法律相談センター検索 弁護士検索

精神保健当番弁護士活動報告

カテゴリー:月報記事

会 員 坂 巻 道 生(62期)

1 はじめに
平成22年4月、精神保健相談の申込みを受け、出動しました。私にとっては、始めての精神保健当番の出動でした。バックアップについて下さったのは鬼塚恒先生です。始めてのことで要領の分からない私が何とか最後までたどり着けたのは、鬼塚先生の貴重なアドバイスがあってのことでした。鬼塚先生にはこの場を借りて御礼申し上げます。
2 自分の一生は自分で決める
相談者は65歳、統合失調症の診断を受け、医療保護入院として、既に12年ほどの入院期間が経過しており、今回は退院請求を希望しています。
始めて精神病院に足を踏み入れると、独特な匂いにも、閉鎖病棟の鍵を閉める音にも、反応してしまいます。相談者に会って驚いたのは、本人に病識は全くなかったことでした。「電波障害」を口にしながら、自分がなぜ入院しているのか、自分は病気ではない、と口にしています。
ただ、今回退院請求をする理由を尋ねた時、相談者はそれまで下に向けていた視線をわずかに上げ、静かに答えました。
「自分の人生は残り少なくなってきた。自分の一生は自分で決めたい」
相談者のこの言葉は、今回の活動の全体を通じて、私の脳裏から消えることはありませんでした。
3 何かあったとき、あなたに責任がとれるのですか?
面談を終え、相談者の保護者であるお兄さんに連絡を取りました。主に対応されたのはその奥さんです。奥さんは私に対してまくし立てました。「今まであの人のためにどれだけ苦労してきたか分かっているのですか」「娘の夫には身内に精神病患者がいることを隠している、出てきたらどうするのか」「大事な家族を守るためなら、あの人を殺して自分も自殺する」。現在の病状はとても落ち着いています、と申し向けても、言われたことは一言。「何かあったとき、あなたに責任がとれるのですか」。
保護者のご家族とは何度もお話しました。電話の奥で、夫婦間の諍いを聞き取る時もありました。私自身、この幸せな家族にとって、災いでしかないことを自覚しました。
保護者、主治医からは、退院請求を取りやめるよう言われましたが、請求は行うことにしました。請求の可否について見通しが立たなかったこともありますが、相談者の今後のためにも、退院を判断すべき人間は私でないと考えたからです。
保護者にも、その旨伝えました。私の「立場」は理解していただけたと思っています。
4 電波障害は止まりました
現地調査の期日、相談者は、「電波障害は止まりました」と言いました。私と話した際に、「電波障害」のことを絶えず口にしていただけに、私は驚きました。これが、本当に治まったのか、審判を有利に進めるために口にしたことなのか、私には今でも分かりません。
5 朝から寝込んでおります
退院請求の結果は「6か月を目処に他の入院形態(任意入院)への移行が適当である」。
早速、保護者の方に結果報告のために連絡をとりました。保護者の奥さんは「予想外…、ショックのあまり朝から寝込んでおります」と力なく話しました。
相談者に対し結果の説明のため、病院に行きました。病院に着くと、相談者はなにやら電話をしており、しばらく私は待合室で待っていました。電話が終わった後、電話の相手は誰ですかと尋ねました。相手は、保護者で、「今後は一切の縁を切る」と言われたそうです。私は、相談者に対して、かける言葉が見つかりませんでした。
6 その後
結果の通知から、6か月が経ち、私は担当のソーシャルワーカーの方に連絡を取り、相談者の現状を尋ねました。相談者は、現在、病院を退院し、グループホームにおり、保護者との関わりあいを少しでも持たせるため、保護者を説得しているとのことでした。

◆憲法リレーエッセイ◆五百本のチューリップに囲まれながら…

カテゴリー:憲法リレーエッセイ

会 員 永 尾 廣 久(26期)

日曜ガーデニングにいそしむ
春、三月半ばを過ぎると、私の庭は色とりどりのチューリップでにぎわいはじめます。一戸建て団地のはずれに位置し、散歩コースになっていますので、近所の人から「見事に咲いていますね」とかけられるのもうれしいことです。保母さんに引率されて通りかかった保育園児たちはいっせいに歓声をあげます。
今、チューリップは色も形もさまざまな種類があります。八重のもの、縁がギザギザ状になっているもの、燃え立つ炎の形をしているもの、また、こぶりで目立たない原生種も植えています。
私が小学1年生のときの教科書は、「さいた、さいた、チューリップのはながさいた」でした。そこに描かれていた昔ながらの黄色や赤色で大きな花弁の花が結局のところ一番なじみます。そして、チューリップはやっぱり群生しているのが見事です。集団美というのでしょうか、マスゲームのように、個々の花も生き生き輝いています。
チューリップを植えるのは私です。秋から年末年始にかけて、日曜日になると、庭に出てチューリップの球根を一本一本手で植えていきます。小さなシャベルで球根を入れる穴を掘っていきますので、手指のつけ根にマメが出来ます。秋の庭で植えていると、ジョウビタキがすぐ近くまでやって来て鳴きます。スズメほどの大きさで、尻尾をチョンチョンと振り下げる愛敬のいい小鳥です。まるで、「何してるの。遊ぼうよ」と誘っているかのようです。
チューリップの球根は毎年買いそろえています。水仙やアイリスなどは、放っておくと次々に増殖していきますが、チューリップはダメなのです。分球して、球根が小さくなって、花が咲かなかったり、とても小さな花がやっと咲いたりです。花が咲き終わって、早いとこ掘り上げ、タマネギのように軒下にぶら下げて乾燥させればいいと教えられてチャレンジしてみたこともありますが、結局、うまくいきませんでした。素人には無理と思います。
チューリップの球根も、初めのうちは1個100円以上もしていたのが次第に安価になり、最終的には1個30円を切ってしまいます。これでは、球根をつくっている園芸農家の経営は大変なことでしょうね。私は毎年500個ほどの球根を購入しています。花屋の経営がますます厳しくなっているそうですから、せめてもの貢献です。
球根を植えたら、あとは、たまに雑草を抜くくらいで、水やりすることもなく、放っておきます。雑草取りをしていると、春にはウグイスが頭上で美声を響かせてくれます。地面に穴を掘って生ごみを入れていると、カササギも飛んできます。手入れを手抜きしても、チューリップはちゃんと3月になると花を咲かす律義者の花です。失敗することは、まずありません。

晴れない気分で…
チューリップの花が咲き始めた矢先の3月11日、突然あの大震災が勃発しました。ふだんはまったくテレビを見ない私なのですが、さすがに連日テレビを見続けました。衝撃の映像が繰り返し流れます。巨大な大津波によって家も車も人もまたたくまに呑み込まれている映像には声も出せませんでした。暗い気分の日々を過ごすことになりました。
やがてチューリップが満開となりました。500本のチューリップが咲きそろうと、それはカラフルで心が浮き立つ思いです。ところが、今年ばかりは、せっかく年に一度、いえ一生に一度の晴れの姿を見せて喜びに輝いている花たちを眺めても、こんなにして美を鑑賞していていいのだろうか。ふと何か悪いことでもしているかのような暗い思いに駆られてしまうのです。いつものように心浮き立つ思いにはどうしてもなれませんでした。
すべてが押し流されてしまった人々。長く住んできた家が土台から根こそぎ流され、他人の建物の屋根に大きな船が乗っかかっている映像は、とてもこの世の現実だとは思えません。庭もまったく跡形もありません。隣家との境界線すら分かりません。
と同時に、家も庭もすべて無傷のまま残っているのに、そこに住むことを許されない地域があり、追い出されてしまった人々がいます。福島第一原子力発電所の周辺地域です。
手入れされなくても花は咲きます。しかし、家畜やペットは、そんなわけにはいきません。さらに、日本は放射能で汚染されている、その危険があると言って多くの外国人が一斉に日本から脱出していきました。東京の大使館を閉鎖して大阪に移した国もあります。これを風評に踊らされているだけと冷笑しているわけにはいきません。まだ原発事故の解決の目途が立っていないのですから…。

恐怖と欠乏から免れ…
庭に出て雑草取りをしていると、目の前にフリージアの華麗な花があり、甘い香りが漂ってきます。すっくと伸びたアイリス、華麗なるジャーマンアイリスの花の凜とした美しさに生命の気高さを感じさせられます。しかし、今なお、東北地方にはそんな日常生活を奪われてしまった人々が何万人、いや十数万人もいます。それを考えたとき、日本国憲法が高らかにうたいあげた平和的生存権を文字どおり今こそ日本に確立するため、私も持てる力を振りしぼるべきではないか、そんな気になるのです。

京都法教育推進プロジェクト

カテゴリー:月報記事

会 員 諌 山 佳 恵(62期)

1 「京都ですごいことをやっているから見てきて」と声をかけて戴き、平成22年10月29日、「法教育シンポジウム~未来を拓く法教育in京都~」に行って参りましたので、ご報告いたします。
2 京都府内の小中高等学校では、本年6月から、このプロジェクトに基づく多様な法教育メニューが実施されています。この企画のすごいところは、「京都市教育委員会、京都府教育庁、京大法科大学院、同志社大法科大学院、立命館大法科大学院、法学部、京都地裁、京都地検、京都弁護士会、京都司法書士会、法テラス京都、京都地方法務局、京都刑務所、京都保護観察所」が参加するオール京都による取り組みである点です。
3 まず、京大の笠井教授から法教育のこれまでの動きや将来を踏まえた本プロジェクトの意義について、基調講演を頂きました。
4 立命館中学校1年生の録画授業放映
次に、その実践報告として、中学校1年生に対する法教育授業の模様が放映されましたが、生徒達の興味を引きつけた理想的な授業は、ドラマを見ているようでした。
この授業では、歴史ある京都市の街に高層マンションが建設される場面を想定し、建築の景況について、生徒達を反対派・賛成派・中立派に分けて討論した後、各派が納得できるルール作りを再討論しました。身近な問題に直面した生徒達は、これを自分の問題として考え、マンションの色や形、店舗の出店条件に至るまで、柔軟なアイデアを出していました。最後に、先生が京都市の景観保全条例を紹介したときには、市民生活におけるこの条例の役割を実感でき、また、このような授業を受けた経験がなかった私は、生き生きと議論する生徒達を羨ましく感じました。
5 立命館宇治高等学校2年生の公開授業
次に、高校2年生の刑事模擬裁判が公開され、生徒達が自作の台本に基づく証人尋問及び被告人質問を発表しました。
証人尋問では犯人の目撃状況というポイントを突いた尋問が行われ、被告人質問でも的確な尋問が行われ、見応えがありました。異議も積極的に飛び出し、手続きを充分に勉強して尋問を全て暗記するまで努力した生徒達の熱意を感じました。
6 パネルディスカッション
その後、法テラス理事の草野氏をコーディネーターとし、エッセイストの市田氏、京都弁護士会の伊藤氏、立命館宇治高校教諭の太田氏、京都市教育委員会の島本氏、嵯峨野高校の松宮氏、法務省大臣官房付丸山氏という様々な立場の方をパネリストに迎え、「法教育の普及における地域社会の役割」について議論が行われ、各機関とも、積極的に法教育に取り組む意思があること、法教育実践のために地域の専門家の力が不可欠であるという共通認識をもつことがわかりました。
7 これからの法教育
このプロジェクトによる局地的・一回的な取り組みの成果を、普遍的継続的な法教育実践にどうつなげるべきか、翌日京都弁護士会で開かれた意見交換会で話題になりました。
このプロジェクトの意義は、通常協力しない機関が一定の連携をとって法教育に取り組んだ点にあります。特に、法の専門家と教育現場の指導力が連携することによる相乗効果は大きく、弁護士会が、出前授業、裁判傍聴はもちろん、日々の業務活動を通じて、現場の教師とのパイプを拡大、強化していく必要性を感じました。
学校に弁護士が来て話をしてくれた経験は、小中高生にとって一生心に残るはずです。また、先日の裁判傍聴で引率を担当させて戴いた専門学校生達は、刑事裁判に興味津々であり、裁判の現場に足を運んでもらう契機が重要と感じました。
福岡でも、現場の教師のニーズを掘り起こし、全ての学校で当たり前に法教育が実践されるよう、これから学校現場にいって法教育に関わっていきたいと感じました。

◆憲法リレーエッセイ◆ 一票の格差是正裁判(最高裁大法廷判決)の体験談

カテゴリー:憲法リレーエッセイ

会 員 新 道 弘 康(25期)

1、「本件上告を棄却する。」3月23日午後3時からの最高裁判所大法廷での竹崎裁判長の主文の一声と共に判決要旨が1~2分で簡単に述べられてあっけなく終わった。
上告弁護団控室で待たされること1時間弱、そして15名の最高裁判事が段上に並んだ威圧感、満員の160人の傍聴席の後ろからTVや新聞社のカメラ撮影、最高裁判所の玄関前から弁護団が入場する所や判決後のタレ幕(歴史的な違憲判断)を囲んだ弁護団の報道撮影、その後の東京地裁司法記者クラブでの記者会見等の物々しさに比べて、判決の言い渡しはホントにあっさりしたものだった。但し、その要旨の内容が一人別枠方式は現在では違憲状態となっているとの画期的な判断だったのだ。
2、最初のとっかかりは2009年9月28日(月)の同級生からの電話だった。同級生と言っても司法研修所時代同じクラスだった東京の升永英俊弁護士からである。「新道君、明日か明後日に選挙無効の訴えを福岡高裁に出してくれ」、彼が言うことには8月30日の民主党が圧勝した衆院選挙無効の訴訟をしたい、公職選挙法上1ヶ月以内に提訴しないといけない。訴状等は彼の方で東京用を作っているから福岡用に少し変更してすぐ出してくれ、とこんな内容だった。
升永弁護士といえば、例の中村博士の光ダイオード発明により大きな利益を稼いだ会社に対する何百億という請求事件、住友不動産に対するサブリース契約の借地借家法上の有効性を巡る訴訟、旺文社が国を訴えた国税還付勝訴事件等で活躍した超有名な弁護士だ。一時は日経新聞等に掲載されていた日本の100名の長者番付欄にも名を連ねたこともあるそうだ。彼とはその前年2008年3月に司法研修後35周年記念式典が東京のニューオータニホテルで催された際に会って一緒に一杯飲んだ際「俺は、公職選挙法の投票価値の不平等は憲法違反になると思うから、これをライフワークとして取り組んでいこうと思っている」と言っていた事を想い出した。
3、すぐ訴訟を提起するには誰を原告にしようかという事がまず問題となった。うちの事務員の森山君にしようかと思ったところ福岡市内のマンションに住んではいるが、住民票は実家(小郡市)においてあるというので、やむなく自分が原告にならざるを得ないと決断した。私は南区平和の住所だから福岡2区の有権者数や人口、過疎である他県(高知や島根)との比較を調べて住民票や戸籍謄本をとり、升永君から送られてきた訴状を福岡用に変更して9月30日に福岡高裁に提出した(訴訟代理人としては伊藤巧示、安東哲弁護士に委任した。後に久保利英明、伊藤真弁護士も加わる)。
4、高裁のある7箇所で選挙無効が一斉に提起されたのであるが、まず最初に大阪高裁で一人別枠方式は現在では違憲状態に陥ったと判旨されてはずみがつき、以後各地の高裁判決は、違憲対合憲の割合が5対2で違憲ないし違憲状態との判断が多数を占めるようになった。マスコミ等の論評でも一票の格差はなくすべきであるとの報道が紙面を賑わすようになり、次第に流れはこちらに有利になってきた。
その7高裁の中でも最も内容が良かったのが森野俊彦裁判長擁する福岡高裁の判決であった。というのも、一人別枠方式はこの制度が出来た当初から憲法違反の制度であったのだと森野裁判長は明確に判示したからだ(尚、その後2010年7月11日の参院選挙に関する同様の訴訟においても、福岡高裁の廣田裁判長は都道府県による一票の格差は憲法上要請されたものではなく、可能な限り一人一票にすべきであると、これも他の裁判所よりはより進んだ判決を出してくれた)。今回の大法廷判決は全国7箇所の高裁でなされた2009年衆院選の無効判決の上告事件についてまとめて判断されたものだ。
5、法の下の平等ではなく統治論
例えて言えば、高知では10万票で当選し、東京では50万票でも落選する。こんな差があって良いのだろうか。今迄は一票の格差があることは法の下の平等に違反するという議論で処理されてきた。これでいくと、法の下の平等も合理的な理由があれば(例えば男女や老若の差により色々な形で弱者保護等の)差が生じても良いということになる。一票についても過疎的県の意見も反映させるべきという理由により一人別枠方式ひいては一票の格差が生じても良いということになる。しかし我々は法の下の平等ではなく、一人一票にしないと民主国家とはいえないと主張してきたのです。住所の差別による一票の不平等のため衆院選では人口の42%が小選挙区選出議員(全300人)の過半数(151人)を選んでおり、参院選では人口の33%が選挙区選出議員(全146人)の過半数(74人)を選んでいるという現実が生じている。これは結局のところ少数の国民が多数の国会議員を選んでいるということになり、憲法前文にいう「正当に選挙された国会」=民主国家とは言えない。また少数の国民が選んだのでは43条の「全国民を代表する」とは言えない。多数の国民が多数の国会議員を選ぶ為には一人一票にしないといけないのです。参政権の他の2つの最高裁判官の国民審査権や憲法改正の国民投票には地方による格差は認めていない。これと差を設けるべきではないことを主張したのです。これら参政権は男女による差を認めないのと同様、地方による一票の格差を認めるべきではない。そうしないと民主主義(多数決支配)が侵害されるのです。しかし、結局最高裁判決は一人別枠方式が投票価値の平等に反すると指摘して法の下の平等論で片づけました。
6、戦いはこれから  違憲判決をもらっても現実に一人一票が認められた選挙制度ができなくては意味がありません。ですから我々がする事はそれに向けての運動(特に最高裁裁判官の国民審査権を行使して、今回の15人の最高裁裁判官のうち合憲とした古田佑紀裁判官(検察官出身)にバツをつける等)をしたり、国会に働きかけたりしなければならないと思っています。  先日福岡県弁護士会からも大法廷判決後直ちに「投票価値の格差是正を求める会長声明」を出して頂きありがたく感じました。但し、その声明の中で「投票価値の格差が2倍を超える事は憲法の要請に反する」という表現は間違っています。これでは1.5倍や1.8倍は合憲と言うことになり、民主国家とはなりえないのです。  多くの弁護士の中でも一生のうちで最高裁大法廷で、しかも勝訴判決を得ることが出来る経験を持つことのできる人は本当に稀だと思います。そういう意味ではラッキーだったなと思いますし、チャンスを与えてくれた升永弁護士に感謝しています。また、私の代理人伊藤巧示、安東哲両弁護士の無償の協力に謝意を表します。

給費制維持緊急対策本部だより「給費制対策本部から~6月4日、市民集会ふたたび~」

カテゴリー:未分類

会 員 向 原 栄大朗(60期)

司法修習生に対する給費制維持活動ですが、昨年11月26日に、司法修習生への貸与制が1年延期される法案が可決され、12月3日に公布されました。
その後、給費制対策本部も、大きな動きはしていなかったのですが、貸与制延期・給費制の当面延期は1年間の暫定措置にすぎません。貸与制の完全撤廃、給費制完全実施に向けて、給費制対策本部は、今も元気に続けております!

さて、本日は、新たな動きのひとつとして、新たな市民集会の開催が決定されたことをお知らせいたします。
思えば昨年7月31日、中央市民センター大ホールにおいて、500人もの大観衆にお集まりいただいた市民集会。そしてその後、天神中央公園までのパレード。8万7000筆の全国1の署名。これらの勢いを駆って、給費制の運動は大きく弾みを付け、奇跡的に当面維持されました。その市民集会、今回は、少し視点を変えて行いたいと企画しております。
題して「法曹養成制度について考える市民集会~司法修習生への給費制維持をメインテーマとして~」です。
なぜ、給費制なのに「法曹養成」なのか?
その理由は二つあります。

■ 一つ目の理由
昨年、貸与制延期を決めた裁判所法改正と関係があります。
すなわち、裁判所法改正には衆議院法務委員会決議があり、その二項において「法曹の養成の在り方全体について速やかに検討を加え、その結果に基づいて順次必要な措置を講ずること。」と記載されています。これは、昨年の貸与制延期・給費制の当面維持には、法曹養成の在り方全体についてもう一度みんなで考えましょう、という「宿題」が国から与えられたと見ることができます。
これを受けて、政府は、法曹養成のあり方を検討するフォーラムを設置することにしています(3月中の見込み)。報道では、「関係省庁の副大臣や法曹関係者、有識者らで構成。司法試験合格者を年3000人に増やすとした政府目標の見直しや法科大学院の統廃合、今年10月末で期限が切れる司法修習生への給与支払制度などについて議論する」とされています。
給費制維持は、まさに養成途上の司法修習生に関わる問題であり、法曹養成と切っても切り離せない関係にあるのです。

■ 二つ目の理由
他方で、私たち給費制対策本部は、昨年来、「経済的理由で法曹を目指すことを断念しなければならない貸与制実施を、何としても阻止しなければならない」というスローガンの下で街頭宣伝活動を行い、市民の皆さんの賛同を得てきました。
法曹養成制度は、法曹を目指す人たちにとって、公正なシステムであることが必要です。そうだとすれば、経済的理由で法曹を断念せざるを得ないような制度であってはなりません。このことを、法曹養成制度全体の中で再確認する必要があります。

したがいまして、今回は、法曹養成という、ひとつの大きなキーワードを盛り込んだ集会を企画しております。
下記の通り、集会の要領を改めてお知らせいたします。
パネルディスカッションには、ジャーナリストの江川紹子さんにも参加していただくことが決定いたしました!江川さんは、総務省の「法科大学院(法曹養成制度)の評価に関する研究会」のメンバーであり、この問題に対する忌憚のないご意見がうかがえるものと思います。
どうか、会員の皆様におかれましては、昨年7月31日の市民集会同様、万障お繰り合わせの上、多数のご来集を心からお待ち申し上げております!!


■集会名 「法曹養成制度について考える市民集会
     ~司法修習生への給費制維持をメインテーマとして~」(仮)
■開催日時   平成23年6月4日(土)
          午後2時30分~午後5時
■場  所    西日本新聞会館16階福岡国際ホール大ホールA
          (福岡市中央区天神)
■概要(予定)  政府「法曹養成フォーラム」の進捗状況報告
           総務省「法科大学院(法曹養成制度)の評価に
           関する研究会」の報告
           ロースクール生、司法修習生、若手弁護士等への
           アンケート報告
           リレートーク
           パネルディスカッション

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.