福岡県弁護士会 裁判員制度blog

2008年12月 1日

反抗を抑圧する


『裁判員のための法廷用語ハンドブック』(三省堂)より紹介します。(な)

○反抗を抑圧する、とは
暴行や脅迫によって、肉体的あるいは精神的に、抵抗できない状態にすること。被害者が抵抗したけれども、最終的には抵抗を封じられた場合も含む。

○たとえば、
弁護人は最終弁論のとき、次のように主張します。
「たしかに、被告人のAさんはかっとなって被害者のBさんを殴り、お金を盗りました。しかし、殴ったのは白昼、人通りの多い路上でした。Aさんは身長170?で、Bさんは180?です。殴ったのは、Bさんの腹部を一回だけです。また、BさんのそばにはBさんの友人Cさんがいました。このような状況では、Aさんの行為はBさんの反抗を抑圧するに足りる暴行ではなく、強盗罪は成立せず、傷害罪と窃盗罪にあたります」

○強盗罪の要件
暴行や脅迫により人から金銭などを奪い取る犯罪が強盗罪です。この罪が成立するためには、その暴行や脅迫が、その人の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることが必要です。
「反抗」とは、被害者が抵抗することで、「抑圧」とは、加害者がその抵抗をおさえることを指します。

○「反抗を抑圧する」に足りる程度とは
これは、「肉体的あるいは精神的に抵抗できない状態にする程度」の暴行や脅迫です。事件の状況から具体的に判断します。
被害者が現実に抵抗する場合もありますが、それだけで単純に、「反抗を抑圧されなかった」と見られるわけではありません。いったん抵抗はしたけれども、最終的には抵抗を封じられた場合には、「反抗を抑圧する」に足りる程度の暴行であったと判断されることがあります。

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