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カテゴリー: 月報記事

「難民に関する研修会」開催のご報告

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会 員 岡 部 信 政(61期)

平成25年12月9日(月)午後5時より、福岡県弁護士会館にて「難民に関する研修会」が行われましたので、ご報告します。この研修会は、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)からの委託を受けた日弁連との共催によるものです。福岡では昨年に続いての開催です。講師は、関聡介先生(東京弁護士会)にお越し頂きました。

実は、福岡では現在、20名の弁護士でネパール難民弁護団を組織して、9名のネパール人難民申請者を支援しています。彼らは一時期大村入管に収容されていましたが、現在仮放免(長崎県弁の先生方のご尽力がありました)され、全員が東海地区に居住しています。そして難民不認定処分につき異議申立手続き中であり、審尋(名古屋入管で!)が行われつつあります。こうした状況をふまえて応用的、実務的な内容を中心にしつつ、初心者にも分かりやすいものとなるよう、お願いをしていました。

当日は、弁護団以外からも、長崎から参加頂くなど20名程度の参加者がありました。「難民」とは何か?という基本的な問題から(ただし、論点が多く含まれています)、難民申請手続(一次・異議)における弁護活動での留意点、訴訟における諸問題など、充実した資料と、経験に基づいた講義をしていただきました。訴訟はともかく、口頭意見陳述や審尋手続きについて経験が少ない我々は、それこそ「何を聞かれるのか」「何分話す機会を与えられるのか」といったつまらないことが気になっていましたので、関先生の講義を経て不安感はかなり払拭できたように思います。

日本での行政手続での難民認定率(平成23年)は一時手続・異議手続をあわせて1.5%であり、欧米諸国はいざ知らず、韓国の12%と比較しても「異常」と評価してよい状況です。しかも、難民参与員制度がとられている異議手続において、参与員が難民該当性を認めたにも関わらず法務大臣がその判断を覆すなど、制度が骨抜きにされている問題が報道されてもいます。申請者が増大して手続が滞留し、最終判断に数年かかることもあり、その地位は非常に不安定です。人権保障、手続保障のために弁護士が積極的に関与していくことが求められている分野です。

福岡入管を抱える当会としても、このような研修を通じて、難民事件に対応可能な弁護士を増やしていく必要があるでしょう。
さて、研修後には某有名もつ鍋店にて懇親会が行われました。忘年会の季節、地元の人間は食べ飽きた(?)感もありますが、楽しく情報交換をさせて頂きました。講師の先生もたっぷり堪能されたことと思います。

あさかぜ基金だより ~いぶすきだより~

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会 員 城 石 恵 理(63期)

ご無沙汰しております。私は、弁護士登録から1年9ヶ月余り弁護士法人あさかぜ基金法律事務所に所属した後、平成24年10月に鹿児島県指宿市の法テラス指宿法律事務所に赴任しました。今回紙面をいただき、指宿の様子を簡単にご報告したいと思います。

1 指宿市は、地図で見て鹿児島県左側、薩摩半島の南端に位置し、市内に指宿簡易裁判所・鹿児島家庭裁判所指宿出張所がある、人口4万3231人(平成25年12月1日現在、以下同じ)の都市です。事務所から車で約1時間のところにある鹿児島地方・家庭裁判所知覧支部の管内であり、南九州市(中心部に知覧町があり、そこに裁判所があります。人口3万7205人)・南さつま市(人口3万6598人)・枕崎市(人口2万2685人)との計4市が同裁判所管轄地域となります。
同管内の常駐弁護士数は私を含めて3名、その他に非常駐の鹿児島市内の法律事務所の支所と、任期付公務員の弁護士がいます。指宿市内には他に弁護士がいないため、一般事件の相談・受任をすることができ、最近では、受任事件の約半分ほどが家事事件です。週に数件相談があり、弁護士としての経験不足を補うため、あさかぜで見聞した様々な先輩弁護士の法的考え方や依頼者との接し方を折に触れて思い出し、参考にさせていただいています。
同管内の刑事事件は、福岡と比較してかなり少なく、かつ鹿児島市内の弁護士が多数国選名簿に登録しているため、実は来鹿してからまだ1件も刑事国選・当番は経験していません。事務所の一般相談で、示談金の額についての相談を受けたり、在宅の窃盗事件の示談について依頼を受けることは数回あり、国選・当番対象外の事件等につき地域の法律事務所として補完的な役割を果たすニーズがあると考えています。

2 枕崎市・南さつま市までは、車で約1時間半はかかり、そこから相談に来所されたり、出張相談で出かけることもあります。同管内の4市のうち、枕崎市を除く3市は鹿児島市に隣接していますが、鹿児島市内までは遠い、高齢で行けないなど難色を示す相談者もおり、司法サービスへのアクセスが困難な地域・相談者層があることを実感します。司法過疎の完全な解消には、もう少し管内の弁護士数増加が必要であると感じることもあります。一方で、所得水準や裁判所等への距離など、これまで司法過疎となってきた理由の一端は明らかであり、難しい問題です。
また、独居高齢者の認知症等が原因の近隣トラブル相談や、高齢化した親の相続に関する相談など、当事者の判断能力に疑問を持たざるを得ない類型の相談もあり、受任には大変気を使います。離婚訴訟や相続など、未経験の相談や手続きも多く、赴任当初から現在まで、あさかぜ時代の指導担当弁護士や先輩弁護士にメールや電話をして助言をいただくこともたびたびあり、非常に心強く、ありがたく思っています。
私自身、鹿児島は初めてなのですが、あさかぜ時代の九州沖縄の協議会や開所式等に参加したり、あさかぜ委員会自体で他県の先輩弁護士と顔を合わせる機会があったことで、赴任する際も各地への親近感という点でも違いがあり、九弁連で養成した弁護士を九州・沖縄の各地へ赴任させるというあさかぜの理念は、地域への愛着という点でも意味のあることだと感じています。

3 南薩地域は、日本百名山の一つである開聞岳や錦江湾、桜島など、裁判所の行き帰りに素晴らしい景色を目にすることができます。砂蒸し温泉や新鮮な食べ物、町ごとに異なる焼酎も楽しめます。当初は恐る恐るだった車の運転にも慣れ、気分転換にドライブをすることも多いです。
しかしながら、司法サービスという点に目を移すと、司法過疎ならではの問題があり、養成を受けて赴任をするという制度も現時点ではまだ必要なものではないかと思います。特に、九州で養成されること、また多くの先輩弁護士に関わっていただくことが、赴任後、実務上も心理的にも非常に助けになると感じています。九州・沖縄の司法過疎が解消するまで、これからもあさかぜで弁護士を養成し赴任していくことは、決して無駄ではないと思いますので、今後とも、あさかぜ基金法律事務所をどうぞよろしくお願い致します。また、南薩地域の事件がございましたら、是非ご紹介ください。

給費制本部だより 給費制が問いかけるもの ~法曹は誰のものか~

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司法修習費用給費制復活緊急対策本部 本部長代行
市 丸 信 敏(35期)

司法修習第66期生ほか新入会員の皆さん、ようこそ福岡県弁護士会にご入会を頂きました。本稿では、皆さんに司法修習生の給費制の復活のための運動についてご理解と今後のご協力を頂きたく筆を執りました。(なお、最近の運動や動きの詳細については、昨年5月以降の毎月の月報「給費制本部だより」をご参照下さい。)

1 給費制運動の系譜

福岡県弁護士会では、とりわけこの4年来、司法修習生の給費制の存続・復活のための運動に大変な力を注いで来ています。もちろん、日弁連や全国の弁護士会とも連携した運動としてです。

今次の司法改革の結果、司法試験合格者の大幅増員、多額の司法改革関連予算の支出などの理由によって、日弁連の反対にも拘わらず、平成16年に給費制廃止・貸与制への移行が決められました。本来は平成22年11月(新64期生)から貸与制となるはずでしたが、平成22年度における日弁連や全国弁護士会の熱烈な存続運動の結果、暫定的に貸与制実施を1年先送りし、その間に修習生の経済的支援問題を再検討すべしとする成果(議員立法による裁判所法一部改正)を得ました。

しかし、その翌春に発生した東日本大震災という特殊事情もたぶんに影響したと考えられますが、平成23年8月には、「法曹の養成に関するフォーラム」(H23.5~H24.5)において、給費制の存続を主張する日弁連はほとんど孤立したに等しい状況で貸与制を是認する意見が圧倒し、ついに同年11月(新65期生)から貸与制が実施されてしまった次第です。すでに貸与制のもとでの修習生は3期目を迎えています。

しかし、日弁連や全国の弁護士会はなお諦めず、フォーラム後継組織としての「法曹養成制度検討会議」(H24.8~H25.6)では、経済的理由によって法曹への道を断念する人が少なからず生じるなどの不都合が現に露わになってきていること、貸与制の下で修習生は過酷な経済生活を余儀なくされていること等々を、修習生アンケート結果その他のデータで訴えるなど懸命の巻き返しを図りました。その結果、給費制を支持する数名の有識者意見を引き出すほか、従前の貸与制是認の有識者委員からも、この(貸与制)ままではいけない、修習生に対するさらなる経済的支援が検討されるべき、との多くの声を引き出すことができました。ただ、残念ながら、検討会議のとりまとめにおける具体的方策としては、67期生から、移転料の支給、集合修習時の入寮の保障、修習専念義務の緩和(アルバイトの部分的容認)が実施されることになったなど、期待はずれに止まっていることもご承知の通りです(アルバイトの容認は本末転倒であると、日弁連は安易な専念義務の緩和に反対しています)。

2 給費制運動の展望

給費制については、あれほど力を入れて全国運動を展開し、その後2度にわたる政府審議会での検討の機会がありながら、やっぱり給費制の存続(復活)は無理だったか、とすでに諦めておられる会員も少なくないように感じます。しかし、まだまだ簡単に諦める訳には参りません。なぜなら、

(1) 検討会議では、佐々木毅座長自ら、後継の新たな検討体制で経済的支援問題を引き続き検討するように要望するとの発言を特別に残されたことからも伺えますが、上記の微々たる3点の措置も、法改正の手当をせずとも可能な応急的措置として講じるものであると理解されているのです。つまり、経済的支援の問題は後継の新たな検討組織での引き続きの検討課題であることが検討会議委員の共通認識とされ、その取りまとめでも、司法修習の充実方策を検討する上で必要に応じて修習生の地位のあり方やその関連措置を検討すべきことが明記されています。

(2) 確かに、国家財政の危機的状況の下で依然として財務省の壁は厚く高く、新たな検討組織である内閣官房の「法曹養成制度改革推進室」(H25.9~)でも官僚側の抵抗は根強く、また法曹養成制度の改革について解決が先送りされ推進室で取り組む課題も多く、修習生の経済的支援問題を俎上に載せること自体が簡単ではない現状です。しかし、推進室に対して意見を述べる立場の「法曹養成制度改革顧問会議」では、給費制復活の意見が出るほか、修習生の経済的支援問題を引き続き検討するという点では意見が一致しています。この問題は、司法修習の充実方策、法曹人口(司法試験合格人数)の見直し問題、法科大学院制度の改革問題など、目下、具体的方策が検討されつつある法曹養成制度改革の各論点とも密接な関係を有しており、今後、それらとの相互関係で貸与制の見直しが図られる余地が残されています。

(3) もっとも、すでに若者の法曹離れは著しく、その大きな原因の一つに過重な経済的負担問題がある以上、修習生に対する経済的支援問題の解決は急がなくてはなりません。その意味で、一昨年政権与党に復帰した自民党と公明党に、それぞれこの問題について積極意見が少なくなく、かつ、ダイナミックに早期の解決を期していることは追い風とも言えます。自民党(司法制度調査会)は、昨年6月の中間提言で、給費制については賛否両論があるとしつつも、司法修習の位置づけや修習生の地位のあり方を再検討し、修習生の過度な負担の軽減、経済的支援のあり方について早急に対策を講ずべきとして、政府や最高裁に対して6ヶ月以内の検討・報告を求めました。そのうえで、昨年11月には、政府の検討が不十分であると指摘したうえ、本年3月頃にも同党司法制度調査会の最終提言をとりまとめるとしています。公明党も、少なくとも研修医に準じた経済的支援が必要で、公務員の研修日額旅費制度に準じて給付をすべきとの考え方です。これら与党の動きや考え方は、当然、推進室や顧問会議などにも少しずつ影響を及ぼしつつあるように伺えます。

(4) 以上のような次第ですから、決して、諦めないで下さい。まだまだ巻き返しのチャンスはあります。以上の情勢に鑑みると、むしろ今こそ頑張り時と言えます。国会議員にも、与野党を問わず、給費制の意義を理解し、熱心に支援してくれている人は沢山おり、また、仮に賛同的ではない議員にも繰り返し要請し意義を伝えることで徐々に理解者は増えています。肝心の私たちが諦めてしまっては、何にもなりません。情熱と気概を持って、正しいことのためには粘りに粘る、との強い気持ちで取り組みを続け、政府や推進室・顧問会議に、また、国会議員にと、声を届け続けなければなりません。

3 給費制運動の根源で問われていること

この4年間、当会の歴代執行部と給費制本部は、会員の皆さんともども、街頭に立ってマイクを持ち、ビラ配り・署名集めを続け、市民集会・パレードを繰り返す等して、この問題の重要性を訴え、市民の皆さんの理解・支持をお願いしてきました。国会議員や諸団体に対しても、幾度も要請活動を繰り返して来て、今も続けています。国(財務省)の、「もはや国民的理解が得られない」との理屈が正しくないことを、圧倒的な国民的支持の広がりをもって示さなければなりません。

ですが、実際、運動の中で、市民の皆さんからよく尋ねられることに「どうして修習生は給与を貰える(貰えていた)のですか。資格はたくさんあるのに、修習生が特別扱いを受けるのはどうしてなのですか。」との素朴な問いかけがあります。市民の方と話すとき、正直、そこの説明が一番難しく感じるところですが、さて、皆さんなら、どのようにお答えになりますか。

私自身は、嬉しいことに、この運動を通じて、当会は、多くの先達を含む会員諸氏による熱心な会務活動、幅広い公益活動の歴史と日頃の弁護士業務のあり方によって、広く市民からの理解、支持を得ることができていることを実感することができました。ただ、残念なことに、当会ではこのところ大型不祥事も相次ぎ、手厳しい批判に晒され、信頼が揺らぎました。今後、会員数はいよいよ増大して、業務のビジネス傾斜的傾向は一層顕著になることが避けられないでしょう。

私たちは、これからもずっと市民の皆さんからの信頼と支持を寄せ続けて頂き、この給費制の復活を実現させるためには、不断に、どのようにあらねばならないのでしょうか。

ともに頑張って参りましょう。

「転ばぬ先の杖」

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広報委員会委員長
田 邊   俊(53期)

1 はじめに

福岡県弁護士会の月報は、昨年、500号という節目を迎えましたが、当初は純然たる会内広報誌という性格を有していました。しかしながら、その性格も徐々に変化しており、現在では、会員の各弁護士や弁護士会以外に、記者クラブ、県立図書館、地方自治体等の外部にも配布されるようになり、市民の目に触れる機会も増加して来ました。

そのような観点から、橋本執行部より、月報における対外広報という側面も強化されるべきではないかという意見が出され、広報委員会としても、対外広報の意味合いを有する連載記事を掲載することの検討を始めました。もっとも、対外広報とは言っても、月報は会内広報誌という性格も有するため、弁護士の自慢話と捉えられる記事を掲載することには躊躇を覚えざるを得ません。

そこで、この平成26年1月号から、実験的に、「弁護士が付いていれば、大事に至らなかった」、「当初、弁護士に相談していなかったので、大変なことになった」という事案をご紹介することで、弁護士の必要性ということを考えていただくコラムを掲載したいと考えております。題して、「転ばぬ先の杖」という連載記事ですが、第1回は、責任上(?)、私からはじめさせて頂きます。

2 事案

甲社は、上場企業の子会社で、機械販売を主たる業務とする株式会社であり、乙社は、福岡県に本拠を持つゼネコンでした。

乙社は、甲社の代理人Aとの間で、甲社がBより発注を受ける予定であった老健マンションの建設工事につき、乙社が甲社の下請けとなることにつき協議を重ね、その後、乙社の代表者らは、甲社の親会社である丙社を訪問し、応接室にて、甲社の専務取締役らの社員の面前で、Aに対し、乙社の記名押印済みの請負契約書(契約金額15億円)を手交しましたが、当日は、甲社の専務取締役の呼びかけで会食をしたのみで、その後、乙社は甲社の専務取締役名で記名押印された請負契約書をAから受領しました。

さらに、乙社はJ社との間で金12億円にて請負契約(孫請契約)を締結して建設に着手しましたが、地鎮祭には甲社の専務取締役らの社員が出席し、乙社は、毎月、甲社に対して、工事報告書を送付し、甲社の専務取締役、部長らも、工事期間中に工事現場を訪問していました。そして、本件マンションが完工し、乙社が、甲社に対して、引き渡しを行おうとしたところ、今まで甲社の専務取締役が関与していたにも拘わらず、「甲社は契約を締結していない」と拒否されたことから、契約の履行を求めて、乙社が、私の事務所へ相談に来られました。

その後も、甲社は、「専務取締役には代表権限がない。」、「契約書に押印された印鑑は、正式な社印ではなく、専務の私印である。」、「そもそも、Aへ代理権を授与した契約書も偽造されたものである。」、「地鎮祭に甲社の専務取締役が出席したのは、Aから頼まれたからに過ぎない。」等と主張をして本件マンションの引取りを拒んだ上に、注文者であるBにも支払能力がなかったことから、乙社は、J社への請負代金の支払いに窮することとなり、メインバンクに融資を求めたものの、メインバンクは、本件で乙社が多額の負債を抱えることを畏れて融資を拒否したことから、民事再生を申し立てざるを得なくなり、結局、自己破産に追い込まれることとなりました。

破産手続において、私が管財人より委任を受けて、甲社に対する損害賠償訴訟を提起し、過失相殺の結果、5億円の認容判決が出され、甲社が支払ったものの、お金は乙社の債権者に配当されたのみで、乙社はその50年の歴史にピリオドを打つことになりました。

3 結語

この不可思議な事件の背景には、甲社内における社長派と専務派の派閥抗争が存在し、新規事業で勢力拡大を図った専務派が社長派に敗れたこと、さらに、事業としての採算性に疑問の目が向けられたことから、甲社が本件マンションの引取りを拒んだのではないかと推測しています。

この事案において、もし、契約締結の段階において、弁護士に対して、「専務取締役との契約締結で法的な問題がないのか?」という相談がなされていれば、弁護士としては、「代表権限の確認が必要である」、「印鑑登録証明書での確認が不可欠である」との法的助言を与えたことは確実ですので、乙社が50年もの歴史にピリオドを打つことは避けられたはずであり、そのことが今でも悔やまれてなりません。

現在では、予防法務の重要性が叫ばれていますが、私は、予防法務という言葉を聞くと、本件を必ず思い出しますし、このような事案こそ、弁護士が転ばぬ先の杖であることを雄弁に物語るものだと感じています。

あさかぜ基金だより ~KBCラジオ「ひまわり号」出演記~

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弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 弁護士
青 木 一 愛(35期)

去る平成25年11月19日、KBCラジオ「ひまわり号」において、「弁護士過疎地域」をテーマとして採り上げて頂きました。このテーマとの関係で、当事務所に出演のお鉢が回って参りまして、私が当事務所を代表して出演いたしましたので、ご報告させて頂きます。

まず、出演に先立ち、当日の台本を作成致しました。私は、高校、大学時代と演劇部に所属し、脚本をやたらと書いておりましたので、当時を思い出しながら、ラジオ用の台本を作成致しました。

「ひまわり号」は、5分間ほどのコーナーですが、少しでも多くの話題を詰めたいと思うと、あっと言う間に10分間位の台本になってしまいます。一方、あまりに専門用語が飛び交う台本になってしまうと、耳だけで聞くリスナーの方には、何のことだか良く分からないことにもなってしまいます。この辺りの塩梅を考えながら、台本を仕上げる作業は、意外と骨の折れるものでした。

台本の内容については、耳に残りやすいキーワードということで、「ゼロワン地域」を切り口として話を始めることに致しました。ご存知のとおり、現在、「ゼロワン地域」については、「ゼロ」が解消、「ワン」も大分の佐伯支部を残すのみとなってきたので、そういう意味では、「ゼロワン地域」は、旬を過ぎた話題かもしれません。しかし、一方で、一時は、弁護士ゼロ地域が復活したり、ワン地域が増加したりするような出来事もありましたから、決して「終わった」問題であるということではないと思います。そのため、今回の放送においても、改めてゼロワン問題から話題をスタートすることに致しました。

放送当日は、放送1時間ほど前に、リポーターの方が事務所に来られ、早速、リハーサルとなりました。何回かリハーサルを重ねていくと、これまた、昔取った杵柄なのか、台本を「読んでいる」感じではなく、「自然な会話をしている」感じで話したい、と言った余計な目標が気になってしまいます。しかし、そうは言っても、リポーターの方から質問されるごとに、「えー」とか「はい」とか答えてしまうと、かえって聞きにくくなってしまいます。さて、どうしたものかと、あれやこれやと考えてみましたが、こうなってくると、「インタビューを受けている」というより、「演技をしている」といった方が近くなってきてしまい、心の中で苦笑してしまいました。

そうこうしている内に本番の時間を迎えることとなりました。結局、どのように話すと「自然な会話」に近いのかは皆目見当がつかなかったので、「大事な部分は早口で話さない」「しっかりと聞き取ってもらえるように滑舌よく話す」という、ごくごく当たり前のことを意識することに致しました。

本放送においては、地域に弁護士が少ないことによって生じる問題、このような弁護士過疎問題を解決するために九弁連が当事務所を設立したこと、当事務所の出身弁護士が九州各地のいわゆる「過疎地」に赴任し、地域の司法サービスの一翼を担っていることを中心にお話し致しました。また、法的トラブルに直面した方が弁護士に辿り着けるか否かが重要である、ということを日々の業務の中で改めて痛感しておりましたので、ありきたりな言葉ではありますが、「法律トラブルに直面されたら、お気軽にご相談下さい」ということもお話し致しました。このように、多方面な話題を織り込んだ結果、あっという間に、5分ほどの放送時間は終了を迎えました。内容面は散漫になってしまったかもしれませんが、何とか、皆様に聞きやすく話すことはできたのではないかと思っております。

最後に、この度のラジオ出演にあたっては、原田直子先生、網谷拓先生をはじめとした、対外広報委員会の皆様に大変お世話になりました。月報の場ではございますが、改めて、御礼申し上げます。

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