法律相談センター検索 弁護士検索

中小企業法律支援センターだより 九州北部税理士会との事業承継研究会

カテゴリー:月報記事

中小企業法律支援センター 鬼塚 達也(71期)

1 研究会開催までの経緯

当会は、九州北部税理士会との間で、令和3年3月16日付で事業承継支援の連携に関する協定を締結いたしました。会員相互の交流と研鑽の場を提供することを目的として、事業承継に関する研究会を継続的に開催することを計画していたところ、新型コロナウイルス感染症のため開催延期を数度経て、ようやく令和5年6月1日に第1回事業承継研究会(以下「第1回研究会」といいます。)を開催することができました。

2 第1回研究会の内容

第1回研究会は、テーマを「事業承継(M&A)はこう考える!~弁護士の視点・税理士の視点~」として、弁護士池田耕一郎先生(当センター)及び税理士山田陽介先生(九州北部税理士会 中小企業対策部部長)から、事業承継(M&A)の心構え、他方士業に求めるものや他方士業が介入すべきタイミング等をご報告いただきました。
池田先生からご報告いただいた内容の一部を以下記載いたします。
・事業承継は特殊な分野ではない。話をとことん聞くことが重要である。
・弁護士が事業承継支援に携わる意義として、①事業承継のあらゆる場面に法律が関係すること、②対策をしなかったことによるリスクを知っているからこそアドバイスができること、③他方当事者との交渉を行うことが常に生じるところ、法律上交渉に関する代理業務ができるのは弁護士のみであることが挙げられる。
・事業承継に資する法的手段として、分散している株式等の集約方法(相続人等に対する売渡請求など)、先代経営者の保証債務の処理方法(経営者保証ガイドラインの適用)、遺留分の民法特例(除外合意・固定合意)などがある。
・事業承継支援は信頼できる士業との連携が必要不可欠である。

山田先生からご報告いただいた内容の一部を以下記載いたします。
・事業承継においては税務だけでなく財務支援を行う必要があり、税理士がかかわる意義がある。
・税理士は税額を抑えることを第一に考えがちであるが、無理な節税をしたことにより、株式の分散、過大な借入金、利益の圧縮がされ、事業承継のハードルが上がってしまうこともある。
・決算書を見て、(税引後利益+減価償却)と(長期借入金÷5年)を比較して後者が大きければ、その会社の資金繰りは苦しいはずである。
・事業承継は自力で解決できなとも周りの力を借りて解決できる協力体制が必要である。

中小企業法律支援センターだより(池田先生の写真)

3 第1回研究会後の懇親会

第1回研究会の後に懇親会を行いました。当センターから15名、九州北部税理士会から13名が参加し、大変賑やかな会になりました。私事ですが、偶然にも、懇親会に参加された税理士の方で、私の出身中学校の先輩が複数おり、地元の話で盛り上がりました。

4 今後の予定

第1回研究会及び懇親会が盛況であり、第2回研究会を開催予定です。ご興味のある方がいらっしゃいましたら、当センターの会員までお知らせください。

中小企業法律支援センターだより(山田先生)

中小企業法律支援センターだより スタートアップ企業におけるストックオプションの活用

カテゴリー:月報記事

中小企業法律支援センター 委員 白田 晴夏(75期)

1 はじめに

令和5年6月26日18時より、福岡県弁護士会館の大会議室301にて、司法書士の小牟田毅先生を講師にお迎えし、スタートアップ企業におけるストックオプションの活用についてご講演いただきました。会場でのリアル参加とWeb方式の併用で実施しましたところ、あわせて34名もの会員にご参加いただき、創業支援に関する関心の高まりを感じました。
以下、簡単ではございますが、小牟田先生のご講演の内容を報告いたします。

2 ストックオプションの活用

⑴ ストックオプションのメリット
ストックオプションとは、株式会社の従業員や取締役が、権利行使価格で自社株式を取得できる権利のことです。
では、なぜストックオプションがスタートアップで活用されるのかというと、それには大きく分けて三つのメリットがあるためです。
まずは付与対象者のモチベーションを向上させるというメリットがあります。自社の業績が向上することで株価も上昇するため、付与対象者の働きがリターンに繋がるという仕組みが生まれ、付与対象者は自社の業績を上げるという目標を持つようになります。
二つ目に、外部協力者との関係性を維持するというメリットがあります。スタートアップ企業では、従業員を雇用するのではなく、外部協力者に業務委託をすることも多いため、外部協力者との関係性維持のためにストックオプションを活用することが可能です。
三つ目に、優秀な人材の確保を容易にするというメリットがあります。ストックオプション制度があることで会社の将来性をアピールすることができ、優秀な人材を確保できます。また、付与対象者としては、ストックオプションを行使する前に退職すれば損をする可能性があることから、結果として従業員の退職を防止するという効果もあります。

⑵ ストックオプションの留意点
上記のように様々なメリットがあるストックオプションですが、ストックオプションを付与する際の留意点も三つ挙げられます。
一つ目に、付与対象者と付与数の基準を設けることです。付与対象者と付与数の決定方法が不明確であったり、付与数に明らかな差があったりすれば、不公平感から社内全体のモチベーションの低下に繋がるおそれがあります。
二つ目に、付与対象者が権利行使をした直後に退職する可能性があることです。会社の将来性をアピールして採用した人材の場合、付与対象者はストックオプションを行使することによる経済的利益を重視していることがあります。そのような付与対象者は、権利行使をして株式の売却益を得れば、すぐに退職するおそれがあります。
三つ目に、株価がモチベーションに連動していることです。ストックオプションの付与が付与対象者のモチベーションの向上に繋がるという点は上述したとおりですが、逆をいうと、会社の業績が低迷すると、付与対象者のモチベーションの低下に繋がるおそれもあります。

⑶ まとめ
ストックオプションのメリットを最大限に活用できれば、会社としては優秀な人材を確保し、業績を向上させることができる一方で、ストックオプションの留意点をおさえておかなければ、優秀な人材の流出や付与対象者のモチベーションの低下などの問題を引き起こすことになります。
弁護士は創業支援をするにあたり、これらの点を念頭に置いたうえで、適切なアドバイスをすることが求められるといえます。

3 おわりに

今回の講演会では、ストックオプションの基礎的な内容から発展的な内容に至るまで、幅広くご説明いただきました。ストックオプションについてより深い知見を得ることができ、大変実りのある講演会となりました。
日本弁護士連合会が発行した「ゼロから始める創業支援ハンドブック」にも、ストックオプションをはじめ、弁護士が取り組む支援内容について記載があります。日弁連のホームページを検索していただくとハンドブックのデータを取得することができます。創業支援に取り組まれる先生方は是非、同ハンドブックもご参照ください。

講演の様子(中小企業支援センターだより)

あさかぜ基金だより あさかぜ基金法律事務所は本当に必要なのか

カテゴリー:月報記事

弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 社員弁護士 藤田 大輝(74期)

「司法過疎問題は解消した」?

「九州沖縄の各県の弁護士会で構成される九州弁護士会連合会(九弁連)は、その管内の弁護士過疎地に派遣する弁護士を養成するために基金を作り、その基金から資金を拠出して、平成20年9月、福岡市に当事務所を設立しました」。あさかぜ事務所のホームページに記載されている文章です。あさかぜ事務所は、この9月に設立15周年を迎えます。
この15年のあいだ、多くの先輩弁護士たちが司法過疎地に旅立ち、司法過疎問題の解消に取り組んできました。現在も、あさかぜ事務所に所属する私たちは司法過疎地への赴任に向けて奮闘しています。

先輩!ちょっと教えてください!

藤田
「実は最近、『司法過疎問題は解消したらしい』という噂を聞きました。司法過疎問題が解消しているのなら、九弁連として司法過疎対策を続ける必要ってあるんでしょうか」

先輩
「君は修行が足りないね。ひまわり基金法律事務所は、全国には31ヶ所、九弁連の管内にはまだ3つあるんだよ。ひまわり事務所は、2年か3年の任期で赴任して、希望すれば、その事務所を自分の事務所として残ることもできる。こうして赴任地で自分の事務所として残ることを『定着』というんだけど、定着したくなければ、後任を確保して交代することもできる。こういうシステムは理解しているよね」

藤田
「はい」

先輩
「こうしたシステムだと、まだ定着していないひまわり事務所が九弁連管内に3つあるからには、そこの弁護士が定着したくなかったら、後任が赴任しないといけないでしょう。それに、定着したはずの弁護士がいろんな事情で事務所を畳んだら、代わりの誰かが司法過疎地に行かないと、またまたゼロワン地域になってしまうじゃないの。司法過疎問題ってのは、いったん解消すれば、それで終わりというのではなくて、ずっと取り組み続けないといけないんだよ」

藤田
「確かにそうですね」

先輩
「ほかにも、弁護士自治とか、弁護士法による法律事務の独占が崩されてしまう危険もあるんだよ。何より、司法過疎地で弁護士を待っている人々がいるじゃないの。君は、あさかぜ事務所は必要だと本気で思っているのかな?」

三池港は味があって、なんか好き

3月30日午前8時55分、三池港発島原港行フェリーに乗り込み、島原中央ひまわり基金法律事務所(現・島原中央総合法律事務所)の定着式に参加してきました。あさかぜ事務所OBでもある河野哲志弁護士が、島原に定着すると決断されたとのことでした。その決断がどれだけ勇気が必要なことだったのか、私にはとても想像できませんが、決意を聞いて身震いする思いでした。
また、5月29日には対馬ひまわり基金法律事務所の引継式がありました。任期を終えられた前任の安河内弁護士は本当にお疲れさまでした。後任の佐古井弁護士にちょっと電話してみましょう。

藤田
「引継ぎおめでとうございます。どんなお気持ちですか」

佐古井
「不安ですよ」

藤田
「そりゃそうでしょうね」

先ほどの「あさかぜ事務所は必要だと思うかね?」という質問に対し、適切に答える言葉を私はまだ持ちあわせません。ただ、現実に司法過疎地があって、いま現在なんとかなっている地域も「使命感」と「不安」と「やりがい」とをごちゃまぜにして踏ん張っている先輩弁護士たちのおかげで「なんとかなっている」のだと思います。そして、私は、そうして踏ん張っている先輩弁護士たちを「カッコイイな」と思います。だから私も、司法過疎地に赴任してがんばってみようと思います。

精神保健当番弁護士30周年記念公開シンポジウム STOP!強制入院~「精神障害のある人の尊厳の確立を求める決議の紹介と実現に向けた取り組みを考える」~・ご報告

カテゴリー:月報記事

精神保健委員会会員 近藤 健司(73期)

1 はじめに

令和5年5月20日、当会会館において、精神保健当番弁護士30周年記念公開シンポジウム STOP!強制入院 ~「精神障害のある人の尊厳の確立を求める決議の紹介と実現に向けた取り組みを考える」が開催されましたので、ご報告いたします。
本シンポジウムは、精神保健当番弁護士制度が設立から30周年となったことを記念するとともに、2021年10月14日開催の日弁連人権擁護大会にて「精神障害のある人の尊厳の確立を求める決議」が採択されたことを受け、その内容を改めて確認し、その実現について考える場を設けることを目的として開催されました。
当日は、会場では30名ほどの方、webでは80名ほどの方にご参加いただきました。

2 パネリストのご紹介

本シンポジウムでは、当会会員の八尋光秀弁護士をコーディネイターとして、パネリストとして認定NPO法人大阪精神医療人権センター副代表の山本深雪さん、一般社団法人福岡県精神保健福祉士協議会前会長である大山和宏さん、多摩あおば病院の医師である中島直さん、日弁連高齢者障害者権利擁護センター精神障害のある人の強制入院廃止及び尊厳確立実現本部長代行の池原毅和弁護士、精神保健当番弁護士の登録弁護士として活動している田瀬憲夫弁護士にご登壇いただきました。

3 シンポジウムのプログラム

式の開始は、当会会長である大神昌憲会長からご挨拶を賜り、その後のプログラムについては、以下のとおり進行しました。

⑴ 基調講演
基調講演では、池原毅和弁護士から、人権大会決議の内容とロードマップの具体的な内容についてご説明いただきました。日弁連決議が出されることとなった背景を、強制入院の被害実態調査の内容や、ハンセン病患者隔離政策の反省、障害者権利条約の内容なども交えて詳細にお話しいただきました。また、ロードマップの内容については、短期工程、中期工程、最終段階の各工程についてそれらの具体的な内容をビジュアルを用いて明瞭にご解説いただきました。

⑵ 基調報告
精神保健当番弁護士として活動している田瀬憲夫会員から、制度発足当初の1993年から2021年までの歩みについて精神保健当番弁護士名簿の登録弁護士数の推移、法律相談活動の件数の推移、審査請求代理人活動件数の推移のデータを踏まえて報告がされました。

⑶ パネルディスカッション
基調報告後には、パネルディスカッションが行われました。まず、当事者である山本深雪さんから、自身の鬱病に苦しんだ経験や、大和川病院事件でのご経験等をお話いただくとともに、地域移行の実現のためにピアサポーターや地域生活相談支援員等による相談のチャンネルの確保に予算を振り分けることや、普段の生活や環境から一時的に離れて心を落ち着けて暮らせるような場所を提供する等といった当事者に寄り添った形での医療制度改革を進めてほしいとのご意見をいただきました。
また、大山和宏さんからは、自身が代表理事をしている一般社団法人えのき舎での取り組みやその理念、社会的リハビリテーションの内容、障害福祉サービス事業所の現在の事業所数などの障害福祉サービスを取り巻く現状についてご説明いただいたうえで、精神保健福祉士としてサポート続けてきたお立場から現状の決議案に関して問題提起をいただきました。
次に、医師である中島直さんからは、日弁連決議は各工程の目標を達成するための手段が不明確であり、実際に強制入院を廃止した場合の想定が不十分であると感じられたこと、日本の長期任意入院が多すぎるという問題点について指摘が認められないことなど、様々な角度からの鋭いご指摘をいただきました。
当日は、出席者からの質問も募集しており、実際に福岡県内外で精神保健当番弁護士として活動している弁護士の方や、精神科医療を受けておられる当事者の方、その関係者の方、支援者の方などから様々なご質問をいただきました。いずれの質問も、実際に精神医療を取り巻く環境下に置かれている方々の生のご意見やお悩みであり、重要な内容を含むものばかりでした。

4 終わりに

日弁連決議につき、弁護士のみが集まって検討することだけでは見えてこなかったものが、異なる立場に立つパネリストからの意見によって可視化できたものと思います。どのような環境にしていくべきなのか、その手段をどうしていくべきなのかを考えるといったことについて、非常に示唆に富んだシンポジウムだったと感じました。
最後に、ご尽力いただいた登壇者の方々やシンポジウムの開催にご協力いただいた方々に、この場を借りて御礼申し上げます。

研修「女性が苦しむ5つの問題をめぐって」から見えてきたコロナ禍(下)の真実

カテゴリー:月報記事

自死問題対策委員会 委員 野中 嵩之(73期)

1 研修概要

令和5年3月26日、自死問題対策委員会主催「女性が苦しむ5つの問題をめぐって」研修を福岡県弁護士会会館(ZOOM併用)にて実施しましたのでご報告いたします。
本研修は二部構成で行い、前半は、元厚生労働省事務次官で現在は津田塾大学客員教授である村木厚子さんに「女性の抱える困難を考える」と題して女性を取り巻く問題をテーマに幅広く基調講演を行ってもらいました。後半では、村木さんを含め、福岡県労働組合総連合元事務局次長の小川マリ子さん、西日本新聞社編集委員の下崎千加さんにもご参加いただき、当員会の委員である井下顕弁護士がコーディネーターとなって、パネルディスカッションを実施し、本研修のテーマについてより深掘りするという内容でした。
本研修では、前半・後半とも、幅広いご講演及び議論がなされ、本報告ではすべてを取り上げることは難しいため、印象に残った部分に絞らせていただきます。

2 (前半)基調講演・「女性の抱える困難を考える」

⑴ 村木さんは、厚生労働省時代のご経験をもとに、統計データからわかる女性問題について、いくつかご紹介されていました。
たとえば、①先進諸国を比較すると、女性就業率が高い国ほど出生率が高いというデータ(日本や韓国は先進各国と比べるとともに低い)、②夫が休日において家事・育児に割く時間が長いほど第2子以上の出生割合が高いというデータ、③無償労働(家事)の占める時間が日本や韓国の女性は男性と比べて約5倍ほどであり先進諸国と比べて突出しているというデータが紹介されました。
これらの統計データの1つの解釈として、出生率が低い日本や韓国では、女性が社会で就業する環境が十分とは言えず(①)、反面、男性の家事への協力も不十分(②③)ということを導くことができると考えます。
すなわち、少子高齢化に悩む日本において、我々男性にできる身近なことは、家事や育児への協力を本気になって実行していくということであると、実感することができました。

⑵ また、村木さんの講演を通じて、コロナ禍で女性や子供の自殺者数が増加したという問題を考えることは、従来からも問題となっていた男性の自殺者数を抑えるためにはどうすればいいかと考えることにもつながると感じました。
まず、研修において、女性や子供の自殺者数について、統計データからも、コロナ禍において増加していることが明らかとされました。
他方、毎年の自殺者数は男性の方が高いというデータや、悩みを相談できる友人の数は男性だと年代が上がるにつれていないと回答する割合が高くなるとのデータを通じて、男性も決して幸せとは言い切れない現実を浮き彫りにしていただきました。

⑶ そして、村木さんも参加される市民活動「若草プロジェクト」を通じて、相談すること自体、非常に難しいという現実が見えてきたと紹介いただきました。
たとえば、実際の生の声として、相談所とは怒られる場所、というイメージを持たれている方もいるという話には驚かされました。

3 (後半)パネルディスカッション

個人的に印象に残った議題は、「コロナ禍で女性や子供の自殺者が増加している。自殺者増加の背景と、どのような対策が必要か。」です。

⑴ まず、背景としては、①女性や子供の経済面の弱さ、②逃げ場がない状況があげられました。
①経済面の弱さについては、小川さんからは、「自分に価値がないと考える女性、自己否定をする女性。主婦で言うと、働いていないので、経済的に価値がないと思う方が多いのではないだろうか」とご指摘をいただきました。
②逃げ場のなさについては、下崎さんからは、「家を切り盛りして一人前だといわれる。学校が休校になって、3食作って、逃げ場がなくなった末ではないかと思う」とご指摘をいただきました。そして、村木さんからは、DVや児童虐待に携わるスタッフは以前から気づいていたであろうが、コロナ禍で一層家庭問題が浮き彫りとなり、誰にも言えない、自分の責任だと抱えてしまい精神的にも逃げ場がなくなるという背景があるのではないかとご指摘をいただきました。

⑵ 対策として、①経済的な弱さについては、生活保護のみならず、生活支援制度など、もっと活用しやすい制度を知り使ってもらうことがあがりました。
また、②逃げ場がないことについては、村木さんからは、早く、外に相談して切り抜けてほしいこと、誰かに、声を出して言っていいことを、本気で伝えないといけないのではないかとのご提案をいただいております。

4 おわりに

今回の研修で、データ、そして現場の最前線で活躍される方々から、女性を取り巻く問題について、地に足のついた内容を学ぶことができました。また、執筆者としても、男性の立場から、女性問題や自殺者数増加に立ち向かうには、男性の協力も不可欠であると改めて実感しました。
他方、パネルディスカッションでは、男性は外で仕事をして女性は家事・育児という価値観と、現代の男女共同の価値観とが混在する時代であるという指摘もありました。自らの親、祖父母世代と現代の狭間にいる執筆者としても、無意識のうちに当たり前の中に見直すべき部分があるのではないかとの視点が大切ではないかと思います。また、女性や子供のしわ寄せについて本気で取り組んでいくことが男性、ひいては日本社会全体の居心地の良さにもつながるという感覚を、本研修では持つことができたと感じる次第です。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.