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「あとは弁護士だけなんです!」 子どもの虐待問題についての取り組み

カテゴリー:月報記事

松浦恭子

子どもの虐待問題については、子どもの権利委員会において、平成7年度に研修会が開催され、平成8年度から虐待問題小委員会が設置されて取り組まれるようになりました。平成12年度には、九弁連大会シンポジウムでテーマとして取り上げられ、多くの会員が参加されました。

そして、福岡部会の稲村鈴代会員が中心になって、民間団体として多くの専門職と一緒にふくおかこどもの虐待防止センター(略称F・CAP−C)が発足するに伴い、子どもの権利委員会メンバーを中心に、平成12年12月に、同センター弁護団が発足しました。現在当会から47名が参加し、児童相談所など関係機関からの相談や、虐待が問題となったケースの家庭裁判所の申立事件への代理人活動などに取り組んでいます。このほか福岡県、福岡市、北九州市の児童福祉審議会や福岡県児童虐待防止地域連絡会議(県内14ブロック)等に多くの会員が参加され、関係機関との連携が進んでいます。

平成12年11月には、児童虐待の防止等に関する法律が施行され、平成13年には、福岡家庭裁判所においても各支部で、関係機関連絡協議会が開催され、当会から参加しています。

こうした、いわば全体としての骨格となる取り組みが進むに連れ、様々な関係者と協議する機会が増え、実質的な連携が始まるようになりました。冒頭の言葉は、私がある児童養護施設の施設長さんから、開口一番いわれたものです。当初は、お互いにおっかなびっくりだった児童相談所との連携も、信頼関係が築けるに従い、中身の濃いものになりました。

これまで関わった事例では、当初は、乳児に対する身体的虐待や、重度のネグレクト(養育の懈怠、放棄)など比較的判断しやすいケースについて児童相談所が子どもを保護するにあたって、ケース会議で積極論を述べたり、現場に立ち会ったりと、どちらかといえば「励まし役」や「現場の用心棒?」的な役割を果たすことが多くありました。私も、頭部外傷で緊急入院した生後3ヶ月の男の子を病院から保護するなど、いわば典型的なケースに立ち会う経験をしました。また、家庭裁判所への申し立てにあたって、証拠のアドバイスをしたり、比較的簡単な法律相談を受けたり、ということが多かったのです。

しかし、最近は「親権」について、どのように考えていくのか、裁判所(司法)は、家族にどのように関わっていくのかを考えさせられる問題が多く、現代の問題の解決にふさわしいような条文や先例があまりない分野で、どうすれば子どもの保護を円滑に行なうことができるか、頭を悩ませることが多くなっています。例えば、民法766条は、離婚に際しての子どもの監護者の指定について定めていますが、これについて、親権者ではない第三者からの申し立ては許されるか、また第三者を監護者として指定することは認められるか、という問題が出てきています。先日開催された日本子どもの虐待防止研究会第8回大会では、初めて最高裁家庭局から講演が行なわれましたし、民法766条の問題などを協議した分科会には、東京家裁や横浜家裁から現職の裁判官も参加し、児童相談所関係者に交じって、意見を述べるようになりました。

問題となる虐待の種別も、性的虐待や心理的虐待など、司法の場での主張、立証が困難だったり、方針の建てにくい、難しいケースの相談が多くなりました。

まさにこれから、という分野ですが、弁護士としては、関係機関の一員としての動きということから、通常業務とは異なる手間もかかる、どちらかというと地味な仕事になるのかもしれません。

それでも、ケース担当可能な会員をFAXで募るのに対して、次々と担当可能という返事が返ってくるとき、こうした分野で骨身を惜しまず足を運ぶ仲間が多くいることを実感する、事務局として嬉しい一瞬です。

2004年には、福岡で日本子どもの虐待防止研究会第10回大会が開催される予定で、準備も進んでいます。弁護団では、1ヵ月に1度の事例検討会(勉強会)を軸に活動を続けていますので、興味のある方、ぜひ弁護団に御参加ください。

情報提供ツールとしてのホームページ

カテゴリー:月報記事

宇加治恭子

今回のコラムは、情報提供ツールという観点から、当会のHP(ホームページ)を紹介させていただきます。

各種行事の紹介

シンポジウムや講演会等会員以外の方に自由に参加していただく行事や臨時に実施される法律相談等について、案内を行っています。行事が終わるまでは、トップページの「新着情報」欄に載せられているようです。現在は、HP委員や弁護士会執行部が気付いた行事を掲載しているようですが、各会員や委員会から「こういうコトやるからHPにも載せて」とご連絡いただければ、さらに迅速に、充実した紹介ができるかと思います。

法律相談事業の紹介

天神弁護士センターをはじめとする各法律相談センターや、当番弁護士などの事業の紹介も行われています。トップページの「法律相談センター」や「こんな時どうする?!」をクリックすると、知りたい情報にたどりつくというわけです。

以前、ある電話相談の担当だった時、相談者からの質問に応じて「こんな相談制度もあるんですよ」とお伝えしたところ、「それってホームページに載ってますか?」と質問され、「載ってますよ」と答えたところ、しばらくの沈黙の後に「あっ。ありました」と言われた経験もあります。その相談者の方は、HPを見ながら相談の電話をかけていたのです。一般の方たちにとっては、実際にHPは法律相談窓口を探す1つのツールになっているんですね。

委員会活動の紹介

「付添人日誌」や「福祉弁護士のワークノート」をはじめとする月報や新聞からの転載記事などは、弁護士会のさまざまな委員会活動を、わかりやすく一般の方々に伝えるものです。「子どもの権利委員会や高齢者・障害者委員会ばかりHPで宣伝していてズルイ」「もっとウチの活動をたくさんの人たちに知ってもらいたい」と考えている委員会のみなさま、ぜひ、HP委員会に記事を持ち込んで下さい。

リンク集

当会のHPの目玉のひとつが、「使えるリンク集」です。リンク集には、「事件類型別リンク集」と「一般リンク集」があります。「事件類型別リンク集」には、「公的とか私的とかの色分けではなく、利用者に便利なページとのリンクが重要だ」という観点からさまざまなHPがリンクされています。HP委員会では、今後もリンク集をますます充実させていきたいと思っておりますので、よいHPをご存知の方は、ご推薦いただければと思います。また、「一般リンク集」には、各弁護士会のHPはもちろん、福岡県の弁護士・法律事務所のHPもリンクされています。

会員専用ページ

当会の会員のみが、専用のパスワードを取得して利用できる「福岡県弁護士会会員専用ページ」もあります。ヤミ金対策に威力を発揮するであろう最新の判決書がPDFファイルで紹介されていたりしますので、まだ見ていない会員の方は、是非覗いてみてください。

これからのHP

HP委員会は、「こんな情報が載っていたらもっと便利なのに」「ここは使いにくいからこういう風に変えたらいいのに」というご要望をお持ちの方からのご意見を募り、よりよいHPを目指したいと考えております。今後とも当会のHPをよろしくお願い申し上げます。

私を取り巻くIT環境いまむかし

カテゴリー:月報記事

会事務局 荒木さくら

ホームページ委員会を担当させていただいている関係で、月報に記事を書かせていただくことになりました。特にこれといって書くことも思いつかないのですが、先生方は自由業でいらっしゃるので、もしかしたら私が会社勤めをしていたころの「社内IT環境」についてお話したら少し目新しくて面白いかもしれませんね!そんなわけで、私の職場IT環境「いまむかし」について書いてみます。

むかしの職場

一応私は以前SE(システムエンジニア)でありまして(結局最後まで文系人間で付いていけませんでしたけど)、私が働いていた会社はSI(システムインテグレータ)であり社員数も1万人弱いましたので、IT環境は進んでいる方だったのです。

一番便利だったのが、会社の中ではお財布が要らなかった、ということです。社員証にICチップが付いていて、売店も食堂も自動販売機の飲み物も、全て社員証でお支払い。月末に給料天引というシステムになっていました。また、会社のドアはすべてオートロックで、ドアの前の社員証読み取り機に社員証を当てると開錠する仕組みになっていました。

仕事のやり方としては、FAXはほとんど使用したことがなく、やり取りの100%近くがメールでしたので、職場はひたすら「カタカタカタ」、キーボードを叩く音のみ。電話はよほど切羽詰った時しかかかってきませんし、となりの人ともメールでやりとりするような状況でしたので、職場はいつも「し〜ん…」そしてひたすら「カタカタカタ」。フレックス勤務でしたので、出社も退社もバラバラ。ゆえに、「し〜ん」としたなか挨拶するのも気が引けて、「おはようございま〜す」も「お先に失礼しま〜す」も誰にも聞こえないようなか細い声で行なわれておりました。

いまの職場

このように、以前の職場は、IT環境は発達していましたが、人と人との触れ合いは希薄になっていました。お昼休みになるまで隣の人が休んでいるのに気づかなかった、ということもしばしば。それに比べると今の職場の温かいことといったら!まず朝の挨拶が元気よくて気持ちいい。弁護士会館に来られた先生方とも「昨日はお疲れ様でした〜」などと言った会話がそこかしこから聞こえてきます。笑い声が聞こえる職場で「ああ、転職して本当に良かった」と思っている私です。

しかし、IT環境については不満があります。連絡手段の上位は現在FAXですが、急ぎのときに送信状を打ち出してFAX機までいくのはかなり面倒。しかもFAXはかなり時間がたってエラーが判明したりします。やはり、もう少しメールが普及して欲しいです。

メールの利用価値が高いものにML(メーリングリスト)があります。私が担当事務局である消費者委員会の「ヤミ金プロジェクトチーム」というチームは、すでにMLを駆使していろいろなことにすばやく対処してらっしゃいます。MLを覗いていると先生方の活動内容が良く分かるので、依頼された仕事の重要度が分かって対応しやすいですし、何より先生方の熱意が伝わってきますので、事務局としても積極的にお手伝いしたくなります。他の委員会やプロジェクトチームでも、もっとMLを活用していただけたら、先生方と事務局の距離が縮まって良いと思います。そのためには、全会員がメールアドレスを取得されることが先決ですね!

とりとめもなく書きましたが、少しづつ弁護士会のIT環境が整って、先生方同士、先生方と事務局とのコミュニケーションがより良くなることを願っています。くれぐれも、職場に笑いは残しつつ…ね!

大盛況の「ヤミ金シンポジウム」 

カテゴリー:月報記事

奥田竜子

1 はじめに

去る11月30日土曜日、福岡市天神岩田屋Zサイド7階NTT夢天神ホールにて、九州弁護士会連合会と福岡県弁護士会共催の「ヤミ金シンポジウム」が開催された。

定員約270名のところ、多くの方々の来場を受け、また、街頭でのビラ配りが功を奏したのか一般市民も予想以上に来場され、大盛況(?)であった。座席数よりも多めに用意したはずの配布資料(350部用意)も、あっという間になくなってしまい、ヤミ金問題に対する市民の関心の高さを窺わせた。

2 シンポジウムの内容

シンポジウムは2部構成であった。

(1)九弁連会長紫垣陸助先生から開会の挨拶をいただいたあと、被害実態報告と題する第1部に入った。まず、ヤミ金が金を貸す際の手口やヤミ金地獄に堕ちていく様をわかりやすくまとめたビデオを上映し、その後、実際に被害者の方に登壇してもらい、体験談を語っていただいた。また、九弁連大会でも活躍した(??)ヤミ金業者がヤミ金被害者に対し罵詈雑言を浴びせ返済を迫る様を録音したテープを流し、その取り立ての恐ろしさを来場された方々に体感していただいた。

さらに、従前みなさんにご協力いただいたヤミ金アンケートから明らかになった被害実態等からヤミ金が犯罪の温床であることについて具体的に明らかにすると同時に、最近のヤミ金被害が増加傾向にあり、皆が連携してヤミ金撲滅のために闘うことの重要性と緊急性をアピールした。

(2)第2部では、関係機関報告と題し、ヤミ金解決に大いに関係を有していると思われる県と県警からそれぞれ福岡県商工部経営金融課課長井上照明氏および福岡県警察本部生活安全部参事官兼生活経済課長警視村上正一氏に、現在のヤミ金事件に関する認識や取り組み等についてお話しいただいた。当初予定していた県、県警、弁護士会の3者によるパネルディスカッション方式が頓挫したこともあって不安の残る第2部であったが、結果的には、なんのなんの、予\想以上に踏み込んだ内容を発表していただくことが出来た(県警からは「ヤミ金を明確に犯罪者と認識している」との発言有り。両者との調整を身を粉にしてやってくれた千綿会員の功績です!!)。

最後に、弁護士会からの報告となったが、眠気覚ましの趣旨で盛り込まれた寸劇が本シンポ一番の大盛り上がりを見せた。劇の内容は「ヤミ金被害者である疲れ果てたOL(渕上陽子会員)がさわやかでかっこいい弁護士(石田光史会員)のもとへ相談に行き、その結果、共に闘う決意を固め明るく弁護士事務所をあとにする」というものであったが、二人の息の合った絶妙な演技で会場中を沸かせた。

と同時に、普段は知ることのできない「弁護士のもとに相談に行ったらどんなアドバイスを受けるのだろう」という点を垣間見ることのできた良い機会だったのではないだろうか(現に、寸劇の間中、県警村上課長が何度も何度も大きくうなずいてくれていた!!)。
その後、椛島敏雅先生から弁護士会の取り組み等を報告していただき、寸劇でゆるんだ会場をぴりっとまとめていただいた。

(3)そのまま、皆のヤミ金撲滅への思いが最高潮に高まった瞬間を捉えて、平田広志先生よりアピール文採択へと移り、皆で連携してヤミ金を撲滅していくことを満場一致で採択し、最後に、藤井会長から閉会の挨拶をいただいて、無事シンポジウムは終了した。

3 おわりに

今振り返ってみても、かなり完璧な(!!)シンポジウムであった(自画自賛)。

各方面から「短い時間の中で内容が濃かった」とのお褒めの言葉もいただいた。

なにより、ヤミ金撲滅への思いが会場で一つになったことを本当に実感させられた。その意味でもこのシンポジウムは偉大なものであり、この成果を今後に生かしていかなければならないと皆が感じているものと思う。

閉会の挨拶の中で、藤井会長が「今日は、幾人かヤミ金業者の方もおられたようですが・・」とおっしゃられたのには驚いた。何をもって彼を「ヤミ金業者」と認定されたのか、いまだにその真相は謎のママである・・・(藤井会長曰く「○○弁護士が『ヤミ金も会場に来てた』って言ってたからさぁ・・・」)。

4 ほんとのおわりに

そうそう、「ヤミ金ラクラク対処法」がみなさんのお手元に届いていますよね。犬と猫のついたかわいいブルーの表紙の奴です。ヤミ金の事件処理は想像よりもずっとずっと簡単です。食わず嫌いの方、これを機に、是非大好物へとなってください。それが私たちの何よりの喜びです!!

九弁連大会シンポジウム 川と海を考える〜環境保全と住民参加〜 

カテゴリー:月報記事

吉野隆二郎

1 さる10月25日の第55回九弁連大会に先立ち、午前9時30分からホテル日航熊本において表記の内容のシンポが行われました。今回のシンポについては、環境問題がテーマとして選ばれたうえに、その内容としても「川から海を考える」というタイトルからもお分かりのように、複数県にまたがる有明海・不知火海・筑後川・球磨川などが調査の対象となりましたことから、これまでの九弁連大会と異なり、開催県以外の単位会からも実行委員が選任されるということになりました。私は、福岡県弁護士会の公害環境委員会の副委員長として、このシンポの担当となり、その準備のために他県の委員としては最も多い回数、熊本との間を往復しましたので、その舞台裏を含めた報告をさせていただきます。

2 最初にこの実行委員の話が来たのは、2月8日の日弁連・九弁連等の共催の泡瀬干潟のシンポジウムのときでした。本年は、日弁連の人権大会のシンポにおいても湿地保全が1つのテーマと選ばれていたことや、ここ2年九弁連として泡瀬干潟の問題に取り組んでいたこともあり、その時点で福岡からは私と長戸弁護士が委員となることが事実上決まりました。

3 7月6日には、シンポのパネラーになっていただいた山村氏・福岡氏を講師にまねいて勉強会を開催しました。当日は、強風により鳥栖・久留米間で特急が止まるというアクシデントがあり、1時間以上勉強会に遅れてしまいました。

4 実行委員会に参加し、コンセプトについての議論を聞いたうえで、福岡県弁護士会公害環境委員会として、7月17日に筑後川の視察を行いました。この詳しい内容につきましては、私と長戸弁護士がシンポの報告書に執筆をしておりますし、月報9月号でも福留修習生が報告をしておりますのでそれを参照していただきたいと思いますが、私の感想としては、過去の計画とは言え、管理者側と漁民との捉え方のズレが大きいということでした。

5 8月31日には九弁連としての諫早視察にも参加しました。この日も台風が接近した日であり、雨が荒れ狂う中で大浦漁協の調査・諫早湾干拓の現場の視察・川副漁協との意見交換会などを行いました。この中で最も心に残っているのは、大浦でタイラギがまったくとれなくなったことなどを組合長の竹島氏から率直に語っていただいたことです。

6 実は上記以外の実行委員会のときにも、鹿児島方面で強風のため、特急が1時間以上遅れて熊本駅で待たされるというアクシデントが1回ありました。この実行委員の仕事はまさに自然任せの状況でありました。

7 シンポの詳しい内容につきましては省略させていただきますが、省庁の縦割りの弊害というべきでしょうが、川と海を1つの水系として捉えて全体の環境を保全していくという視点が不足していたのではないか、また、流域の住民が意見を言う制度も欠けていたのではないか、ということが一番の感想です。そして、その視点は大会の宣言へと結びつきました。

8 大会を前後して、諫早湾干拓事業の再開の問題や、泡瀬干潟の工事の着工などが新聞紙上をにぎわすようになりました。日弁連が反対の意見を出したこれらの事業につき、今後も、県弁及び九弁の環境問題の委員として、これらの大きな問題に関与していきたいと思っています。

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