福岡県弁護士会 裁判員制度blog

2007年12月25日

アメリカでの経験をふまえた裁判員選任の問題点

 最新の判例タイムズ(12月15日号、1252号)に、アメリカで弁護人をした経験にもとづいて日本の裁判員選任手続きについて提案がなされています。日本人教授による貴重な提案と思われますので、紹介します。(な)
 アメリカ(ロサンゼルス)では、陪審員に対してあらかじめ質問票を裁判所が送っても、44%の人は返答しない。だから、フォローが義務づけられている。日本でも裁判員に対して質問票が送られることになっているが、同じように半数近くの人が返答しないことも考えられる。そのとき、これらの無返答者が自動的に排除されると、半数近い裁判員候補者が選任過程から除去されることになり、やはりきちんとフォローする必要がある。
 東京では年間400件ほどの裁判員裁判が予想されている。そうなると、2万人から4万人という裁判員候補者が裁判所に出頭することになる。そうすると、時間の節約のために、原則は一人ずつ個別に質問することになっているが、一人ずつではなく、グループ別か候補者全体に対して質問が行われる可能性がある。また、質問の数や内容も大きく削られる危険もある。
 アメリカでは陪審員の選任手続に、過半数の事件が一日で終了しているが、社会的に評判になった事件では数週間かかっている。一般的な裁判では、被告人が1人のときの中央値が2時間半で、被告人が複数でも中央値は5時間である。
 日本の最高裁は、午前中に裁判員の選任手続を終え、午後からは審理に入るという手続をイメージしているが、果たして、そのとおりうまくいくのか心配である。

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