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「転ばぬ先の杖」(第5回)

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会 員 原 田 直 子(34期)

Aさんとは、20年くらい前に遺産分割の手続きのご依頼を受け、その後ずっと季節のご挨拶を頂いてお付き合いがありました。ご自分で届けてくださるので、時々のご心配事なども伺っていました。ご自身が再婚で、ご夫婦にはお子さんがなく、先妻のお子さんを小さいときに養子に出しているので、何かの時にはよろしくというおつもりだと解釈していました。私は度々遺言書をお勧めしましたが、突然倒れられ亡くなってしまいました。

不動産と預貯金はすべて妻Bさんに相続させるという自筆の遺言書が見つかり、検認も済ませました。ところが、相続財産を調査すると、自宅の他は、株や保険、投資信託などが主で、不動産と預貯金という文言ではカバーできない内容でした。さらに、相続対策と思われたのか、知的障がいのある末弟Cさんと養子縁組をされていました。結局、後見人を選任して遺産分割したのですが、遺留分以上の財産を分割しました。

Cさんは、独身だった2人の姉からも相当の遺産を相続しておられ、施設に入所して障がい年金で事足りているので、貯金が増えただけになりました。もっと強く、遺言書の相談をしていただくよう、お勧めすればよかったと後悔しました。

妻のBさんも、一人暮らしになった途端、物忘れがひどくなり、不安だと言われるので、将来に備え、任意後見契約と見守り契約を締結しました。毎月お電話をし、3か月に一度は姪御さんと打ち合わせて自宅を訪問し、おしゃべりをして、おいしいものを食べることにしました。女性3人、Aさんの思い出(悪口?)に花を咲かせ、楽しいひとときでした。私も、2人のお姉さんの遺産分割に関わり、親戚の方々の関係を把握していたので、話に入れたのです。

先日、Cさんがふとお墓参りに行きたいと漏らされたと聞き、姪御さんも誘って一緒にお寺に行き、Cさんの好物だった鰻屋さんに行きました。足が不自由になり、2人の姪御さんが両脇から抱えるようにして、お連れしました。Cさんの後見人も一緒でした。昔話に花が咲き、楽しい半日。帰りには、Bさんの大好きなチョコレートを買いに、博多チョコレートショップにお連れしたところ、目を輝かせて、チョコレートを選んでおられました。

ここで気づいたことは、Cさんの後見人が全く話の輪に入れないこと。選任されてから3年ほどですが、3か月に一度施設を訪問してはいるものの、一人では話すことがないので、姪御さんを同行し、姪御さんとの交流を見ているだけのようでした。「おじさん(Cさんのこと)は、お金はあっても、好きなことに使えないのはつまらないですね・・。」とは姪御さんの言葉でした。判断能力が低下してから士業の専門家が後見人になると、本人との交流は難しいようです。身上監護してくれる身内がいればまだいいですが、そうでなければ、ちょっと寂しい老後だなとしみじみ思ったことでした。

私自身も、子育てが終わり、親を見送り、還暦を過ぎて、自分の老後を真剣に考える時がやってきました。自分で自分のことを決められる間に、自分がどのようにして人生の終末期を過ごしたいか、その実現を誰に託すのか、決めることはたくさんあるなと感じながら、皆さんにも任意後見をお勧めし、元気な間は、みなさんの「転ばぬ先の杖」になろうと思う出来事でした。

「転ばぬ先の杖」(第4回)

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会 員 瀬 戸 伸 一(59期)

1 「転ばぬ先の杖」第4回を担当させていただきます。市民向けとお聞きしておりますので、事案も簡略化して紹介させていただきます。

2 借金問題

最近は減ってきたものの、自殺対策白書によれば、平成24年度に、借金問題(経済・生活問題)と思われる理由で自殺をした人が全体の19%近くいるそうです。

私のところにも、ある方が「今日、どうしても相談を受けてもらいたい。」と言って、その方の家族(依頼者)を連れてきたことがありました。

聞くと、依頼者は消費者金融に数百万円の高金利の借金があり、まじめに働いているが借金が減らない。自殺をしようと家で首をくくる準備をしていたところ、別の家に住んでいた家族が、数日前から様子がおかしかった依頼者を見に来たため、事なきを得たとのこと。本人は自殺するしかないと考え、「死なせてくれ」と言っていたが、その家族が「弁護士に相談してどうしようもないと言われたら死んでいいから相談に行こう」と説得して連れてきたということでした。

20年間程貸し借りの取引があり、利息制限法の制限利息で計算すると、返済する借金がなくなりそうな状況であったので、「借金が残るどころか、お金を返してもらえる(過払金)可能性が高そうです。借金が残るにしても、残らないにしても、死ぬ必要は全くないですよ。弁護士が受任すれば、請求も直接来なくなります。」と説明し、本人も安心して帰宅していかれました。

後日、消費者金融から返還を受けた過払金を依頼者に返還し、借金は全くなくなったことを報告すると、「あのとき、死なないで家族に相談に連れてきてもらって良かったです。」と涙ぐんでお話されていました。

自分が経営している会社も含めて、借金問題で自殺をする必要はありません。自殺を考える前に弁護士に相談していただければ、必ず、いいアドバイスが受けられるはずです。

3 合意書の作成

A会社の甲社長とB会社の乙社長は仲が良く、A会社とB会社とは長年取引がありました。

B会社の帳簿にはA会社に対する1,000万円の売掛金が載っていましたが、これは実は購入した商品に難があってキャンセルされた分で、実際には、B会社は請求できないものでした。

あるとき、この1,000万円の売掛金について、甲社長と乙社長が話をしました。乙社長は、「キャンセル分というのは分かったけど、売掛金が全部無くなると、大赤字になってしまうから、形だけ、売掛金があるということにしてほしい。今後は請求しないから。あと、今、会社の運転資金がないから、1,000万円のうち、100万円だけ支払う形でお金を融通してほしい。今後、B会社がA会社に売る商品の価格を値引きする形で返済をするから。」と言ってきました。

甲社長は、この話を信じて、乙社長の出す合意書にサインをしました。その合意書には、「A会社は、B会社の売掛金1,000万円があることを認めて、そのうち、100万円をすぐに支払う。」という内容しか書かれていませんでした。

A会社が100万円を支払った後、B会社からA会社に売掛金900万円の支払請求の裁判が起こされました。その裁判の中で、乙社長は、「売掛金は、キャンセル分などではない。合意書でも売掛金が認められているし、1,000万円のうち、100万円が支払われていることがなによりの証拠だ。」などと主張しました。

最終的には、900万円の売掛金は認められませんでしたが、それまでに、長期間裁判を行う時間、労力、費用がかかってしまいました。

嘘をつかれたことが本件の原因ですが、それでも、甲社長が、合意書にサインをする前に、弁護士に相談をしていれば、「当事者間の合意と合意書の記載が異なっている。このままサインすると危ない。」という忠告が受けられ、合意書にサインをしなかったり、合意内容がきちんと記載された合意書を作成したりしていれば、裁判にもならなかったものと思われます。

仲のいい間柄でも、いつ紛争になるかわかりませんので、簡単なものでも、合意書を作成する際には、一度弁護士に相談することをおすすめします。
ちょっと体調がおかしいと思ったときに、薬を飲んだり医者に見てもらったりしたほうが、大事に至らないのと同じように、この件大丈夫かな?とちょっとでも思ったら、弁護士に相談したほうが後日の安心につながります。

ITコラム

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会 員 是 枝 秀 幸(60期)

今回は、私が取扱う機会のある投資詐欺に関連して、実際の業務で利用しているITについて紹介させていただきます。弁護士がどこまでやるべきかという問題はあるものの、一つの情報を端緒に様々な情報を収集するよう、努めています。

1 Google  https://www.google.com/

・業者や関係者が運営しているサイト等

インターネット唯一神Googleの手にかかれば、業者や関係者に関連して、各種報道から、国や地方自治体による発表、弁護士や被害者等による情報提供や評判、業者が過去に出していた求人情報まで、様々な情報を得ることができます。

2 Internet Archive  https://archive.org/ ウェブ魚拓  http://megalodon.jp/

・過去のサイトの状態や記載内容の記録(過去ログ)

Internet Archiveでは、自動収集された過去ログの一部を見ることができます。

ウェブ魚拓では、自ら保存することができるほか、利用者により既に保存された過去ログがあればそれを見ることができます。

3 総務省  http://www.soumu.go.jp/

・固定電話や携帯電話の番号の割当先として指定された電気通信事業者

業者の使用している固定電話や携帯電話等の番号が判明している場合、当該番号の割当先として指定された電気通信事業者に対して弁護士会照会をすることで、契約者の名義・住所や利用料金引落口座が判明することがあります。

事前に総務省のサイトで電気通信番号指定状況を確認しましょう。

4 JPRS WHOIS /JPRS  http://whois.jprs.jp/ aguse.jp:ウェブ調査  http://www.aguse.jp/

・サイトの運営者に関する情報

WHOIS(フーイズ)とは、簡単に言えばウェブサイトの運営者を把握する方法の一つで、実際にやっていただいた方が分かりやすいと思います。

例えば、JPRS WHOIS /JPRSで、http://www.fben.jp/のドメイン(fben.jp)をもとに検索すると、登録者名(福岡県弁護士会)等の各種情報が表示されます。

業者のサイトのドメインをもとに検索することで、業者の氏名や住所や電話番号等が判明することがあります。

但し、ドメイン取得代行等がなされている場合があり、ドメイン取得代行業者等に関する情報しか得ることができないこともあります。

5 日本郵便株式会社  http://www.post.japanpost.jp/

・郵便物の配送状況に関する情報

業者に対して登記や住民票上の住所に郵便物を送付しても、業者が郵便物を転送させる等して、業者の実際の居所を掴むことが困難な場合があります。

郵便追跡サービスを確認することで、郵便物の配送状況に関する情報を把握することができますので、業者の実際の居所の参考になることがあります。

6 登記情報提供サービス【有料】  http://www1.touki.or.jp/

・法人の登記の有無や代表者の氏名・住所に関する情報

・法人の所在地や代表者の住所の不動産に関する情報

いずれも法務局で取得することのできる情報ですが、探索的に業者に関する情報を収集する際、検索機能により効率的に情報を収集することができます。

もっとも、認証文言は付記されていないので、裁判所に附属書類として提出する際は、法務局で認証文言付記謄本を取得する必要があります。

7 官報情報検索サービス【有料】  https://search.npb.go.jp/kanpou/

・業者や関係者に関連する官報公告に関する情報

業者や関係者の氏名等で検索することで情報が得られることがあります。

もっとも、同姓同名の方に関する情報にすぎない可能性もあるので、当該情報を端緒にした住民票等の職務上請求等は、第三者のプライバシーに配慮して、情報の関連性を十分に検討してからが良いと思います。

8 振り込め詐欺救済法に基づく公告トップページ http://furikomesagi.dic.go.jp/

・犯罪利用預金口座等に係る取引停止等の措置の有無や状況等

業者や関係者に関して措置がなされているか情報が得られることがあります。

9 その他

・業者が加盟している業界団体のサイト

・被害回復に取り組む弁護士のメーリングリスト

法律相談センターだより

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法律相談センター運営委員会 副委員長
金 﨑 智 久(59期)

平成26年3月8日(土)に天神地下街イベントコーナーで無料法律相談会を行いましたので報告します。

1、発端

昨秋、日弁連が「ひまわりお悩み110番」開設1周年記念として、各単位会に広報の行事を行うよう要請していました。これに応じれば補助金10万円が支給されるという話でした。

法律相談センター運営委員会では、10万円の補助金が出るなら、とりあえず何かやるということになり検討に入りました。検討の結果、昨年10月のRKBラジオ祭りで対外広報委員会が行った無料法律相談を参考にして、無料法律相談会を実施することとなりました。場所は、福岡市中心部の天神で行うこととしました。

2、準備

天神地区で無料相談会が実施できるイベント・スペースを探し、料金面、人通りの多さ、天候に影響されにくい点などを総合考慮して、天神地下街イベントコーナーを実施場所に決定しました。机、椅子、パーテーションなどはレンタルで準備しました。

事前の広報は、対外広報委員会の協力を得て、テレビ・ラジオのパブリシティ枠を利用した告知や西日本新聞の記事で取り扱ってもらうなどしました。

当会のPRという観点から、当会のテレビCMを会場で流し、当会のロゴマークパネルや「のぼり」を設置し、来場者と通行人に当会のパンフレットや広報用ポケットティッシュを配布することにしました。しかし、言うのは簡単ですが、実際に準備を行うと結構大変でした。当会職員の方々(大西さんや茂さんをはじめとした皆様)にご協力を頂きました。

3、当日

午前8時30分ころから準備を開始したのですが、既に、相談開始を待ち構えている人がいて、驚きました。午前10時開始予定だったのですが、前倒しして午前9時30分ころから相談を開始しました。準備や相談には、対外広報委員会から原田直子委員長ほか多くの方々にご協力を頂きました。

実際に開始すると、テレビ、ラジオ、新聞での広報の効果が出て、多くのお客さんに来ていただくことができました。相談机は3つ準備したのですが、お昼くらいには、終了予定の午後4時までの予約が一杯になってしまいました。そこで、急遽、丸テーブルを設置して、追加の相談にも応じることとしました。

最終的には、90組前後のお客さんが、この無料相談会を利用されました。しかし、それ以外にも、立ち話しでもよいからアドバイスが欲しいというお客さんもおられ、弁護士が立ち話でアドバイスに応じるというケースもかなりありました。そのような方々を含めるとお客さんの数は合計で100組を優に超えていたと思われます。

4、イベントを終えて

相談の内容は、相続や離婚が多かったのですが、それ以外にも種々の内容がありました。また、皆さんいずれも真剣な相談内容でした。オープンスペースでの相談だったのですが、特に気にされる方はおられず、この点は意外でした。

複数のお客さんから「次はいつやるのか」と聞かれ、このようなイベントに対する潜在的な需要が大きいと感じました。

当会と法律相談センターのよいPRになったと思います。このイベントにご協力いただいた対外広報委員会の方々、当会職員の方々に感謝いたします。

あさかぜ基金だより ~島原中央ひまわり基金法律事務所引継式~

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弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 弁護士
中 嶽 修 平(66期)

はじめに

平成26年2月24日、長崎県島原市のホテル南風楼にて、島原中央ひまわり基金法律事務所引継式が開催されました。あさかぜ基金法律事務所1期生の吉澤愛先生が、所長を退任されるため、事務所の後輩である私も引継式に参加してきました。

島原市について

島原市は、長崎県の南東部にある島原半島の東端に位置する、人口47,904人(平成26年1月31日現在)の都市です。そして、長崎地方・家庭裁判所島原支部、島原簡易裁判所の所在地です。さらに、島原半島中央部の眉山(標高818.7m)を中心として東側の有明海へ伸びる傾斜地となっており、湧水や温泉もある土地です。私は、島原の魅力を肌で感じるため、前日に島原入りしました。

まず、島原の郷土料理である具雑煮でお腹を満たしました。そして、アーケード街にある足湯で疲れを癒しながら、水路で泳ぐ鯉を眺め、水屋敷や四明荘を見て回り、心も体もリフレッシュ出来ました。夜は居酒屋に行き、居酒屋の店主の話を聞きつつ、有明海の魚を堪能しました。島原の住環境はとても良く、司法過疎地域への赴任を目指す私にとって楽しみが増えました。

引継式について

九弁連理事長の住田定夫先生をはじめ、日弁連副会長の大沢一實先生、日弁連公設事務所・法律相談センター委員長の藤田哲先生や長崎県弁護士会会長の梅本國和先生らが引継式に出席なさいました。そして、退任された吉澤先生と着任された平野正也先生が、任期中の感想や今後の抱負などを述べられました。

吉澤先生は3年間の任期中に、相談314件、事件121件を取扱い、刑事事件を同時期に9件ほど取り扱っておられました。また、保健所や社会福祉協議会などと外部機関との連携を深め、小中学生の法廷傍聴を実施されるなど法教育にも熱心に取り組まれていました。そのようなことから、裁判所や行政機関などからの信頼も厚く、さらに地域住民にコアなファンが生まれるなど、様々な方から頼りにされていました。

平野先生は、養成事務所である東京フロンティア基金法律事務所では、東日本大震災関連の相談業務や犯罪被害者問題に取り組まれてきました。そして、2代目所長の抱負として、吉澤先生が築かれた福祉関係者との関係をさらに発展させ、高齢や病気で相談に行くことが出来ない人のために、自分から近寄っていきたい旨、力強く宣言なさいました。また、平野先生は、大の温泉好きで、島原半島に泉質の異なる温泉があることもご存知で、どう入浴したら最も効果があるのか研究したい、とも述べられ、島原での生活を楽しみにされていました。

引継式の後は、引継披露会が開催されました。披露会には、島原市副市長、長崎地方裁判所島原支部長、地元司法書士会の関係者や九州各地の公設事務所の弁護士など、多数の方が駆けつけて下さいました。これだけ盛大な引継披露会になったのも、吉澤先生の島原での活躍と、平野先生への期待の大きさによるものだと思いました。

おわりに

今回の島原中央ひまわり基金法律事務所引継式は、翌日の地元新聞にも大きく取り上げられており、島原での大きな関心事でありました。また、ひまわり基金法律事務所が司法過疎地域に対し、司法サービスを提供してきたことの意義を再認識することが出来ました。
最後に、吉澤先生、3年間の任期大変お疲れ様でした。平野先生、より一層島原の住民のために頑張ってください。お2人の今後のご活躍とますますの発展を祈念いたしまして、結びの言葉といたします。

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