厳しい言葉をいただきました。この話を聞きながら、私の頭の中で次第にどのようなHPを目指すべきかの構想が固まって行きました。当時のメモに、私自身は「徹底した見出しの見直し」「リンク集を充実させる。これがメインでもよいのではないか。便利さの追及 『そこに行けば何かがわかる』」という言葉を残しています。

しかしそのような会合を経てもなお、当会HPの刷新について現実性のあるアイディアがまとまった形で提示されることはないままに時が過ぎました。そこで私は平成14年2月15日の主任幹事会の席で「弁護士会HP新装への提言」と題するA4版一一ページの論稿を提出し、この論稿の中で、初めて「法律情報ポータルサイト化」という方向性を打ち出しました。また時を同じくして、永尾廣久会長(当時)からの「新しくHP委員会を作ろう」とのお話を受け、古賀克重会員を委員長に据え、私を事務局長とするHP委員会の骨格ができあがり、同年3月20日の常議員会での承認を経て、HP委員会が発足しました。

5 改革実現期(HP大刷新〜現在)

HP委員会の初期メンバーは、専ら古賀委員長と私とが一本釣りで集めました。できあがってみると、まるで「多重会務者ねらい打ち」のような委員委嘱で、大変申し訳なく思ったのを覚えています。業者にもうまく連携が取れ、非常に安価な顧問料で契約していただくことができ、技術情報の不足からアイディアが実現できないという苦痛からはとりあえず解放されました。もともと忙しい人たちの集まりだったので、議論はメールのやりとり中心で行い、やがてこれがメーリングリスト(ML)へ進化して、今では当然のように行われている委員会MLでの議論が、この時当会で初めて実現したことになります。

そしてHP大刷新の期限を設定すべきということで、平成14年度定期総会の日(5月28日)を目標と定めたところ、古賀委員長の尽力により、早くも4月11日には試作ページができあがってしまいました。そして無事に5月28日のリニューアルオープンにこぎ着け、役員就任披露パーティーの席で大々的に公開したのはご記憶に新しいところかと思います。その後本格的に、会員専用HPの製作にも取りかかり、同年10月には運用を開始、松尾重信委員が毎月この月報で報告しているとおり、徐々に改良を重ねて現在に至っております。

6 旧HP時代のことを考えると、当会自体のIT化も含め、現況はまさに隔世の感があります。しかし委員会MLや定例委員会での議論などは、本当に「こんなこといいな、できたらいいな」というドラえもんのような夢の応酬で、またこれが次々に何とか実現にこぎ着けるものですから、すごく楽しいのも間違いありません。これからも更新作業は続いていきます。皆さんのアイディアをぜひたくさんお寄せいただければと思います。

土地家屋調査士会ADRセンターに参加して

カテゴリー:月報記事

塩川 泰徳

1 本年(平成16年)3月8日、福岡県土地家屋調査士会ADRセンターが発足した。正式名称は、「境界問題解決センターふくおか」という。愛知、大阪、東京に次ぎ全国で四番目という事である。私は相談委員を担当している。

まず、センターの概要を説明しよう。目的は、(1)境界に関する相談または問題について、当事者と専門家が協力して裁判に代わる簡易な手続で迅速、公正かつ柔軟に解決を図る。(2)問題解決の結果を登記簿及び地図に反映させ、国民の権利の明確化に寄与する。(3)問題解決にあたり、当事者の主体性を尊重し、当事者自身の問題解決意識を高める、の三点である。

人的構成は、運営委員会(調査士3名、弁護士2名)、相談委員会(調査士1名、弁護士1名)、調停委員会(調査士2名、弁護士1名)である。発足当時の委員の総数は、相談委員が調査士七名、弁護士五名、調停委員が調査士10名・弁護士5名であったが、申\込件数が多いため、先日、弁護士相談委員が五名から10名に増員された(弁護士調停委員の定数は変わらず)。

開設から本原稿執筆時までの活動状況であるが、約一月間の相談申込件数は21件。うち調停申\立は八件である(いずれもまだ未成立)。

手続は、まず、電話による受付から始まるが、電話では、紛争の存在や必要書類を確認し来訪をお願いするまでに止まり、実際の申込は、関係書類持参の上で一度センターを訪問してもらう必要がある。そして、センター訪問の際、センターの趣旨や相談・調停手続の流れの説明が行われ、申\込者持参の関係書類を受領する。相談日は、調査士及び弁護士の両相談委員の予定を確認した上で後日決定される。つまり、実際の相談は、2回目の来訪時である。調停については、弁護士会のADRと同様、相談前置主義がとられ、まず、相談委員会が当事者の話を伺い(2時間ほど)、相談で解決すれば調停には移行しない。なお、境界問題解決センターは、当然の事ながら対立当事者間の紛争の存在を前提としているので、申\込者の意識では境界に関する問題に属するとしても、当事者間の紛争が存在しない場合、例えば、「隣地との境界をはっきりさせていない(測量していない)ので不安です。今のところ、隣地所有者との意見の食い違いはなし、土地を処分する予定もないのですが、どうしたらよいでしょうか?」などという相談についてはセンター取扱い事案の対象外となる。かかる事件性のスクリーニングは、本来、受付段階で行われるが、実際資料を見ながら話した上でないと分からないことも少なくないので、相談段階になって、初めて紛争が存在しないことが分かることも少なくないようである。

費用は、相談手数料が五、250円(一回2時間)、調停申立手数料は10500円、成立手数料は解決額の8%を原則とし31500円を最低額とする(負担割合は当事者の合意)。測量等が必要となる場合は、別途見積による。

2 まだ、センター開設後一月余りであり、多くの案件を担当した訳ではない。しかし、本年1月から開設準備作業に携わり、模擬問題の作成や模擬相談・模擬調停に関与した中から学んだことがあるので、一つ重要なことを紹介しよう。

我々弁護士の感覚からすると、ともすれば誤解しそうになる事柄であり、土地家屋調査士の役割は何かという極めて重要な問題でもある。例えば、境界紛争について関係二当事者間で一定の合意(解決案)が見出せそうな雰囲気が出てきたとしよう。我々弁護士だと、「当事者がそれでいいと言っているのだから、それでいいじゃない」と、つい思ってしまわないだろうか?(私を含め、開設準備作業に携わった数人の弁護士はそういう感覚を持っていた)。しかし、これには問題がある。前述のセンターの目的にもあったように、「問題解決の結果を登記簿及び地図に反映」させねばならない。土地の境界は公的意味を持つし、境界問題の他の土地所有者にも必然的に影響を及ぼす問題である。当該土地につき、将来、取引関係に入ってくる第三者の利益のこともある。よって、現在の当事者間だけの利害調整として処理すればよいというものではない。その結果、調査、測量等の客観的結果を横に置いておき、現在の紛争当事者がそれでよいといっているからよいではないか、という処理をしてよいとは直ちには言えないのである。注意しなければならない。ただ、そうなってくると、場合によっては、センターに相談(調停)を申し込んだばっかりに、当事者双方ともに予\想しなかった負担を強いられる結果になる可能性がないとは言えず、それで当事者の納得が得られるのかという問題が残される。現代社会で不動産を所有するということはどういう意味を持つのかという問題でもあり、今後も検討していかねばならないだろう。

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