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◆憲法リレーエッセイ◆ 東北の公設事務所に赴任して

カテゴリー:憲法リレーエッセイ

会 員 中 野 俊 徳(56期)

永尾廣久先生から、「東北と福岡の違いを軽いタッチの読み物として書き、最後に憲法と絡めるように」との執筆のご指示をいただきました。文才の無い私にとっては、いわゆるムチャブリというものですが、大恩ある永尾先生のご指示には逆らえません。

私は、この8月に福岡に戻ってくるまで、福岡市で半年、田川市で5年、秋田県能代市で2年4か月の弁護士活動をしてきましたが、取り扱った事件の中身自体は、債務整理、離婚、遺産分割、交通事故、債務不履行等々、どこでも大差はありません。
しかし、東北の冬には雪があります。能代は風が強いことで有名でして、地元の弁護士が訴訟の関係で調査したところ、能代の風は九州の台風よりも強いことがわかったそうです。この強風のため、能代では冬部でも雪がひざ上以上に積もることはまず無いのですが、短時間で凍ります。お昼には快晴で雪が全く無かったのに、午後に数件の法律相談をこなした後、接見のために事務所を出ると、雪が降っていて、事務所の前の直線道路がずっと先まで凍結してキラキラ光っている風景を見るという経験を何度もしました。雪上の運転にはいつまでも慣れず、車のブレーキを踏んでも止まらず、赤信号の交差点に進入してしまったり、前の車に数センチのところまで接近してしまい、それまでの人生を走馬燈のように思い出したことが何度かありました。
風がそこまで強くない内陸部では、重機で除雪した翌日に数メートルの雪がまた降るような状態で、被後見人所有の建物が雪の重みで潰れないように雪降ろしを手配するというのが、成年後見人の重要な仕事の1つになります。
このような厳しい冬期を毎年過ごしているからか、能代での依頼者の方々はどちらかと言えば寡黙で忍耐強く、債務整理の事案でも「借りた金は返さなければならない」とぎりぎりまで頑張る方が多いように感じました。それはそれで1つの美徳ではありますが、過度に頑張りすぎて、ヤミ金に手を出したり、家族や親戚の財産が全て無くなるまで返済を続けたりする方もいました。
一方で、田川での依頼者は、能代と比べたら、良くも悪くもラテン系のノリを持っている方が多く、冗談半分ですが「返せない人間に貸すほうが悪い」と言われる方もいて、こちらも苦笑せざるを得ませんでした。
もちろん、これらは程度問題であり、能代にもラテン系のノリの方もいましたし、田川にも大変生真面目な方はいましたが、東北の冬期(12月~翌3月)を過ごしていますと、私自身、福岡の明るい日差しが恋しく、何とも暗い気持ちになり、気候が人の気質に与える影響を、我が身をもって実感しました。

東北と福岡の違いは語り尽くせないのですが、どこであっても変わらないのが、法律であり、法制度であるはずです。私は、司法試験に合格した直後から、弁護士過疎問題に関心を持つようになり、弁護士登録して最初の6か月はやむなく福岡市で弁護士活動をしましたが、その後はずっと支部で活動してきました。日本国内どこであっても適用される法律や法制度は変わらないと言っても、多くの弁護士がいる本庁所在地と弁護士が比較的少ない支部管轄地とで住民が享受できる司法サービスの内容が事実上異なるのであれば、法律や法制度は絵に描いた餅に過ぎないと素朴に感じているからです。
それは憲法論も同じことで、どれだけ立派な条文を整え、どれだけ立派な理念を唱えようとも、弁護士過疎のために憲法の理念が現実化していない地域があるのであれば無意味だと思って、今日も支部で仕事をしています。

さて、永尾先生のご指示にどれだけ沿えたのでしょうか……。

ITコラム

カテゴリー:月報記事

会 員 塗 木 麻 美(62期)

今年も後わずか、2011年は未曾有の大震災の年として記憶されるでしょうが、ことIT界においては、スマートフォン元年と位置づけられるかもしれません。
昨年も既にiPhoneは珍しい存在ではありませんでしたが、今年は電車やバスの中で、人々がやや大きめのケータイに向かう様も普通の光景となりました。
ヒトにとっての外部記憶となる機器が、一部の好き者の「ガジェット」としてでなく、完全に市民権を得た感があります。
元祖ガジェット好き(現在は予算難らしく隠遁中)の私の夫に言わせると、「隔世の感、夢の世界まであと少し」といったところのようです。
さて、そんな相方がこれまで蒐集?したモバイル系情報機器は、覚えている限りでも、DataScope(京セラのでかいPHS)、Libretto70、jornada720、WorkPad30J、CLIE、ZaurusSL-C3000、sigmarionIII、ノートPCではvaioPCG-U1、 thinkpadやLet_sNote、Eee PC(ネットブック)、そしてiPad2…(知っている人だけ懐かしんでください)。
さて、これらのうち、いわゆるPalm系の機器は、ご記憶の方も多いかともいます。
Palmは、携帯情報端末(PDA。死語??)の一つです。99年、IBMから日本語版Workpadが出荷され、2000年にはSonyが独自にカスタマイズしたClieを出すなど、一世を風靡しました。形や特徴は概ね現在のスマホに近く、今でも現役で見かけますね。
PalmがそれまでのPDAと違って成功しかけた要因は、「Zen(禅) of Palm」という哲学で、機能をシンプルに絞ったことにあります。白黒画面にスケジュール、メモ帳等といった基本的なアプリケーションで、当時の貧弱な機器スペックでも軽快に動作するものでした(単にアプリ製作の技術力がなかっただけかもしれませんが)。
しかし、ご存じのとおり、Palmは一部好き者のための「おもちゃ」にとどまり、携帯電話の高機能化に伴い、日本からはほとんど姿を消しました。
ところが今年、PDAは一気に「スマホ」という形で復活し、反対にこれまでのケータイを駆逐しかけています。この違いは何でしょうか?
私は(というか相方が言うには)、人が携帯情報端末に求める機能(キラーアプリ)にあったのかと思います。実は人々は情報端末にスケジュールやメモ帳の機能は求めていません。紙の手帳で充分です。それよりも、ネット等への「つながり感」を容易に確保してくれるアプリやサービスを求めていたのではないでしょうか。
情報検索、SNS、Twitter、地図サービス…。情報端末は、単なる召使いではなく、社会への入り口となるスーパー秘書であることが求められているようです。今後は毒舌執事、能面家政婦など進化を遂げていくのでしょうか。
なお、つながり非重視の相方には、キラーアプリは議事録メモのようで、いまだにsigmarionIIIを現役で使っています。

インターネット被害対策110番

カテゴリー:月報記事

ホームページ委員会 松 尾 重 信(51期)

平成23年12月2日午後1時から午後5時まで、インターネット被害110番を実施しましたので報告します。

ホームページ委員会では、インターネットがらみでのトラブルが多発しているにもかかわらず、インターネットが絡んでいるとなると及び腰になり、法的救済を受けられずにいるケースが多いという認識から、平成17年度よりインターネット被害対策110番と題して、無料電話相談を実施しております。過去の相談においては、ワンクリック詐欺、ワンクリックすらしていない架空請求詐欺、オークション詐欺、ネットによる名誉毀損、ホームページリース詐欺等、当時委員会として想定していた事件も多くありましたが、某通信会社の代理店詐欺、内職紹介トラブル(ないし詐欺)等相談を通じて手口を知るようなものもあり、被害対策弁護団を結成し、解決を得た事案もありました。ある意味ネットが介在すると被害が拡大する傾向にあり、今後消費者委員会等関連委員会と協力体制を作っていく必要もあると思われます。

本年の相談では、事件化に至った相談はなかったものの、ネット上での名誉毀損ないしプライバシー侵害や、パソコンを起動すると特定のサイト(出会い系やアダルトサイト等が多い)を自動的に表示するスパイウェアプログラムに関する相談、迷惑メールの対処法等の8件の相談がありました。もちろん、この中には、パソコンやインターネットの近時動向を知らなければ対応できないような相談もありましたが、相談内容としては、通常の法律相談と同様であるものもありました。

弁護士としてはネットやパソコンが絡むと、知識がないとして敬遠されがちな分野であります。ホームページ委員会では、今後会員へITがらみの事件に対する対処法や基礎知識を提供するための講演を企画していき、会員間で情報を共有していけるようにしていきたいと思います。

「裁判ウォッチング」のご報告

カテゴリー:月報記事

会 員 中 村 亮 介(63期)

さる平成23年10月19日、福岡地方裁判所において、「裁判ウォッチング」が実施されました。参加者は約50名と非常に多かったです。私はその日の午後の担当で、田畠光一先生、梅津奈穂子先生、和智大助先生、鍋嶋隆志先生とご一緒することとなりました。

まずは、参加者の方々に弁護士会館3階で、裁判に関する簡単な説明のDVDを観ていただいたあと、2つの班に分かれました。
私は、和智先生と鍋嶋先生と一緒に引率をすることになりましたが、鍋嶋先生から、参加者の方々に対して、これから傍聴する事件について簡単な説明をしていただき、その後、法廷へ向かいました。
まず、刑事裁判の傍聴に行きました。参加者のほとんどは、腰縄をまかれ手錠をかけられた被告人を見たということで、参加者のうちの一人の方は、「初めて手錠をかけられた人を見て、とても衝撃を受けました。」とおっしゃっていました。

次に、民事裁判の傍聴に行きました。傍聴前に、鍋嶋先生より参加者に対して「民事裁判を見る前にひと言だけ言っておきますが、民事裁判は、単なる書面のやり取りだけで、内容はよくわからないので、がっかりしないでくださいね。」とのご説明があり、その後法廷へ入りました。
しかし、その日の参加者は強運の持主が揃っていたようで、いざ法廷にはいると、傍聴した裁判は双方とも代理人の就いていない当事者裁判で、裁判官を通じて詳細なやりとりが丁寧になされました。参加者の方々も、「裁判らしい裁判」を見られて満足そうでした。

最後に、民事裁判の証人尋問の傍聴に移りました。この裁判は、請求金額が3億円という裁判で非常に緊張感のある裁判でした。しかし、私達に残された時間は20分ほどしかなく、尋問の途中で時間がきてしまい、仕方なく途中で退廷し、弁護士会館にもどりました。
弁護士会館に戻り参加者の方々にアンケートを書いていただく段になって、ようやく弁護士と参加者の距離も縮まってきました。参加者の方からも、弁護士に対して「(刑事裁判の)あの被告人はこれからどうなるのですか?」など、いくつか質問がありました。
「裁判ウォッチング」の参加者は、これまで裁判所や法廷には縁のない方々がほとんどで、傍聴を自由にできることも初めて知ったという方が非常に多かったのですが、この裁判ウォッチングを通じて、裁判所との距離が縮まったのではないでしょうか。これからも「裁判ウォッチング」を通じて、市民にとって裁判所が少しでも身近な存在になり、気軽に裁判所が利用されるようになることを願うばかりです。

拡がれ!『法教育』の輪! ~懸賞論文で優秀賞を受賞しました!~

カテゴリー:月報記事

法教育委員会 委員 春田 久美子(48期)

1 懸賞論文に応募した経緯
私は、法務省が昨年初めて実施した「法教育懸賞論文」に応募し、平成23年1月、思いがけず、優秀賞を受賞しました。
テーマは「学校現場において法教育を普及させるための方策について」。この懸賞論文の存在を知ったのは、応募締め切りが約2週間前に迫ったころでした。偶然見かけた法テラスの広報誌(ほうてらす)の裏表紙にあった「締め切り迫る!!」「学校現場において法教育を普及させるための…」との文字が目に飛び込んできたのです。当時、手詰まり感を感じていて、ずっと何か法教育を拡げていくためのアイディアはないかな~と考えていたので、私は、これまでにやってきた活動を振り返りつつ、とりあえず自分が思っていることをまとめる良い機会だと思い、応募してみることにしました。

2 法教育と私
私が小学生を含む学生さんの相手をするようになったのは福岡地裁小倉支部に左陪席として働いていたときのことです。福岡地裁本庁を始め、裁判所全体が(一般の市民向けの)”広報”というものを意識し始めた頃だったと思います。初めのうちは、一体何をやったらいいんだろう、という感じでしたが、本庁にいらっしゃった広報上手な職員の方にアイディアを色々教えていただいたり(模擬裁判の体験と子供たちとの質疑応答・お話など)、他の庁の子供たち向けの取り組みの工夫例を色々調べたりするうちにドンドン楽しくなっていきました。一番忘れられないのは、小学校3年生くらいの子供たち10数人を担当したときのことです。引率をされた女性の先生が(感動しました!ということで)、後日、子供さんたちの可愛い感想文を郵便で届けて下さったのです。簡単な模擬裁判をやってみたのですが、『検察官と弁護人の言い分を聞いていると、どちらもそう思えるところがあるから、どうしていいかますます分からなくなりました…』という感想が忘れられません。また、時間内には出来なかった質問等も書かれていたので、嬉しかった私は御礼も兼ねて返事の手紙を出しました。今でもそのときの感想文は私の宝物です。もう一つ、私が法教育というものを続けていこう、と思ったエピソードがあります。毎年5月位に、最高裁判所の裁判官が全国各地の裁判所を訪問する、という企画があるのですが、山口繁裁判官がお見えになった際、昼食会の席上で予定の話題が意外と早く終わってしまったため、支部長が突然、私に話を振り「子供さん向けの相手をしている判事補です」と私に何か話をするよう向けられたのです。私はドキドキしながら活動の様子を報告したのですが、その後、山口裁判官が各裁判官室を回って来られた際、「さっきの方ね。これからは、若い人向けの裁判の世界の紹介、是非お願いしますね。」とお言葉をかけていただいたのです。あ~やっぱり大切なんだ、この活動は!と素直に嬉しく思えました。

3 論文に書いたこと
論文には、法教育にはどのような意義があるのか、どういう魅力が詰まっているのか、その有意義さと楽しさを踏まえ、それなのに学校現場(教師の方々)になかなか拡がっていかない理由は何なのか、などを私なりに考え、それを解消するためにやった方がいいと思うことを先ず書きました。そして、やはり、具体的に、じゃあ、どんな風に意味があるの?という疑問に応えるべく、授業例の紹介や、授業で取り扱う際の切り口の数々を思いつく限り書いてみました。自分の中で、クライマックスの部分は、NIE(教育現場に新聞を)とのコラボレーションの部分です。法教育の意義は、その捉え方によって様々あるようですが、詰まるところは、民主主義を支える将来の子供たちを育む、という点でNIEが目指すところと一致すると思えたのと、コラボ出来れば、メディアを介して法教育自体も拡がっていく可能性に魅力を感じたのです。

4 応募と発表、そしてその後
締め切り直前の日、もうキリがないよね、と事務員さんとも話して、論文を取り上げられ(!)、中央郵便局に速達で出しに行ってもらいました。発表は12月下旬となっており、御用納めの日までに何も連絡がなかったので、ダメだったのかな~と思っていたら、年明け、少年鑑別所での面会を終えて帰ってくる途中、携帯に電話がありました。最優秀賞(1名)と優秀賞(2名)の受賞者は、法務省にて授賞式が行われることになっていました(平成23年3月15日)が、東日本大震災の発生直後だったため急遽取りやめになりました。ですが、この受賞をきっかけに、色々なところから法教育について何かを書かせていただいたり、メディア(特に新聞)からの取材を受ける機会が増え、学校現場の先生方や教育委員会等に法教育についての広報に伺う際、一つの話題とすることが出来るようになったことは嬉しいことでした。

5 法務省でお話してきました
平成23年11月4日(金)、法務省の「法教育推進協議会」というところに招かれ、法教育の取組みについてお話をさせていただく機会を得ました。論文を書いてからちょうど1年が経っていましたので、当会の法教育の車の両輪としての”法教育センター”と”法教育研究会”の活動内容を含め、今、直面している課題等についてもお話してきました。
法教育、と一口に言っても、法務省・裁判所、そして司法書士等の隣接業のそれぞれが法教育に取り組んでおり、学校現場の先生方にとっては選択肢があり過ぎるように受けとめられ、何と言っても”何だか難しそう…”と思われているのが現状です。私自身は、今、日本全体で問題になっている、子供たちの言語能力の向上や対話力、コミュニケーション能力のスキルアップの観点からも、この法教育は有用なのではないか、と信じており、さらには、立場が異なり利害がシビアに対立する場面で普段仕事をしている私たち弁護士だからこそ伝えられる何かがあると思っています。その魅力を、法教育研究会に集まってきて下さる学校現場の教員の方々等と一緒に知恵を出し合い、良い教材を開発しながら、今後も地道に伝え続けていこうと思っています。

6 結びにかえて‐会員各位へのお願い
お子様を学校に通わせていらっしゃる世代の会員の皆さま、子育てはもう終わったけれど、教員に知り合いがいらっしゃるという皆さま、私たち法律家が日ごろから思っている知恵などを子供たちにも伝えたいという理念に共感して下さる方、PTA役員である方はもちろん、顧問先として学校現場の先生方にお知り合いがいらっしゃる皆さま、どうか、当会の法教育センターの、弁護士の出張授業のことをお知り合いの学校の先生、あるいは保護者の方に「これやってみませんか?」とご紹介いただけませんでしょうか!それを期待しまして、間もなく皆さまのお手元にレターケースを通じて法教育センターのチラシを一枚ずつお届けする準備をしています。今年度は80クラス無料キャンペーン実施中ですので、金銭面では学校の負担はありません(そこも売り込んで下さいね。)。世界一受けたい法教育の授業を開発するべく、私たち法教育委員会のメンバー皆頑張っています。福岡から「生きる力」を持った子供たちをたくさん育むため、法教育の輪が拡がっていくために、お知恵やお力を貸していただけましたら幸いです。あっ、そうそう!肝心の受賞論文は、法務省のホームページに載っていますので、ご一読いただけましたら幸いです。

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