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ペットの慰謝料はいくらが妥当? ―ADRを活用しましょう

カテゴリー:月報記事

会 員 永 尾 廣 久(26期)

ケース

留守のあいだ預けていたペットホテルの管理ミスから愛犬が外に飛び出し、道路上で車にはねられ、大ケガしてしまった。30万円ほどの治療費は負担してもらったが、愛犬は生死の境ををさまようほど重篤な症状になったのに、ペットホテル側から呈示された慰謝料が20万円とは余りに低額すぎる。納得いかないので、ADRを利用した。

このようなケースについて、私はADRの仲裁人となりました。

2回目で和解成立

和解が2回目で成立した要因を仲裁人の立場からあげると、

第一に、申立人の言い分を丁寧に聞いたこと。第二に、ペットに関する慰謝料について判例などの相場を確認し、このケースにあてはめて和解(仲裁)案を双方に事前に示したことにあります。

ADRが利用しやすいのは、期日を柔軟に入れることができることもあげられます。私自身は弁護士会でしかやったことはありませんが、場所も時間も関係者全員の合意さえあれば、自由に決めていいのです。

ペットの慰謝料の相場を調べるについては、まずは双方から手がかりとなるものを資料として提供してもらいました。そのうえで仲裁人としても調査して、具体的ケースを考えて和解案(30万円プラスアルファ)を呈示しました。

ちなみに、ペットの慰謝料は、かつては1万円からせいぜい5万円くらいに低額で固定していましたが、最近では死亡でなくても20~30万円とか100万円など、高額化しています。現代日本社会においてペットの地位が向上していることの反映だと思われます。

ADRを利用するメリット

本件は、双方の主張の開きが20万円程度でしかなかったのに、事件から既に2年たっていたというものです。このようなケースは本裁判にはなじみにくいし、期日などで融通のききやすいADRに向いた事案だったと思います。

申立人は弁護士を代理人につけていませんでした。そこで、仲裁人として、和解にあたっては申立手数料はともかく、成立手数料だけでも相手方負担として、申立人が和解に同意しやすいようにする工夫をしてみました。
現金はADRの席上、手渡しということにしたこともあります。これは債務名義をとっても履行されないことがある現実をふまえて、それよりも実効性のことを考えてのことです。ただし、本件は金額が小さく、ペットホテル側の資力に心配はないので、1週間以内に振り込み送金して支払うという条項にしました。

愛知県弁護士会サマースクール(平成25年8月6日・7日)視察の報告

カテゴリー:月報記事

会 員 本 江 嘉 将(59期)

去る平成25年8月6日(火)、7日(水)の二日間、愛知県弁護士会主催のサマースクールに当会の法教育委員会委員として視察に行きました。充実した法教育への取組みは当会にとっても参考になる所が多いので、大変遅ればせながらご報告させていただきます。

1 第1日目午前は、「弁護士に挑戦!」を見学しました。弁護士と生徒チームのディベート大会です。私が見た中学生チームは「学校が中学生の携帯電話所持を禁止することの是非」について禁止反対派で、賛成派の弁護士との対決でした。生徒側の主張(プライベートの問題、緊急連絡のための必要性など)は鋭く、弁護士側から反論があっても、負けていませんでした。他の生徒チームによる審査結果は同点でしたが、様々な角度から意見を述べ合って、今まで気づいていなかった価値や弊害に気づいてもらえた、というイベントの趣旨がバッチリはまっていたようです。

2 その午後、「ティーンコート(@市政資料館)」を見学しました。生徒が、裁判官、検察官、弁護人のチームに分かれ、「子どもの処分は、子どもが決めるべき」というティーンコート(アメリカでは実際にある。)を開催しました。題材は、少年(中3)が同級生と犯した事後強盗事件で、動機や謝罪を拒否している事案でした。「何をどのように学んでもらうか」を裁判官が具体的に決めよう、という説明の下、各チームそれぞれの打ち合わせ後、生徒による共犯者証人尋問、少年本人質問が行われました。ポイントは、今後の少年にとってどのような処分が最も有益か、ということ。尋問後の合議で、少年は、裁判官の前で事件の経緯を親に説明する、被害者に謝罪に行く、部活動に復帰するよう努力するといったことを命じられました。コートに関わった生徒たちの個性が光る判断で、新鮮でした。

3 第2日目の刑事模擬裁判は、弁護士が役者になった模擬裁判を見て、生徒が、その有罪無罪、量刑を評議して決めるイベントでした。

開廷に先立ち、パワーポイントを使った事件の紹介がありました。被害者が自宅に放火された事件で、被告人は、被害者女性が被告人の交際相手(別れ話進行中)を匿ったことに腹を立てて犯行に及んだと思われる状況で、目撃者もいるが、アリバイ主張があり、現場の血痕でDNA鑑定結果も一致した、という事案です。開廷、冒頭陳述の後、被害者、目撃証人、被告人の順に尋問が行われました(役者は全員セリフ暗記!)。各尋問では、会場の参加生徒からの補充質問もあり、そのために隠し設定まで準備されていました。午後から、生徒5、6名のチーム毎、弁護士も入って評議がありました。結果が各チームから発表されると、有罪無罪がほぼ半々で、生徒達には十分に悩ましい事案だったことが分かりました。実務上は有罪になる確率が相当高いはずで、無罪推定の原則を教えられた生徒たちは無罪に傾きがち、ということを改めて感じました。

発表後のまとめでは「正解のない問題について考えるという経験をしてもらったことがとても大事」「モヤモヤしているかもしれないが、それが大事。君たちは一つ大人になった」と、総括されました。

4 二日間通じて、ベテランの先生方のリードと、若手のマンパワーが素晴らしく調和しているように感じました。各イベントの終了時に、必ず全生徒に名前入りの修了証を渡すなど、生徒たちが達成感を感じられるような配慮も素晴らしく、今後の当会法教育委員会活動の参考にしたいと思います。

視察を快く受け入れていただき、懇親会にも呼んでいただいた愛知県弁護士会法教育委員会の皆様に、この場を借りて感謝申し上げます。

ホームページ委員会だより

カテゴリー:月報記事

ホームページ委員会 副委員長 菅 藤 浩 三(47期)

平成25年6月に、総務省が平成25年1~3月の通信資料動向調査を発表しました。それによると、パソコンの保有率が3年前は85%だったのが75%に低下しているのに対し、スマホの保有率が2年前の10%から50%にまで急速な普及傾向を示しています。なお、タブレット端末の普及率はまだ15%ですから、これに比べるとスマホの勢いの凄さがお分かりでしょう。

ちなみに、固定電話の保有率は90%から80%と、パソコンと同じく下降傾向です。

つまり、ホームページはいまやスマホからブラウズされることを意識して作成しなければならない時代になってきています。

スマホからブラウズされるということは、パソコンの画面よりもぐっと小さい画面に情報が収められるため情報が横ではなく縦方向にスライドされる形で表示されること、指でタップやフリックしやすいようなバナーや操作ボタンを設定しておく必要があること、横方向だけでなく縦方向にローテイトしてもそれにあわせて表示できるようプログラミングしておくことなどが必要です。

そこで、福岡県弁護士会でも一般市民にスマホでブラウズしてもらうことを強く意識して、ホームページの内容でなくデザインを大幅にリビルドしました。

まず、ページ最上部に「法律相談のご案内」「弁護士会の活動」「弁護士会について」「読み物」という4つのメニューをならべ、その1つを指でタップすると8つくらいのメニューがずらりとならぶプルダウン方式を採用しました。

次に、最近はツイッターやフェイスブックによる拡散も無視できないので、ツイートボタンやいいね!ボタンを上部に設定しました。不特定の弁護士が書いた掲示板を読んだり書式をダウンロードするための弁護士会員専用のページログインボタンはそのいいね!ボタンの横に移っています。

それから、更新情報について、これまでは「弁護士会からのお知らせ」も「宣言・決議・声明」も単なる「更新情報」も一緒くたに並べられていたので、タブ方式に区分けすることにしました。

福岡県弁護士会がこれまで作成してきたCM群は左下のバナーボタンをタップするとみることができます。最近UPされた【戦う手】編はオシャレに作っていて好感が持てますよ。

そうそう、プルダウンメニューのすぐ下は、ライトなタッチの絵がジャバスクリプトで入れ替わる形になっています。

ぜひリビルドした福岡県弁護士会のウェブサイトを一度となく二度三度みていただき、さらによりよいウェブサイトへと改良するための忌憚なきご意見をお寄せいただくことをお待ちしております。

司法修習生に対する給費の実現と司法修習の充実について考える集い 挨拶

カテゴリー:月報記事

公益社団法人 日本医師会 会長 横 倉 義 武

本日はこのように国の司法制度の根幹に関わる重要な問題を考える集いにお声がけをいただき、誠にありがとうございます。私ども、日本医師会は、国民の生命と健康を預かる医師の専門学術団体であり、その代表として一言ご挨拶をさせていただきます。

私ども医師は、法律家、聖職者と並び、欧米ではオールド・プロフェッションとして認識され、その職務の専門性ゆえに、きわめて高い職業倫理とそれに基づく自律的な自浄機能を備えることが、当然に求められて参りました。その伝統はわが国においても同様であり、特に弁護士業務に関しては、日本弁護士連合会以下、全国の単位会を中心とした厳格な懲戒制度が運営されているとお聞きしております。細かい形式は異なりますが、私どもの医師会においても同様な取り組みを進めております。こうした活動は、専門職業に対する国民からの信頼を確固たるものとするうえでも、きわめて重要な活動であると認識しております。

このように高度な専門的な業務を担い、かつ自律的な職能集団を形成するためには、まずもってその構成員たるプロフェッションが誇りをもって仕事に打ち込める環境、特に経済的な裏付けが保証されていることが必要であります。今回、司法修習生に対する経済支援が貸与制となり、若き法律家の皆さん、あるいは永年努力を重ねて社会正義の実現をめざし司法試験に合格された皆さんが、この貸与資金の返済に追われなければならないという実態は一刻も早く解消し、給費制に戻すことが必要と考えます。また、そのような事態を予想して、将来有望な志願者の方々が早々に法曹への道を諦めてしまうという状況があるとすれば、それは明らかに国家にとっての損失というべきであります。

私ども医師は、日頃、法曹のお仕事とは必ずしも近い所にいるものではございませんが、等しく国民のかけがえのない財産である「人権」と「生命・健康」を守るという共通の使命をもった職能集団として、一言見解を述べさせていただきました。
本日の集会が実りあるものとなることをお祈りいたします。

平成26年1月30日
代読 副会長 今 村   聡

給費制本部だより ~1.30院内集会のご報告~

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会 員 清 田 美 喜(66期)

1.はじめに

去る1月30日、衆議院第二議員会館において、日弁連とビギナーズネット等との共催により、司法修習生に対する給費の実現と司法修習の充実に関する院内集会が行われました。

今回、給費制本部本部長代行の市丸信敏先生、同本部委員の髙木士郎先生と共に、高平奇恵先生の代理として、院内集会、日弁連での会議に出席し、福岡選出の議員との面談にも同席させていただきました。

登録したての新人にこのような機会を与えていただいたことに感謝しつつ、会員の先生方にご報告を申し上げます。

2.院内集会

院内集会には、衆参両院から62名(本人出席22名、代理出席40名)の議員が参加され、うち福岡県選出の議員は8名(本人出席4名、代理出席4名)の方が駆けつけてくださいました。また来賓として、日本医師会、日本公認会計士協会、環境に関する活動をされている市民団体からのご出席をいただくことができました。

挨拶をされた15名の国会議員の方全員が、若手法曹がスタート時点で多額の借金を背負っていることを問題視され、修習生への給費の復活ないし経済的支援を検討すべきであると発言されました。また多くの方が、議員立法で進めるべきであるとか、超党派で取り組むべきであるといった点にまで言及されていました。

中でも注目を集めたのは、自民党の保岡興治衆議院議員のご発言です。法務大臣経験者であり、司法制度改革を主導して来られた保岡議員は、従来は給費制の復活に反対の立場でした。しかし今回、修習生の地位を明確化して経済的支援をする必要がある、旅費や移転費の支給、入寮者数の増加、兼業禁止の緩和といった現在の対策では足りないと明言され、今後の議論に大きく影響を与える可能性があると感じられました。

来賓の方々からは、若手法曹が貸与金の返済に追われる事態を一刻も早く解消し、給費制に戻すべきであるというお言葉をいただきました。

日本医師会の横倉会長の代理として出席して頂いた今村副会長からは、国民のための高度の専門職としてのプロフェッションにとっては誇りをもって仕事に打ち込める環境、とくに経済的な裏付けが必要であり、経済的理由で若い人が法曹への道を諦めてしまうことは国家的損失であるとして、給費制復活を支持する意見を表明して頂きました(本月報にメッセージの全文を掲載させていただいておりますので、どうぞご覧ください)。日本公認会計士協会の山田副会長からは、当初は構成員の中から、修習生だけが給付を受けられるのは不公平であるという反対の声が上がったものの、会計士も法曹も同じ社会のインフラであって、その養成制度は若い人が目指すに足るようなものでなければならないとの共通認識を形成するに至り、団体署名に賛同したという経緯のご紹介がありました。意見対立を越えて支援を表明してくださったことに、感動を覚えました。

当事者である新65期、第66期の弁護士も、貸与制が修習や弁護士活動に及ぼす影響について実感を語り、一時間の予定の集会が一時間半に及んだにもかかわらず、最後まで多くの方が熱心に耳を傾けてくださいました。

このように、立場も、またときには意見も異にする多くの方々が、若手法曹の現状を問題であると捉え、その解決に向けて支援してくださっていること、その輪が目に見えて広がっていることを実感することのできた院内集会であったと思います。

当会会員の先生方の温かなご協力により、福岡県内各地からも多数の団体のご賛同をいただいております。今後ともご協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

3.国会議員との面談

院内集会に先立ち、議員会館に国会議員を訪ね、面談をお願いしました。井上貴博衆議院議員(自民)はご本人とお話をすることができ、ご多忙中にもかかわらず30分ほど時間をとっていただきました。井上議員は、経済的に困窮した法曹が増加すると、反社会的勢力に取り込まれてしまうのではないかという危機感を持っておられ、私に貸与制下での修習について尋ねるなど、熱心に話を聞いてくださいました。

その他にも、麻生太郎衆議院議員を始めとする議員の方々を訪ね、政策秘書の方とお話をさせていただくことができました。

4.終わりに

これまで給費制存続のために尽力してこられた先輩方から、この問題は岩盤が固い、なかなか局面が変わらないという声を聞いてきました。しかし、今回初めて議員面談と院内集会に参加した私の目から見ても、議員の関心や、他の団体の賛同の声はこれまでになく高まっていることが感じられました。

これも、当会会員の先生方を始めとする先輩方が、我々若手法曹のおかれた窮状を理解し、法曹界の将来を憂いて、給費の実現のためにお力を貸してくださってきたおかげであると思います。
心より感謝を申し上げるとともに、引き続きのご支援をお願いして、私のご報告とさせていただきます。

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