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犯罪被害者相談研修

カテゴリー:月報記事

会員  岡室 恭輔

1 去る平成18年6月14日、弁護士会館三階にて犯罪被害者相談研修が行なわれました。この研修は、資格研修と位置づけられ、受講した弁護士は、天神センターの犯罪被害者相談の担当弁護士として登録ができるほか、日本司法支援センターの犯罪被害者支援業務における犯罪被害等に関する精通弁護士として登録されることになるというものでした。

2 研修では、当会の犯罪被害者支援に関する委員会の委員長の芦塚先生の御挨拶の後、同委員会の委員の先生方によるロールプレイが行なわれました。

設定としては、それぞれ少年事件、交通事故で子供を亡くした親が弁護士に相談に来たというものでした。

ロールプレイにおいて相談を受けた弁護士は、相談者から、子供が死亡した事件の真相を知りたくて民事訴訟を提起することを考えているという相談を受けたにもかかわらず、経済的な観点から訴訟提起の是非を述べるに終始し、あるいは、弁護士が相談者の質問を遮り、自分の聞きたいことのみを聞き、後は自分に任せておけばよいという態度で相談を受けていました。

これらは、分かりやすくするために多少誇張されてはいたものの、本質的な点を捉えているものだったと思います。

それは、弁護士は何よりまず相談者の話を十分に聞かなければならないということです。そうでなければ依頼者が本当に何を期待して相談に来ているのか分からず、結果として十分な回答ができないことになります。

特に、犯罪の被害者やその家族の場合、ある日突然犯罪の被害に遭うのであり、自分がどうしたらいいかのみならずどうしたいのかさえ分からずに相談に来ることもあると思います。また、相談をしている間に考えが変わっていくこともあるそうです。したがって、30分間の相談では非常に難しいことではありますが、極力じっくり話を聞いて一緒に方向性を見出していく必要があると思います。

3 その他には、福岡県警が犯罪被害者の心のケアのための相談窓口として設けている「ミズ・リリーフ・ライン」からカウンセラーの方をお招きして講演をしていただきました。

私はこの存在をこれまで知らなかったのですが、犯罪被害に関係する人であれば、性別や被害者本人であることなどを問わずに相談でき、専門の心理カウンセラーが話を聞いてくれるのだそうです。

カウンセラーの先生のお話によりますと、犯罪被害者の心理は時間や相談を経るにつれてかなり揺れたり変化したりするそうです。このことだけでも理解していれば、我々が相談を受けた際、前回と言うことが違っていたとしても、相談者がなかなか決断をしてくれなかったとしても、それにイライラしたり相談者を責めたりせずにいられるでしょう。

私たち弁護士にとっては、法的な問題には対処できるとしても、心の問題までケアすることは容易なことではありません。したがって、相談の段階で以上のようなことを少しでも注意をした上、さらに、犯罪被害者の心のケアを専門としている機関と協力していくことが非常に重要なことだと思います。

4 私は、これまで犯罪被害者の方からの相談を受けたことはありませんでした。しかし、考えてみると、刑事事件を担当する際、多くの場合そこには被害者がいます。

そのような場合に、犯罪被害者の気持ちも考えることができれば、示談交渉においてかえって被害者を傷つけるようなこともなくなるのではないでしょうか。経験が浅く、なかなかそのようなところまで配慮できていない私は、今さらながらそんなことを思ったりしました。

ITコラム

カテゴリー:月報記事

会員  松井 仁

 私は、ワープロからパソコンに替えるのもケータイを買うのも人より遅く、概して「IT」には疎かったのであるが、二年間の英国留学では、ITの世話になりっぱなしであった。

 まず、大学選びや入学手続はほとんどインターネットで行った。各大学のウェブサイトにアクセスして、教えられている科目や入学条件などをチェックし、出願校を決めたら、願書をプリントアウトする。私が出願した五つの大学のうち、二つについてはオンライン出願もできた。画面上で必要事項を入力し、「Submit」(提出)をクリックしておしまいである。あとは、成績証明書や推薦状などを郵送で追完すればよい。地球の反対側にいるのに、あっという間に簡単に手続ができることに驚いた。願書を出したら、メールで受付の知らせが来て、その後の願書の審査状況は、ウェブサイトでチェックできる。ただし、合格通知はちゃんとサイン入りの手紙が郵送されてくる。ビザ申請にはこの原本が必要なのである。

 さて、大学での授業が始まると、並行して、図書館のスタッフによるIT講座が連続して開かれる。学生は年間を通じて、大量の予習をこなし、何本も論文を書かなければならないので、いかに効率よく文献や資料を探せるかが、授業についていけるかどうかを左右する。IT講座は、図書館(他の大学の図書館も含む)のオンラインカタログの使い方に始まり、各種データベース(論文や判例など)の紹介と情報検索のコツまで、実際にパソコンの画面をスクリーンに映し出しながら丁寧に教えてくれるのである。

 実際、私もロンドン大学LLMコースで、授業の前に読んでおくように言われる論文や英国の国内裁判所の判例を、WestlawやLexisNexisといった法律・文献・判例データベースを使って検索し、要旨をプリントアウトして読んでいた。これらは、本来は高額な契約費用のかかる有料データベースであるが、大学が一括契約しているため、学生はタダで自由にアクセスできるのである(コース終了後、学生の身分がなくなってアクセスが拒否されたときには、本当に残念だった)。他方で、国連やヨーロッパ人権裁判所のウェブサイトなど、無料で誰でもアクセスできるデータ-ベースの使い方も教えてもらったので、今後日本で人権に関する仕事をしていくうえで、たまには役に立つかも知れない。

 パワーポイントの使い方の講座もあっていた。博士課程の学生や教員のプレゼンテーションのためのものだと思い、私は参加しなかったが、(法廷でのパワーポイント使用も始まった)今になって思えば惜しいことをしたと思う。

 インターネットは、私生活でも大いに役に立った。何といっても、日本のニュースがリアルタイムで見られるのがよかった。英国の報道からは、日本の情報はほとんど得ることができない。たとえばアテネオリンピックの時も、テレビや新聞では英国選手団の結果しか分からないので、日本のニュースサイトで日本選手の活躍を毎日チェックしていた。ホークスが優勝したときも、KBCラジオのホークス中継をパソコンで聞いて、夫婦で盛り上がっていた。

 日本に帰ってきてからは、逆に、いつも聞いていたBBCラジオが懐かしくなり、インターネットで時々聞いている(http://www.bbc.co.uk/radio/)。英語を勉強されている方には、美しいブリティッシュイングリッシュが聞けるので、是非お薦めしたい。特にBBCラジオ4のニュースや評論は、世界的にも質の高さが認められている。

 ところで、留学を終えて仕事に復帰してみると、弁護士会のIT化がさらに進んでいた。特に、日弁連での各種講演会が、ライブ中継で見られるのは、二年のギャップを取戻さねばならない私にとって大変助かった。福岡県弁護士会のウェブサイトも相当に充実した情報源となっているようである。

もし、ホームページ委員会で「弁護士業務に役立つウェブサイト利用術」のような講座をしていただければ、是非とも参加してみたいと思う(既に行われているかも知れませんね)。

当番弁護士日誌

カテゴリー:月報記事

会員 桑原 義浩

1 アルセーヌルパン

58期の弁護士の桑原です。大牟田市の不知火合同法律事務所に勤務させていただいております。

私が弁護士登録してから、早くも半年になろうとしています。私が弁護士になろうと思ったきっかけのひとつに、刑事弁護をやりたいということがあります。

幼いころの私は、推理小説をよく読んでいました。なかでもお気に入りはアルセーヌルパンのシリーズでした。ホームズとルパンの対決という話も読んだ記憶がありますが、ルパンを応援しながら読んでいました。なぜ怪盗ルパンが好きになったのか、今ではよく覚えていませんが(単純にルパン三世が好きだったからかもしれません、)悪党のように見えながらも実は心優しい人物像に憧れたように思います。ルパンの影響があるのかどうかは分かりませんが、当番弁護士で面会に行っても、そんなに悪い人じゃないだろうから、何とかしてあげようと思うことがあります。 今回は、そんな私がこれまでに経験したいくつかの事案を報告します。

2 とある窃盗事件

定職もあり住居もある人が、携帯電話ショップから店頭での操作見本用の携帯電話を持ち去ったという窃盗事件がありました。話を聞いてみると、実際に通話することができなかったので友人に渡したということで、友人を通じて電話機自体は警察が保管していました。これが店に戻ればほとんど被害は生じないはずだと思い、携帯電話ショップと連絡をとると、必要な費用は3150円だといわれました。たったこれだけのために、逮捕、勾留されてしまうのか… と思いましたが、実は、飲酒運転での物損事故と銃刀法違反(魚釣り用のナイフを持ってただけのようです)があり、その処分が終わっていないということでした。

被疑者援助で受任して早急に示談を済ませ、窃盗事件は処分保留で釈放となりました。

3 否認事件

居候させてもらっていた友人夫婦の奥さんを蹴ったという暴行事件がありました。

面会すると、自分は絶対蹴っていないとのことでした。友人夫婦の夫婦仲を取りもとうとした2か月以上前の事件で、事件後も友人夫婦とは同居しており、その家にはもう1 人居候がいるという状況でした。友人夫婦や居候たちはことごとく被疑者に不利な供述をしているようでしたが、被疑者は否認を続けました。人間関係が最後までよく分かりませんでしたが、何とか実兄が引受人となってくれて、脅迫罪での執行猶予期間中という状況でも起訴猶予となりました。どうも布団の上から1回蹴ったというような話のようで、事案自体が軽微でした。

4 休日当番

休日当番では、留守電を聞いて翌日に面会に行くと、傷害事件の示談をしてほしいと言われました。無職だが、お金はある、先生の費用もいくらかかるか言って欲しいということでした。実は、暴力団組員で、組どうしの抗争で長く刑務所に入っていたようです。組員の私選の受任か、と思っていたら、奥さんが他の弁護士にすでに依頼していたということで、あえなくお役ご免となりました。

5 最後に

今回、月報の執筆依頼を受けて、当番弁護士の出動回数を調べてみると、13件ほどでした。初出動は昨年の11月末のようですので、平均すると1週間に1回くらいの割合です。怪盗ルパンのような人物には出会えないとは思いますが、極力断ることなく、迅速に出動したいと思っています。

当番弁護士日誌

カテゴリー:月報記事

会員 中野 俊徳

1 事案の概要

昨年12月、現住建造物等放火罪の被疑者弁護において、不起訴処分(嫌疑不十分)との結果を得ましたので、報告します。

まず、事案の内容につきましては、ごく概要に留めさせていただきますと、被疑者が自宅(借家)でうっかり火事を起こした後、いったんは消火活動を行ったが、火を消すことができなかったという事案です。

そして、被疑者がその2日後、自ら警察署に出頭したところ、火事を起こした後に放置したとの不作為の放火(現住建造物等放火)の被疑事実で逮捕されました。

2 毎日の面会

逮捕が新聞で報道されたことを受けて、逮捕の翌々日には、美奈川先生が弁護士会派遣の当番弁護士として面会しました。

そして、被疑者が作為の放火の容疑で取調べを受けており否認事件となることから、美奈川先生が弁護人となられましたが、地元の私にも声をかけていただき、私も弁護人となって2名での弁護活動になりました。

弁護活動の内容は、連日の面会を行い、作為の放火を認めた虚偽の内容の自白調書を被疑者が取られないように精神的にサポートすることが中心でした。

そこで美奈川弁護士と私とで分担して、20日の勾留期間のうち最終日を除く19日間、毎日面会を行い、お互いの接見メモをファックスでやり取りしました。

被疑者も最初のうちは顔色も良かったのですが、連日の取調べを受けて、時々気弱な発言をすることもありました。

しかし、被疑者は、一度嘘を言ってしまえば、嘘を説明するために次々に嘘を重ねてしまうことになる、だから自分は嘘を言わない、と自分自身に言い聞かせ続け、最後まで虚偽の自白はしませんでした。

なお、被疑者には被疑者ノートを差し入れていましたが、被疑者が毎日の取調べの内容をこまめに書き込み、面会時にも被疑者ノートを持参して、前日に書いた内容を参照しながら話をしてくれましたので、私達弁護人も取調べの内容を比較的詳しく把握することができました。

面会の他の弁護活動としては、火事の発生時に同じ屋内にいた被疑者の知人に火事の発生前後の話を聞いたり、火事の発生現場を実際に見に行ったりもしました。

一方、警察の捜査は取調べの他に、勾留4日目にポリグラフ検査を行い、勾留19日目には警察署の道場で火事発生時の動きの再現写真を撮り、また消防局で火事発生現場を再現した火災実験を行いましたが、被疑者が火事を故意に起こしたという証拠や被疑者が火事を放置して逃げたという証拠は得ることができていないようでした。

3 勾留満期直前の出来事

この勾留19日目には、弁護活動でヒヤリとしたことがありました。

この日、私が面会を申込み、面会室でこれまでの接見メモを読み返しながら被疑者が来るのを待っていたところ、気づいたら10分経っても被疑者が来ません。

そこで、文句を言おうと思ったところに被疑者が面会室に入ってきたのですが、ナント、火災実験についての調書を作成していて、被疑者が調書の一部の表現に対して訂正を求めていたところ、取調官がニュアンスの違いだと言って応じず、その取調官は私が面会室にいることを知りながら調書の作成を優先し、調書に半ば強引に被疑者の署名指印を取ったというのです。

被疑者の話によれば、取られた調書自体は被疑者にそれほど不利な内容ではありませんでしたが、このような取調官の態度を放置しておくわけにもいきません。

そこで私は事務所に帰ってすぐ、厳重抗議の文書を地検の支部長宛にファックスしました(美奈川先生には事後報告です)。

今考えますと、ファックスするよりは、すぐに取調官のところに行き、直接抗議をしたほうが良かったのかもしれないと反省しています。

しかし、このときは、これまでの経験上、警察官にいくら抗議しても暖簾に腕押しといった状態でむなしい気持ちになることが多かったので、ついついファックスでの抗議に留めてしまったというのが正直なところです。

4 処分保留で釈放

私が被疑者の話を聞く限り、警察は作為の放火の決定的な証拠は掴んでいないように感じていましたし、不作為の放火で構成するにしても、消火活動をせずに放置して逃げたという証拠も無いように感じていました。

ですから、私としては、勾留期間の満期が近づくにつれ、これは起訴されずに釈放されるのではないかとの希望的観測を持つようになっていました。

しかし、その一方で、警察が勾留19日目にわざわざ火災実験等までしていましたので、もしかしたら、警察が決定的な証拠を隠し持っているのかもしれないという、漠然とした不安も持っていましたし、現住建造物等放火罪という重罪の否認事件ですから、もしかしたら公判前整理手続を経験することになるのではないかとすら思っていました。

そこで、勾留20日目の午前、検察庁に起訴の予定について尋ねたところ、被疑者を昼過ぎに処分保留で釈放するとの回答が返ってきたのです。

処分保留というところに一抹の不安は感じましたが、とりあえず、ほっとした気持ちでした。

5 釈放後の出来事

被疑者が釈放されて3日後、被疑者から電話があり、何事かと思って被疑者の話を聞くと、取調官に呼ばれたので、同行して欲しいというのです。

そこで私が取調官に電話して確認したところでは、押収していた被疑者の靴等を返還するためだということでした。

しかし、処分保留の状態だということもあり、被疑者はとてもナーバスになっていて、私が同行しなければ怖くて警察署に行けないと強く言うので、私は警察署に同行して、押収物の返還手続に立会いました。

その帰り道、被疑者が「先生が同行していなければ、警察は自分を再逮捕していたかもしれない」と言っているのを聞き、私の想像以上に逮捕勾留の精神的負担が被疑者にはあったのだろうなあと感じました。

そして、被疑者が釈放されて9日後、私が検察庁に処分を確認したところ、嫌疑不十分で不起訴処分とするとの回答でした。

早速被疑者に電話で連絡すると、とても弾んだ声で「ありがとうございました」とのお礼の言葉が返ってきました。

6 感想

今回は、逮捕勾留の被疑事実が不作為の放火でありながら、取調べでは一貫して作為の放火ではなかったのかという点が追及されていました。

それで、私としては、捜査機関の真意を探る意味で、勾留理由開示請求が頭をよぎることがありましたが、結果としては、主に連日の面会しかできませんでした。

しかし、振り返って思うに、この連日の面会が無ければ、接見禁止が付いていた被疑者を孤独にしてしまい、あるいは虚偽の自白をしていた可能性もあります。

ですから、私にとって今回の弁護活動は、弁護活動における面会の重要性を再認識する良い機会となりました。

その意味で、私に声をかけて下さり弁護団を組んで下さった美奈川先生と、弁護人2名の被疑者弁護援助を認めていただいた法律扶助協会福岡県支部に感謝しています。

また、被疑者ノートのおかげで、面会時に取調べの内容をより正確により詳しく把握することができたと思います。

ですから、否認の被疑者弁護には被疑者ノートを差し入れることが重要であることも再認識できましたし、皆様にも被疑者ノートの差入れをお勧めいたします。

『あなたはチクリますか!?』

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−依頼者密告法案(ゲートキーパー制度)問題、重大な局面を迎える−

福岡部会 会員 山崎 吉男

1  皆さん、ゲートキーパー制度って知ってますか?多くの皆さんが、ご存じないか、なんか名前はきいたことあるよね、程度の認識のことと推察致します。

2003年6月20日、OECD加盟国を中心とする31国等が参加する政府間機関であるFATF(金融活動作業部会)が、弁護士、公認会計士などの専門職に対して、顧客の本人確認義務及び記録の保存義務と、マネーロンダリングやテロ資金の移動として疑わしい不動産売買、資産管理等の取引について、各国に設置されるFIU(金融情報機関)に報告する義務を課すことを定める勧告(改正)を出しました。このように、民間の専門職をゲートキーパー(門番)として、違法な資金移動を監視させ規制しようとするのが、ゲートキーパー制度です。

「テロ対策。うん、それは、良いことですね」と、思う方も多いかな。

2  それで、悪い国際法規にはよく従う日本の政府のことですから、それじゃぁ、早速我が国でも、ゲートキーパー制度を導入しなくては、ということで、2004年12月10日、政府の「国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部」は「テロの未然防止に関する行動計画」なるものを策定し、その中で専門職に対してのFATFの先ほどの勧告を完全実施することを決定しました。そして、2005年11月17日には「FATF勧告の実施のための法律の整備について」の決定で、その骨子を定めました。

この骨子では、疑わしい不動産売買、資産管理等の取引の報告先であるFIU(金融情報機関)を現在の金融庁から警察庁に移管することとし、FIUが十分な機能を果たすために必要な体制を確保する、と定められています。

もう「それは良いことですね」なんて思う方は、一人もいませんよね!!

そうです、ゲートキーパー制度は、依頼者を密告する制度であり、しかも、弁護士を「岡っ引きの犬」にまで、堕落させてしまうのです!!

3  この「疑わしい取引」を警察へ密告するという制度は(依頼者へは報告したことを黙って無くてはいけないんです。)、弁護士・弁護士会の存立基盤である国家権力からの独立性を危うくする(この点は、日本司法支援センターと全く同じですね。)だけでなく、弁護士としての職業の存立基盤を破壊するものです。

−弁護士という職業の中核的価値は、単に法律に関する専門知識を有するというだけではなく、公権力から独立して依頼者の人権と法的利益を擁護することにある。

その職責を全うするため、弁護士は、依頼者に対して、職務上知り得た依頼者の秘密を保持する義務があり、これは国家機関を含む第三者に対する関係では、重要な権利でもある。弁護士に厳格な守秘義務があり、かつ、それが法的に保障されているからこそ、依頼者は弁護士にすべての情報を包み隠さず開示することができる。

そして、そのような依頼者の全面的な情報開示があってはじめて、弁護士は効果的にその任務を遂行することができるのであり、すべてを打ち明けてもらうことで依頼者に合法的な行動をするよう指導することができる。これを依頼者である市民の立場から見ると、秘密のうちに弁護士に相談し、適切な法的アドバイスを受ける権利を有していることにほかならない。それは、弁護士としての依頼人に対する重大な職責であって、このことは、1990年12月に行われた国連の第45回総会決議『弁護士の役割に関する基本原則』の中でも「完全に秘密を保障された相談において、適切な方法で依頼人を援助し、彼と彼らの利益を守るための法的行為を行うこと」をもって、弁護人の依頼人に対する義務である旨述べているところである。

− (2006年1月18日前川副正敏会長声明から抜粋)

『疑わしい』取引というだけで、いつなんどき、こそっと警察にチクるかも知れないヤツに、誰が重要な相談をするもんですか!!

4  この依頼者密告制度については、イギリスでは既に1993年から存在し、2001年のEU指令により仏、独、ポルトガル等のほとんどのEU諸国で国内立法化されたこともあり(アメリカ等は作っていません。)、日弁連は、国内法化が進められたら、個々の弁護士の直接の報告先を「弁護士会」として弁護士会からFIU へ報告するような制度にしてもらいましょう(と、いつものように最初から崖っぷちまで退いて)、との姿勢でさしたる反対行動はしていませんでした。

ところが、上述の2005年11月17日の決定「FATF勧告の実施のための法律の整備について」によって、FIUが警察庁に移管することとされて、あわてて同月18日の日弁連会長の反対声明を皮切りに、各単位会でも同月22日の沖縄弁護士会の会長の反対声明から始まって各地で反対声明をあげ、上述のように今年の1月18日に福岡県弁も反対の会長声明を出しました。

もう崖から突き落とされたのですから、あとは、死に物狂いで崖から這い上がるしかありません(這い上がっても、また崖っぷちに止まっていては、いけませんですよ。また、いつ、突き落とされるか分かりませんから)。

5  そして、この依頼者密告制度はすでに立法化の具体的スケジュールが決まっており、法案が来年度の国会に上程される予定です。

日弁連では、5月26日の第57回定期総会において「弁護士による警察への依頼者密告立法(ゲートキーパー立法)を阻止する決議」(まだ、案の段階ですので仮題です)を上程する予定です。

また、県弁でも5月24日の定期総会において、反対ないし阻止決議を上程する予定になっております。

是非、みなさんも、顧客やお知り合いの方々、特に議員さん等へ、「大変だ!大変だ!大変な悪法ができそうだ。おい、君も困るだろう。絶対に潰さにゃいかん」と宣伝してください。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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