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I T コ ラ ム

カテゴリー:月報記事

稲尾 吉茂

一 前口上

「この原稿の依頼を受けて、さて、何を書いてよいものやらと思案にくれ、いっこうに筆が進まないまま〆切の日を迎えてしまった。」

このような書き出しだと、何やらいかにもまじめに月報記事に取り組んでいるような印象を与えるが、その実、〆切の日を迎えるまで何もやらず、当日大慌てで書いているにすぎない。しかも、文章の作成はキーを叩くのであって筆ではない。この文章には二つのウソがある。しかし、何を書こうかと困っていることだけは確かだ。

さて、過去の月報記事をながめてみたところ、少なからぬ会員が冒頭で何を書こうか困ったという話題を掲げている。ここでは、その例にならうのが筋というわけでもないが、そのスタイルを踏襲してみた。

二 私のIT器機遍歴

前口上で申し上げたとおり、コラムで記述するような話題がない。私のIT環境は二〇〇二年頃を境に停滞しきっているので、先進の器機やシステムの紹介はできない。他人が聞いてたいして面白い話でないことは承知の上で、パソコンを中心とした私のIT器機遍歴でも披露しよう。

私が仕事でパソコンを使い始めたのは、一九九八年、現在の事務所に入って三か月ほどたった頃だったと記憶している。購入したのはバイオ505GX、HDDは四・ 三GB、重量は一・三五キロ、以来、メインマシンは505を使用している。ちなみに事務所の先輩弁護士は同じくバイオ505を使用していたがHDDは二GB。今となってはDVD一枚の容量に過ぎないが、当時、この差は大きかった。二代目はR505FR/D、現在は主として事務所内で使用しており、外出先では三代目のX505/SPEXTREME を使用している。重量は七九五グラム、カーボンファイバー積層板にクリア塗装が施され、見せパソコンとしても相当活躍している。この他、サブマシンとしてC1VJを併用していた時期もある。

PDAはクリエを使用している。初代はまさに初代クリエ。現在は二代目NR70V/J。フラットで無駄のないフォルムがいい。なお、この次の機種からカード型のPHSを直接挿入できるスロットが付いたが、そのためフォルムを崩している。

三 ムダイ

自宅ではデスクトップを使用している。ご想像のとおり、こちらもバイオ。現在はRZ75CP、HDDは外付けを含めて六六〇GB。自宅内のHDDを合計すると一〇〇〇GB、すなわち一TBを超えている。これだけの容量があれば容量不足に悩むこともないと思われがちだが、実際はいつも容量一杯である。CS放送等から録画したものをビデオクリップ化している。次々とDVDに落としても間に合わない。DVDの枚数は一〇〇〇枚に迫ろうとしている。

ところで、私は弁護士一年目より毎年劇団ひまわり一座の憲法劇に参加している。その公演のDVDを二〇〇二年より制作しているが、長時間の画像をDV(AVI)ファイル形式で取り込むと一時間=一二GBは必要で、ひまわり一座の公演をDVD化するには四〇GB以上の空きが必要である。画像の取込に二〇GB、画像を編集したファイルを書き出すのに同じ量が必要でさらに二〇GB、DVD化のための一時ファイルに四GB程度。一番の苦労は作業のための空きスペースを確保することである。そのため、最近は本体の編集作業が疎かになっている。出来栄えでは最初に制作した二〇〇二年公演のDVDを超えるものはできていない。エンドクレジットのために制作したビデオクリップが好評で、この劇団で兄弟で活躍しているY弁護士から準備書面もこれくらいできるといいのにと言われたとか言われないとか。

さてさて、「ムダ」バナシハ「イ」イカゲンニシロとの声も聞こえてきそうなのでこのへんで。al prossimo mese.

ホームページ委員会だより

カテゴリー:月報記事

ホームページ委員会 田邊 俊

一 このコラムは、ホームページ委員会の委員によるリレー形式で連載されていますが、前回(二年前)に私が担当したときは、IT化が遅れていた私の事務所の進化(そんなに大げさなものではありませんが)について書くことで、何とかページを埋めることができ、一安心したものでした。

ところが、それから二年しか経っていないにも関わらず、再度の執筆依頼が舞い込んできたではありませんか!

この二年間に事務所のIT関係での変化と言えば、(1)サーバーの導入、(2)寿命が来たパソコンの買い換え(便利になったとは言え、五年間で古くなるというのは大問題だと思いますが、性能は日進月歩のため、処理速度が遅い等と、不満を覚えるようになるんですから、人間はワガママな生き物ですよね。)、(3)モバイル用のノートパソコンをA4サイズからB5サイズへと変更したことぐらいですので、取り立てて目立ったものではありません。

そこで、このコラムに何を書くべきか迷ったのですが、私にとって、最近はモバイル(何だか曖昧な用語ですが、携帯性に優れた情報端末の総称を意味するようです。)が不可欠なものになりつつあるため、モバイルの進化につき、少し書いてみたいと思います。

もっとも、私にとってのモバイルとは、電子手帳による期日管理のような格好いいものではなく、出張にノートパソコンを持ち歩いて書面を作成したり、メールをやり取りしたり、ネットを検索するという極めて初歩的なレベルですので、もっと進歩しているという先生は、是非とも、その詳細をご教示いただきたいと存じます(何せ、次回のコラムまでに、またネタを仕入れないといけませんので…)。

二 実は、このコラムの執筆依頼を受けたのが、締め切りの一週間前であったことから、私は、この原稿を、連休直前の羽田空港へ向かう機上にて、考えているところです。

そして、空港ラウンジでも、私のように、ノートパソコンを用いて仕事を片付けようとしている人間が二〇人以上もいたことから分かるように、移動中に仕事を片付け、それを移動中にメールを用いて送信できるモバイルは、極めて便利なものです(本当は、仕事に追われないようにしなければいけないんでしょうが、急な仕事も飛び込んで来ますよね)。

特に、海外旅行中でも、快適に事務所と連絡を取り合えるので、旅行から戻っても、浦島太郎状態にならなくて良く、つくづく便利な世の中になったものだと感心します。

三 もっとも、出張中や旅行中にモバイルを利用する場合には、モデムカードを用いても通信速度が遅い上に、海外では利用出来ないため、ブロードバンドを利用するのがベストなのですが、まだまだ利用できる場所は限られています(ブロードバンドが備え付けられていなかったロンドンのホテルで、自力でインターネットへの接続を試みたものの失敗し、ITの専門家と自称するホテルマンに接続を依頼したところ、見事にパソコンを壊されたこともありました!)。

日本でも、出張先でブロードバンドを利用できる機会が限られていると嘆いていたところ、何と来年からは、電気コンセントにジャックを差し込むだけでブロードバンドが可能になる電灯線ブロードバンド(BPL)が実用化されるようです。

このBPLは、現在の電話回線の代わりに、電灯線を利用してのブロードバンドを可能にする画期的な発明で、既に、スペインでは実用化されているものです。

しかも、BPLが発達すれば、身近に無数に存在する電気コンセントを利用するだけで高速インターネットが可能になるばかりか、モデムを内蔵したエアコンやビデオデッキが普及すれば、外出先からエアコンやビデオを遠隔操作できるようになるのですから、技術の進歩には、本当に驚かされるばかりです。

当番弁護士日誌

カテゴリー:月報記事

西村 浩二

一 はじめに

最近、当番弁護士で担当した強姦被疑事件において、起訴前に示談を成立させることができ、被害者の方に告訴を取り消していただいたケースを経験しました。

これについて月報で報告して欲しいとの依頼を受けましたので、その経過を御報告します。

二 出動当時の状況

被疑者の要請により、勾留場所に出動して接見したところ、被疑事実には争いがないようでしたので、当初から被害者との間で示談ができるかどうかが弁護活動の焦点でした。

出動翌日、被疑者の両親に状況を確認すると、被疑者の両親も独自に、被害者と示談できれば、と考えていたようでしたが、連絡先を警察に尋ねても教えてもらえなかったそうです。当初被害者の方は、示談交渉も含めて一切被疑者やその関係者とは関わりたくないと申告していらっしゃったようでした。

そこで、当職から検察官に連絡を取りましたが、検事調べが終わるまで被害者との接触は控えてほしい、勾留は延長予定、とのことでしたので、検事調べまで我慢して待つことにしました。

被疑者の両親には、示談が可能な状況になり次第、ある程度支払いができるように準備しておいてほしいと言っておきました。

三 勾留満期までの被害者との交渉経過

第一回目の勾留満期の前日に検察官から被害者の連絡先を教えてもらうことができ、早速電話しました。

しかしこのころ、被害者の方は、特に感情をぶつけるという感じではなかったものの、とにかく被疑者には少しでも長く刑務所に入っていてもらいたい、今は示談はしたくないとのご方針で、金額面の交渉にすら入ることができず、結局二回目の勾留満期までに検察官とも連絡を取りながら電話で五回、直接の面談で一回、被害者と交渉しましたが、全く進展はなく、この時点では示談はできませんでした。

四 勾留満期後の交渉

このような経過で、起訴は免れないだろうと思っていました。

ところが、勾留満期日になって検察官から、とりあえず処分保留のままで釈放することにしたとの電話がありました。

これを聞いて私も驚きましたが、再び示談の機会ができたと考えることにしました。

そこで早速被害者の方に連絡を取りましたが、被害者の方も処分保留に驚いており、考えがまとまるまで示談の話はしたくないとのことでした。

そこで数日後に再び連絡を取りましたが、被害者の方は、釈放後しばらくは、処分が軽くなるのであればやはり示談には応じたくないという感じでした。

しかし、そうして何度か交渉を重ねるうちに、当方の説明を理解していただき、次第に納得できる額であれば示談に応じるという姿勢に変化され、金額の交渉に移ることができました。

交渉が金額面に移った後は割合すんなりと話がまとまり、結局当方が被疑者の精一杯の誠意ということで提示した額に対し、「それが本当に精一杯ということであれば受け入れる」との御回答をいただきました。

終わってみれば、勾留満期の釈放後約一か月の間に七回の交渉を要しましたが、ようやく示談にこぎ着け、告訴を取り消して頂くことができました。

五 その後の経過とまとめ

示談金は一括では支払えず分割払いにしていたので、若干不安はあったのですが、結局、予定よりも繰り上げて完済することができ、ホッとしたのを覚えています(ボス弁のアドバイスにより被疑者の父親(会社員)を連帯保証人としていました)。

それにしても、やや特殊な経過を辿った事件であったと思います。処分保留となった事情までは詳しく記載できませんので消化不良気味なレポートになってしまいましたが、貴重な経験でした。

法曹三者裁判員模擬裁判

カテゴリー:月報記事

刑事弁護等委員会 船木 誠一郎

一 法曹三者による模擬裁判実施

全国各地で、法曹三者による模擬公判前整理手続と裁判員模擬裁判が行われており、福岡でも、五月から手続を開始し、三期日にわたり、模擬公判前整理手続を行い、九月二七日には、模擬公判手続を行いました。

また、裁判員役六名については、三者の職員から各二名ずつ選任することとし、弁護士会からは、会館職員の江島真由美さんと天神センター職員の高橋信勝さんに担当していただきました。

二 今回の模擬手続実施の趣旨

裁判員制度の実施はまだ先ですが、公判前整理手続については、関係改正法規の施行が本年一一月からで、これへの対応は急務です。そこで、今回の模擬手続を実施した主目的は、既に広報しているように、公判前整理手続を模擬体験し、手続上の問題点を三者で抽出し合い、検討、協議を加えることにあります。これは、一〇月から継続的に行うことになっており、その経過等については、順次お知らせすることにしています。

使用した事件は、各地で多数使用されている事件の記録とは異なり、法務省が法科大学院研修材料として作成した殺人未遂被告事件の記録を使用しました。これは、模擬裁判用の記録であり、もともと争点が明確なものではなく、公判途中で、被告人が供述を変え、それによって新たな証人尋問の必要が生じるという内容となっており、記録上は、被害者の証人尋問すら実施されていないものです。したがって、弁護人役は、争点を抽出すること自体に困難を伴う事件ですが、目的が公判前整理手続の問題点等を検証することにあったので、被告人役は、第一回公判前整理手続の後に、弁護人役に対し「実は…」と話してもらうことにし(変更があることは弁護人役をはじめとして関係者は知らなかったことです)、公判前整理手続の途中で、被告人の主張等が変わった場合に、どう対応するのかといったことも問題点のひとつとしようとしたものです。

三 雑感

私自身、裁判員模擬公判は、午前の途中までと判決宣告しか傍聴していないので、十分な意見を言える立場ではありませんが、雑駁な印象を述べると、(1)双方の主張を明示して争点中心の立証活動が求められるが、刑事裁判が民事化するのではないか (2)民事化は弁護人の主張、認否等に、法の趣旨とは異なり、一定程度実体確定的効果ないし処分権主義的効果を生じさせることとならないか (3)裁判員の負担軽減、裁判員に分かりやすい裁判といったことの要請に伴う制約は、弁護人の反証の制約にならないか (4)公判での調書朗読による心証形成は困難であり、簡易な調書化が進行するとしても、簡易な内容の調書は却って弾劾しにくいのではないか (5)プレゼン的活動の巧拙が主要な課題となることは、そもそも裁判と言えるのか等々。

もっとも、私が、捜査手続、証拠法則等の問題に改変を加えないまま、裁判員制度を創設することに懐疑的な考えを持っているので、つい「負」の部分に目が向いてしまうのかも知れません。それにしても、法曹三者協力して、お客様である裁判員向けの料理を提供しているようで、本来希求すべき実体的真実発見や被告人の権利擁護といったことが、忘れ去られている感を払拭できません。裁判が終わったとき、裁判員に対しては、「お疲れさまでした」で通用するとしても、被告人を「お疲れさまでした」で納得させられるわけではないのですから。

英国便りNo.7 私の体験したトラブル集(2004年2月25日記)

カテゴリー:月報記事

刑弁委員会の皆様

お元気ですか? 松井です。

こちらロンドンでは、日も随分長くなり、近所の庭の木々にも花がちらほら咲き始め、春の訪れを感じます。

さて、今回は、私がこれまで体験したトラブル(?)をいくつか報告したいと思います。

一 銀行編 その一:門前払い

英国生活をするうえでは、家賃の引落としなどのため銀行口座を開くことが必要です。そこで、引越しが終わった八月、さっそく近所の銀行(Loyds)を訪ねました。すると、行員は、「口座を開くには、あなた宛ての電話、電気、ガスなどの請求書がいります。住所を確認するためです」とのこと。仕方なく、最初の請求書が来るまで数週間待って、再び尋ねました。ところが、今度は別の行員が、「請求書は、一回分だけでなく、三か月分ないとダメです」と言うのです。三ヶ月も待ってはおられません。

困り果てて、大学の学生係に相談したら、「うちの学生を優遇してくれる支店(Natwest)が近くにあるから行ってみなさい」と、紹介状を書いてくれました。そこへ行くと、学生専用カウンターがあり、入学シーズンで忙しそうな行員が、「はい、ココとココにサインして」とせかします。英文の書面に目を通す暇もなくサインをして、不安な気持ちで待つこと一週間、ようやく口座が開設できました。

二 銀行編 その二:罰金徴収

口座ができて、さっそく家賃の自動引き落とし(毎月六日)の申込をしました。そして、一一月六日の引き落とし日に間に合うように、口座へ一一月四日に入金をして、安心していました。ところが、しばらくして銀行で口座の取引経過を確認したところ、なぜか一一月三日に自動引き落としが試みられていて、その時点で口座に十分なお金がなかったことを理由に、三〇ポンド(六〇〇〇円)の罰金が徴収されていたのです。

びっくりして銀行の行員に事情説明を求めたところ、「いつの間にか引き落とし日が三日に変更されている」との返答。私は、「変更の手続をした覚えはない」と食い下がって、ようやく、三〇ポンドを返金してもらうことができました。

三 銀行編 その三:消えた二〇〇万円

罰金事件が解決して一週間もたたないある日の夕方、キャッシュコーナーでお金を下ろした私が何気なくレシートを見ると、一万ポンド(二〇〇万円)以上あった残高が、突然数十ポンドしかなくなっていて、一瞬頭が真っ白になりました。もう銀行窓口は閉まっている時間で、私は一晩、「これは誰かの詐欺被害にあったのかも」などと悶々とし、翌朝一番で銀行へ出向きました。

一万ポンドの行方を調べてもらったところ、実は、私が知らない私名義のもう一つの口座(定期預金)があって、そこへ移っていたのです。どうやら、私が口座開設のときにサインした書面の中に、定期預金口座の開設申込もあったようです。

詐欺ではないと分かってホッとしたものの、同一人の口座とはいえ、勝手に預金を振り替えるという銀行の態度に腹が立ってきました。そして、その翌日、銀行の別の係から「あなたは普通預金口座に大金を入れていますが、資金運用上もったいないので、よかったら定期預金に振り替えませんか?」という■勧誘■の手紙が届いたのです。順序が逆だろ! と思わず叫んでしまいました。

四 電話編:電話番号乗っ取り事件

こちらの自宅では、British Telecom(日本でいうとNTTのような会社)と電話の契約をしています。ある日のこと、BTから奇怪な手紙がきました。

「ある情報によると、あなたは近日中に転居するそうですね。別の人があなたの電話番号を欲しがっているので、この手紙の日付から五日以内に連絡なき場合には、その人にあなたの電話番号をあげます」というのです。

期限の日まで二日しかなく、私はびっくりして、転居を否定するため、BTのカスタマーサービスに電話するのですが、何度電話しても話し中でつながりません。

やっと二日目の夜につながって、話をすると、「えーと、あなたの電話番号は…もう変更されていますねえ」という返事。「それは困ります! 前の番号をあらゆる人に教えているんです!」と懇願し、なんとか元に戻してもらいました。

以上のように、英国ではいろいろなことが起こるので、何事に対しても信用ができません。この種の話は、私が特別ではなく、他の留学生仲間からもよく聞きます。よくこれで、「世界の金融の中心地 ロンドン・シティ」などと豪語できるなあと思います。鉄道や地下鉄の遅れや運休も日常茶飯事だし、社会システムは、全体的に日本の方がしっかりしているように感じます。

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