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連載/相続法改正PT報告 第2回/配偶者の居住権確保のための制度について

カテゴリー:月報記事

司法制度委員会家事法制部会・相続法改正PT 山崎 あづさ(54期)

「中間試案のたたき台に対する意見書」を出しました

この間、法制審議会相続法制部会から出された中間試案のたたき台について、日弁連から意見照会がきていましたので、当PTで急ぎ検討を行い、意見書を提出しました。

パブリックコメント募集が始まりました

7月12日に、「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」が発表され、これに対するパブリックコメントの募集が始まりました。意見募集締切日は9月30日です。当PTでは、現在、パブリックコメントの作成に向け、作業を進めているところです。

「パブコメ 相続法」などで検索すると、意見募集のページが出てきます。ここに中間試案も掲載されていますので、是非ご覧ください。

論点の解説 ~配偶者の居住権保護について

本稿では、今回の改正の柱の一つである、配偶者の居住権を保護するための方策について、解説いたします。

今回の相続法見直しの出発点となったのは、高齢化社会の進展、家族のあり方に関する国民意識の変化、配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活への配慮、という観点です。そのための柱の一つが、配偶者の居住権保護のための制度です。夫婦の一方が死亡した場合、残された他方配偶者は、それまで居住してきた建物に住み続けたいと希望するのが通常と考えられること、特に高齢者の場合、住み慣れた住居を離れて新たな生活を立ち上げるというのは精神的にも肉体的に大きな負担になることから、生存配偶者の居住権を保護する必要性が高いとして、制度化が検討されています。

今回出されている中間試案では、配偶者の居住権保護のため、「短期居住権」「長期居住権」という二種類の制度を新設することが盛り込まれています。

短期居住権とは?

相続開始時に被相続人の配偶者が被相続人所有の建物に無償で居住していた場合に、遺産分割により建物の帰属が確定するまでの間、引き続き無償でその建物を使用できる、というものです。配偶者以外の者が遺言等により建物の所有権を取得した場合でも、相続開始の時から一定期間(例えば6か月間)、無償でその建物を使用できる、とされます。短期居住権を取得しても、遺産分割において取得すべき財産の額には影響しません。

こうした短期的な居住権の保護については、判例(最高裁平成8年12月17日判決)で使用貸借契約成立の推認という形で認められているものですが、今回、これを整備して制度化するものであるといえます。

この短期居住権については、配偶者に限定するべきなのかどうか、建物の帰属の確定時までではなく遺産分割手続全体が終了するまでとしたほうがいいのではないか、期間が6か月では短いのではないか、配偶者が固定資産税等の必要費を負担するとされているところ、これは遺産分割協議の中で考慮すれば足りるのではないか、などの意見が出されており、なお検討をしているところです。

長期居住権とは?

相続開始時に配偶者が居住していた被相続人所有の建物について、終身または一定期間、配偶者にその使用を認めることを内容とする法定の権利(長期居住権)を新設するものです。遺産分割の協議や審判における選択肢の一つとして、あるいは被相続人の遺言等によって、配偶者に長期居住権を取得させることができるというものです。

現行法のもとでは、配偶者が従前居住していた建物に住み続けたいという場合、配偶者がその建物の所有権を取得するか、その建物の所有権を取得した他の相続人との間で賃貸借契約等を締結するということが考えられます。しかし、前者の方法では、建物の評価額によってはこれを取得すると他の遺産を全く取得できなくなり、配偶者のその後の生活資金が確保できなくなる場合が生じます。また、後者の方法では、賃貸借契約が締結できなければ配偶者の居住権は確保されないということになります。そこで、長期居住権という、建物使用のみを内容とし収益権限や処分権限のない権利を新設することによって、配偶者の居住権を保護する選択肢を増やそうというのが、今回の改正案の趣旨です。

今回検討されている長期居住権は、終身又は一定期間と相当に長期のものであり、これを配偶者が取得した場合は、その財産的価値に相当する金額を相続したものとして扱うとされています。また、登記をすれば第三者に対抗できるとされています。

この長期居住権については、新しい制度の創設ということもあり、中間試案の段階でも検討課題がまだ多く残されています。長期居住権の財産的価値をどのように評価するのか、長期居住権に関する登記手続をどのように定めるのか、配偶者が建物を使用できなくなった場合に所有者に買い取りを請求する権利を設けるかどうかなど、なお検討するものとされています。

他の相続人や債権者との関係にも配慮しつつ、配偶者の居住権保護として機能する制度にするにはどうすればいいか、私たちも、それぞれの経験を生かしさまざまな場面を想定して、考えられる問題点などについて意見を述べていく必要があると思います。

また、居住権の問題だけでなく、相続全般における配偶者の位置づけということも検討していく必要があるのではないかと考えられます。このあたりについては、次回以降の記事でも触れられるところだろうと思いますので、皆様、お楽しみに。

憲法リレーエッセイ 「憲法違反の安保法の市民集会及びパレード」のご報告

カテゴリー:憲法リレーエッセイ

会員 永松 裕幹(63期)

平成28年6月11日午後2時、中央市民センターに於いて「憲法違反の安保法の廃止を求める市民集会及びパレード」(主催:当会、共催:日弁連、九弁連)が開催されましたので、ご報告させていただきます。

本市民集会及びパレードは、当会が5月25日の定期総会で「憲法違反の安保法制の廃止ならびに運用停止を求める決議」を決議し、日弁連が5月27日の定期総会で「安保法制に反対し、立憲主義・民主主義を回復するための宣言」を決議したことに続き、本年度の人権擁護大会のプレシンポジウムとして行われました。

まず、原田直子会長から開会のご挨拶があり、安保法の廃止を求める当会の取り組み等についてご紹介いただきました。

そして、西南学院大学法学部国際関係法学科(政治学)の田村元彦准教授を講師にお迎えし、「安保法制でどうなるの?私たちの社会」とのご講演をしていただきました。

田村先生のご講演は、福岡・九州における多くの市民運動に携わってこられたご経験に基づいたお話を中心に、法学・政治学の観点から安保法制や現在の日本の政治の問題点を多岐にわたって鋭く指摘されるもので、大変興味深い内容でした。

ご講演では、2002年の「福岡市愛国心通知表問題」(福岡市立小学校の内69校が、「愛国心」を3段階評価する通知表を採用したことに対する抗議運動)について、詳しくお話がありました。そして、そのご経験や人間関係が、その後の様々な運動や、安保法制に反対する福岡の学生団体「FYM」(Fukuoka Youth Movement。中心メンバーには田村先生のゼミの学生がいて、学者や当会会員及び報道記者等多くの方々と関わりを有している)等の活動へ繋がったとのことでした。

また、田村先生は、権力を持っている側は、一枚岩で着々と布石を打ってくるのに対し、「弱者は分断され、孤立した戦いを強いられる」ことを強く指摘されました。そのうえで、現代の日本の社会は、国際的には開けて豊かである一方で、国内的には抑圧的な監視社会になってきており、若い世代の未来が奪われているのではないかとの強い危機感を表明され、これに対抗するために社会的弱者同士の繋がりや運動の継続性が重要である旨述べられました。会場に集まった多くの会員や市民の皆さんも、このことに共感されている様子でした。

ご講演の後は、九州大学大学院で政治学を学ばれている小幡あゆみさんと当会の原田美紀会員が登壇され、田村先生とのパネルディスカッションをしていただきました。

まず、小幡さんから、ご自身をはじめ学生の皆さんがどのような問題意識から安保法制反対の運動を展開していったのかということ等をお話しいただきました。

その後、原田会員にまとめていただいた会場からの質問事項について、田村先生と小幡さんにお答えいただきました。市民が声を上げる方法にはどのようなものがあるのかという質問に対して、田村先生が「メディアの良い記事や番組は、直接褒めて欲しい。現場の記者は、読者・視聴者から送られてくる手紙やメールに励まされている。」と答えられたことが、特に印象に残りました。

最後に、井下顕副会長より閉会のご挨拶をいただき、市民集会は、盛会の内に終了しました。

その後、30度近い暑さにもかかわらず、多くの会員・市民が参加して、中央市民センターから北天神まで1時間弱にわたってパレードを行い、沿道を行く人々に対し、安保法制の違憲性をアピールしました。

弁護士会による憲法違反の安保法の廃止を求める運動に、一会員として、今後も関わっていかなければならないという思いを強くした一日となりました。

給費制維持緊急対策本部だより 『ベンゴマン』手に取ってみてください!

カテゴリー:月報記事

会員 國府 朋江(65期)

ビギナーズ・ネット(注:給費制復活を目指す大学生、法科大学院生など当事者が組織し、給費制の復活のために活動している団体です。)が漫画家の矢島光さんと一緒に「ベンゴマン」という本を出したのをご存じですか?この本は、給費制復活運動の一環としてビギナーズ・ネットがクラウドファンディングを利用して作成したものです。

主人公の68期修習生雨宮さんが弁護修習先の指導担当の竹崎弁護士とボケたりつっこんだりする中で、自然と給費制の廃止とその弊害を解説してくれています。先輩弁護士のインタビュー、給費制の意義や貸与制の弊害についての説明、ビギナーズ・ネットの活動の紹介、給費制廃止違憲訴訟の取り組みの説明、当事者の声、などなど、給費制に関する情報が1冊にまとまっています。

漫画という体裁をとっていますが、この本は給費制復活を目指し、給費制廃止問題についてもっと多くの方々に知っていただくことを目的とした『真面目』な本です。そして何より法曹となることを目指す若者たちが、給費制が廃止されてしまったことで直面している様々な困難があること、その困難にも負けずに法曹となることを目指している若者たちの熱く真摯な姿勢を感じていただける内容のものと思います。

プロの漫画家による漫画「ベンゴマン」のおかげで、ポップな見た目の仕上がりとなっておりますので、色々な人に手に取ってもらいやすいものになっていると思います。価格は900円+税です。売り上げはビギナーズネットの活動費として、ビギナーズネットのトレードマークの青いTシャツ(国会議員の間では『青T』として有名です。)を着ての議員会館前での朝のあいさつ運動や国会議員との面談・意見交換などの様々な活動を下支えするものとなります。給費制の問題を多くの人に知ってもらうツールとして、またビギナーズ・ネットの活動の支援のため、是非ご購入・ご活用くださいますようお願いいたします。

問い合わせ先 ビギナーズ・ネットHP
http://www.beginners-net.org/

大規模災害時における弁護士会の活動について

カテゴリー:月報記事

災害対策委員会 松尾 朋(64期)

第1 はじめに

会員のみなさまにおかれましては、平成28年熊本地震における熊本県弁護士会並びに大分県弁護士会の活動の支援にご協力いただきまして、誠にありがとうございます。

以下では、平成28年熊本地震における弁護士会の活動を簡単に説明します。

第2 被災地弁護士会の活動メニュー
1 熊本県弁護士会の準備した支援のメニュー

まず、平成28年熊本地震においては、熊本県弁護士会が準備した被災者支援のメニューは次のようになっています。

  • 無料電話相談
  • 出張面談相談
  • 自然災害債務整理ガイドラインの窓口設置と相談会
  • 震災ADRの開設

となっています。

以下、それぞれの支援の実施状況について少し詳しく述べます。

2 支援活動の実施状況

(1)無料電話相談

ア 電話相談の概要について

無料電話相談は、4月25日(月)に2回線体制で開始しましたが、回線が常時パンク状態だったため、同28日からは5回線に増やして実施することとしました。

また当初は、熊本県弁護士会のみが担当し、土日は開催しないこととしていましたが、GW中にも実施すべきとの意見が多く、同29日には祝日ながらも実施、5月2日~同5日には当会から支援の弁護士を派遣する形で実施しました。

同7日からは東京三会に電話を転送することで熊本会の負担を減らすことが可能となり、同13日からは更に2回線を増加させ、当会と大阪弁護士会へと転送することが可能となりました。

現在は、土日を含み毎日実施しています。

電話相談の体制は、午前10時から16時まで、平日は7回線(熊本:福岡:東京:大阪=1:1:4:1)、土日は5回線(熊本:福岡:東京:大阪=0:1:3:1)となっています。

6月13日までの相談総数は、4051件です。震災当初は、一日の相談件数が150件を超えることもありました。相談件数は徐々に落ち着いてきてはいますが、現在でも、一日に平日は60件以上、土日は30件程度が寄せられています。

イ 相談内容について

電話相談に寄せられる相談として最も多いのは、不動産賃貸借(借家)に関する相談です。簡単にまとめると、震災により借家の一部が損壊したことについて、立ち退きに関するもの、貸主の修繕義務に関するもの、家賃の支払いに関するもの、解約を前提として敷金返還に関するもの、立退料に関するものなどの相談が寄せられています。もっとも貸主と借主が対立している例としては、貸主が全く修繕をしてくれない上に家賃は全額払ってほしいと言っているがどうしたら良いのかというものがありました。

また、次に多い相談が、工作物責任と相隣関係に関する相談です。すなわち、揺れによって、瓦やブロック塀等の工作物が壊れて隣地を侵害していることに関するもの、当該瓦やブロック塀が隣地の所有者の動産等を損壊してしまった場合の損害賠償に関するもの等です。多かったのは、家の屋根瓦が隣家のガレージに落ちかけたことで、隣家の車両を傷つけてしまったというものでした。このような場合に、車の修理代は誰が持つべきなのかというもので、状況としてはこれから交渉前の方から既に交渉が決裂した方までいらっしゃいました。一方で、近所では被害がないのに自分の家の屋根瓦だけが落ちたのは、欠陥住宅なのではないかという相談もありました。

これに加え、災害時の相談業務の重要な機能として、被災者に対する情報提供があります。災害時に利用できる公的支援制度を、平時から市民の方が理解していることは通常ないことから、被災者が利用できる様々な制度を説明し教示することも重要な機能なのです。公的支援制度に関する相談としては、罹災証明の交付に関するもの、応急修理についてのもの、被災者生活再建支援制度に関するもの等様々なものがあります。これらの制度は、災害の規模等により、刻々と運用が変わることもあるため、常に情報に接し、アップデートする必要はあります。

(2)出張面談相談について

出張面談相談については、熊本県弁護士会においても集計が間に合っておらず、相談数等は不明なところです。相談場所は、益城町総合体育館等の避難所や、阿蘇市役所、熊本市役所をはじめ、その他市町村の庁舎や商工会、商工会議所です。

熊本県弁護士会では、毎週50人を超すような人員を配置しなければならない状況にあり、熊本県弁護士会への負担は相当大きくなっているようです。

ただ、相談の依頼のタイミングや直受の問題等があり、他会への支援要請ができないのが実情とのことです。

(3)自然災害債務整理ガイドラインの運用について

熊本地震クラスの災害になると、住宅ローン等の債務整理も重大な問題となります。ガイドラインの概要については、当会のHPにも研修会のDVDや資料を掲載していますので、そちらを参照して下さい。ここでは、現時点におけるガイドライン利用の実情について簡単に述べます。

6月14日現在、熊本県弁護士会における登録支援専門家登録名簿の登録数は107人、一方で全銀協からの登録支援専門家の委嘱依頼は118件来ており、既に登録支援専門家名簿に登録されている全ての弁護士に委嘱が来ている状況です。

今後、最終的には1000件程度の委嘱依頼があるのではないかと予想されており、熊本県弁護士会のみでの対応が可能なのかは疑問がもたれています。

現状では、ガイドラインの実施要綱上の問題から熊本県弁護士会の弁護士を委嘱するしかない状況のため、熊本、福岡、仙台、日弁連と全銀協との間で改善策の検討をしているところです。

(4)震災ADRの開設について

熊本県弁護士会では、平成28年5月26日に震災ADRを開設しました。

上記の電話相談の内容から分かるとおり、相当数の相談は近隣トラブルに分類されるものです。このため、法的な義務がどちらにあるのかということだけでは解決できないことが多く、電話相談で回答する場合でも、民法や借地借家法上はどうなっているかという一般的なことはお伝えできますが、結局のところ、「隣家の方と相談してみて、それでもダメなときは弁護士の面談相談を受けて下さい」というしかありません。

このような状況から、震災関連相談の多くは、調停等の話し合いで解決することが望ましいというべきです。

熊本県弁護士会の震災ADRでは、申立手数料が無料、成立手数料も場合によっては通常の半額となるように設定されています。

震災ADRは、東日本大震災の際に仙台弁護士会で開設されたものがあり、紛争解決の受け皿となってきたという経緯があります。熊本県弁護士会の震災ADRも、被災者間の紛争解決の受け皿となることが期待されています。(仙台弁護士会の震災ADRの詳細については、仙台弁護士会紛争解決支援センター『3.11と弁護士 震災ADRの900日』(一般社団法人金融財政事情研究会 2013)を参照して下さい。)

第3 当会の活動
1 当会独自の活動

当会では、平成28年熊本地震以降、福岡県内の被災者、熊本県内からの避難者があることを想定し、4月25日より震災関連相談で法律相談センターを利用する場合には、希望に応じて相談枠を60分に拡大するとともに、相談料を無料とすることとしました。

6月14日までに各センターに寄せられた震災関連相談は17件となっています。

2 支援弁護士会としての活動

支援弁護士会は、被災地弁護士会からの支援要請に応じて、支援を行うことになります。

今回は、現に、熊本県弁護士会が準備した被災者支援活動の上記のメニューの全てにおいて、当会への支援を要請するかもしれないとの事前の連絡を受けていたところです。

現時点では、電話相談を支援することのみ行っていますが、場合によっては、自然災害債務整理ガイドラインにおける支援も考えられるものと思われます。

また、現時点での当会における支援へのご協力につきましても、可能であればもう少し多くのみなさまにご協力いただければ幸いでございます。

多くの会員の皆様に電話相談をご担当いただくことにより、被災者の方々が置かれている状況を知っていただき、息の長い支援が可能となることと思います。また、支援により、今後、福岡県内で災害が発生した場合にも必ず役に立つ知識や経験となるものと考えております。

なお、初めて担当される方が、手ぶらで会館にいらっしゃっても対応していただけるよう、様々な資料等を準備しておりますので、是非とも熊本県弁護士会の支援活動へのご協力をよろしくお願いいたします。

憲法リレーエッセイ ひまわり一座の憲法劇

カテゴリー:憲法リレーエッセイ

会員 牟田 功一(67期)

1 はじめに

今年も、憲法記念日を前にした5月1日、中央市民センター大ホールにおいて、ひまわり一座による憲法劇「時をつくる人々」の公演が行われましたのでご報告させていただきます。

2 憲法講演

まず、憲法劇を開演する前に、井下顕先生に憲法の意義を踏まえ、安保関連法が可決されるに至った経緯、安保関連法が制定されたことで懸念される事態等を解説いただき、安保関連法が立憲主義、恒久平和主義に反すると考えられることについてご講演いただきました。井下先生が講演されている間、私は憲法劇の出番を待ち舞台裏で待機していました。私自身、初めての演劇ということもあって極度の緊張状態にありましたが、井下先生が訴えられた、「立憲主義とは、『法律及び政治は憲法に反してはならない』という要請(消極的側面)のみならず、憲法の存立危機が生じた場合には『憲法に基づく政治をする』という積極的な側面(積極的立憲主義)を持って」いるという言葉がとても印象的でした。あわせて、「積極的立憲主義を実現するには政治に無関心にならず選挙に行くこと」の大切さが訴えられました。

劇中では、政治に無関心な大学生がある特殊な世界に巻き込まれ、その世界で種々の理不尽な出来事を目の当たりにし、最後には、自ら率先して選挙に行こうとする姿勢が描き出され、井下先生のご講演と憲法劇が一体となって「積極的立憲主義」「選挙」の重要さを訴えることができたのではないかと思っております。

3 憲法劇公演

今年は、政治に無関心な大学生が未来にタイムスリップする場面から始まりました。タイムスリップした未来では、テロの脅威のもと、国家が国家緊急事態を宣言し、権限が集中した国家が徹底した情報統制、公安警察の権限強化を政令に基づいて行う事態が生じていました。その渦中に巻き込まれた大学生が、基本的人権が無いに等しい社会の様々な事象を目の当たりにし、そのような理不尽な社会を作り出さないため、若い世代が選挙に無関心になってはいけないという決意が萌芽するという内容の演劇でした。劇中では、ジョン・レノンが発表した「(All we are saying is) give peace a chance」を歌い、また、最後には9条の歌を来場者と一緒に歌いました。会場は平和を望む劇団員及び来場者の歌声で熱気に包まれ、その熱を冷ますことなく、劇団員と来場者はそのまま一体となり天神の警固公園までパレードを行いました。

4 さいごに

劇中には、「俺たちが政治に無関心でも、政治の方は俺たちに無関心じゃない。」「私たちに訪れる時は、私たちが考えて、私たちの責任でつくるの。」という台詞がありました。この台詞は、井下先生が訴えられた積極的立憲主義を考える重要な視点だと思います。憲法を勉強したことのない人にとって、憲法論は抽象的であり、なかなか関心が持てないのではないかと思われますが、憲法劇は憲法の存在意義を市民の方々に分かりやすく伝えることを目的としています。

ひまわり一座は、弁護士や市民の方が、経験・未経験を問わず一緒になって自作の憲法劇を作る劇団です。演劇に興味のある方々は是非ご参加下さい。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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