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精神保健当番弁護士制度発足25周年記念公開シンポジウム 「オープンダイアローグが日本の精神科医療にもたらすもの」 ~地域精神科医療の推進に向けて~

カテゴリー:月報記事

精神保健委員会委員 原口 圭介(63期)

1 はじめに

2018(平成30)年2月24日、福岡市中央区天神・福岡ビルにおいて、精神保健当番弁護士制度発足25周年記念公開シンポジウム「オープンダイアローグが日本の精神科医療にもたらすもの」~地域精神科医療の推進に向けて~が開催されました。

医療・福祉関係者、弁護士、当事者ら合わせて約140名が参加し、近時、注目を集めている「オープンダイアローグ」に対する関心の高さがうかがえました。

2 オープンダイアローグとは?

(1) ここで、オープンダイアローグについて、簡単な紹介を試みたいと思います。

オープンダイアローグは、急性期精神病における開かれた対話によるアプローチと言われます。発祥は、フィンランドの西ラップランド地方です。薬物をできるだけ使わない対話による治療法として、同地方において、1980年代から導入されました。統合失調症による入院の減少、入院治療期間の短縮などのエビデンスを蓄積し、フィンランドの同地方では、公的な医療サービスに組み込まれています。日本でも2013年頃から、これまでの精神科医療の枠を打ち破るものとして注目を集めています。

(2) その特徴をいくつか列挙しますと、

  • 本人抜きではいかなる決定もなされない。
  • 依頼があったら24時間以内に本人・家族を交えて初回ミーティングを開く。
  • 治療対象は最重度の統合失調症を含むあらゆる精神障害をもつ人。
  • 薬はできるだけ使わない。
  • 危機が解消するまで、毎日でも対話をする。
  • テーマは事前に準備しない。スタッフ限定のミーティングなどもない。
  • もちろん幻覚妄想についても突っ込んで話す。
  • 本人の目の前で専門家チームが話し合う「リフレクティング」がポイント。
  • 治療チームは、クライアントの発言全てに応答する。

などです(斎藤環著+訳「オープンダイアローグとは何か」医学書院より引用)。

(3) 我々福岡県弁護士会精神保健委員会は、昨年夏、北海道浦河町「浦河べてるの家」(精神障害等を抱えた当事者の生活共同体)の研修に参加しましたが、研修の一つとしてオープンダイアローグの実践に触れ、その内容に衝撃を受けました。その高揚感冷めやらぬままに、このテーマでのシンポジウムを企画したものです。

3 基調講演

(1) シンポジウムでは、日本でのオープンダイアローグの普及を担っている「オープンダイアローグネットワークジャパン(ODNJP)から、西村秋生さん(医師/だるまさんクリニック)、矢原隆行さん(教授/熊本大学大学院社会文化科学研究科)をお招きし、オープンダイアローグの7つの原則 について、講演していただきました。

(2) 特徴的だったのが、お2人が掛け合いのように、1つずつの原則について内容を確認していくかたちで、講演をされたことです。オープンダイアローグには、厳密なマニュアルのようなものがあるわけではありません。それは単なる「技法」ではなく、その本質は、対話実践の考え方といったものです。そのようなわけで、オープンダイアローグの7つの原則についても、人によって答えは違うことがありえます。その観点から、まさに開かれた対話形式によって、答えを作り上げていくという手法が取られ、大変興味深いものでした。

(3) 下記にご紹介する7つの原則の考え方は、医療機関に限らず、福祉、教育、そして我々のフィールドである司法(特に刑事事件、家事事件、そして退院請求事件でしょうか)など、あらゆる対人支援の現場で応用することが可能と言えそうです。特に重要な⑥と⑦については、お2人の発言とともに紹介します。

① 即時対応(Immediate help)

→必要に応じて直ちに対応する。

② 社会的ネットワークの視点を持つ(A social networks perspective)

→クライアント、家族、つながりのある人々を皆、治療ミーティングに招く。

③ 柔軟性と機動性(Flexibility and mobility)

→その時々のニーズに合わせて、どこででも、何にでも、柔軟に対応する。

④ 責任を持つこと(Responsibility)

→治療チームは必要な支援全体に責任を持って関わる。

⑤ 心理的連続性(Psychological continuity)

→クライアントをよく知っている同じ治療チームが最初からずっと続けて対応する。

⑥ 不確実性に耐える(Tolerance of uncertainty)

→答えのない不確かな状況に耐える。

(西村さん)
決まらないことの苦しさに耐える。

(矢原さん)
私は「耐え」たくない。Toleranceとは、寛容とか包容。専門家が答えを出すのではない。多様な声(ポリフォニー)をそのまま置いて並べていき、必要な答えを本人が選んでいく。

(西村さん)
矢原さんの考えを教えてもらってよかった。

⑦ 対話主義(Dialogism)

→対話を続けることを目的とし、多様な声に耳を傾け続ける。

1 詳細は「精神看護」2018年3月発行(通常号)(Vol.21 No.2)の特集「オープンダイアローグ対話実践のガイドライン(医学書院)。

(西村さん)
対話を続けることが目的。

(矢原さん)
治ろうが治るまいが対話を続けることが大事。対話の本質はスキルではない。フィンランドツアーを組んで学びに行くようなものでもない。

(4) 特に、「不確実性に耐える」については、弁護士が最も苦手とするところというのが参加弁護士の共通認識でした。しかし、この観点は、勝ち負けを決める必要のない成年後見業務などおいて、参考になりうると感じました。また、当事者のご家族からの発言で、「不確実性に耐える」という考え方が大きな収穫だった、気持ちが楽になったというものがありました。

4 精神保健当番弁護士25周年の歩みと取組み

(1) 続けて、福岡県弁護士会精神保健委員会委員長鐘ヶ江聖一会員より、現在、精神保健当番弁護士名簿登録者数は402名であり、概ね順調に運用されている等の報告がありました。

(2) 九州弁護士連合会精神保健に関する連絡協議会副委員長橘潤弁護士(宮崎県弁護士会)より、現在、九弁連管内のすべての単位会で精神保健当番弁護士制度が実施されている等の報告がありました。

5 パネルディスカッション

(1) 続けて、八尋光秀会員をコーディネーターとしたパネルディスカッションが、西村さん、矢原さんに加え、和田幸之さん(こころの病の患者会うさぎの会会長)、楯林英晴さん(医師/福岡県精神保健福祉センター所長)、森豊会員の5名にて行われました。

(2) 和田さんより、奥様が措置入院となった際、頼れる社会資源がなかったことのエピソードや、オープンダイアローグも入院中心の精神科医療の中で骨抜きにされる可能性があることなどが語られました。

(3) 楯林さんより、福岡県精神保健福祉センターの活動(保健所の支援、家族及び支援者の研修会、精神医療審査会、クライシスプラン、病院と地域の連携推進など)について、報告がありました。

(4) 森会員より、入院医療中心から地域生活中心へと謳った平成16年の精神保健医療福祉の改革ビジョンの実現は現状ではほど遠いこと、オープンダイアローグはその起爆剤となりえ、特に急性期の患者に対する非自発的入院治療の必要性の判断を適正な判断に変えていく契機となって、非自発的入院の減少につながりうること、などが語られました。

(5) パネルディスカッションの後半で、矢原さんより、この度、精神医療とは直接は関係のない弁護士会からオープンダイアローグについての講演依頼が来たことで、オープンダイアローグの普及を実感するとともに、ブームとして終わってしまうのではないかと心配になったとのお話がありました。日本において、どこまでオープンダイアローグの拠点を作っていけるか。あくまでフィンランドはフィンランド。土地によって文化は違い、その土地なりの実践がある、とのことでした。

6 閉会あいさつ

九州弁護士連合会精神保健に関する連絡協議会委員長野林信行会員より、閉会のあいさつとして、今日の参加者が今日学んだことを自身の現場で実践していきましょうとのことばがありました。

思うに、日本において、オープンダイアローグは、まだ緒についたばかりです。オープンダイアローグは、薬物と入院をできる限り遠ざけようとする治療法ですから、現在の精神医学界において積極的に受け入れられることは考えにくいです。しかし、オープンダイアローグの考え方を知った今日の参加者は、普及するまで、まさにその不確実性に耐え、その有効性を実践によって地道に確かめていくことが求められたと思います。

犯罪被害者の支援条例制定へ! ~犯罪者支援シンポジウム「犯罪被害者支援条例を考える(第2回)」~

カテゴリー:月報記事

会員 德永 由華(64期)

1 犯罪被害者支援条例で支援が具体化!

2017年12月19日、アクセス良好の天神ビル会議室にて福岡県弁護士会主催シンポジウム「犯罪被害者支援条例を考える(第2回)」が開催されました。同年7月の第1回に引き続き、半年もしないうちに同じタイトルで第2回を開催するということからも、犯罪被害者支援条例が福岡県で制定される機運が非常に高まっていることがお分かりいただけると思います。ちょうどシンポジウムから1か月後の今年1月19日、西日本新聞朝刊一面でも、”早ければ今年3月に福岡県議会へ犯罪被害及び性被害の2本立てで被害者支援条例案が提出される”旨の報道もあったところです。

そもそも第1回のシンポジウムは、2004年に犯罪被害者等基本法(以下「基本法」といいます。)が制定され、2013年3月に「福岡県犯罪被害者取組指針(2017年4月改定)」が策定されたものの、未だ犯罪被害者及びその家族又は遺族(以下「犯罪被害者等」といいます。)に対する支援が十分であるとはいえない現状を踏まえ、充実した犯罪被害者等に対する支援のための福岡県条例制定に向けた啓蒙活動の一環として開催されたものです。

当日は、多数の市民や役場の被害者支援担当者のほか、当会会員も参加し、テレビ・新聞などのマスコミも多数参加する中、会議室は程良い緊張感に包まれました。

当会会長作間功弁護士の挨拶により開会となる予定でしたが、あいにく、急用で出席は叶わなかったものの、丁寧なメッセージを寄せていただき、当日司会だった私が代読しました。作間会長のメッセージは、第1回シンポジウムに引き続き、弁護士会が日本最大の人権NGOとして、立法活動を支えることは法律の専門家集団としても大きな意義があることに触れるなど、大変力強いものでした。

2 第1部 犯罪被害者支援条例の解説

第1回シンポジウムでも好評だった当委員会副委員長林誠弁護士の犯罪被害者支援条例についての解説は、基本法及び地方自治法から、地方公共団体が犯罪被害者等に対する具体化支援の役割を担うべきであることを確認したうえ、基本条例のみでは担当窓口が継続される保証はなく、担当者次第で支援が細切れになってしまい、現実には犯罪被害者等の方々が役所へ問合せに行ってもたらい回しにされ長時間待たされた挙句「分る者がおりません」と言われたとのエピソードも交え、犯罪被害者支援条例の必要性が指摘されました。

第1回シンポジウムパネリストの佐藤悦子氏の尽力により、大分県でも佐賀県に続いて犯罪被害者支援条例が制定され、内容としても市町村が支援金支給し、県が助成することを含めて制定されるなど、充実した条例が制定されたと報告がなされました。特に、福岡県は性犯罪認知件数が全国第3位、人口割合では第2位と件数・犯罪率とも特に高いため、犯罪被害者支援条例制定が急務であるとのことでした。

また、神奈川県の犯罪被害者支援条例等の実例を交え、現実的で、かつ犯罪被害者等が求める条例モデル案を叩き台にして、あるべき福岡県の犯罪被害者支援条例について丁寧に講義がなされました。

3 パネルディスカッション

後半は、犯罪被害者遺族2名と当会会員で児童相談所常勤弁護士の久保健二会員、当委員会委員長の藤井大祐会員、同前委員長の世良洋子会員をコーディネーターとしてパネルディスカッションが行われました。

被害者遺族の古賀敏明氏から、婚約直前のご子息が大阪で通りすがりの男2名から暴行を受けて死亡したものの、犯人は分らず、懸賞金300万円をかけご子息友人達の協力を得て探し出し、2名とも刑事裁判では実刑となったこと、しかし、民事裁判で合計8900万円の損害賠償請求を認める判決が確定したのに、ほとんど支払いはなく、時効完成前に自費で再提訴を余儀なくされ、やはり支払いはほとんどなされていないと、なんともやるせないお話がありました。また、弁護士探しにも心当たりがなくて苦労したそうです。

久保健二会員からは、児童相談所に常勤する中での児童に対する性加害の実態、認知が困難であること、被害児童が何度も同じことを聞かれて疲弊すること等の対処の困難さについて報告がありました。特に、性加害を認知した大人の対応として気をつけるべきこととして、「親が実子に性加害をするわけない」「男子は性加害の被害者にならない」等との偏見から、被害児童が勇気を出して告白しても逆に疑われる等の二次被害が生じている等の指摘がありました。

被害者遺族のもうお1人は、前回シンポジウムでも事例報告をしてくださった山本美也子氏でした。山本氏は、飲酒運転で当時高校生の息子さんを亡くされ、福岡県の飲酒運転撲滅条例制定へ尽力され、報道等でもご存じの方も多いと思います。講演活動(既に約900回にもなるそうです!)や被害者等でつながりを持つなかで、様々な犯罪被害者の方々の状況を知るようになったそうです。特に性被害では、人には言えなくとも髪をむしったり学校に早朝から遅くまでいる等のSOSは出していたケース、幼少の頃の性被害について子育てするようになって苦しめられるようになった母親等、被害に終わりはないようです。また、犯罪被害者は犯罪の性質や状況により、様々であり被害者同士であっても安易に声をかけられず、地方自治体の専門窓口による継続的な支援の必要性を指摘されました。

藤井大祐会員からは、依頼者が犯罪被害者の場合に、無保険の交通事故など損害賠償の回収が難しいケースのほか、児童に対する性加害には社会資源として一般には重要な家族に期待ができないことの深刻さを指摘され、弁護士業務の視点からも地方自治体による支援制度としての犯罪被害者等の条例による救済が必要との指摘がありました。

様々な視点から、コーディネーターの世良洋子会員が、上記のような様々なエピソードを引き出し、犯罪被害者支援活動を継続してきた同会員だからこそ、「犯罪被害者支援条例は悲願です」との言葉には非常に重みがありました。

4 おわりに

犯罪被害者やその遺族の方々は、犯罪被害に遭うまでは普通の生活を送ってきた方々ばかりです。私が、あなたが、今日、被害者になるかもしれません。また、性被害の暗数の多さは想像に難くありません。犯罪者の権利擁護を率先してきた弁護士ですが、犯罪被害者に寄り添うことも少数者の人権擁護に不可欠です。

既に、福岡県議会でも犯罪被害者支援条例の制定に動きつつありますので、ぜひ当会会員の経験や意見を反映させ、より良い被害者支援へ役立てていきたいものです。どうぞ今後とも犯罪被害者支援条例制定へのご支援、ご意見をお寄せください。

あさかぜ基金だより ~あさかぜを卒業します~

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弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 弁護士 若林 毅(68期)

3月から対馬へ

あさかぜの弁護士は、およそ2年の養成を終えたあと、九弁連管内の弁護士過疎地域で弁護士として活動することとなります。私が入所してから3名の先輩弁護士が養成を終え、弁護士過疎地域で活躍されていますが、いよいよ私もあさかぜから巣立つこととなりました。2月末であさかぜでの養成を終え、3月から長崎県の対馬ひまわり基金法律事務所の後任所長として弁護士過疎地域での活動をはじめます。任期は2年の予定です。

あさかぜでの日々

およそ2年間の養成期間は、あっという間に過ぎていきました。私が公設事務所の中でもあさかぜに入所を希望したのは、多くの経験豊富な先輩弁護士と一緒に事件を担当でき、事務所経営も学べ、弁護士として大きく飛躍ができる環境にあると思ったからです。

実際にあさかぜ基金では、数多くの民事・家事・刑事の事件を、多くの先輩弁護士と共同受任でき、およそ2年の養成期間でたくさんの得がたい経験を積むことができました。特に、少年や両親に対する医師によるカウンセリングの設定、両親以外の親族の協力、学校や仕事先との調整など、指導担当の先輩弁護士と環境調整に尽力し再抗告まで争った少年事件や、外国人の子の引渡し事件などが印象に残っています。また、あさかぜでは、扶助事件の相談・受任、当番弁護士の出動・受任、国選弁護、破産申立事件など公設事務所で必ず求められる事件を数多く経験することができました。さらに、あさかぜ委員会を通じて、キャッシュフローデータを意識した事務所経営、事件処理(相談の受け方、受任率の向上、依頼者とのトラブル防止など)、ホームページ等の広報、事務職員の労務管理などについても学びました。これらの経験は、弁護士過疎地域である対馬における活動にも必ず役立つものと思います。

対馬ひまわり

対馬ひまわり基金法律事務所は2005年10月に開設された公設事務所です。井口夏貴弁護士、伊藤拓弁護士、青木一愛弁護士に続き、あさかぜで養成を受けた弁護士が4代連続で所長として活動することとなり、私で6代目の所長となります。島には、ひまわり基金の弁護士1名のほかに、法テラスのスタッフ弁護士1名が常駐しています。

離島である対馬においては、九州本土と異なり、島内に身近に相談できる弁護士がいなければ、法的ニーズを広く汲み取ることが難しくなります。また、島内だけで生活圏が完結しているため、人と人とのつながりが濃密で人の目を気にして弁護士への法律相談を控えてしまう人も多いと思われます。そうした離島特有の事情を少しでも改善し、島の身近な弁護士として法の支配を広く根づかせる手助けをしたいと思い、対馬を希望しました。弁護士へのアクセスの問題は、歴代の所長が築いてきた行政や福祉とのつながりをより密にすることや、各種の講演や広報活動等を通じて、事務所の存在を広く知ってもらい、気軽に相談できるように工夫することで解消していきたいと思います。

対馬の魅力

対馬は面積の9割が山林を占める自然豊かな島です。国の天然記念物に指定されている原始林や、リアス式海岸など勇壮な自然が広がっています。また、国の天然記念物であるツシマヤマネコや、渡り鳥など動植物もたくさん生息しています。人口はおよそ3万人。福岡からは飛行機で35分(1日4往復)、高速船で2時間強(1日2往復)で行くことができます。島の北端から韓国の釜山まではおよそ50キロしか離れていません。朝鮮半島に近い地理的条件から、古くから大陸と日本を結ぶ中継地として朝鮮半島との交流が盛んに行われていたため、書物・仏像・建造物・古墳などの文化財が多く残されています。また、砲台跡が島に31カ所もあり、対馬が古くから国境の島であったことを想起させます。青く澄んだ海の景色とともに、シーカヤックや釣りを楽しむこともできます。

対馬に来られたときは、ぜひ事務所にお立ち寄りください。

むすびに

私は、あさかぜを卒業しますが、これからはあさかぜや福岡県弁護士会で経験したことを活かして、対馬の人々のために力を尽くします。あさかぜ所員の弁護士は、弁護士過疎問題解消への思いを抱きながら、日々研鑽を積んでいます。引き続き、ご支援ご協力をいただきますよう、よろしくお願いします。

最後に、あさかぜ委員会をはじめとする会員の皆様方にはたいへんお世話になりました。ありがとうございました。

創業支援研修会 ~中小企業診断士・梅山香里さんを講師に招いて~

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中小企業法律支援センター委員 松村 達紀(65期)

1 創業支援研修会の開催について

中小企業法律支援センターでは、国家戦略の一つでもある創業支援において、各会員が十分な力を発揮することができるよう各種研修会等を企画しており、これらの活動の一環として、平成30年1月29日(月)、中小企業診断士である梅山香里さんを講師にお招きし、「創業支援」をテーマとしてご講演いただきました。

今回の研修会は、1月中旬までに参加申込みが定員に達するなど、会員の関心が非常に高いことが窺われ、当日は雪も散らつく寒空であったにもかかわらず、会場は満員御礼、熱気ある中で始まりました。

2 創業支援について(創業との関わり方)

(1) 講演会は、主として、(1)中小企業診断士の業務内容の紹介、(2)創業と創業支援に関する動向の紹介・分析、(3)創業支援の実例の紹介の3本立てで行われました。

中小企業診断士の業務内容の紹介においては、まず始めに、中小企業診断士の資格概要を説明いただきました。その後、中小企業診断士として、中小企業の経営に関するアドバイスを行う中で、弁護士・公認会計士・税理士・弁理士・社労士等の各専門家への橋渡し的な役割を果たしていることや、これらの役割を円滑に行うために、各専門家との連携を進めていることの紹介がありました。

また、平成29年に福岡県中小企業診断士協会が中小企業診断士養成機関に登録されたことにより、中小企業診断士試験第1次試験に合格し、この養成課程を修了すれば、第2次試験を省略して中小企業診断士としての登録が可能となったことが紹介されました(これまでは養成機関が九州になかったため、養成課程を経るためには東京等のその他の地域に行くほかなかったそうです。)。

(2) 創業と創業支援に関する動向の紹介・分析においては、我が国における開廃業の現状や男女別・年代別の起業家数等の説明がなされました。また、他国と比較して開業率が低い理由の分析として、創業に当たってのハードル(障害)等の説明がなされ、あわせて創業者が直面しやすいリーガルリスクの紹介がなされました。

【創業におけるリーガルリスク】
  • HPリース契約によるトラブル
  • 契約書不備に起因するトラブル
  • 知的財産権に関する諸問題
  • 融資、経営者保証に関する諸問題
  • 共同創業者とのトラブル(安易な協業)
  • 労務管理に関する諸問題
  • 情報管理、情報漏えい
  • 廃業に関する諸問題

開業率の分析にあたっては、起業に関する相談相手がいないことが問題である点が指摘されましたが、その場で使用された統計データにおいては、相談相手として(税理士・公認会計士は挙げられている一方)そもそも弁護士は挙げられておらず、ビジネス構築段階における相談である以上、多少役割が異なる点はあるのかもしれませんが、残念ながら、現時点において、弁護士は十分な関与ができていないことを痛感いたしました。また、リーガルリスクの紹介においては、会員にとっては当たり前・自明なリスクであったとしても、創業者にとってはそうでないことも多数あり、創業段階から弁護士が関与し、サポートすることの重要性を改めて実感いたしました。

(3) 最後に、創業支援の実例の紹介においては、創業相談として、相談を持ち込まれることの多いテーマの説明がなされるとともに、相談実例をもとに、具体的にどのような事項をヒアリングし、アドバイスしていくのか、簡単に実例紹介がなされました。事業展開を検討することで見えてくるリーガルリスクもあることから、弁護士においても、ビジネスモデルや経済情勢等にアンテナを張っておく必要があると感じました。

3 おわりに

今回の研修は、18時から20時までの2時間だったのですが、初めから終わりまで終始各会員が熱心に臨んでおり、冒頭にも記載いたしましたが、「創業」に対する関心の高さを改めて感じました。

また、「創業」と一言で表現されたとしても、ビジネスの中身は様々であり、また、創業者ごとに準備のレベル(状況)やリスクの程度は、大きく異なるものと思います。国家的に「創業」が盛り上がっている中、トラブル等により失敗に陥る創業者を防ぎ、より多くの創業の成功への一助となるためにも、当センターとしては、各専門家との連携を深めつつ、早期の段階で創業にタッチし、多くの創業者のサポートを行えるよう、活動を続けてまいりたいと考えております。

公金の債権回収業務に関する法務研修(福岡開催)の実施報告 ~行政連携に関する新たな取り組みとして~

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弁護士業務委員会 福山 聖(64期)

1 はじめに

平成30年1月26日(金)午前10時~午後5時、電気ビル共創館3階A会議室において、総務省行政管理局公共サービス改革推進室と当会が主催、日弁連が共催し、九州全域(沖縄を除く)の自治体職員を対象として、「公金の債権回収業務に関する法務研修」を実施しました。当日は、自治体職員106名、弁護士33名(他会含む)の方に参加いただきました。

公金債権は、強制徴収公債権(地方税等)のみならず、たとえば、母子父子寡婦福祉資金貸付金といった私債権等も含まれます。債権管理にあたっては、費用対効果という「効率性」の観点だけでなく、「公平性」・「平等性」等の観点や福祉的配慮等も考慮する必要があるという特徴も有しています。今回は、そのような債権の管理に関する本研修について、ご報告いたします。

2 研修について
(1) 総務省・各自治体・当会の取組報告等について

午前の部は、作間功会長の開会挨拶に始まり、総務省・福岡県・福岡市・中間市・当会の各公金債権回収業務に関する取組等について報告が行われました。各自治体の取り組みは、それぞれ工夫がなされており、たとえば、色付きの督促状を使用する等、私たちの業務でも参考になるものもありました。

当会の取組報告(報告者:当委員会森山大輔委員長)では、行政との連携メニュー(http://www.fben.jp/gyousei/)、任期付き公務員や当委員会の活動予定等について紹介がありました。

(2) 公金の債権回収に関する法令と実務(前編・後編)について

午後の部前半は、当委員会副委員長・日弁連自治体等連携センター委員の服部博之委員による2時間の講義が行われました。条文や裁判例集、資料を使用した講義は好況で、アンケートでは「全部参考になった」「もっと時間をかけて講義をしてほしかった」等、参加職員の9割以上から「参考になった」という結果をいただきました。

なお、当日の配布資料は、近日中に、総務省のホームページで公開予定ですので、ご覧いただけると幸いです。

(3) 意見交換会について

午後の部後半は、今回のメインイベントである意見交換会を1時間半、2会場に分かれ実施しました。意見交換会は、参加者が18グループに分かれ、各グループ6~8名の自治体職員に対し、弁護士が1~3名担当者として入り、自治体職員と弁護士(会)との間で、公金債権回収に関する自治体職員の日々の悩み等を共有し、交流することで、弁護士(会)との接点をもってもらう機会として実施しました。

参加職員、担当弁護士の双方から、充実した時間であったという感想を伺っており、当委員会では、公金債権管理に関する取り組みを始める良いきっかけになったのではないかと感じております。

3 懇親会について

同日午後5時30分からは、ビストロアトリにおいて、自治体職員の方も交え、懇親会を実施しました。自治体職員の方も14名出席され、研修に引き続き、交流を深める時間となりました。

4 最後に

今回、企画から実施までの約1年間、日弁連自治体等連携センター委員として、本研修を担当し、貴重な経験をさせていただくことができ、心から感謝しております。昨年4月、当委員会で、本研修について報告・提案をさせていただいてから、服部博之委員を研修責任者として、牟田遼介委員と共に本研修PTを組み、事前勉強会等を経て、研修実施に至るまでの間、甲斐田靖副会長、森山大輔委員長、当委員会の先生方、牟田哲朗先生や小野裕樹先生を筆頭とする当委員会外の先生方、他県の先生方、担当事務局の福井さんをはじめ、多くの方に、お力添えをいただきました。

そのお力添えのおかげで、無事に、盛況のうちに、本研修を終えることができました。参加者満足度の高い研修であったことは、アンケート結果からも明らかですが、研修終了後、自治体職員の方々から直接伺った感想や拝見した笑顔を通して、実感することもでき、貴重な体験となりました。

この場をお借りして、準備から実施まで、当方の至らぬ点多々あったことにつき、お詫び申し上げるとともに、多くの方にご協力いただけたこと、心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

当委員会では、本研修をきっかけに、新たな取り組みの一つとして、公金債権管理に関する自治体職員向けのメール相談等検討しております。今後も、行政連携の分野においても、弁護士をもっと身近に感じてもらえるように、弁護士を活用してもらえるように、努めてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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