福岡県弁護士会 裁判員制度blog

2008年6月 9日

共同正犯・共謀共同正犯

『裁判員のための法廷用語ハンドブック』(三省堂)からの紹介です。実際のあてはめはかなり難しいことがあります。(な)

○ 共同正犯(きょうどうせいはん)
  2人以上で一緒になって犯罪を行った人たち。犯罪行為の一部しかやっていない人でも、全部について責任を問われる。

○ 共謀共同正犯(きょうぼうきょうどうせいはん)
  直接には手を下していない人でも、犯罪の計画に加わって重要な役割を果たしていれば、共同正犯となることがある。

○ 裁判の場面
  たとえば、検察官の冒頭陳述において、「被告人Aは、被害者Fの手をナイフで刺して全治10日間のケガをさせ、そのすきにBは、金を探し出し現金100万円を奪いました。AとBは、強盗致傷罪の共同正犯です」と主張する。
  また、弁護人の最終弁論のとき、「検察官は、Cが、AとBと一緒にこの強盗の計画を練ったとして、共謀共同正犯だと主張していますが、Cは単に、F宅に金がありそうだと教えただけで、正犯と評価できるものではありません」という。

○ 共同正犯とは
  Aが被害者Fをナイフで脅してケガをさせ、そのすきにBが金を探し出して現金  100万円を奪ったとき、AもBもどちらも同じく、強盗致傷罪の共同正犯となる。
  ケガをさせるだけなら傷害罪、金を盗っただけなら窃盗罪だが、このように共同して行った犯罪は全体を通じて一連の行動とみる。共同正犯となれば、Aはケガをさせたことだけでなく金を奪った責任も問われ、Bは金を奪ったことだけでなくケガをさせた責任も問われ、2人とも強盗致傷罪になる。
  一般に、主犯という言葉は「中心的な役割を果たした人」、共犯、共犯者は「従的な役割を果たした人」という意味で使われる。しかし、法律用語の共同正犯は、役割上の主従関係ではなく、強盗致傷罪という犯罪を一緒に行ったとして責任を問われることを意味する。
  A、Bそれぞれが果たした役割の軽重は、量刑で評価されることになる。

○ 共謀共同正犯とは
  Cが、AとBにこのような強盗を支持しただけで現場に行かず、ケガをさせたり金を奪ったりする行為にまったく加わっていなかった場合でも、共謀共同正犯として強盗致傷罪に問われることがある。
  裁判では、犯罪行為の現場にいなかった人が共謀共同正犯として起訴され、弁護側がそれには該当しないとして争うことがある。犯罪行為に直接加わっていない人を、実際に犯罪行為を行った人と同様に処罰することになるので、慎重な検討が必要になる。
  また、計画に加わっても、重要な役割を果たしたとは見られない場合には、教唆(きょうさはん)となることがある。

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