筑後部会法教育委員会 鍋島 典子(66期)
1 はじめに
2025年11月16日(日)、今年も筑後部会の会館でジュニアロースクールを開催しました。10年ほど前に始まった企画ですが毎年恒例になった感があり、ありがたいことに近年は応募者多数でお申し込みをお断りすることも増えてきました。
対象は筑後地域の中高生で、今年は30名超の生徒さんに参加していただきました。
2 今年の題材
今年は、殺人被告事件を題材に、犯人性を否認している被告人について、目撃証言の信用性が争点になっている事案を扱いました。台本のタイトルは、「家政婦は見た!…のかもしれない」です。まさに、家政婦のミタゾノならぬイタゾノさんが殺人現場を見ちゃったのかもしれない、という事件です。オマージュのオマージュです。
被告人は、妻を毒殺した疑いをかけられている夫で、その家の家政婦(イタゾノさん)が証人となって夫が妻のコップに毒薬を入れているような様子を見たという証言をします。
生徒たちは、模擬裁判をみながら、弁護人チーム、検察官チーム、裁判官チームに分かれて、それぞれの立場から裁判手続に取り組みます。弁護人チームには証人への反対尋問を、検察官チームには被告人への反対質問、裁判官チームには各補充質問を考えてもらい、実際に自分の言葉で質問をしてもらいます。そのうえで、論告、弁論、判決まで行ってもらいます。生徒は、3,4人で1つの班になり、これらの手続きは班でディスカッションをしながら、進めてもらいます。
証人の証言には、目撃した際の視認状況や目撃証言の動機など、その信用性に疑問を抱きうるような要素がちりばめられています。他方、被告人にも妻との関係性や当日の行動について疑わしい要素が散見されます。
そのなかで物事をどの方向から見るか、どのように考えることが論理的といえる、他者を説得するにはどうすればよいかなど、生徒たちには、裁判の登場人物になったような気持ちで取り組んでもらいました。
3 強力なサポート体制
そして、JLSin筑後では、毎年、法教育委員会の委員に限らず多くの筑後部会の先生にご協力を頂いています。今年は、15人の先生方に手伝っていただきました。
生徒たちが刑事手続を見たり、班に分かれてディスカッションをする際、各班にはチューター役の弁護士1人についてもらい、議論のヒントや手続きの正しい理解をサポートしてもらいました。模擬裁判の役者も、弁護士が務めます。
どの先生方も、JLSの季節が近づき、お電話などで「今年も・・・」とご協力のお願いをすると快く引き受けてくださいます。また、初めてご協力をお願いする先生も、自分で大丈夫ですかと謙遜されながらも快諾いただきました。筑後部会っていいな、と感じる一幕です。
今年協力頂いた先生に参加したコメントを頂きました。
▪山口高志郎先生(71期・検察官チーム担当)
「3つの検察官チームがありましたが、そのうちの1つのチームのサポート役を務めました。
おそらく3人とも中学2年生で、女子中学生が2名、男子中学生が1名でした。
検察官役として、中学生なりに、今回の事案を推理して、検察側で立案すべきストーリーを考えて、証拠状況や主張を立論してくれました。
新鮮な気持ちでジュニアロースクールに取り組む中学生の皆さん。
中学生に助言をすることを通じて、新鮮な気持ちを取り戻す瞬間になりました。」
▪松﨑広太郎先生(66期・目撃証人イタゾノ役)
「毎年、証人や被告人の役をさせていただいておりますが、参加した中学生や、高校生から鋭い反対質問をいただき、きりきり舞いになっています。
今年だと、私が犯行を目撃した際、リビングルームの電気については点灯していたと主質問で語っていたのですが、「廊下の電気はついていたのですか」等といった反対質問がありました。
ほかにも、意見を押し付ける質問ではなく、目撃した際の状況に関する質問が多数飛んで、感心いたしました。
参加している中高生の話を聞いていると、法曹志望の子もいますし、今回の模擬裁判を見て法曹を志してくれる子もいるかもしれません。10年後、もし、今回の参加者の中から司法試験の合格者が出て「松﨑先生、あの時証人役をされていた方ですよね!私検察役でした!!」等と声をかけてくれることがあれば、こんなに素敵なことはないと思っております。
鍋島先生に恩を売ろうと思って始めた、被告人役、証人役でしたが、私自身、子供たちの触れ合いを毎年楽しみにしています。
金を残すは三流、名を残すは二流、人を残すは一流(故野村克也)ですから、子供に夢を与える仕事、子供の興味を引く仕事、子供の記憶に刻まれる仕事は積極的にやっていきたいと思います。」
普段、どろどろとした大人の紛争を扱うことが多い我々にとって、純粋で一生懸命な中高生の姿はとてもまぶしく清々しく感じるものです。

4 今回のJLSまとめ
参加生徒さんからは楽しかったという感想をたくさんいただき、単純に今年もやってよかったなと思うとともに、裁判手続きが学べてよかったとか、論の組み立て方を知れたとか、自分の意見を主張するのが楽しかったという感想ももらいました。
また、証言を怪しいと思ったけどそれを言語化するのが難しかったとか、分かりやすい弁論をするのが難しかったという言葉もあり、楽しいだけではない体験を与えられたことも、JLSの目的の達成だと思います。
来年もおそらく行います。(模擬裁判の題材、募集中です。お心当たりのある方はご連絡ください。)



