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あさかぜ基金だより あさかぜのホームページの刷新にむけて

カテゴリー:月報記事

会員 中田 昌夫(67期)

ホームページを刷新します

あさかぜでは、現在、事務所のホームページ(URL http://www.asakaze-law.jp/)の刷新について、議論を重ねています。

ホームページを刷新することには、第1に、あさかぜでは弁護士が2年程度で赴任していなくなるので、事務所としての認知度を高め、多くの人に相談に来てもらうため、という意義があります。

第2に、あさかぜが弁護士過疎問題を解消するために設立された公設事務所であることから、ホームページを通じて、弁護士過疎問題について市民の皆様に知っていただくとともに、あさかぜの活動についてあさかぜを支えてくださる弁護士に、より広くご理解をいただくという意義があります。

そして、第3に、あさかぜに所属する弁護士の養成活動の一環としての意義があります。あさかぜに所属する弁護士が、自らホームページの刷新に携わり、事務所の広報について学ぶことは、赴任後に弁護士過疎地で地域の人に広く相談に来てもらうための準備として必要なことです。また、養成期間中に、事務所の広報について学んでおくことは、赴任後に、弁護士過疎地において、弁護士へのアクセスをより容易なものにするという点からも有意義といえるでしょう。

ホームページ刷新に向けて

ホームページ刷新に向けて準備を重ねる中で、あさかぜ内で議論を重ねるとともに、ITに詳しい数多くの会員の皆様から、示唆に富んだアドバイスをいただきました。

この場をお借りして、たくさんのアドバイスをいただいたことに、改めてお礼を申し上げます。

いただいたアドバイスのうち、複数の方が強調されたこととして、ホームページを通じて、誰に向けて、どういった情報を発信、提供するのかというホームページの目的を常に意識しなければならないというものがありました。あさかぜの弁護士間で、ホームページの刷新に向けて議論をするとなると、ついつい些末な点に気を取られてしまい、こうした基本的なポイントを忘れてしまいがちでした。誰に向けて、どういった情報を発信、提供するのか考えるということは、これまでの自分たちの活動を見直す機会であるとともに、自分たち弁護士としての志を再確認する機会であるといえます。副次的ではありますが、ホームページの刷新にあたって、このような機会を設けることができたことは、養成活動の一環として、有意義であったと思います。

あさかぜのホームページにつき、お気付きの点があれば、アドバイスをいただければ幸いです。

新しいホームページの運営に向けて

新しいホームページが完成した後は、ホームページを適切に運営していかなければなりません。

新しいホームページを放置せず、適切に更新が行われるように、事務所内で、更新のルールを作成しています。こうした更新のルールは、あさかぜの弁護士は、赴任により、引継ぎがなされることからしても、必要なものです。

また、あさかぜの弁護士が赴任後に自らの事務所のホームページを運営することを見据えて、弁護士各人において、ホームページの仕組みを理解し、各人でホームページの基本的な保守、管理ができるよう少しずつ勉強をしています。

このように、ホームページの適切な運営に向けても、課題が山積していますが、ホームページ刷新の意義を生かしていけるよう、今後も努力と工夫を重ねていきたいと考えております。

特集/障害のある人もない人も共に生きる社会への第一歩! ~障害者差別解消法が施行されました~

カテゴリー:月報記事

会員 國府 朋江(65期)

はじめに

2016年4月1日、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下では単に「差別解消法」といいます。)が施行されました。差別解消法は、障害者を差別しないという、当たり前のことを内容としたものですが、行政機関等のみならず、事業者に対する義務も定めており、適用される範囲が広い上、どのようなことが差別となり、禁止されるのかは同法には定義されていません。

このたび、月報の紙面をいただきましたので、差別解消法の内容について簡単に説明した上で、会員の皆様が具体的な相談を受けるに際し、どのような資料を参照すればよいのかについて触れたいと思います。また、福岡県弁護士会高齢者障害者委員会における、差別解消法に関する取り組みについてもご紹介させていただきます。

なお、本年4月1日から、障害者雇用促進法も改正されましたが、紙面の関係上、差別解消法との適用関係についての説明に留め、内容の説明は割愛させていただきます。

Ⅰ 差別解消法
1 差別解消法制定の経緯

日本は2007年9月に障害者権利条約に署名し、2014年1月、同条約を批准しました。

障害者権利条約は障害者に対する差別の禁止や尊厳と権利保障を義務付けています。日本では、障害者の権利保障のための国内法が整備されていなかったため、障害者権利条約の批准だけが先行してしまうことに危機感を持った障害者団体の声により、国内法整備の後に条約が批准されることとなりました。そのため、署名から批准までの間に時間のずれがあるのです。

これまでは、障害を個人の問題とし、機能の障害を福祉で補い、いかに健常者社会に障害者を溶け込ませるかという視点が中心でしたが(障害の医学モデルの考え方)、健常者を中心として作られた社会が、少数者である機能障害のある人々にとっての社会的な障壁を生み出しているのであり、社会の側が積極的に障壁をなくさなければならないという視点(障害の社会モデルの考え方)にシフトチェンジするための法整備が進められました。障害者基本法改正(2011年)、差別解消法の制定(2013年)、障害者雇用促進法の改正(同年)などです。

社会モデルの考え方とは、例えば、駅に階段しかなく、車椅子ユーザーが電車に乗ることができない場合に、駅に階段しか設置していないことによって、移動が妨げられるという生きづらさが発生しているという考え方です。これに対し、医学モデルの考え方からは、同じ状況について、足が動かなかったり、内部障害で車椅子を使用しなければならないという機能障害自体から移動が妨げられていると考えます。

差別解消法や改正障害者雇用促進法は、障害を理由とする差別をしてはいけないということだけでなく、合理的配慮を提供しなければならない点を規定しました。この合理的配慮という概念が法律で定められたという点が重要です。

2 法律の概要(内閣府作成の法律概要参照)

差別解消法は、行政機関等に対し、不当な差別的取扱いを禁止し、合理的配慮の提供を義務付けています(7条)。事業者に対しては、不当な差別的取扱いを禁止していますが、合理的配慮の提供を努力義務と定めています(8条)。

具体的にどのようなことをすべきか、すべきでないかということは、差別解消法には規定されていません。

では、どこに記載されているかというと、法に策定することが義務付けられている、政府全体の方針を示す基本方針(6条)、基本方針に即して作成される国・地方公共団体等の機関における取組に関する対応要領(9条、10条。地方公共団体は努力義務)、主務大臣が事業分野毎に定める事業者向けの対応指針(11条)に具体的な対応が書かれています。

全ての生活分野が対象となりますが、雇用の場面における差別や合理的配慮の提供については障害者雇用促進法が適用され、差別解消法は適用除外されます(13条)。

対応要領は行政職員の服務規律となり、懲戒処分の対象となることに注意が必要です。

実効性の確保のため、法に反する状態が続く事業者に対しては、特に必要な場合に主務大臣による事業者に対する報告の徴収、助言、指導、勧告ができることとされています(12条)。

第4章では、差別を解消するための支援措置として(1)相談及び紛争の防止等のための体制の整備(14条)(2)啓発活動(15条)(3)情報の収集、整理及び提供(16条)(4)障害者差別解消支援地域協議会(17条~20条)が定められています。

3 「障害者」(2条1号)

差別解消法は、障害者を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と定義し、障害の社会モデルの考え方を採用することを明らかにしています。

したがって、対象となる障害者とは、障害者手帳の交付の有無を問いません。

4 行政機関等(2条3号~6号)

国の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人をいいます。ただし、地方独立行政法人の行う業務の中で、主に事業の経費を当該事業の経営に伴う収入をもって充てる事業で、軌道、自動車運送、鉄道などの事業や病院事業などは除外されています(2条6号)。

5 事業者(2条7号)

「商業その他の事業を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)をいう。」と定義されています。

社会的地位に基づいて継続、反復して行われることが予定されている事柄を行う者で、個人・法人、営利目的・非営利目的を問いません。

6 不当な差別的取り扱い(7条1項、8条1項)

正当な理由なく、障害を理由として、障害のある人とない人で異なる取扱いをすることや、一見して障害を理由としていないものの、サービス等の提供にあたって場所や時間を制限することによって実質的に障害者がサービスを利用できないようにすること、障害者でない者に対しては付さない条件を付けてサービスを利用できないようにすることは、不当な差別的取扱いとして禁止されます。

ただし、障害者の事実上の平等を促進し、または達成するための措置は不当な差別的取扱いには当たりません。

差別類型 相手方が持ち出す理由 相手方の行為態様
直接差別 障害 異別取扱
間接差別 障害そのものではないが、
障害に関連する事由
同一取扱(同一基準)
関連差別 異別取扱

基本的な考え方は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」に、具体例は各省庁の対応要領の別紙・留意事項に書かれています(いずれも内閣府のホームページにあります。)。留意事項に不当な差別的取り扱いに当たりうるものとして記載されているのは

  • 障害を理由として窓口対応を拒否する
  • 障害を理由に対応の順序を後回しにする
  • 障害を理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む

いったものがあります。

7 合理的配慮(7条2項、8条2項)

(1) 規定

障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をする旨が定められています。

前述のとおり、合理的配慮の提供は、行政機関等は法的義務、事業者は努力義務とされています。

(2) 具体例

合理的配慮の具体例を挙げると、ホームページ上に文字データをアップする時に、ルビありのものや、テキストデータのものもアップする(知的障害、発達障害、視覚障害のある人向け)、筆談の対応をする(聴覚障害のある人向け)、難病で疲れやすい人がいる場合に、休憩をこまめに入れるなどです。ただし、これらの配慮は、個人によって求めるものは様々です。当事者に聞いてみたり、試行錯誤してみたりしましょう。以下も参考になります。

(障害者権利条約策定の過程で使用された”Nothing about us without us”【私たち抜きに私たちのことを決めるな】という言葉があります。この考え方を常に念頭に置くことが大切だと思います。)

  • 各省庁の対応要領別紙・留意事項(内閣府HP「関係府省庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」からダウンロードできます)
  • 合理的配慮サーチ(内閣府HP)
  • 厚生労働省の各事業者向け対応指針
  • みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年度版)

(3) 意思の表明

差別解消法は、非常に広い範囲で適用されるため、相手方になる行政機関や事業者にとっては、当該障害者に何が社会的障壁となっているのか知り得ない場合もあります。そこで、差別解消法は意思の表明を求めています。

意思の表明は手話や点字、その他コミュニケーションを図る際に必要な手段であれば何でも構いません。また、知的障害や精神障害(発達障害を含む)等により本人の意思表明が困難な場合には、家族や介助者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含むこととされています(基本方針)。

(4) 過重な負担

過重な負担については、事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)、実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)、費用・負担の程度、事務・事業規模、財政・財務状況などの要素を個別の事案ごとに考慮し具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが望ましいとされています(以上、対応要領にかかる留意事項)。

もっとも、過重な負担であるとして、本人の求める配慮が提供できない場合であっても、代替手段の有無について検討をすべきです。

8 紛争解決

差別解消法では、国及び地方公共団体は障害を理由とする差別に関する相談に応じ、紛争の防止又は解決を図ることができるような体制の整備を図るものとすると規定しています(14条)。

差別解消法では具体的にどのような機関をおき、どのように紛争を解決するかという点までは定めていないため、このままでは実効的な紛争解決が困難です。

これに対し、具体的な紛争解決の制度を条例の中で設けている自治体が増えてきています。福岡市においても、差別禁止条例をつくる会が取り組みを進めており、市長が2016年3月3日の議会で条例制定に取り組む発言をするなど、盛り上がりを見せています。

九州・沖縄では、長崎県、熊本県、大分県別府市、鹿児島県、沖縄県で差別禁止条例が定められています。

9 参考文献・資料まとめ
Ⅱ 福岡県弁護士会高齢者障害者委員会における取り組み
1 差別解消法に関する研修

高齢者障害者委員会では、差別解消法が施行される2016年4月1日に先立ち、本年3月28日に差別解消法の研修を行いました。

4月15日には、ライブ研修に来ることのできなかった会員向けにDVD研修を行いました。

2 障がい者差別解消ホットラインの実施

差別解消法の施行のタイミングと併せ、電話相談を行いました。

電話相談では次のような相談が寄せられました。

  • 天神地下街は一方の通路しか点字ブロックが設置されていない。運営会社はバリアフリー法に則っているので問題はないという対応をされた。
  • 大学院に進学中、視覚障害の程度が進行し、テキストデータを音声リーダーで読み込み授業等を受けるようになった。その後、同じ大学院のドクターコースへ進学を希望したところ、「一旦あなたのような人を受け入れると今後も同じように受け入れざるを得なくなるから受け入れることはできない」と言われ、進学を諦めた。
  • 福岡市のホームページ上にアップされている文書データがテキスト形式になっていないことがあり、音声リーダーで読み込むことができない。「福岡市 差別解消法」のキーワードで検索して出てきたものがPDF形式で、テキスト形式になっていなかったので非常に残念だった。
    これまでも福岡市に改善を求めてきたが、担当者が変わるとまた元通りになっている。

このように、今後の取組みの参考になるような事案が寄せられ、ホットラインを実施してよかったと感じました。

ITコラム 「あとで読む」

カテゴリー:月報記事

1 はじめに

インターネットは今や情報収集の重要な手段です。特に若手弁護士にとっては、キーワードで検索をすれば、社会常識に属する基本的知識から諸先輩方の応用的知見まで、短時間に大量の情報に触れることができるインターネットは手放せないツールです。

他方、インターネット上にはとにかく大量の情報がありますので、効率的に情報収集しないと無駄に時間を費やしてしまうおそれもあります。

そこで、インターネットで収集した情報の効率的な管理方法について、検討とご紹介をしたいと思います。

2 収集した情報の管理方法

インターネット検索サイトでキーワードを入れて検索すると、何百万というWEBページがヒットします。必要な情報に出会えるまで検索ワードを変えて検索を繰り返し、ページを探索していきます。

さて、ようやく気になるページに出会えたとき、これをどのように管理すればよいでしょうか。

(1) 後で再検索する又は履歴から再表示する

これは簡単です。しかし、検索を繰り返すと、どの検索ワードでヒットしたか忘れてしまうこともありますし、履歴も大量にあると、「あのページはどこだろう?」ということになりがちです。無駄な時間と労力を費やす原因になります。

(2) 「お気に入り」に登録する

ブラウザのお気に入りボタンを押して「お気に入り」に登録すれば、簡単に再表示できます。しかし、情報の管理という観点からは、常用するWEBサイトのみ「お気に入り」に登録すべきです。ちょっと気になるページの一時保存には適しません。

(3) 「あとで読む」サービスを使う

そこで、「あとで読む」サービスがあります。これは、気になったページを(一時的に)キープし、後でまとめて読むことができるサービスです。

代表的なものは、”Pocket”、”Instapaper”、”Readability”等です(特に”Pocket”が使いやすくおすすめです)。詳細は省略しますが、(1)基本的に無料、(2)(設定をすれば)ネットサーフィン中にボタン1つでページを保存できる、(3)保存したページのリストはWEB上で手軽に確認できる、(4)パソコンとスマホでリストを共有できる、といった点が特徴です。

ポイントは、気になるページを見つけたら、あまり深く考えず、とりあえず「あとで読む」リストに入れてしまうことです。そうすれば、前に見たページをもう一度見たいというときに、リストからサッと見つけることができます。そして、もう必要ないと判断したページはリストから随時削除すれば、無駄な情報でいっぱいになることもありません。とりあえずキープし、その上で情報の取捨選択を行う要領です。

また、(4)も重要です。外出先の空き時間にスマホでたまたま見つけた有益なページを後でパソコンでも見たいというとき、この機能が役立ちます。逆に、パソコンで保存しておいたページを外出先でスマホでも見ることができますので、上手に使えばとても便利です。

(4) 長期的に保存する方法

「あとで読む」は一時的な保存を予定していますが、長期的に保存したいという場合もあります。保存の方法は色々ありますが、便利なのは、”Evernote”等でWEBクリップとして保存しておく方法です。”Evernote”は多機能で中々使いこなすのが難しいサービスですが、1つの使い方として、(1)”Pocket”に気になったページを手当たり次第保存し、(2)時々リストの見直し(選別・削除)を行い、(3)特に保存版だと思うページのみ厳選して”Evernote”に移し、別個に整理して保存する、という方法があります。これはとても便利です。

3 おわりに

効率的な情報管理の工夫は他にもあると思いますが、「あとで読む」をまだ活用されていらっしゃらなければぜひ活用をご検討下さい。

本コラムも「あとで読んで」頂ければ幸いです。

憲法リレーエッセイ 本当に必要なものは戦争法ではなく平和規範である

カテゴリー:憲法リレーエッセイ

会員 梶原 恒夫(41期)

2015年9月19日、安倍政権が、多くの国民が強い反対の意思を表明している中、安全保障関連法案を採決した。

法案の1つは、平和安全法制整備法(我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律)であり、これは、自衛隊法(1954年)、PKO法(国際平和協力法1992年)、周辺事態法(1997年)、有事法制(武力攻撃事態対処法・個別法2003年・2004年)、国家安全保障会議設置法(2013年)など10本の軍事関連法制度を一括して「改正」する内容であった。もう1つは、国際平和支援法であり、こちらは新法であった。これらの法案内容は、多岐に亘っており、しかも各条文がもたらす重大な影響を考えると、国会審議及び国内における議論の期間は、余りにも短すぎた。

これまでの「専守防衛」から積極的な「海外派兵」あるいは「集団的自衛権行使」へと大きく方向転換する実定法の成立により、為政者が「合法的」に戦争を遂行することができる法体制が整備された。戦争遂行を可能とする法的な体制の整備という事態が私たちにもたらす影響は、計り知れないほど大きい。

憲法前文は、国民の反戦の意思を踏みにじって政府が戦争に踏み出してきたというのがこれまでの歴史の事実であることを踏まえ、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」、と述べている。しかるに、法案の成立は、政府の行為による戦争の惨禍が再び起こる危険性をもたらした。すこぶる危険である。

本来、安全保障の基本は、「攻められない」ようにするために、その条件をいかにして作り上げるかにある。武装した国家によって「安全」を守ってもらうのか。それとも、市民が国境を越えて、連帯によってお互いの安全を守っていくのか。日本国憲法前文は、「平和を愛する諸国民(peoples)の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と述べている。抑止力に対する更なる抑止力により軍拡競争が進み、不信と憎悪の上にできた勝利の秩序は次の戦争を生む。すべての問題解決を軍事的手段に一面化させることは極めて危険だ。

戦後日本は、紛争の武力による解決は行わないという体制を9条の下でとり続けてきた。国境紛争を武力で解決したこともない。戦後一度たりとも戦争をしていない日本に対する国際的な信用は極めて高い。そのような日本が、平和に基づく行動規範を国際的に提起すれば、多くの国々、とりわけアジア諸国やEU諸国は必ず支持するだろう。平和規範に基づく国際外交を展開して平和を構築していくことは、きわめて現実的な途である。武力紛争の発生の前には、必ず抜き差しならない国家間の利害対立が生じる。その対立が生じた時点で、平和規範に基づいて解消し、武力紛争を未然に防ぐという方途は、現実的であり賢慮に満ちた方策である。

3月19日に福岡県弁護士会が開催した「憲法違反の安保法制の廃止を求める市民集会」で講演された元政府高官である柳澤協二氏も、21世紀のリアルは、戦争のコストが利益を上回ること、高度に発達した情報技術を使えば誤算と恐怖による戦争を防げることであり、どう戦争を防ぐかを考えることが政治の責任であると述べられた。また、強い政府か賢い政府か、最後は国民の選択だという趣旨のことを述べられた。リアルな発言だと感じた。

日本国憲法の絶対的平和主義は、極めて現実的な思想だと思う。他方、武力による平和構築は、多くの人々の悲惨な死しかもたらさないのが現実だ。普遍的に妥当する世界平和の理念に向かって、現実的に一歩一歩、接近すること、そのように長期的・漸進的・総合的戦略としての高次の現実主義に立つのが日本国憲法の立場だと私は理解する。そして、わたしたちは、今こそこのような現実主義に立つべきではないかと思う。

あさかぜ基金だより ~異業種より学ぶ業務改善~

カテゴリー:月報記事

社員弁護士 西村 幸太郎(66期)

オフィスツアーへの参加

業務改善のため、民間の企業はどのような工夫をしているのでしょうか。

当事務所は、弁護士過疎地赴任をにらんだ弁護士を養成する事務所です。事務所を切り盛りするうえで、経営も学ばなければなりません。その一環として、複合機を扱うある会社のオフィスツアーに参加。目から鱗のツアーでした。

そこで参考になったこと、学んだことをご報告させていただきます。

ワークスタイルの変革を目指して

業務改善のためには、そもそものワークスタイルの変革が必要です。

(1) コストのかけ方:スペースコスト・紙コストの無駄が悩ましい。この会社は、印刷機の配置の工夫などによりこのコストを削る反面、セキュリティコストを増やします。パソコンの持出しを認めることで、社外にも活動のフィールドを広げることができ、業務効率があがります。セキュリティを厳しくすることで、さらなる効果もあります。最近、情報管理に厳しい企業が増加しており、そのような業者との取引にも十分対応できるのです。時流に即した変革です。

(2) 時間の使い方:データ処理や必要書類の探索に莫大な時間を奪われてしまう。ここでは、データ処理の時間を削る反面、コミュニケーションの時間を十分にとれるよう、時間配分を変革します。適切なデータにもとづく十分な議論は、意思決定の迅速性をももたらします。

限られたコストと時間で何をすべきか。やみくもに削るのではなく、必要なものには投資するなど、目的意識をもって業務改善にあたっています。

デスクのきれいさ

なにより驚くのは、この会社の社員のデスクがあまりにきれいなこと。

過去1年間使っていない書類をみる確率は1%未満。不要な文書は廃棄を徹底します。紙文書は減量化し、電子化を進めます。

悩ましいのは、放置プリント。しかし、これも、「パソコンの操作+複合機における社員証の提示」→印刷開始というシステムの導入で大胆に削減。印刷後、結局書類を取りに行くため、社員証の提示は余計な手間となりません。ミスプリはキャンセルできます。印刷を試みるも、間に合わず出社した際に放置されるプリントが散見されましたが、この場合も印刷されなくなり、無駄が省けます。このシステムでは、パネルに利用した印刷枚数・費用等が表示されるため、社員のコスト意識も高まります。

データの電子化にあたっては、そのファイルのネーミング、フォルダの仕分けにつき、全社で共通ルールをもうけます。ルールを実践すべく、ルールに沿って自動でネーミングと仕分けをしてくれるソフトを導入します。データ管理は自動で適切になされ、データ処理にかかる時間が圧縮されます。

ここでは、社員の付近にごみ箱を置きません。ごみ箱が近くにあると、ついつい書類を捨ててしまいます。別の社員が、その中にプライバシー情報を見つけます。その社員は、これを選別しシュレッダーにかけるという作業を強いられます。そのような手間を避けるため、ごみ箱は定位置に数か所だけ。ごみ箱から1番遠いのは上司であり、上司がごみ箱まで動いて捨てているなら私も・・・と配置を工夫しています。あえて移動して捨てる場合、適切な分別のうえ、必要なものはシュレッダーにかけるなど、適切な処理が促進されます。

無駄の排除により、「電話以外に何もないデスク」を実現。きれいなオフィスは、情報漏洩リスクが低い。生産性が高い。一方、必要以上に手間がかからないよう、ルールが定着しやすいよう、十分に配慮がされています。社員は、いきいきと仕事に取り組むことができます。

自戒もこめて・・・

ここで紹介したものは、氷山の一角。このほか、自動車の削減と公共交通機関のすすめ、グループ会社と同室にするメリット、地震対策など、さまざまな取組みにつき紹介してもらいました。

この会社の変革はBefore/Afterで示され、その変わりようには驚くばかり。Beforeの部分では、散乱したデスクがもたらすリスクなど、耳が痛い話も。しかし、工夫1つでここまで変われるのか!と感心しました。

これまでの自分を振り返ると、いたらない点ばかり。今回のツアーを参考に、ぜひとも、業務改善に取り組んでまいります。

みなさんも、機会があれば、民間の企業の取組みにつき、見学してみてはいかがでしょうか。きっと学ぶところが多いと思います。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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