福岡県弁護士会 裁判員制度blog

2007年1月 9日

法律の素人でも議論に参加できる工夫

 裁判員は法律の素人であることがほとんどですから、法律の知識が必要な場合には裁判官が分かりやすく説明することになっています。
 これまで法廷で普通につかっていた専門用語も、素人が理解しやすいように言い換えることになっていて、目下、その作業を弁護士会でもすすめています。裁判所・検察庁も検討中ですので、三者すりあわせて練り上げられるはずです。
 痴漢で捕まった被告人が無罪となった事件を扱った画期的な映画「それでもボクはやっていない」をつくった周防正行監督(映画「シャルウィーダンス」は良かったですね・・・)は次のように語っています。
 ぼくは裁判員制度については、2つのことを言っている。まず、ことば。裁判は公開が原則といっても、そこで使われている言葉が全然わからない。「公開」されていない。裁判官が裁判員と話すときには、普通の人が分かる言葉で話さなければいけない。
 もう一つは、裁判員は被告人を裁くのか、という点。たしかに、最終的には被告人を裁くことになるが、裁判員が判断する対象は検察官の行う有罪の主張・立証である。もし、検察官の有罪立証に一つでも疑いが残ったら無罪にしなければいけないということ。
 人が人を裁くのだから、これで100%正解というものはない。少なくとも、今の制度よりもっといいものがあるはずだと試行錯誤を繰り返して議論しつづけることが必要なのだ。
 救援新聞(日本国民救援会)1月5日号にのっていました。まったく同感です。(な)

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2007年1月23日

事業に著しい損害が生じる恐れがある場合のみ辞退が認められる

 日経新聞(1月21日)によると、大企業の51%が社員が裁判員にとられたら業務に支障が出ると回答したそうです。たしかにそうでしょう。グループ全体で10数万人の社員をかかえる松下電器産業にあてはめると、常時400〜500人の社員が裁判員候補者として裁判所からの呼び出しを待つ計算になるとのことです。
 候補者は年間37万人というのですから、これまた当然でしょう。でも、考えてみてください。国民が主権者であるということは、何らかの努力が求められるのです。会社の都合のみで動くのではなく、国全体のことをたまには考える義務もあるわけです。会社は、そのための条件整備をするのが当然の責務なのです。企業が社会への貢献をするというのは、何もどこかへ献金するだけで足りるというものではありません。
 企業は裁判員として出廷するときには有給休暇扱いとするよう、就業規則の見直しをはじめているといいます。当然必要な措置です。問題は中小企業です。その社員がいないと事業がまわらないというとき、それを「事業に著しい損害が生じる恐れがある場合」と安易に認めたら、裁判員になる人が激減してしまいます。大変深刻な状況が生まれると思いますが、日本の民主主義を定着・発展させるための苦労だということで、どこかで折り合いをつけなければなりません。
 裁判員制度の円滑な実現のために手当てすべき課題は山積しています。(な)

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