福岡県弁護士会 裁判員制度blog

2008年11月20日

既遂・未遂・中止未遂(中止犯)

『裁判員のための法廷用語ハンドブック』(三省堂)より紹介します。(な)

○既遂
ある犯罪行為にとりかかり、その結果を生じさせたこと。

○未遂
ある犯罪行為にとりかかったけれども、その結果が生じるに至らなかったこと。

○中止未遂(中止犯)
犯罪行為にとりかかったけれども、自分の意思で途中でやめたため未遂に終わったこと。


○たとえば、検察官は冒頭陳述のときに「被害者が死亡したのは、まさに被告人の行為によるものなのです。したがって、被告人は殺人既遂の責任を負います」と述べます。

○また、弁護人は最終弁論のときに「たしかに、被告人が殺人の実行行為を行ったことは間違いありません。しかし、被害者が死亡したのは、被告人の行為とはまったく別の原因によるものなのです。被告には、殺人未遂が成立するにすぎません」とか、冒頭陳述において「たしかに、被告人は被害者を殺そうとして、両手でその首を締めました。しかし、苦しそうにする被害者の顔を見ると、『人殺しなどいけない』と思いなおし、自分の意思で首を絞めるのをやめたのです。被告人には中止未遂が成立します」と弁論します。


○未遂とは
 ?犯罪行為に取り掛かったが、それが終わらなかったために結果が生じなかった、
 ?犯罪に行為に取り掛かり、それを終えたが結果が生じなかった、ということです。

 ?については、人を殺そうと思って鉄パイプで頭を殴ろうとしたが、空振りして、そのあと相手が逃げてしまったため殺せなかった、?については、実際に鉄パイプで頭を殴ったが、結果的に相手が死ななかったなどがあり得ます。
 このときには、殺人罪が予定している「人を殺した」という結果は生じていませんが、人を殺そうとする行為をしたことに違いはありません。たとえ結果が生じていなくても、このような危険な行為をした者は処罰する必要があります。そこで、一定の犯罪については、結果が生じていなくても未遂罪として処罰されます。未遂が処罰されるのは、放火、殺人、強制わいせつ、強姦、窃盗、強盗、詐欺、恐喝、背任などの犯罪です。
 なお、犯罪行為によって結果が生じた場合を、未遂と区別する意味で、既遂といいます。


○二種類の未遂
 結果が生じなかったとしても、その原因にはいろいろなものがあります。
たとえば、相手を殺そうとして両手で相手の首を絞めたが、結果的に相手は死ななかったというケースでも、?相手が激しく抵抗したために、殺すほど強く首を絞めることができなかった、?首を絞められて苦しんでいる相手の顔を見て、かわいそうになり、自分から首を絞めるのをやめたということもあります。
 ?のような、殺そうと思えば殺せたけれども、あえて殺すのをやめた人の処罰は、?のような、殺そうと思ったが相手の抵抗にあって殺せなかった人の処罰よりも寛大に扱う必要があります。
 そこで、結果を生じさせようと思えばできたにもかかわらず、自分の意思で犯罪行為をやめて、結果が発生しなかった?の場合は、中止未遂(中止犯)として、必ず刑を減軽するか免除しなければなりません。これに対して、中止未遂(中止犯)以外の?のような場合は、障害未遂といって、刑を軽減することもできますが、刑を軽減しないこともできます。

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2008年11月25日

現住建造物・非現住建造物


『裁判員のための法廷用語ハンドブック』(三省堂)より紹介します。(な)

○現住建造物
住居として使っているか、または、中に現に人がいる建物。

○非現住建造物
住居として使っておらず、中に人もいない建物。

○たとえば
 起訴状に、現住建造物等放火のときには「被告人は平成○年○月○日○時○分ころ、○○市○○町○丁目○番○号所在のA所有及び居住にかかる木造2階建家屋1階台所において、持っていたライターで座布団に点火して火を放ち、その火を壁等に燃え移らせたうえ、現住建造物である同家屋の一部約○平方メートルを焼損したものである」と書かれ、非現住建造物等放火のときには、「被告人は平成○年○月○日○時○分ころ、○○市○○町○丁目○番○号所在のA所有の物置小屋内において、所携のライターで新聞紙に点火して火を放ち、その火を壁等に燃え移らせたうえ、非現住建造物である同物置小屋の一部約○平方メートルを焼損したものである」と書かれます。

○放火罪
放火罪とは、建物などに火を放って燃やしてしまう罪です。放火罪は、公共危険罪と呼ばれ、社会の一般的安全、すなわち、不特定または多数人の生命・身体ないし重要な財産の安全を脅かす行為を犯罪とします。もちろん、財産的侵害を防ぐ目的もあります。
社会の一般的安全という面から見ると、同じ建物に放火しても、その建物に人が居住している場合とそうでない場合とでは、危険度が異なります。そこで、刑法は、現住建造物と非現住建造物に分けて、これらを異なった犯罪の対象とし、刑罰も異なったものとしています。
現住建造物とは、住居として使っているか、または中に現に人がいる建物で、非現住建造物とは、住居として使っておらず、中に人もいない建物のことです。この場合の「人」には、放火した人は含みません。

○建造物の範囲
 放火の対象となるのは建造物や電車などです。建造物とは、家屋など、屋根があり柱で支持されているような建築物のことです。建築工事中で単に棟上げだけが終わっているような程度では建造物ではありません。

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