福岡県弁護士会 裁判員制度blog

2008年3月24日

裁判員裁判における証人尋問

判例タイムズ1259号の高野隆弁護士の論文より紹介します。3回目の今回は反対尋問です。(な)

 反対尋問の主役は弁護人である。反対尋問は弁護人と証人との対決である。
 弁護人は、証人とともに、事実認定者の視界の中心に立つ必要がある。
 証人とのアイコンタクトを保つこと、そして、決してメモを見ながら尋問してはいけないことは、主尋問の場合と同じである。
 反対尋問では、原則として誘導尋問しかしてはいけない。
 反対尋問は弾劾の手続であり、弾劾の物語を支える事実を証人に認めさせること、あるいは、それを認めることを拒否する証言が信ずるに足りないことを事実認定者に示すことがその目的である。だから、弁護人の問いは、すべて、「はい」と答えさせるように尋ねていることが事実認定者に分かるような問いでなければならない。それは尋問というよりは、弁護人の供述である。
 弁護人の方から裁判長に介入を求める(「裁判長、証人に質問に答えるように命じてください」)べきではない。証人に圧力をかけていると事実認定者に感じさせることになるからである。証人が質問に答えなくてもかまわない。単純に答えられる質問に答えない証人の態度を事実認定者に示すことができれば、尋問の目的は十分達したのである。
 同様に、証人に対して「はい、か、いいえ、で答えてください」と念を押すのも避けるべきである。証人には答えについて完全な自由が与えられていることを、事実認定者に示すべきである。
 最後に高野弁護士は次のように指摘しています。
 証人のタイプは様々であり、法廷技術というものは本を読んだり名人の話を聞いたりしただけでは決して上達しない。適切な指導者の下で練習をする場が必要である。

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