福岡県弁護士会 裁判員制度blog

2007年6月14日

裁判員に対する説示の例

裁判員に対して、裁判官は次のように話しかけるという例が示されました。
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○ 前置き
  皆さんは、この事件の裁判員に選任されました。これから、私たち裁判官と一緒に裁判を行うことになります。どうかよろしくお願いいたします。
○ 刑事裁判のルールについて
まず、皆さんに裁判に参加していただくにあたって、予め知っておいていただきたい裁判のルールをご説明いたします。
裁判は、被告人が起訴状に書かれている犯罪を本当に行ったかどうかを判断するために行われます。
その判断を行うために、検察官と弁護人から証拠が提出されますが、被告人が有罪であることは、検察官が証拠が提出されますが、被告人が有罪であることは、検察官が証拠にもとづいて明らかにすべきこと、つまり証明すべきことになっています。ですから、検察官が有罪であることを証明できない場合には、無罪の判断を行うことになります。
被告人が有罪か無罪かは、法廷に提出された証拠だけにもとづいて判断しなければいけません。新聞やテレビなどで見たり聞いたりしたことは、証拠ではありません。ですから、そうした情報にもとづいて判断してはいけないのです。また、検察官や弁護人は、事実がどうであったか、証拠をどのように見るべきかについて、意見を述べます。これも裁判員の皆さんと裁判官の判断の参考にするために述べられるのであって、証拠ではありません。
証拠としては、たとえば、凶器などの証拠品、現場見取図などの書類、証人や被告人の話があります。証人や被告人から話を聞く際には、裁判員の皆さんにも質問の機会があります。もし質問があるときは、その機会に私に申し出てください。
法廷での手続きが終わると、裁判員の皆さんと裁判官は、被告人が本当に起訴状に書いてある罪を犯したのかどうかを判断します。
過去にある事実があったかどうかは直接確認できませんが、普段の生活でも、関係者の話などをもとに、事実があったのかなかったのかを判断している場合があるはずです。ただ、裁判では、不確かなことで人を処罰することは許されませんから、証拠を検討した結果、常識にしたがって判断し、被告人が起訴状に書かれている罪を犯したことは間違いないと考えられる場合に、有罪とすることになります。逆に、常識にしたがって判断し、有罪とすることについて疑問があるときは、無罪としなければなりません。
有罪とするときには、被告人をどのような刑にするのかを決めます。
結論は、裁判員の皆さんと裁判官が一緒に話し合いをしながら出していきます。裁判員の皆さんには、今述べてきたようなルールにしたがって、ご自分の判断にもとづいて意見を述べていただきます。裁判官も同じルールにしたがって意見を述べます。裁判員と裁判官の意見は同じ重みです。
なお、法律の解釈が問題となる場合には、裁判官がその解釈について説明しますので、ご安心下さい。
○注意事項
次に、裁判員に皆さんにお願いがあります。
裁判は、皆さん全員がそろわないと行うことができません。もし、病気などやむをえない事情で裁判所にお越しいただけなくなった場合には、ご連絡をいただきたいと思います。
 また、評議で誰が何を言ったかといった評議の内容は秘密にしてください。評議の秘密が漏れないようにすることは、皆さんのプライバシーや安全を保護することにもなります。また、記録に出てくる事件関係者のプライバシー情報も漏らさないようにしてください。
 ただ、公開の法廷で見たり聞いたりしたことや、裁判員を務めてみての印象といったことは、他の方にお話しいただいても構いません。
○ まとめ
 これから手続きを進めていく途中でも、もし分からないことがでてきたときには、どうかご遠慮なくおっしゃってください。
 最後に、裁判員の皆さんには、今の説明を了解し、法令にしたがって、公平誠実に職務を行う旨の宣誓をしていただきます。
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 いかがでしょうか。疑わしきは罰せずという刑事裁判の鉄則をはっきり説明したほうがよいと私は思います。(な)

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2007年6月26日

裁判員を選ぶときの質問

 裁判員として選ばれるときには、質問票にこたえる方式を経たうえで、口頭でも質問されることになります。それは、不公平な裁判をするおそれがあるかどうかを確かめるための質問です。その具体的なイメージは、次のようなものです。(な)

○ 当日、質問票において聞かれる質問
 1 あなたは、被告人または被害者と関係があったり、事件の捜査に関与するなど、この事件と特別の関係にありますか。(ある。ない)
(ある場合には、具体的にお書き下さい
                                  )

2 あなた又は家族などの身近な人が今回の事件と同じような犯罪の被害にあったことがありますか。(ある。ない)
ある場合には、その被害の内容を差し支えない範囲でお書きください。

3 今回の事件のことを報道などを通じて知っていますか。
 ? 知らない。
 ? ある程度知っている。
 ? 詳しく知っている。

○ 質問手続きにおいて口頭で聞かれる質問
 たとえば、被告人と同じ会社に勤めているなどと答えたときには、「事件との関係を離れて、この裁判で証拠にもとづいて公平に判断することができますか」という質問がなされます。
 また、「ご自身や身近な人の被害の経験を離れて、この裁判で証拠にもとづいて公平に判断することに支障がありますか」との質問もありえます。
 さらに、「報道などに左右されることなく、法廷で見たり聞いたりした証拠だけにもとづいて判断できますか」とか「どの程度知っていますか」、「この事件について、どのように考えていますか」、といった質問も考えられます。
 なお、事件によっては「あなたには、警察などの捜査はとくに信用できると思うような事情、あるいは逆に、とくに信用できないと思うような事情がありますか」と質問されることもありえます。

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