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カテゴリー: 月報記事

「転ばぬ先の杖」(第10回)

カテゴリー:月報記事 / 転ばぬ先の杖

会 員 井 上 健 二(58期)

1 弁護士を活用する場合のイメージとしては、「事件の代理人として、弁護士が、自分の代理人として名前を示して、交渉や裁判で戦ってくれる」というイメージが一般的ではないかと思います。

しかし、弁護士を活用するにもいろいろな方法があり、活用の仕方によっては、紛争を防ぎ、より良く、かつより安く解決ができる場合もあります。

今回の「転ばぬ先の杖」では、一般的なイメージと違う形での弁護士活用法をあげてみます。

2 相手方との感情的なもつれが激しい場合

離婚問題や相続問題など様々な問題について、相手方との長年にわたる感情的なもつれやこじれが生じている事案では、いきなり弁護士が代理人として登場すると、さらに相手方の感情面を刺激してしまい、より紛争性が高まってしまった結果、訴訟にまで至ってしまうということがあり得ます。

そのような場合には、むしろ、最初は、弁護士を表に出さずに、弁護士から法的問題点や相手方とのやり取りの方法、紛争解決までの見通しやコストなどについて助言を受けながら、自分の名前で文書などにより意思表示することから始めてみるほうが良いこともあります。

その場合、弁護士に文書を作ってもらって、自分の名前で相手方に対し文書を出すということを検討してもよいかもしれません。そういった穏当なやり方を続けていくうちに、次第に感情面のこじれがときほぐされ、裁判にまでならずに解決する可能性もあります。

3 紛争の内容が必ずしも純粋な法律問題ではない場合

世の中で起きる紛争には、様々なものがあり、必ずしもそれらの全てが純粋な法律問題として発生するわけではありません。例えば、親族や知人などの人間関係の問題、男女の問題、近隣の問題など・・・。

弁護士は「法律の専門家」だから、法律問題以外の問題を弁護士に相談しても果たして意味がないでしょうか?その答えは、NOです。

弁護士は、「法律の専門家」でもありますが、「紛争解決の専門家」でもあります。「紛争解決」の肝がどこにあるのか、という視点から弁護士は助言できるので、その助言は役に立つことが多いでしょう。

また、弁護士は、紛争解決にとって「重要な事実」と、「そうではない事実」の切り分け作業にとてもよく長けています(訴訟における事実主張の際にそのような作業をいつも行っているからです。)。それゆえ、いかなる紛争においても、解決のために有益な視点を提示できる場合が多いように思います。

4 事業活動における活用

事業活動においては、必ずしも事業上のトラブルだけではなく、様々な場面で弁護士を活用できます。

例えば、一般的には、いわゆる「商談」に弁護士を関与させるイメージはないかもしれませんが、自社の利益を決する「値決め」交渉などにおいて、交渉の進め方の方針立案、相手方に対する提案のための文書作成、協議事項の優先順位の判断など、様々な場面で弁護士を活用することは、自社の利益を守るために有益となる場合があります。これは、日々法的交渉を業務として行っている弁護士の「交渉の進め方の勘所」を活用するものです。

また、大企業においても、「消費者の視点からみて、その企業の判断が正しいか否か」を検証する際に、消費者の目線を持った弁護士の意見を聴取することは今後これまで以上に重要になってくるでしょう。

このように、事業活動においては、弁護士の活用法として、その「法律知識」だけでなく、スキルや立場を活用することができるのです。

5 以上のように、弁護士にはいろいろな活用法がありますので、「ちょっと誰かに話を聞いてほしい」という段階からでも、是非、弁護士に相談してみてください。自分では気づかなかった解決のヒントが見つかるはずです。

裁判ウォッチングのご報告

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法教育委員会委員 楠 木 玲(65期)

平成26年10月14日から20日まで、福岡地方裁判所において、「裁判ウォッチング」が実施されました。私は、14日の午後の部を担当しましたので、当日の様子について、ご報告致します。

まず、弁護士会館3階に集合後、参加者の方々に、裁判に関する簡単な説明のDVDを観ていただきます。
その後、3班に分かれてもらい、引率担当の各弁護士から、これから傍聴する事件についての簡単な説明と、傍聴に関する注意事項を伝えて、法廷へ向かいました。
私は、小学生のお母様方の集まり6名の担当でした。裁判傍聴の経験がある方はお一人だけでしたが、皆さま、裁判に興味津々の様子です。

当初、裁判員裁判事件を傍聴する予定でしたが、ちょうど休廷中であったため、急遽、他の事件を傍聴することになりました。
そこで、まず、民事裁判の弁論手続を傍聴しました。この裁判は、貸金請求事件で、被告側に代理人がついていない本人訴訟であり、分割払いの具体的な内容を決めていく内容でしたので、参加者の方にとってもわかりやすいものだったと思います。

次に、刑事裁判の傍聴に移りました。
途中から入った一件目の事件では、証人が遠方に住んでいて出頭が難しいため、期日外で所在尋問を行うこととなり、その調整についてのやりとりが行われていました。私自身、修習中を含め、このようなやりとりを見たのが初めてでしたので、とても参考になりました。
裁判ウォッチングのときは、他の先生方の裁判を堂々と(?)傍聴することができるので、引率担当者にとっても、法廷技術を学ぶことができる非常に良い機会だと思っております。

続けて、同じ法廷に入り、覚せい剤事件について、結審まで一連の手続を見ることができました。
傍聴の後、次の事件まで少し時間があったので、それまで見た事件について、私から簡単に説明をしました。
参加者の方々の一言目の感想は、「裁判は思っていたより分かりやすい」というもので、少し意外に感じました。その後、次々とご質問を頂きました。
例えば、裁判官が丁寧に被告人質問をされていたのを見て、「裁判官はじっくり書類を読んで裁判に臨まれるんですか」という質問があったので、起訴状一本主義の説明をしたところ、裁判官は事前に証拠を一切見ていない、ということに非常に驚かれていました。
しかし、その直後に、「そういえば、途中で検察官が書類を渡してましたよね。あれが証拠ですか。」という鋭い質問が来たり、「証拠の甲(号証)と乙(号証)とは、どう違うんですか。」という、あまり聞かれないだろうと思っていた質問が来たりしました。参加者の方は、どの方も非常に興味を持って傍聴してくださっており、細かいところまでよく見られているなぁと感心しました。
その後も、裁判員制度や量刑に関する質問から、検察官・弁護士の仕事だけでなく、書記官の仕事に関する質問まで、途切れることなく、たくさんのご質問を頂きました。

充実した裁判傍聴の後、弁護士会館に戻り、参加者の方々にアンケートを書いていただいて、解散となりました。
私が担当した参加者の中には、「一人で傍聴に来ても構わないんですか」と聞かれる方もおり、裁判に興味を持ってもらえて、とても嬉しく感じました。
今後も、たくさんの方に裁判ウォッチングに参加していただき、裁判に興味を持ってもらえれば幸いです。

災害対策委員会報告(東北大震災関連) 福島現地視察のご報告(1)

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会 員 池 上 遊(63期)

1 はじめに

平成26年11月1日から4日まで、災害対策委員会有志(岡部史卓、吉野大輔、吉村敏幸各会員と私)で福島現地視察へ行ってきましたので、今月号・次号に亘りご報告します。平成24年11月25日から28日にかけても同様に視察を行いましたが、このときにもご案内、コーディネートいただいた「市民ネット」(当時はふくおか市民ネットワーク)の方に今回もお世話になりました。なお、前回の視察については、月報492号、493号に宮下和彦、青木歳雄各会員の報告が掲載されています。

また、今回は、広島から、避難者の支援をされている団体であるアスチカの方々、広島県弁護士会から避難者の支援をされている会員も2名参加してくださいました。

2 1日目(11月1日)

午前9時に成田空港に到着し、そこから車でいわき市内へ移動しました。いわき市は、「フラガール」で有名な「スパリゾートハワイアンズ」のある県内人口第2位の都市です。ここでは、「いわき放射能市民測定室たらちね」と「チャイルドハウス ふくまる」を視察しました。

・たらちね(写真(1)、(2))

こちらでは、市民からの要望に応え、様々な場所の線量、放射能濃度を出張で測定したり、市販の食品や学校などの土壌の放射能濃度、ホールボディカウンタによる内部被ばく量の測定などを民間で行っています。線量や放射能濃度を測定する機器類は非常に高価なものが多く、こちらでは、そうした機器類を寄付などにより購入し、測定結果についてホームページで公開するなどしています。職員の方は、この間までゴルフ場で働いていましたとおっしゃる女性の方などがいて、ごく一般の方が白衣を着て科学者のように放射線や放射能の測定についてお話をされているのに驚きました。

視察翌日に、ベータ線を測定できるよう検査室が新たに整備され、そのお披露目会が開かれていました。この整備のために約3,000万円を要したとのことでした。

・ふくまる(写真(3))

こちらは、被ばくを避けるために屋外で遊ぶことが困難な子どもたちのために、10時から16時まで、無料で開放されている遊び場です。私が子どもの頃には見たこともないような遊具が多数置いてあり、子どもたちの発育が懸念されている福島では貴重なスペースだなと感じました。

3 2日目(11月2日)
・現地視察

午前8時頃にはいわき市を出発し、国道6号線を北上して浪江町へ向かいました。6号線は、福島第一原発事故後、警戒区域(その後、帰還困難区域)に指定され、原発近辺は通行不能となっていましたが、視察の約2ヶ月前、9月15日から自動車の通行に限って許可されるようになりました。

通行中に線量を計測した方によれば、車内で窓を閉め切った状態でも5~6程度とのことでした(単位はマイクロシーベルト、μSV/h)。報道によれば、車外では10程度になる箇所もあるとのことでした。福岡市内ではおおむね0.04~0.05という数値になるところです。

私たちが視察した当時は、1号機の建屋カバーの解体工事が始まると言われていた時期でしたが、通行中に確認することはできませんでした。

浪江町の様子は、前回の視察のときとほとんど変わらず、月報492号で宮下会員が報告されているとおりのものが事故から3年半以上が経過してもそのままとなっています。「ほとんど」としたのは、復興に向けて徐々に町役場の職員などが入って、主要な道路が整備されるなどしているためです。町内あるいは町外からの廃棄物処理のため、中間貯蔵施設や焼却施設などが設置されているところもありました。

・二本松市の仮設住宅

浪江町の方々が多く入居している二本松市内の仮設住宅を訪問しました。当日は、芋煮会のあとの反省会中というタイミングでしたが、皆さんから温かく歓迎していただきました。

浪江町は原発から10~20km程度しか離れておらず、線量が高いところも多いです。来年を目途に区域指定の解除が検討されているようですが、3年半以上が経過して帰還する住民がいるのか、町外コミュニティの検討もされているようですが、復興ができるのか、どのような復興をデザインしていくのか、とても難しい課題に直面しているのではないかと感じました。

以下次号

インターネット被害110番報告

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会 員 塗 木 麻 美(62期)

1. インターネット被害110番について

ホームページ委員会では、平成17年より、毎年無料の電話相談「IT・インターネットトラブル110番」を実施しています。パソコンやインターネット、通信などのITに関する法的なトラブルについて、ITに詳しい弁護士が無料で電話相談に応じるというものです。

この無料電話相談をきっかけに、通信機器設置詐欺の事案について弁護団が発足したこともあります。また、相談内容は「IT」にからむものなら何でも、ということなので、今、一般の方がどのようなITに関するトラブルを抱えているのかを知る機会ともなり、弁護士にとっても有用な取組みだと思います。

2. 事前の広報

ということで、今年度も、年度初めに実施日が10月9日と決まりました。ただ、この日程が市民の皆さんに報知されないと、電話のかかってきようがありません。毎年頭を悩ませるところですが、大きくは消費者生活センター経由と、テレビ・ラジオといった広報枠の活用、また、ネットの活用ということになります。今年は初めての試みとして、県弁護士会の「バナー」(大型告知枠)も活用させていただきました。

私は対外広報委員会にも所属していますので、各委員会の「110番」企画について、広報の依頼を受けることも多いです。「110番」企画の広報で一番効果的なのは、「今まさに電話を受け付けています!!」といったテレビショッピング的なリアルタイム性のあるものだと思います。告知を聞いて、「相談したいな」と思っても、実施日まで間隔が空くと、忘れてしまったり、都合がつかないことが多いと思われます。

そのため、110番の告知は「当日、その時間帯」がベストだと思います。110番を企画されている各委員会の方々、ぜひ早めの広報依頼を対外広報委員会までお願いします。もちろん、テレビ・ラジオの告知枠にはいろいろ制約があり、全てのご希望にお応えできるわけではありませんが、早めに教えていただければ、日程などは結構融通が利きます。逆に、せっかくおいしい告知枠があるのに、広報することが何もない!という悲しい事態(年に数回発生します)はできるだけ避けたいのです。どうぞよろしくお願いします。

・・・すみません、だいぶ脱線しましたが、今回のIT110番も、当日、KBCラジオ「パオ~ン」内の、「ひまわり号レポート」という枠で、告知をさせていただきました。ひまわり号レポートは、中継車「ひまわり号」がやってきて、かわいいレポーターさんが、その場でインタビュー・生中継してくださるものです。

ちなみに、昨年のIT110番も、当日、ひまわり号レポートの告知を実施しました。昨年は松尾重信先生が担当され、落ち着いた語り口と噛み砕いた説明が功を奏し、生中継中から電話が鳴り響くというたいへん素晴らしい告知効果がありました。相談件数も13件と盛況で、多くが「ラジオを聞いて電話した」というものでした。

今年も、同じようにひまわり号がやってきて、私が出演させていただきました。できるだけわかりやすくお話ししたつもりでしたが・・・。

3. 今年の実施状況

結論から言いますと、相談は7件と、昨年から半減してしまいました。ここ近年の実績からすると、少なくはないですが物足りない数字です。相談内容は、(いかがわしい)サイトにワンクリックで登録されてしまった、ホームページ制作契約をしたがホームページを作ってもらえない、掲示板の書き込みに削除依頼したが一向に削除されない、といった、まさにIT・インターネット被害に関するものがありました。これらの問題に詳しい弁護士が、直接具体策を提示するこの電話相談は、非常に有益なものだと思います。

なので、願わくばもう少し電話がじゃんじゃん鳴ってほしいのですが・・・。私見ですが、この電話相談は、男性の比率が通常のものより高い気がしており、それも上記のような「いかがわしい」問題が多少混じっている相談が多いため、やはりラジオの出演者は男性の弁護士の方がよいのではないかとも思います。もっとも、委員の先生方は、「そんな相談ばっかり増えてもしょうがない」と言っておられましたが。
来年は、より広報に工夫をして、多くの皆様にご利用いただきたいと思います。今年もご担当いただいた、菅藤委員長、松尾先生、藤井先生、瀬戸先生、ありがとうございました。来年は初参加の先生方もお待ちしております。

サクラサイト被害等110番報告

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会 員 井 口 夏 貴(61期)

本年8月25日(月)午前10時から午後4時まで、県弁消費者委員会の企画で、サクラサイト被害等の悪質インターネット被害についての無料電話相談を実施しましたので、ご報告します。

サクラサイト被害とは、出会い系サイト等のサイト運営業者が雇ったサクラが、会社社長や芸能人、占い師、弁護士などに成りすまし、携帯メールなどを使って言葉巧みにサイトに誘導し、登録させて、メールのやり取りのためのポイント購入、口座開設費用などの名目で多額の金銭を支払わせるというインターネットサイトを通じた消費者被害です。

例としては、出会い系サイトで、異性と直接会うための連絡のためにメール交換用のポイントを購入したけれど、いつも直前でドタキャンされ、ひたすらメールのやり取りばかりが繰り返され、利用料が高額化するというものが典型的でした(そのため以前は「出会い系サイト被害」「出会えない系サイト被害」などと呼ばれていました。)。

他にも、会社社長と名乗る人物から「即金1,500万円援助します」などの迷惑メールを受け取った経験をされた方もおられるかと思いますが、ここから、振込のための口座開設費用を振り込んでほしいだとか、あるいは、送金用のパスワードを送ったが、文字化けしており、その文字化け解除のために、メールを送ってほしいだとか、いろいろな理由をつけて、金銭を支払わせる類型、芸能人やそのマネジャーと名乗る人物から、芸能人の相談に乗ってやってほしいと言われて、サイトに誘導され、有料のメール交換を延々と続けさせられ、お金が無くなったから辞めたいというと、自殺する、などと脅され、やめられず被害が高額化したという類型など、様々な類型が派生しています。最近では、占いサイトでも、サクラによる被害事例があるとの報告もあります。

いずれも、結局儲かっているのはサイト運営業者だけということを考えれば、サクラによる詐欺被害が強く疑われるものです。

全国にサクラサイト被害について取り組んでいる弁護士、弁護団があり、数年前から年に1、2回程度、それまでの成果や事例報告を行う全国協議会をしているのですが、その全国協議会の呼びかけで、毎年8月か9月頃に、全国一斉の無料電話相談をしており、本年で第4回の全国一斉無料電話相談になりますが、サクラサイト被害については、弁護士でもご存じない方が多く、いわんや被害者をや、という感じで、被害に気付いておられない方も多いのではないかと思います。

しかし、福岡でも、数百万円単位での被害に遭われている方がおられますし、中には2,000万円の被害にあった方もおられ、決してその被害は、看過できないところです。

昨年は事前の広報がうまくなかったこともあり、相談なしという結果に終わったのですが、今年は、対外広報委員会から、KBCラジオの当日の生放送での告知枠を頂いたこと、サクラサイト被害に特化せず、広く悪質なインターネット被害についても相談対象としたことなどの結果、相談件数8件(うちサクラサイト被害については2件)と、なんとか昨年の雪辱ができました。

無料電話相談実施後も、ちらほらとサクラサイト被害の相談があり、110番での被害把握は十分ではなく、まだまだ潜在的な被害事例があるのではないかというのが実感です。
サクラサイト被害については、早期の相談によって被害回復できる場合もありますので、この記事を読まれた会員の皆様も、同様の相談がありましたら、是非、被害回復に向けてご尽力いただければと思います。

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