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「アンドレア・パラさん講演会・シンポジウム」のご報告

カテゴリー:月報記事

精神保健委員会 委員 植竹 克典(66期)

令和6年10月26日、コロンビア共和国からアンドレア・パラさんをお招きし、精神保健に関するシンポジウムを開催しましたので、ご報告いたします。

1 アンドレア・パラさんって?

アンドレア・パラさんのことを御存じない方は多くおられるかもしれません。
アンドレアさんは、障がい者の支援活動などを精力的に行い、中南米諸国で成し遂げられた成年後見制度や強制入院制度改革に深く関与されたコロンビア共和国の弁護士です。今回は、日弁連の強制入院制度の廃止に向けた取組みの一環として来日されました。

2 アンドレアさんの基調講演…中南米での後見制度の廃止

アンドレアさんは、自国であるコロンビアや、その他中南米各国における後見制度の廃止に向けた取組みとその成果を中心にご講演されました。その概要は次のとおりです。
コロンビアは、人口4000万人、60年にわたって続いていた武力紛争が2016年に終結しましたが、その武力紛争に起因し、障がいを負った人も多数生活しています。
従来の制度では、家庭裁判所の判断により後見人が選任され、多くのケースでは、親族が後見人を務めていました。そして、後見人には、本人に関する全面的な権限を付与され、その一方的な判断(代行的意思決定)により、本人に不妊手術を受けさせてしまう、本人の財産を遣い込んでしまう、施設入所を強制してしまうといった人権侵害が横行していました。

コロンビアでは、2011年に障害者権利条約を批准し、この条約批准をふまえ、条約の趣旨、とくに第12条(障害者の法的能力の享有など)を忠実に実現する方向での制度改正が進められました。その結果、2019年までに、後見制度は全面的に廃止され、それに代替する「支援による意思決定」の枠組みが整備されました。

支援による意思決定は、(1)本人と支援者との支援合意、(2)特定の法律行為について、本人の支援者を家庭裁判所が選任する手続、(3)本人による事前指示の3つの枠組みがあり、いずれについても、代行的な意思決定が排除され、本人を中心に据え、本人の意思決定を支援する制度とされています。
このような後見制度の廃止など障害者権利条約の趣旨を実現する活動は、アンドレアさんらを中心とする中南米各国をまたがる権利擁護に関するネットワークの尽力により、中南米の各国で進められているとのことでした。

3 パネルディスカッション…強制入院の廃止に向けて・・・

パネルディスカッションでは、アンドレアさんのほか、精神障害がある人の地域生活を多職種チームで支援をしているQ‒ACTの須田竜太さん、精神科病院の強制入院の廃止に向けた日弁連の取り組みの中心メンバーである東京の池原毅和弁護士をお招きし、当会の田瀬憲夫会員のコーディネートのもと、強制入院の廃止に向け、それぞれの立場から熱い意見が交わされました。

本項の執筆者の力量の問題と紙幅の都合により、その全容をご報告することはできませんので、とくに印象に残った部分をご報告いたします。
アンドレアさんからは、かつては「奴隷から逃れたいという考え」が精神疾患と考えられていたなど、診断する側の主観的な判断で精神疾患との診断がされてしまう、本人の感情的な苦痛については、施設への収容による一般的な対応ではなく、個々人の問題として、軽減策を考えることが必要であり、その検討にあたっては、創造力を発揮した医療以外の対策(芸術を楽しむ、カラオケを楽しむなど)が重要と考えているとの発言がありました。

須田さんからは、Q‒ACTの取り組み事例として、強制入院を繰り返してきた男性の支援事例がご報告されました。危機的状況になった場合の対応策を、事前に本人と話し合っておき、調子が悪いとどうなるのか、どうすれば落ち着けるのか(状態が「黄色信号」であれば、「壺に向けて大声を出す」、状態が「赤信号」になれば「入院する」など)、周りの人にしてほしい支援・してほしくない支援を事前に話し合い、支援者間で共有する、この対応策については、何度も見直しをし改善していきながら支援を行っているとのことでした。

また、池原弁護士からは、強制入院中は大便を壁に塗ってしまうことを繰り返していた方が、退院後は、その行動もなくなり、一人で遠方に旅行に出かけたりするなど、社会内で順調に生活を送れるようになった、問題行動は本人なりの抵抗だったのではないかと考えているとの体験談のご報告がありました。

4 雑感

登壇された皆様のご発言を通じ、本人の話をしっかり聞く、そして、支援を一般化するのではなく、個々の当事者本人に適した方法で、寄り添った支援を行うことが重要であると感じました。こうした方向の先に、精神障害者の脱施設化の更なる展開もあるものと思います。

私自身も、今回も学んだことを活かし、今後の成年後見人としての業務や、精神保健当番弁護士などの支援活動により注力していきたいと強く感じました。

九州レインボープライド2024

カテゴリー:月報記事

LGBT委員会 委員 石井 謙一(59期)

1 はじめに

2024年11月4日、博多区冷泉公園で開催された九州レインボープライドに弁護士会のブースを出展し、パレードにも参加しました。
当日の様子をレポートします。

2 九州レインボープライドとは

これまで何度か月報で九州レインボープライドのことを書いてきましたのでご存じの方もおられるかもしれませんが、九州レインボープライドとは、性の多様性について社会にアピールするイベントです。

川端商店街近くの冷泉公園が会場となり、沢山のブースとステージが設置されます。
ステージでは性の多様性をテーマとするトークショーや歌や踊りなどのショーが行われます。

企業、自治体、当事者団体、支援者団体がブースを出し、それぞれ性の多様性に関する情報やアクティビティの提供、物販などを行っています。
ヒューマンライブラリーといって、当事者の来歴を聞いたり対話したりできるブースもあります。

飲食店ブースも多く並び、キッズスペースもあるため、子ども連れの方もとても多いです。
参加者は、ステージの音楽を楽しんだり、ブースでアクティビティに参加したり、旧交を温めたり、芝生やベンチで食事をしたり、思い思いに過ごすことができます。
イベントの期間中、冷泉公園は誰もが安心して自分らしく過ごせる空間になります。多くの方がこのイベントを心待ちにしています。

冷泉公園が狭く思えるほど、たくさんの来場者でにぎわいます。来場者は毎年増え続けており、今年は1万6000人の来場があったとのことです。

3 弁護士会がブース?

そのような中、当会は無料法律相談を行うブースを出しました。
基本的には楽しいお祭りなので、正直、場違いであることは否めません。
ということで、雰囲気を壊してしまわないようあまり積極的に声掛けはしないのですが、安孫子健輔委員デザインのレインボーの垂れ幕や立て看板がアイキャッチになり、今年は12組のご相談がありました。

前から気になっていたことを相談できてよかった!と言っていただくこともあり、場違いかもしれないけどブースを出してよかったなといつも思います。
また、ブースを出していると、弁護士会に興味を持っている方や、弁護士と何かつながりを持ちたいと思っている方が訪ねてきてくれることがあります。他団体の接点としてもとても重要です。実際、立ち話をする中から新たな連携が生まれたことも沢山あります。

福岡県弁護士会 九州レインボープライド2024

4 活動歴が一目で分かる!

ブースに来た方から、弁護士会ってどういう取り組みをしてるんですか?と聞かれることも結構あります。

そこで、今年はこれまでの当会の活動をまとめたページを県弁のホームページに新たに作成し、そのページ(トップページの「LGBT」タブ→「福岡県弁護士会のLGBTQ+に関連する活動歴はこちら」ボタンで見ることができます。ぜひ、ご一読ください。)のQRコードも展示しました。

立て看板に貼り付けておくと、通りすがりにスマホをかざしてくれる方もいます。
弁護士会もアライであるということをアピールするためにも、今後もブースは出し続けたいと思います。

5 いざパレードへ

イベントのメインは、なんといってもパレードです。冷泉公園から天神に向かい、また冷泉公園に戻ってくるルートを歩きます。

今年のパレードには1200名が参加しました。
DJが音楽を流すトラックが先導し、レインボーの旗を振ったり、パネルを掲げたりしながら歩きます。

飽くまで、楽しみながら。
存在をアピールすることが目的です。
天神は連休だけあって観光客も含む多くの人でにぎわっています。その中を1200名でパレードするのですから、多くの人の目に留まります。社会に対するアピールとしてこれほど力強いものはないと思います。

通行人の中には、手を振り返してくれる人も沢山いました。とおりかかった車から窓を開けて手を振ってくれる方もいました。

福岡県弁護士会 九州レインボープライド2024

6 執行部と歩くレインボーパレード

今年のパレードにはなんと、特別ゲストとして德永会長、德永会長の奥様、中原副会長、山田副会長も参加してくださいました。

会長自らパレードに参加していただくのは初めてのことです。
みんなが色とりどりの衣装で歩くパレードの中、德永会長と中原副会長の濃紺のスーツ(withネクタイ+弁護士バッジ)の目立つこと!

あふれる弁護士オーラに、警備に立っている警察官もびっくりして「弁護士も参加してるんやね」とささやき合っていました。
弁護士会としては過去最高の存在感を放つことができました。執行部の皆様、お忙しい中本当にありがとうございました。

7 皆様もぜひ

先日、全会員にLGBTQ+ガイドラインを配布しました。
ご一読いただけましたでしょうか。

皆様の中には、「そうは言っても当事者と実際に会ったこともないし、自分が相談や事件を受けることはないのではないか」と思う方もおられるかもしれません。
そういう方は、ぜひ毎年11月に開催される九州レインボープライドにお立ち寄りください。

性のあり方が多様であり、ありふれた個性の一つにすぎないことを実感していただけると思います。

福岡県弁護士会 九州レインボープライド2024

来たれ!リーガル女子(10/20)

カテゴリー:月報記事

両性の平等に関する委員会 委員 西田 舞季(76期)

秋風心地よい10月20日(日)に、当会主催、男女共同参画推進本部担当で、「来たれ!リーガル女子」(以下「リーガル女子」とします。)が開催されました。

リーガル女子とは、職業としての法律家の魅力を、主に中高生及びその保護者・教員に伝え、法律家志望者拡大につなげるイベントです(「女子」となっていますが、性別に関わらずどなたでも大歓迎です。)。拙筆ながら、今回の活動の様子及び感想を報告いたします。

1、リーガル女子開催に向けての準備
(1) 分担と協力

リーガル女子は3部構成になっています。講師、全体司会、各部責任者、会場設営、グッズの準備、茶話会の用意、司会、資料準備、広報等、ここでは書ききれないくらいその準備は多岐にわたりました。毎月1~2回の会議で、役割を分担し、進捗状況の確認をしました。役割については、先生方が立候補したり、適任者を分担して探したり、とてもスムーズに決まりました。一人一人が責任をもって行動する姿を学ばせてもらいました。

リーガル女子は福岡を会場とするイベントですが、鹿児島大学にもご協力いただき、福岡以外の学生にも参加してもらえるようにご協力いただきました。配信の準備や広報等についても快く協力してくださり、一丸となって学生にとって有意義な時間になるように準備することができました。

(2) 反省と感謝

私は、第1部の対談におけるインタビュアーの役と、第3部のグループセッションにおける講師の役を任せていただきました。

第1部は、元裁判官のご経歴を持つ野島香苗先生(37期)、ずっと弁護士としてご活躍なさっている原志津子先生(51期)、元検察官のご経歴を持つ川本日子先生(53期)に、それぞれの法律家の仕事内容や魅力を話していただく対談になります。

対談のテーマ、時間配分、構成、台本について決めるために、本番までに3回事前打ち合わせをしました。事前打ち合わせにおける私の反省点は、挙げるときりがありません(司会進行役としての役割、能力のすべてが足りませんでした!)。

講師をつとめてくださった野島先生、原先生、川本先生、第1部責任者の山崎あづさ先生(54期)に、「こんなのはどう?」や「こうしたらいいよ!」と温かくフォローやアドバイスをいただき、励ましの言葉も何度もかけていただき、何とか構成や台本を決めることができました。先生方に育てていただいたと感じています。この場をお借りしてお礼を申し上げたいです。本当にありがとうございました!

2、いよいよ当日!
(1) 準備と開会

会場設営やマイク・カメラ等の最終調整をして、美味しいお弁当を食べて開会の瞬間を待ちました。

受付開始後にぞくぞくと学生が会場に入ってきました。学生は保護者と一緒にお越しになったり、おひとりでお越しになったりしていましたが、皆さんどこか緊張している面持ちでした。少しでもリラックスしてもらえるように、事前に会場後方に写真撮影コーナーを設置していました。法務省のホウリス、日弁連のジャフバといったマスコットキャラクターと一緒に、愛知県弁護士会が貸してくださった戦前の弁護士の法服のレプリカ(朝ドラ「虎に翼」で主人公が着用していたデザインです)を着用して写真を撮ったりしてリラックスしてくれたと思います。

開会するとまた緊張した雰囲気になりましたが、德永響会長の親しみのお気持ちのこもったあいさつで空気が和み、いよいよプログラムが始まりました。

(2) 第1部

講師の先生方に裁判官、検察官、弁護士の仕事内容、キャリアアップ、ワークライフバランスを話していただきました。どのお話も、進行の役割そっちのけで「もっと詳しく教えてください!!」という言葉を何度も我慢する程楽しかったです。女性法律家が今より少ない中でご自身の信念と誇りをもって活躍してきたこと、現在はどの法律家も性別問わず充実したキャリアアップやワークライフバランスを形成できることが、学生にも伝わったと思います。私たち若手弁護士が今の法律家の仕事を楽しく行えているのは、先輩たちのおかげなのだろうと感じました。

(3) 第2部

法律家を目指すための進路説明のために、九州大学、西南学院大学、福岡大学の教員の方々も来てくださいました。大学における法律家を目指すためのコースの選択、法科大学院への進学(もしくは予備試験合格)、その後の司法試験受験といった制度やスケジュールを説明し、その中での支援体制をわかりやすく説明していただきました。

社会にインターネットが普及してから、あらゆる情報は昔より得やすくなってきています。しかし、情報が身近にあることが進路の選択肢を必ず増やすわけではありません。その中で、実際に教育に携わる大学の方々が具体的に制度や方法を説明することは、その進路を選択肢に入れ、自分が将来つくる人生の一歩を踏み出す良い機会になると感じました。

(4) 第3部

第3部は、4つのグループに分かれて、女性の裁判官や検察官、弁護士が学生の質問に対して答えるというグループセッションを行いました。裁判官や検察官の方々も講師として参加してくださり、それぞれの進路に興味のある学生の質問や悩みに答えてくださいました。学生は、進路として既に法律家に興味がある方、法学部に進むかについて悩んでいる方、法律家になった後にやっていけるか不安がある方等様々でした。講師の弁護士や裁判官、検察官の方々がとてもわかりやすく答えてくださいました。1時間という時間はあっという間に過ぎましたが、司会役の先生の華麗な進行によって、学生の質問全てに答えることができました。無限の将来の選択肢や可能性を持つ学生が、「法律家っていいな、法律家を目指したいな」と思ってくれたらいいなと思いました。

第3部で学生がグループセッションに参加している間、保護者の方々を対象とした質問コーナーを設け、保護者の方々が感じている不安や疑問に対して、第2部参加者の各大学の教員の方々や弁護士の先生方が答えてくださいました。学生の進路は、学生を大切に思う保護者の方々にとっても重要なものです。学生を応援する側の保護者の方々へのフォローもするのはとても良いことだと思いました。

(5) 閉会

閉会の挨拶をしてくださった深堀寿美先生(45期)のお話の中で、「学生が「やってみたい!」と言ったら、保護者の方々はぜひ「やってみて!」と背中を押してほしい」というお言葉がありました。深堀先生の言葉は、その進路を目指したい学生にも、心配に思う保護者にとっても、心強い支えになったと思います。

終了後お見送りしている中、保護者の方から「とっても感動しました!」と言っていただきました。がんばってよかったと心の底から思った瞬間でした。

(6) 茶話会(振り返りの会)

今回は、全体で42名の学生が参加してくれました。イベント終了後は、参加者と振り返りの会を実施し、感想を言い合いました。皆様「やりきった!」という笑顔で輝いていました。とても実りある時間を過ごせたと思います。全てが終わった後のお茶は最高に美味しかったです。

3、達成感と今後の抱負

参加してくださった方々一人一人が、それぞれの役割を果たし、助け合ってイベントを成功させることができました。私自身も講師の先生方のご経験や思いを聞き弁護士として人として大変勉強になりましたし、イベントの準備を通して組織として行動すること役割の果たし方を学ばせていただきました。とても貴重な経験になりました。

弁護士になって先輩方に助けられたりお世話になる機会がたくさんありましたが、皆「先輩から受けた恩や親切は後輩に引き継いでいくんだよ、バトンだよ」と言ってくださいます。このリーガル女子を通して、私が学ばせてもらったことを、今後法律家となる学生にもそれ以外の道に進む学生にも伝えられていたらいいなと思いました。また、今後もそうあろうと思いました。
お読みくださりありがとうございました。

福岡県弁護士会 来たれ!リーガル女子(10/20)

あさかぜ基金だより

カテゴリー:月報記事

弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 社員弁護士 藤田 大輝(74期)

赴任先が決まりました!

月報3月号(NO.626)で事務所の移転を報告してから、久しぶりです。今回は、いよいよ迫った私の赴任が決まったことを報告します。

「あさかぜ」ってなんだっけ?

その前に、改めて「あさかぜ」を紹介します。弁護士法人あさかぜ基金法律事務所は、司法過疎地域(人口あたりの弁護士の数が少ない地域)に赴任する弁護士を養成するため、九州弁護士会連合会が創設した”あさかぜ基金”から拠出された資金で設立されました。所員弁護士は、2年から3年程度の養成期間を経て、原則として九州の司法過疎地域に赴任します。あさかぜ事務所からは、既に30人近い弁護士が巣立って行き、九州を中心として日本各地で活躍しています。

私は、令和4年4月にあさかぜに入所し、このたび、長崎県対馬市にある対馬ひまわり基金法律事務所の後任所長に採用されました。令和7年3月頃を目安に、引継ぎのため対馬に移住する予定です。ようやく弁護士登録から3年弱、あさかぜを離れることになりました。

さらば福岡、よろしく対馬

あさかぜでは、司法過疎地で十分なリーガルサービスを提供できるよう、多種多様な事件対応を担当しました。司法過疎地で役立つ経験ばかりでしたが、とりわけ、山林の境界確認のため何時間も山中を歩き回ったことや、福祉職の方々から障がい者支援の悩み事をお聞きして回ったこと、薬害訴訟の弁護団に加入して全国的な活動に参加したことなどは、得難い経験でした。

また、あさかぜ事務所外の弁護士と事件を共同受任することも多く、累計で20を超える法律事務所の30人もの先輩弁護士(弁護団事件を除く)から指導を受けることができました。法律事務所によって、また弁護士によって取扱事件や、事件の進め方に違いがあり、特徴がありました。一方で、依頼者と向き合う真摯な姿勢や、依頼者の利益を最大化するという考え方は、どの弁護士も共通していました。これから先、私自身がどのような弁護士となって司法過疎地の1人ひとりを支援できるのか、その指標を得ることができました。この場を借りて、お礼を申し上げるのをお許しください。直接ご指導いただいていない弁護士の方々も、司法過疎問題をご理解いただいていると感じています。誠にありがとうございます。

対馬でも力いっぱい業務にはげみます

私が対馬でできることとは?

国境の離島である対馬は、南北に長く広い面積を有し、端から端まで車で2時間以上かかる大きな島です。また、山林が島全体の89%を占めています。年齢別人口が分かる最新調査(令和2年度国勢調査)によると、65歳以上の人口が全体人口の38%以上を占めます。障害者手帳保持者数は、令和6年3月末時点で合計2736人であり、同時点の総人口2万7416人の1割に迫ります。この情報を聞くだけでも、弁護士が積極的に事務所から出て、アウトリーチ活動をする必要性を感じています。過疎地で活躍したある弁護士は、特定地域の全戸訪問法律相談を実施したそうです。

また、対馬市は、雄大な自然や歴史的建築物を有する観光地です。そのため、多くの観光客が訪れます。対馬市が公表している統計データによると、「宿泊業・飲食サービス業」だけで243の事業所があります。地域の主要産業に対して、私がお手伝いできることはないでしょうか。

視点を変えてみると、対馬市には、15の公立小学校、11の公立中学校、3の公立高校があるようです。近くに弁護士がいない田舎で生まれ育った私としては、「弁護士は身近にいるんだよ」「いつでも相談していいんだよ」と子どもたちに伝えることは、とても大事なことだと考えています。個人的な希望としては、田舎生まれから弁護士になる道があることを伝えて、弁護士になって田舎に貢献したいと考える若者が1人でも増えて欲しいと思います。

こうして自分にできることを考え、準備を進めることは、とても楽しいものです。そして、実際に赴任して活動に取り組むことは、やりがいのある仕事だろうと思います。

福岡県弁護士会 あさかぜ基金だより

対馬の雄大な自然

福岡県弁護士会 あさかぜ基金だより

対馬藩主宗家菩提寺 万松院

単身赴任?私にはムリです

毎度ご紹介している私の娘は、あっという間に1歳半を過ぎました。最近は、福岡市が実施している「こども誰でも通園制度」を利用して、週に1回保育園に通っています。朝の登園は私が送ることにしたのですが、これが楽しみでなりません。保育園でサヨナラをするときの泣き顔に、なんとも胸を締め付けられます。そんな最愛の娘(もちろん妻もです)を置いて、1人で対馬に行くことは考えられません。

対馬には、子どもの成長によい自然が多いこと、本年33に大規模な無印良品店がオープンしたこと、光回線まで開通したこと、さらには韓国、釜山に気軽に遊びに行けることなど、各種証拠をそろえて妻に同行をお願いしているところです。皆様、応援よろしくお願いします。

福岡県弁護士会 あさかぜ基金だより

歩くようになった娘の後ろ姿

あなたもひまわり基金弁護士に!

ひまわり基金法律事務所の所長弁護士になるためには、実務経験を積んだ後、日弁連に応募申込書等を提出し、希望事務所の支援委員会による面接を受けます。実は、あさかぜのような養成事務所以外からも、一定の要件を満たせば、ひまわり基金弁護士に応募することができます。また、各地のひまわり事務所を見学するための旅費補助制度もあります。

ぜひ一度、ひまわり基金法律事務所について調べてみてください。ともに司法過疎地で闘う同士が1人でも増えることを願っています。

かく言う私も、司法過疎地で、しかも1人で弁護士をやっていくとなると、まだまだ不安です。それでも、指導してくれた弁護士の方々、私を待っている対馬の方々のことを思うと、勇気が湧いてきます。赴任までの一日一日を大切に、一層研鑽に励みます。これからも引き続き、より一層のご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

福岡県弁護士会 あさかぜ基金だより

(引用元:日弁連WEBサイト https://www.nichibenren.or.jp/activity/resolution/kaso_taisaku/himawarikikin_bosyu.html

「市民とともに考える憲法講座第13弾 検証 政治とカネ 上脇博之教授講演会」感想

カテゴリー:月報記事

司法修習生 亀家 貴志(77期)

裏金問題の本質とは?

2024年9月9日に、神戸学院大学の上脇博之教授をお招きして、政治とカネに関するオンライン講演会が開催されました。講演会は、福岡県弁護士会館2階大ホールと北九州弁護士会館5階大ホールの2会場のほか、Zoomウェビナーによるオンラインでも同時配信され、合わせて130人以上が上脇教授の講演会を最後まで熱心に聞き入りました。

上脇教授は、いわゆる自民党の裏金問題について刑事告発を積極的に行い、東京地検特捜部による捜査、そして自民党派閥の解散のきっかけを作った、いま大いに注目されている憲法学者です。テレビなどのメディアにも度々出演しており、バンダナをつけた上脇教授の姿は、ほとんどの人が見たことがあるのではないでしょうか。

上脇教授には、裏金問題発覚から改正政治資金規正法の問題点まで、質疑応答を含めて2時間あまり、詳細なレジュメとともに講演していただきました。

裏金事件の発覚と刑事告発

裏金事件は、しんぶん赤旗によるパーティー券2500万円分の不記載スクープ報道が発覚の端緒でした。上脇教授は、この報道記事へのコメントを求められたことをきっかけに裏金問題を調べはじめ、2022年11月9日に清和政策研究会(細田・安倍派)を裏金問題ではじめて告発しました。

その後、2023年12月に入ると、パーティー券の販売ノルマ超過分のキックバックや派閥による中抜きが次々と発覚していきました。

派閥による収支報告書の訂正がなされると、上脇教授はさらに深く追及し、裏金プール事件(パーティー総売上額等の過少記載)、キックバック・中抜き事件(授受した金銭の不記載)の告発も開始しました。このうち清和政策研究会の議員らに対する告発は、2024年3月11日から8月20日にかけて30回も行っており、なんと5~6日に1回の頻度で告発状を送付していたのです。

これらの結果、周知のように、多くの議員が不起訴処分となったものの、一部の議員や秘書が起訴され、失職することとなりました。

パーティー券以外にもあった「裏金」

パーティー券以外で上脇教授が問題として取りあげた「裏金」としては、オンラインによる勉強会・セミナーによる収益がありました。2021年~22年にかけて、敬人会という団体はオンライン勉強会等を開催し、1回につき約1000万円以上の収益を上げていながら、形式的に「政治資金パーティー」にあたらないとの理由で政治資金パーティーに関する諸規制を免れていると指摘されました。

また、法律の不備による「裏金」としては、政党による候補者への寄付や内閣官房報償費(機密費)があるとのことでした。前者については、自民党本部による政策活動費支出が10年にわたって紹介されており、数十人の議員に1年あたり計10億円ほども寄付されているという事実を知らされ、愕然としました。

改正政治資金規正法の問題点

自民党の裏金問題の発覚を受けて、自民・公明党による「政治改革」が実施され、本年6月に改正政治資金規正法が成立しました。

しかし、上脇教授によれば、この改正法は裏金づくりができないようにする政治改革とはおよそ言えないとのことでした。今回の裏金問題を引き起こした政治資金パーティーやパーティー券購入の禁止も定められず(政治資金パーティー券の購入者公開基準が20万円超から5万円超に引き下げられたという程度にとどまった。)、政策活動費の支出も許容される(領収書が10年後に公開されるというのでは犯罪の時効との関係でまったく意味がない。)という状況だからです。

上脇教授による「抵抗運動」の原点

憲法学者である上脇教授がなぜここまで積極的に裏金問題を追及するのかについては、講演会のはじめに触れられました。それは、日本国憲法は議会制民主主義を定めているが、その議会制民主主義が法律において具体化されていないという問題意識に基づくものです。つまり、議会制民主主義は民意が国会に反映されるべきであるところ、1人しか当選しない衆議院小選挙区選挙・参議院選挙区制度、政党助成金や裏金といった制度・事実により民意が歪曲されている。このような現実を前に上脇教授は研究室に閉じこもって見て見ぬふりをすることはできず、ほかに市民運動としてできることがないかと考えた末に刑事告発という行動、「抵抗運動」をするに至ったとのことです。

裏金問題の追及にかける情熱

上脇教授には、不記載の額など、次々に具体的な数字を示しながら裏金問題の実態と本質を明らかにしていただき、裏金づくりの一端をまざまざと見せつけられました。それとともに、実態解明に向けて上脇教授が精力的に情報収集したり告発状を作成したりしていることが伝わり、その情熱に驚かされました。上脇教授が年末年始を返上してまで告発状の作成をしたというエピソードもあり、これには講演会参加者全員が目を見張りました。このようないわば超人的な取り組みがなければ、裏金問題により派閥解散や議員らの起訴に至るということはなかったのではないかと思います。

自浄作用の限界――私たちは何をすべきか?

上脇教授の熱意に感心する一方、権力者がその立場を維持しながら自浄作用をはたらかせるということは、「全国民を代表する」国会議員ですら(だからこそ?)難しいことだと痛感しました。改正された政治資金規正法は、十分な「政治改革」には至っておらず、そもそも、今回の裏金づくりが違法なことであると自民党内で誰かが声を上げていれば裏金事件として問題となることはなかったはずだからです。

そうすると、自浄作用に期待するだけではなく、国会議員の活動に対する市民の監視の目は常に光らせている必要があり、上脇教授の告発とともに、私たちの市民活動は強力な抑止力になっていると改めて思わされました。

福岡県弁護士会 「市民とともに考える憲法講座第13弾 検証 政治とカネ 上脇博之教授講演会」感想

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