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犯罪被害者対策

カテゴリー:ウォーク

被害者は何をなしうるのか

「N君、被害者がなしうる法的対策のフローチャート出来た?〆切はとっくに過ぎたけど。」

「難しいですよ編集長。被害者が法的対策としてやれるのは、刑事的(刑罰の手続)には刑事告発や被害届、民事的には損害賠償の裁判や仮処分(裁判前に迅速な仮の命令を求める手続)でしょう。フローチャートを作れって言うのは刑事裁判や民事裁判の流れを一目で見て分かる資料を作れということと同じですよ。そんな分かりやすいのがあれば苦労しません」

「ただ、被害者の法律相談を受けるカウンセラーによれば、被害を受けた人はパニック状態なので、法律手続きの説明を受けるだけでも、法律的に何が出来て何が出来ないかが分かり、自分の進むべき方向が見えてきて落ち着くと言われるんだけれどもね。」

「そのためには弁護士に直接相談するのが最も適切でしょう。だから弁護士会でも法律相談センターだけではなく、新たに被害者相談センターを設ける予定なのでしょう。」

「でも、犯罪被害者が自分の被害を訴えるのに心理的抵抗があって、相談窓口に出向くことが難しいといわれているのが問題でしょう。だから君がなるべく分かりやすい手続フローチャートを作って、この本に載せれば役に立つのに。」

「でも、犯罪被害も多種多様だから一筋縄ではいかないのですよ。刑事的にでも、分かりやすい例で言えば、強姦のような性暴力やドメスティックバイオレンスと交通事故のような交通犯罪では大きく手続きが違いますよね。被害者の対応手段も全く異なってくる。」

★ 『例えば、性暴力の場合はどうなるの。』

「性暴力やドメスティックバイオレンスは他の人の知らない所で行われるから、処罰を求めるためには被害者が加害者を告訴するか被害届けを出すのかいう判断とその手続きが重要になりますよね。その場合、相談を受ける者や告訴を受けた警察が事情を被害者に根掘り葉掘り聞くために被害者を傷つける二次被害の防止対策も大切となります。

民事的には被害者は加害者に対する損害賠償請求とその裁判ができますが、加害者に財産があるかどうかが重要です。加害者に財産がない場合、いくら裁判所が損害賠償を命じてくれても実際には取りはぐれてしまいますよね。性暴力の加害者の中には財産や資力のない人もいるでしょうから、そのような場合、裁判の手間(判決までには証拠書類を出したり、証人尋問をする必要性があり、時間がかかる。但し、第一回目の裁判に被告側が欠席したりしてなんの答弁もしないとか、請求の理由を全て認めた場合などに、直ちに判決されるのが例外である)や裁判の費用(訴訟を起こす際には規定された額の印紙を貼\り、返信や送信用の切手を予め納める必要がある)や弁護士費用をかけてまで、損害賠償を求めるかは大きな問題になるでしょう。加害者に資力があるかどうかは、殺人、傷害、窃盗などどんな犯罪被害においても民事上の救済に大きく立ちふさがる問題かもしれませんね。」

★ 『その点、たとえば交通事故であれば、どうなるの。』

「加害者が強制保険や損害保険に入っていることが多い交通事故の被害では大きく異なってきますよね。保険会社からは賠償金を取りはぐれることがありませんから。刑事的にも交通事故ならば、警察が事故処理に駆けつけますので、告訴や被害とどけなどの手続きはあまり重要ではなくなりますよ。」

★ 『その他、ストーカーの場合はどうなの。』

「ストーカーの場合は、ただ単につけ回すとか、電話をかけるとか刑事的には犯罪になりにくいといわれていますよね。

そこで、ストーカー本人や関係者にストーカー行為をやめるように通知をして、それでもきかないときには、本裁判には時間がかかり、被害が大きくなる可能性がありますので、周辺の徘徊などを禁じるという裁判所の仮処分をとることになるでしょう。それでも違反する時は、違反するたび賠償金を支払うように命じる仮処分をさらに申\し立てることになるのでしょう。ただ、仮処分は裁判所が迅速に命じますので、その担保として裁判所が定める供託金を納める必要があるのが本裁判とは違いますよね。」

「聞いていってみると、犯罪被害対策はケースバイケースのようだし、しかも法律的には決定的な対策がないようだね。」

「極端な話、犯罪によって人が亡くなった場合、どんな対策をとってもその人が生き返るわけでもないし、遺族の心の傷がなくなるものでもないでしょう。そのケースに応じた法的な対策が必要なことはもちろん、関係諸機関の総合的な対策が必要でしょうね。」

「そうだね。被害当初の相談窓口、心理的なカウンセラーや遺族の具体的生活を支援する社会福祉など、たくさんの総合的な対策が今後必要だし、それらを担う機関相互の協力も必要だろうね。」

2000年11月「ストーカー行為等の規制に関する法律」(ストーカー規制法」が施行されました。この規制法では、恋愛や好意感情のもつれから(一方的な思いこみも含みます)出たつきまといなどに対して、警察の警告や公安委員会の禁止命令を求めることができます。違反者には罰則の規定もあります。ストーカーは、放置すると重大な事件に発展することもあり、これまでの民事だけでの対応では被害者の安全を確保できないため、制定されたものです。(2004年5月)

民暴の被害を受けたらどうするのか

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弁護士から見た対応マニュアル

福岡県弁護士会では、社会にニーズに応じるために問題ごとの各委員会を設けています。

民事介入暴力事件に対応するためには民事介入暴\力対策委員会がありますが、同委員会に基本的対応のマニュアルをまとめてもらいました。

1 警察や弁護士に相談する

まず、警察に連絡することです。

弁護士に知り合いがいれば、その弁護士に相談することです。弁護士に知り合いがいなければ、弁護士会に相談して下さい。相談する弁護士を紹介してもらえます。

結局、一人で悩まないことです。

暴力団員は、「俺たちは警察なんか怖くないぞ」と言うのですが、真に受けてはなりません。本当は警察が怖いから、そう言うのです。捜索を受け、逮捕されることは暴\力団にとっては大打撃です。そういう意味で現代の暴力団はビジネスなのですから、彼らは警察沙汰になるかもしれないというリスクは回避しようとすると考えたほうが良いのです。

そのために、現実には、警察に相談するだけで暴力団の不当な行為が止まってしまうことも多いのです。

あるいは弁護士に相談することによって、問題が公になりそうだと言うことで、暴力団の不当な行為が止まることも多いようです。

2 間違っても他の暴力団に相談しようとなどしない

時々、暴力団員を押さえられるような他の顔役の人に頼もうかという人がおられます。

しかし、そのような人に頼られると、かえって、その依頼そのものが犯罪行為に当たってしまったり、法外な報酬を要求されてしまい、かえって困ることになります。

3 暴力団が交渉を求めてきたら、どうするのか
  • 相手方の素性の確認

    まず面談したら、相手方の住所、氏名や素性を確認してください。「氏名不詳某」では警察も弁護士も対応できないことが多いのです。逆に、相手方の組織まで特定できていれば、後の対応は非常にやり易いのです。

  • 面談場所や方法

    暴力団が交渉を求めてきたら、相手方の主張を良く聞くことです。まず、相手方の主張を聞かないと始まらないことも事実だからです。何を要求しているか分からないが、とにかく怖いというのでは警察としても動きようがないでしょう。

    しかし、面談するときには一人では絶対に会わないことです。一人であるとどうしても暴力団員の迫力に負けてしまうのです。また、間違っても、暴\力団員の事務所で会うことはしないで下さい。会うとしても、ホテルや喫茶店のような公衆の目の届くところで会うべきです。暴力団の事務所で会うということは、暴\力団の要求を聞かない限り、事務所から帰してもらえず、ついには監禁されることを覚悟せざるをえないとまで言っても良いのです。そうなると、結局、一時も早く帰りたい一心で、とんでもない約束をさせられるという目にあってしまいます。

  • 交渉の内容

    暴力団の不当な要求は巍然と拒絶してください。期待を持たせるような曖昧な発言をしないことです。曖昧な発言をして揚げ足をとられて大変なことになった人は多いのです。

    そのような曖昧な発言の揚げ足を取るのが彼らの常套手段だと考えて下さい。間違っても、後で取り消せば良いなどと安易に考えて、暴力団との約束等はしないことです。

    要求を断るのは怖いと考えられるのは間違いです。確かに断ると暴力団員はすごむことが多いでしょう。しかし、すごんだり脅したりすれば、彼等は恐喝になるのです。今後は暴\力団が警察に追及される立場になるのです。怖い目に会うことが却って有利な展開につながると考えて下さい。

    もし脅かされたとすれば、直ちに警察に通報することも忘れないで下さい。

4 相談窓口の連絡先は下記のとおりです
  1. 弁護士会は民事介入暴力対策委員会を設けて対応に勤めています\n

    弁護士会への連絡先は、福岡地区であれば天神相談センター(092-741-3208)

    また、北九州地区は(093-561-0360)、久留米地区は(0942-30-0144)、筑豊地区は(0948-28-7555)です。

  2. 財団法人暴力追放福岡県民会議も設けられています\n

    相談室(092-651-8938)です。

  3. 勿論、各警察署の暴力団係も相談を受け付けます\n

    相談するときには、それまでの事実関係のメモ等を作っておいて下さい。民事介入暴力は機敏に活動する必要が多いのですが、被害者に一から説明を受ける時間がないことも多いのです。しかも慌てて取り乱している人が多いので、話の辻褄が合わずに困ることがあります。処理を急ぐのに、話が分からないときほど大変なものはありません。自分でメモを作ってくと、記憶が曖昧になることもありませんし、記憶の整理にもなるでしょう。

夫婦の姓は?

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「早く結婚して姓を変えたい」「同窓会名簿に旧姓って書かれたい」、こんな女性の声に見られるように、女性にとって姓が変わるということは、結婚の象徴のようなものでした。

明治始め、庶民が姓を名乗るようになった後、夫婦同姓が法律上規定されたのは一八九八年(明治三一年)です。「妻ハ婚姻ニ因リテ夫ノ家ニ入ル」に示されるとおり、妻が夫の家の姓を名乗るという夫婦同姓でした。戦後改正された現行民法では、憲法に揚げる個人の尊重と男女平等の精神のもと、夫婦の姓は、二人の協議により夫または妻の姓のいづれかを選択することになりましたが、夫婦同姓は戦前と変わりませんでした。

そして現実にも、約九八%の夫婦が夫の姓を選択しています。昨年九州弁護士会連合会では、夫婦別性についてのアンケートを行い約ニ五○○人から回答を得ましたが、その中では、約八五%の夫婦が性の選択について協議をせず、約八九%の人が、当然と思って、あるいは世間一般がそうなっているのでという理由で夫の姓を選択していました。対等な協議による選択とは程遠い数字です。

しかし一方で、結婚して戸籍名は夫の姓にするが、社会生活では「旧姓」を使う「通称使用」の女性が増加し、企業でも女性が多く働く会社を中心に、この通称使用を認める傾向にあります。それでも、パスポートや健康保険証は戸籍名でなければならず、通称使用にも限界があります。そのため最近では法律上の結婚自体をしない「非婚カップル」も少なくありません。

生まれた時から慣れ親しんできた自分の姓名。姓と名前で一人の個人を表すものなのに結婚によってなぜ変わるのでしょう。「どうしてそんなに姓にこだわるの」という疑問を持つ方もあるでしょうが、反対に九八%の男性が姓を変えていないことからすれば、男性こそ姓にこだわっているとは言えませんか。\n

女性の社会進出が進み、働く女性が五割を越え、社会参加に対する女性の意識も高くなっています。その意味では、確立した社会生活の途中で姓が変わることの不便さが、このような議論を生んだひとつの理由ではあります。しかしそれ以上に、女性だけが姓を変える結果となっていることへの疑問、そこに根強く残っている「妻ハ婚姻ニ因リテ夫ノ家ニ入ル」という風習を敏感に感じるからではないでしょうか。女性の多くは「○○さんの娘さん」から「○○さんの奥さん」「△△ちゃんのお母さん」と呼ばれ続けます。そうではなく、○○△△という一人の個人として生きたいという女性の意識が、自分の名前、姓へのこだわりを生んでいると思います。

夫婦別性にすると、子どもの姓はどうなるのか、家族の一体感が失われるのではないかとの疑問も出されています。

ここでいう家族の一体感とは何でしょう。別性を実践している多くのカップルは、法律上の結婚という制度に支えられていないだけに、実質的な結びつきによって二人の関係が支えられていることを強調します。離婚や養子縁組などによって、血のつながりはあっても姓が異なる家族が一緒に暮らすことは珍しくありません。しかしそこに造られている家族の関係が同姓家族より薄いとは決して言えません。「家庭内離婚」などの言葉に示される形式的なまとまりや、家族が誰かに従う形での一体感ではなく、対等な個人の関係から生み出される家族の関係。これを一体感というかは別として、姓に左右されない夫婦・家族の関係を作ることこそ重要なのではないでしょうか。

子どもの姓もしかりです。現在日本弁護士会が提案している案では、夫婦の協議によって子の姓を決めるとしていますが。どちらの姓を名乗ろうとわが子に対する愛情は変わらないはずです。

夫婦同姓は、女性だけの問題だけではありません。結婚してどちらかが姓を変えなければならない夫婦同姓の制度では、二人とも姓を変えたくない場合、結婚できませんし、本当に対等に姓の選択を協議するとしたら、男性も姓の変換について真剣に悩まなければならなくなるはずだからです。

現在民法の家族法改正の中で、夫婦別姓が検討されており、選択的別性(同姓でも別性でも選択できる)制度が、有力視されています。

自分がいやなことを相手にも強制したくない、姓を自分の一部としてこだわり続ける、こんな自由を認めることはむつかしいことでしょうか。

夫婦別姓を認める民法改正は難航しています。法務省の法制審議会は96年に別姓を認める改正案を答申しましたが、自民党内の合意がえられず、国会提出は実現していません。今国会に向けても、自民党法務部会で議論がありましたが、見送りとなりました(2004年5月)

当番弁護士日誌

カテゴリー:月報記事

塩澄 哲也

一 弁護士になって約半年、国選弁護や私選弁護もある程度の件数をこなし、大分ペースがつかめてきたかなというときに、1件の当番弁護の出動要請があった。15歳の少年。罪名は窃盗。中学生が、万引きかひったくりでもしたのかなと思いながら、とりあえず久留米署に面会に行った。

二 金髪で髪を逆立てた如何にも悪そうな少年。遊び仲間と原付に二人乗りし、歩行中の女性の背後から近づき手提げバッグをひったくった、他にも同様のひったくりを1件やっているとのこと。窃盗やシンナー等で保護観察処分を受けた前歴もある。既に、中学校は卒業しており、定職にも就かずぶらぶらしていたらしいので、少年院送致という結論も十分にありうると思った。今の段階から環境調整に努めなければと思い、私選弁護の意思についても確認するべく母親に連絡を取ってみると、「あの子は小さい時から親にすぐ嘘をつく、今まで何度あの子のために頭を下げに行ったことか、あの子のためにお金を出すつもりはありません。少年院に行ったほうがあの子のためにはいいのではないか」と言われた。このままでは、少年院送致は避けられないと思い、少年の母親を呼び出し、(1)扶助申請するので弁護士費用は気にしなくてよいこと、(2)少年を今の段階で少年院に送ることが必ずしも少年にとってプラスになるとはいえないことなどを説明し、少年の母親に、被害賠償金を出したり、少年の社会復帰後の就業先を探したりするなど、最大限協力してもらうようにお願いした。結局、被疑者弁護の段階では、被害賠償をすることくらいしかできなかった。

三 観護措置が採られた後、社会記録を読んでみて、少年の家庭は重大な問題を抱えていることが分かった。少年の母親は、実父(少年の祖父)から激しい体罰を受けて育ってきており、同じように、少年も母親から、バットやビール瓶で殴られるなど継続的に体罰を受けて育ってきたのである。少年の祖父は、過去に長期間服役していたこともあり、少年に対して一社会人としての理想の大人像を示すことが全くできていなかった。少年の母親は、少年の父親と離婚した後、数年前に別の男性と再婚しており、再婚後二人の子供を設け、幼子の面倒を見るのに精一杯であったことなどから少年を放任していた。少年の義父は、東京に単身赴任しており年に数日しか戻ってこないこともあり、過去に少年が犯罪を犯したときにも、みな母親任せという状態であった。少年は家庭には居場所がないと考えており、母親に対する根深い不信感があること、母親自身も監督能力に欠けていることから、少年をこのまま家に帰しても元の木阿弥であると思い、私は、実家以外の帰住先を探すことに付添人活動の重点を置こうと考えた。

まず、私は、少年を義父が勤めている会社に就職させ、東京で義父と一緒に生活させることがよいのではないかと考えた。その話がまとまるかと思われたが、少年審判の直前になって、義父の勤める会社の他の社員が少年の面倒を見きれないと反対したことなどから御破算になった。

裁判官は、保護観察処分という結論も考えていたようであったが、少年や母親と何度も面会している私としては、少年を母親から離したところでしっかり監督した方がよいと考えていたので、試験観察処分を獲得すべく別の帰住先を探すことにした。裁判所からは補導委託先として中華料理屋があるといわれたが、少年は、「そのようなところで働きたくはない、力仕事がしたい」というので、結局、私が別のところを探すことになった。

そこで、以前、私が国選事件を担当した際に、型枠会社の社長さんに証人として立って頂いたことがあったのを思い出し電話したところ、面度を見てもよいという思いもよらぬ返事を頂いた。しかも、会社の近くにある下宿先まで紹介して頂き、下宿先のご主人の了解もとることができた。結局、型枠会社に勤め、下宿先から仕事場に通うということ等を条件に、少年は試験観察処分となった。

四 最初は順調かと思われたが、少年は何かと理由をつけて次第に仕事場に行か]なくなった。しかも、二度と原付の無免許運転はしないと約束したにもかかわらず、少年が無免許運転をしているという情報があちこちから寄せられるようになった。調査官や私は、このままでは少年が重大犯罪を犯す可能性が高いと判断し、少年を裁判所に呼び出し、今後のことについてしっかりと話し合おうということになった。

私は少年の下宿先を訪問し、仕事に行かなかったり、無免許運転をしたことが発覚すると、また身柄拘束されてしまう可能性があることなどを説明して、明日からは仕事に行くこと、数日後には裁判所で調査官との面会があるからその時には私が迎えに行くことを告げた。約2時間ほど話し、少年の下宿先を後にした。

調査官との面会日に、私が少年を下宿先まで迎えに行くと、少年は早朝からいないとのこと。下宿先の方の話によれば、私が少年を訪問した日以降、少年は全く仕事に行っていないことも判明した。少年との面会を後日にしてもらうように調査官に連絡した後、私は別件の少年事件の件で少年鑑別所に行くと、私の携帯に事務所から連絡が入った。「少年が窃盗罪で逮捕されたようです。少年は先生に面会に来て欲しいと言っているので鳥栖署に行って頂けませんか!」

五 少年から事情を聞いてみると、3人で自転車を盗んだということで逮捕されたが自分には覚えはないこと、高校生から500円を恐喝をしたが、他の2人から誘われてやむなくしたなどと弁解していた。少年の家庭環境を考えると、急に「立ち直れ、優等生的に振る舞いなさい」と言ったところで、いきなりそのような対応を取らせるのは難しいと考えられること、経営が苦しいにもかかわらず型枠会社の社長さんが、今後しっかりと働くならばもう一度少年の面倒をみてもよいと約束して頂いたことから、私は、再度の試験観察処分を目指すことにした。

窃盗の事実関係についての中間審判を経て(結局、窃盗の事実は認められてしまった)、2回目の審判前に裁判官と事前に面会した際、試験観察期間中にいくつか犯罪を犯していたとしても、今まで嘘をついていたことを謝罪し、心から反省しているとみられるならば、もう一度チャンスを与えようかと思っていると言われた。「ひょっとしてまた試験観察になるのか」などと淡い期待を抱いていたが、審判の場でも、少年は、「自分は窃盗はしていない、無免許運転はしていない」と言い張り、結局、少年の口から反省の弁は聞かれず、少年院送致になってしまった。

六 当番弁護で出動してから4ヶ月間少年と接してきた。自分が少年のために一生懸命動いたことで、少しでも大人に対する不信感を払拭できればいいなとは思う。ただ、「少年院に行って更生する者なんて誰もおらんよ。自分の周りも見てもそうやんけんが」などと嘯いていた少年の今後が心配でならない。

弁護士過疎地域への派遣支援について

カテゴリー:月報記事

石渡 一史

 福岡県弁護士会は、地域司法計画の一環として、弁護士過疎地域を克服する事業を積極的に支援していくことを12月2日の常議員会で決議しました。

弁護士過疎地域の問題については、今回の常議員会決議を経て、具体的に支援事務所の募集を始めることになりました。そこで、本稿を借りて、改めて、弁護士過疎地域克服の今後の計画について、会員の皆様の積極的な参加を呼びかけたいと思います。

 福岡県弁護士会は、今後、直接、間接の支援事務所を募集し、地域司法計画に従って克服すべき弁護士過疎地域(当面の地域は、八女、柳川、田川ですが、この地域には限りません。)への派遣を2004年度以降、順次実施していく予定です。派遣する弁護士については、本人が希望すれば当該地域に定着することが望ましいのは当然ですが、実際には、2年ないし3年の期間を限定した派遣が中心となると思われます。

 福岡県弁護士会が計画している、弁護士過疎地域克服のための事業の柱となるのは、直接、間接の事業支援事務所ですので、この支援事務所の役割について説明したいと思います。

1 直接支援事務所が果たすべき役割は次のとおりです。
  1. 過疎地派遣希望の司法修習生を採用する。

    受入条件については、司法修習生と面接及び協議して、採用することになります。

  2. 派遣弁護士(派遣前)に対して研修を行う。

    一定期間、事件処理や事務所経営等 の研修を行わせることになります。

  3. 派遣弁護士(派遣中)の相談に応じる。

    事件について派遣弁護士の要請があれば相談に応じ、あるいは、共同受任することになります。

  4. 派遣弁護士(派遣後)の受入先となる。

    派遣弁護士が、派遣期間満了後に、直接支援事務所への復帰を希望した場合に、その受入先となることになります。

2 間接支援事務所が果たすべき役割は次のとおりです。
  1. 派遣弁護士就職前に、直接支援事務所が作成する一般的基準研修プログラムに沿って、研修段階で共同受任する事件の種類や数量、及び、設立後の協力体制について、協議する。
  2. 派遣弁護士(派遣前)に対する研修を、直接支援事務所と共同で行う。
  3. 派遣弁護士(派遣中)を支援する。

派遣弁護士から、事件処理について要請があれば、優先的に相談に応じ、あるいは、共同受任することになります。

 もっとも、ここで述べた役割というのはあくまでイメージであり、それぞれの法律事務所が、この計画とは別に独自の構想で、弁護士過疎地域に法律事務所を開設することを妨げるものでないことはいうまでもありません。

また、以前、寄稿した際にも述べたように、ルールに基ずく社会が、地域のすみずみに行き渡るようにしたいというのが、地域司法計画の重要な柱の一つです。また、これによってリーガルサービスセンターに頼らずに公的弁護制度等、新しい改革の試みも実現していくことができるものと考えます。重ねて会員の皆様が本事業の意義を理解され、積極的に支援事務所として名乗りを挙げられることを希望するものです。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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