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中小企業法律支援センターだより 中小企業の日全国一斉シンポジウム『挑戦を止めない経営者たちへ』

中小企業法律支援センター 委員 平田 亘佑(76期)

1 はじめに

令和7年7月18日(金)午後4時から午後7時まで、福岡信用金庫本社ツインビル14階会議室にて、7月20日の「中小企業の日」を記念した全国一斉シンポジウム『挑戦を止めない経営者たちへ。事業承継・新規事業、突破する力を学ぶ日~経営者の挑戦に終わりはない~』が開催されました。この場をお借りして、本シンポジウムの実施内容についてご報告させていただきます。

2 参加状況

本シンポジウムは、Zoomでの同時配信も行われ、総勢66名の方にご参加いただきました(福岡会場50名、筑後会場1名、Zoom15名)。ご参加いただいた経営者の方々の業種は、金融、不動産、コンサル、福祉など多岐に亘りました。

福岡会場の様子

3 講演(1)「挑戦を止めない経営者たちへ~第二創業・新規事業への挑戦~」

e-FitsLab株式会社代表取締役籾山英宗様より、「挑戦を止めない経営者たちへ~第二創業・新規事業への挑戦~」と題して、ご自身の経験を講演いただきました。

籾山様は、大学在学中にお父様が急逝されたことで実家の保険代理店を急遽承継することになったことから始まり、数々の困難を経て、現在ではe-FitsLab株式会社代表取締役という地位を確立された方です。講演では(1)事業承継と新規事業、(2)第二創業、(3)第三創業といったフェーズごとに分けてお話しいただきました。これまでの輝かしい成功の数々をお聞きできると思いきや、むしろ私の体感としては、8割方が失敗や後悔からくるエピソードだったような印象で、かなり赤裸々に語っていただきました。籾山様のお人柄と巧みな話術もあり非常に内容の濃い講演でしたが、紙面の関係もありますので、以下、概要だけ記載致します。

(1) 事業承継と新規事業(21歳から31歳まで)

上記の通り、籾山様はお父様の急逝により急遽保険代理店業を承継する。承継後、自らの経験を活かして保険SHOPやマネースクールを開講するも、リーマンショックを受けて頓挫。

(2) 第二創業(32歳から46歳まで)

それでも中小企業同友会の仲間たちと励まし合い、切磋琢磨しながら、会社合併をして、何とか会社としては軌道にのせる。しかし、マーケティング担当と現場とのギャップ、経営陣内での考え方の相違などから、必ずしも順調とはいえない状況が続く。そんな中、中小企業同友会の仲間たちのアドバイスもあり、「思考の習慣」に気づく。「思考の習慣」から脱却することで、確定拠出型年金の導入支援や投資教育に事業を展開し、軌道に乗せる。

(3) 第三創業(46歳から「今」)

第三創業として、中小企業同友会や福岡信用金庫との連携を通じて、さらなる発展を目指す。これからも「何のための経営か」を自問し続ける経営者として、e-FitsLab株式会社籾山英宗氏の挑戦は続く。

講師の籾山英宗様

4 講演(2)「金融機関から見た事業承継支援」

福岡ひびき信用金庫ソリューション部林貴寛様より、「金融機関から見た事業承継支援」と題して、同金庫が行っている事業承継支援について実際の事例を踏まえてご説明がありました。

福岡ひびき信用金庫は、事業承継に関していうと、日本政策金融公庫と、令和4年4月26日に「事業承継支援に関する連携協定」を締結しており、日本公庫と連携して中小企業・小規模事業者の円滑な事業承継のサポート及び地域経済の活性化を目指して活動されています。林様は同金庫に入庫以来、営業店で融資窓口・渉外活動を10年経験した後、本部の企業コンサルティング部に配属されてからこれまで9年間事業承継M&A業務に従事されてきた方です。

今回紹介された事案は、どれも後継者の不在や債務超過などといった中小企業ならではの課題を抱えた事案といえ、福岡ひびき信用金庫の方々は単に融資の判断をするだけでなく、事業承継後の持続的な経営を確保するための方策を事業者と一緒になって検討されていました。

事業承継を成功させるには、各機関が一体となって協力体制を構築することが大切であると実感するとともに、今回のようなイベントを通して、各関係機関の交流の場を設けることで、人と人との輪を広げることも事業承継の一助になっていると確信します。

講師の林貴寛様

5 事業案内
(1) 福岡信用金庫

百周年プロジェクトチームの皆様から、創業100周年を記念したキャンペーンについて紹介されました。お客さまとともに次の100年へと共に歩んでいきたい気持ちを込めて考えられた創業100周年のブランドコンセプト「きになるしんきん」のポエムをパッケージしたプレゼント企画をされているそうなので皆様ぜひご参加ください。

(2) 福岡県事業承継・引継ぎ支援センター

当会所属の会員でもある福岡県事業承継・引継ぎ支援センター統括責任者補佐安東翔太弁護士より、同センターの事業内容と実績についてご紹介がありました。同センターは親族承継、社員承継、第三者承継といった各種事業承継に関する相談をワンストップで対応する機関であって、後継者や譲渡先をお探しの事業者とのマッチングから事業承継後の経営者のことまで考えたサポートをされています。民間のM&A仲介業者と比べて、小規模事業者や債務超過の事業者からの相談の割合が多い印象であると言われておりました。安東弁護士はまだまだ認知度が不十分であると言われておりましたが、年々右肩上がりの実績をあげられていて、今後ますます活躍が予想される機関の1つです。私も同センターのサブマネージャーの方と協力して事業承継事案を担当させていただいたことがありますが、非常に頼もしかった印象が今でも残っています。

福岡県事業承継・引継ぎ支援センター 安東翔太弁護士

(3) 福岡財務支局

福岡財務支局理財部金融調整官の安田恭輔様より財務局の事業者支援に係る取組について紹介されました。財務局は財務省の総合出先機関として、全国に9か所設置されており、各地域の特性を踏まえた財務省・金融庁の施策を実施、広報する機関です。事業承継との関係でいうと事業者支援態勢構築プロジェクトと題して、各地域の事業者の実情に応じたきめ細やかな支援を行っています。具体的には商工会議所の経営指導員と官民金融機関の営業店職員等を対象に意見交換会を実施したり、事業承継に関する各種関係機関の説明会を開催したり、情報共有のための場を「福岡地域しんこうコンソーシアム」として提供されています。当会もこのコンソーシアムに参加させてもらっています。

福岡財務支局理財部金融調整官 安田恭輔様

6 懇親会

シンポジウムの終了後は、同会場内で名刺交換会が行われ、その勢いのまま、近くのお店で懇親会が開催されました。お店が貸し切りであったこと、お互いお酒が入っていること、席が近く物理的距離感も近かったこと等から、講演及び事業紹介を聞いてさらに深堀りしたくなった話について尋ねたり、より内情に踏み込んだ話を聞けたりと、懇親会もシンポジウムに負けず劣らない盛り上がりでした。

7 おわりに

今回の全国一斉シンポジウムは、アンケート結果を見ても、好意的なコメントばかりで、当センターとしても来年以降のモチベーションに繋がるところです。とりわけ、毎年7月20日が「中小企業の日」であることだけでも覚えていただけると幸いです。当センターは引き続き各種関係機関とのイベント・勉強会を開催して参りますので、興味をお持ちの先生方がおられましたら是非ともご参加いただけたらと存じます。

最後にはなりますが、本シンポジウムの実施にあたって御協力いただいた各関係機関の方々に改めて深く御礼申しあげます。ありがとうございました。

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