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カテゴリー: 月報記事

片山昭人判事講演会

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会 員 岡 田 美 紀(66期)

1 はじめに

昨年平成26年12月5日、福岡高裁の片山昭人判事による講演会が行われました。

片山判事は、昭和62年に判事補任官、平成2年からは弁護士としてご活躍された後、平成19年に弁護士任官で判事に任官されました。

実は、片山判事には一昨年もご講演いただいたのですが、その際のお話が大変好評を博し、再度ご講演いただきたいとの要望が多く寄せられたことから、今回の講演会を開催する運びとなりました。昨年1月号の月報にも片山判事が執筆された記事が掲載されておりましたので、ご存じの先生方も多いのではないでしょうか。

講演会当日は、師走の大変忙しい時期、しかも金曜日の夜だったにもかかわらず、弁護士会館3階ホールの席が足りなくなるほどの大盛況でした。中には県外から足を運ばれた先生もいらっしゃったようで、片山判事のご講演に対する期待の大きさが窺われました。

2 講演

片山判事には、「”後発”は明確に優れていなければならない~若手弁護士への期待」をテーマにご講演いただきました。

(1) 人間力

まず冒頭で、一流の法律実務家に必要な実力とは、知力・胆力・体力を総合した「人間力」であるとのお話しがありました。若手は自らを鍛え、この「人間力」を高めていかなければならないのですが、成長する上で大切なのは、大変な状況に置かれたときに、弁解や不満ではなく「HOW(どうすればいいか?)」を考えることだといいます。「厳しい制約の中でこそ成長の余地がある」という片山判事の言葉に、苦しいことから逃げ出してしまいがちな私は大変反省させられました。

(2) 訴訟追行能力

続いて、我々弁護士にとっても気になる、訴訟追行のポイントについてのお話しがありました。

訴訟追行とは、裁判所を説得することであり、説得の方法、説得材料である証拠収集の方法、収集した材料を基にしたプレゼンテーションの方法等について、ご自身の経験談も交えながら具体的に解説していただきました。

日本の訴訟制度上、証拠収集には様々な制約がありますが、片山判事はそれをカバーするために様々な工夫をされており、経験の少ない若手弁護士にとっては大変勉強になりました。裁判所の説得にあたっては、核心を突いたシンプルな主張を行うことが大切なのですが、シンプルな主張をするためには、時間をかけて十分に証拠を収集・整理し、事案を分析しなければならないのだということを改めて実感いたしました。

(3) 弁護士任官

冒頭でもご紹介したように、片山判事は弁護士任官者でいらっしゃいます。片山判事は、弁護士任官制度の意義として、裁判官が体験しないことを体験している弁護士が任官することで、裁判所に複眼的な思考をもたらすことなどを挙げられていました。今回の片山判事のご講演も、裁判官・弁護士双方の立場を踏まえた多様な視点からの内容で、弁護士任官者ならではのものだったように感じます。

今後、弁護士任官者が増え、裁判の質がさらに向上していくことを願っております。

3 おわりに

片山判事は、抽象的な事柄であっても、端的なキーワードを使ってわかりやすく説明されており、すっと頭に入る上、記憶にも深く残りました。ご講演の内容はもちろんですが、巧みな話術は、まさに「説得する力」にほかならないと感じました。
片山判事をはじめ、優秀な諸先輩方から学ぶことができるのも、”後発”である私たち若手の特権です。多くを学び、人間力を高めて、優れた法曹実務家を目指していきたいと思います。

紛争解決センターだより ~医療ADRを「おススメ」する、3つの理由~

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あっせん・仲裁人 弁護士
南 谷 敦 子(51期)

昨年夏、福岡県外に住む当事者(患者遺族)が医療ADRを申立てました。申立てを受けたのも、県外の病院です。九州の他県の弁護士会には医療ADRがないため、患者遺族は当会の医療ADRを利用したとのこと。

3名の会員弁護士が関与し、4回にわたるあっせんの末、事件は和解が成立し、病院側は一定の謝罪をするとともに、和解金の支払いにも応じることとなりました。

医療側に立つ私としては、当初、一定の抵抗も感じはしましたが、和解が成立すると何とも表現しがたい、シンプルに言えば「嬉しい気持ち」になるものです。

さて、当会の医療ADRを「おススメ」する3つの理由を挙げます。

理由(1) 患者側・医療側の専門性を利用できる。

医療ADRは、3名の弁護士があっせん・仲裁を行います。うち1名は、元裁判官の弁護士が委嘱されることが多く、残る2名は、患者側代理人として活動する弁護士と、医療側代理人として活動する弁護士。その3名が一体となって協力し、解決のために知恵を絞ります。

当事者は、この3名のそれぞれの専門性を利用することができます。

理由(2) コストが圧倒的に安い。

申立手数料は金1万円。3人の弁護士が1回あたり数時間かけてADRに臨むこと、天神弁護士センターの比較的ゆとりある空間を利用できること、等を考えると、申立人のコストは圧倒的に安い。手数料減免手続もあります。

理由(3) 弁護士に依頼しなくても、本人がひとりで利用できる。

弁護士に着手金や報酬を支払って依頼しなくても、本人がひとりで手続きを利用できます。カルテや診断書、損害を裏付ける資料の準備は最低限必要ですが、それが揃えば自分でできる。

会員の先生方も、患者側あるいは病院側から医療過誤関連の相談を受けたとき、受任をためらうことがあるかもしれません。そんなときこそ、医療ADRをご紹介下さい。

ところで、医療ADRである以上、相手方の出頭は任意であり、強制力がない点は致し方ありません。司法手続でない以上、どんなADRにも内在するものです。

そんなADRながら、世に起きる人と人との紛争は、いずれ解決する時が来るものです。

紛争が解決する、たった一つの「条件」

それは、当事者双方が、「ここで解決したい(してもいい)という思いがあること」に尽きます。

3名のあっせん委員弁護士は、双方にこの「思い」があることを感じ取るや否や、一体となり連帯感を持って、解決へ向けて力を注ぎます。

この思いが、あっせん委員弁護士の連帯感も伴って、遂にひとつの意思の合致をみるとき、そこに何ともいえない気持ちのいい調和(ハーモニー)が生まれると私は感じています。

複数の人間が同時に「ラーーー♪」という音声を発生するとき、当初、音はバラバラで不協和音を生みますが、不思議と、ある瞬間から一つの同じ音程になりますね。

普段は医療側の立場で交渉・訴訟を遂行する私も、今回のADRでは第三者の立場からこの調和(ハーモニー)が生まれたことに、安堵と小さいながらも暖かい喜びを感じました。

今回、特にご尽力いただいた小林洋二先生も、暖かく成立まで粘っていただいた宮良允通先生も、きっとそうですよね?お導き、ありがとうございました。

*仲裁手続きについて、補足*

あっせん以外にも、仲裁手続きがあります。これは、あらかじめ、当事者が仲裁合意(紛争解決を仲裁人に委ね、かつ、その判断[仲裁判断]に服する旨の合意)をする必要があります。この場合、確定判決と同一の効果が得られます。

「転ばぬ先の杖」(第11回)  事業者のみなさんへ~事業承継対策の必要性

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中小企業法律支援センター委員長
 池 田 耕一郎(50期)

1 事業承継対策の必要性

私たち弁護士が中小企業の経営者から相談を受けていますと、以前と比べて、事業承継対策の必要性を意識している方が多くなったように感じます。

しかし、「事業承継の話はまだ先」と考える経営者が依然多いのも事実です。実際、事業承継対策の必要性は認識しつつも、対策が進んでいない企業が6割もあるという調査報告もあります。

企業経営者にとって、後継者にバトンを渡す「事業承継」は重要課題の一つです。後継者へのバトンタッチがうまくいかなければ、企業の成長が止まり、業績の停滞を招くおそれがあります。最悪の場合、廃業に至るケースもあります。また、事業承継対策は、単にその経営者個人の問題ではなく、従業員やその家族の生活、地域活力を維持することにもつながります。取引先からの信用評価という観点からも、相手先企業の事業の継続性に対する不安がマイナスポイントになることは否定できません。

2 承継の方法

事業承継の方法には、一般に、(1)親族への承継(親族内承継)、(2)従業員等への承継(企業内承継)、(3)第三者への承継(社外から次期経営者を迎え入れる、M&A等)の3つがあるとされています。

独立行政法人中小企業基盤整備機構の「事業承継実態調査報告書」(平成23年3月)によると、「家族・親族への承継」が40.2パーセント、「役員・従業員への承継」が14.3パーセント、「第三者への承継」が2.6パーセントという結果が出ており(「明確に決まっていない」は28.8パーセント)、中小企業経営者がまず検討するのは親族内承継のようです。他人よりも身内のほうが無理がきく、という要素があるかもしれません。

M&Aときくと、かつては、将来に向けた明るいイメージよりも「身売り」のイメージが先行していたように思われますが、最近では、経営状態がよく企業価値が高いうちに事業を譲りたいという企業経営者も増え、M&Aに対する潜在的需要が増大しているようです。買い手候補として多角経営をめざして他社の事業を引き継ぎたいという企業も増えています。

中小企業版M&Aを推進する公的機関として「福岡県事業引継ぎ支援センター」が設置されていますが、国は、さらに中小企業のM&A支援策を推進するため、中小企業向けM&Aガイドラインの策定に向けた検討を始めました。

3 まずは弁護士に相談を

事業承継対策というと、税務面が頭に浮かぶという方も多いかもしれませんが、税金対策だけでは、次期経営者に安定した経営権を確保することはできません。

個人企業であれば、企業の権利関係と個人の権利関係が明確に分離されないため、相続に関する法務面の対策が不可避です。

法人企業(株式会社)の経営者であれば、相続問題とともに、株式の分散を防ぐ方策が重要な検討課題です。少なくとも取締役の選任決議を通せる過半数の株式(議決権)を、さらに合併や会社分割などの会社の行く末を決定する重要な決議を通すことができる3分の2以上の議決権を確保できる株式を次期経営者に残したいところです。株式以外に十分な資産がない場合には、種類株式の活用も検討すべきです。株式は相続分に応じて各相続人が分割取得するのではなく、遺産分割がなされるまで全相続人が共同して相続する(いわゆる準共有)状態になり、経営を不安定にするおそれがあります。遺言書の作成を含めた対策が必須です。

日常の商売(事業)をしながらでは、なかなか腰を上げるのが難しいかもしれませんが、事業承継対策は、企業経営者にとって避けては通れないテーマです。まずは、どこから取りかかるべきか、ワンポイントアドバイスだけでも受けてはいかがでしょうか。前述したように、事業承継対策にはすべて法律問題が絡みます。弁護士に相談することで、普段は子細に検討することの少ない部分も含め、事業全体の状況を明確に把握でき、事業承継のスキームづくりが見えてきます。

福岡県弁護士会では、中小企業の事業承継対策を積極的に支援しています。

弁護士の事務所で気軽に相談できる事業者のための相談窓口「ひまわりほっとダイヤル」を開設していますので、ぜひ活用してください(初回面談相談無料)。

ひまわりほっとダイヤル

電話番号 0570-001-240
(申込受付時間 盆・正月、祝日を除く月曜日から金曜日の10時から16時まで(12時から13時を除く))

武装より女装 ~集団的自衛権の市民集会に参加して~

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会 員 吉 原 育 子(64期)

1 はじめに

去る昨年11月22日、福岡県弁護士会主催の「憲法違反の集団的自衛権について考える市民集会」に参加させていただきました。

非常に熱気あふれる集会でしたので、年をまたいでその熱気をリポートさせていただきたいと思います。

2 熱気あふれる集会

集会は、福岡市・天神の都久志会館で行われました。

まず、会場に行って驚いたのは、640名弱入る会場が満席でロビーまで人があふれていたことです。参加されている方々の顔ぶれを見ましても、弁護士会以外の一般市民の方々が多く見受けられたように思います。

集会の第一部は、東京からお招きした憲法学者の青井未帆教授と小林節教授の講演でした。講演は、憲法の根本に立ち返った内容であり、かつ非常に明快な内容でした。

第二部は、パネルディスカッションが行われました。

先の講師のお2人に加え、高校生1名、大学生2名及び社会人代表として、いのうえしんぢさんがパネリストとして加わりました。

いのうえしんぢさんは、イラストレーターで、今回の集会のチラシのデザインをして下さった方です。添付の写真のとおり、人目をパッと引くデザインで、今回の集会に彩を与えてくださった立役者でもあります。

ディスカッションは学生らしい率直な意見が交わされました。

非常に耳に残ったのは、「将来、私達が戦争に参加しなければならない。」「私たちはまだ選挙権がない。」(高校生)、「集団的自衛権行使容認の閣議決定はいつの間にか決まってしまった。民主主義とはいえない。本来、憲法は権力者を抑止するものであるはずだ」(大学生)などという言葉です。今回の問題の本質をついた意見が出され、会場は熱気に包まれました。

3 武装より女装?!

会場を沸かせる名言もありました。

いのうえさんは、イラストレーターだけでなく、自らの主義・主張を奇抜なファッションでパレードやデモにて表現してきたそうです。そして、「普段から意思表示をすることが大事。」「武装より女装だ」と。

「武装より女装」の言葉に会場からはドッと笑いが起きました。小林教授も暗い話題が明るくなる、といのうえさんの言葉に共感されていました。

いのうえさんからは、表現の自由が奪われたことが戦争につながったという指摘もありました。憲法21条で保障されている表現の自由の重要性を改めて感じることのできたディスカッションでした。

4 DJパレード

熱気も冷めやらぬうちに天神を闊歩するパレードが始まりました。このパレードは、通常のパレードとは少し趣きが異なり、今どきの音楽に乗せて、若者がDJ風に「戦争反対!」「9条壊すな!」という掛け声をしながらパレードするというものでした。

ちょうど三連休の初日であったため、天神周辺の人通りはかなり多かったです。

携帯電話で写真を撮っている方を何人も見かけました。私も、当日の突然のオファーにより、なぜかよくわからないまま(?)博多ぶらぶらの衣装を着てパレードに参加しました。

5 今回の集会の大いなる意義

今回の集会とパレードの実施は非常に意義の大きいものであったと思います。「集団的自衛権」という言葉自体難しく、今、政府が何をしようとしているのか一般国民には分からないことが多いです。

しかし、だからこそ、この問題を肌で感じることが重要であると思います。そういった意味で、今回の集会は、次世代を担う高校生や大学生が参加し、またパレードも若者に向けたメッセージ性の強いものであり、市民の方々に与えたインパクトは強かったと思います。

「集団的自衛権」という言葉はどうやら昨年のユーキャンの流行語大賞を受賞したようです。しかし、一過性の話題に留まるだけでは意味がありません。
私たちや私たちの子ども・孫の世代が決して外国の戦争にいくことのないよう、さらなる活動が必要であると切に感じた市民集会でした。

特定秘密保護法施行直前シンポジウムのご報告

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会 員 吉 田 純 二(60期)

1 100人を超える聴衆

特定秘密保護法に対しては、国民から「知る権利」を侵害し、民主主義社会の根幹を揺るがす希代の悪法であるとの反対意見、危惧が多く聞かれ、日弁連また当会を含む全国の各弁護士会もこれまで同法の成立、施行に一貫して反対し、意見表明、街宣行動、シンポジウムなど様々な運動を行ってきました。

しかし、反対の声をよそに平成25年12月6日、同法は成立し、昨年12月10日、施行されてしまいました。その後の報道によると、外務防衛両省だけでも秘密指定が計6万件にも上る見通しとのことです。

さて、同法施行を目前にした平成26年11月8日、当会では秘密保護法について考えるべく「秘密保護法で社会はどう変わる?−この道はいつか来た道、とならないために−」とのシンポジウムを開催しました。会場の弁護士会館3階ホールは計100名を超える市民、会員、報道関係者等が来場し、熱気に満ちた雰囲気となりました。

2 田島教授の基調講演

三浦会長の挨拶の後、我が国のメディア法研究の第一人者で、同法に反対してこられた田島泰彦教授(上智大学)が「特定秘密保護法施行前に−問題点と課題を考える。」と題した基調講演をされました。

田島教授は、本法成立の経緯として約30年前の中曽根内閣時に構想され反対に遭い成立しなかったスパイ防止法、2006年の第一次安倍内閣におけるカウンターインテリジェンス(防諜活動)の強化、という流れがあったことを説明された上で、この法律の制定は、表現の自由規制、自衛軍創設、秘密情報機関(日本版CIA)、憲法改正と政府が構想しこれから展開していく流れの第一歩であると指摘されました。

同法は国家の情報の保管だけでなくその前の取得や取り扱う者の管理(適性評価制度)の段階から前のめりになって国家秘密を守ろうとするもので、これを土台として秘密国家化が増殖する。同法は原則情報の開示範囲を拡大し、例外の秘密とされる部分は最小限にしようとしている現代の国際的な民主主義の方向と逆行するものだと同法を厳しく批判されました。

また同法の予定する秘密指定・監視の仕組みについても、独立公文書管理監、内閣保全監視委員会は官僚同士が身内で監視するもので実効的な監視が期待できないこと、国会議員で構成される情報監視審査会もメンバーはほぼ与党で占められ、委員に罰則・懲戒のある守秘義務が課されるため、充分な監督が期待できないことを指摘され、いずれの監督機関も秘密指定にコミットすることができず、強制力もないため監視の実効性がないと批判されました。

3 西山太吉さんの基調講演

続いて、沖縄密約事件で有名な西山太吉さん(元毎日新聞記者)が「沖縄密約とは何であったのか−最高裁判決を経て−」と題した基調講演をされました。

西山さんは自身が原告となった沖縄密約文書に関する情報公開訴訟の最高裁判決(平成26年7月14日)までの経緯(第一審は歴史的勝訴、控訴審逆転敗訴、最高裁も控訴審を維持)を説明されました。

西山さんによれば90年代、米国政府から25年経過で開示を受けた公文書から沖縄返還交渉時日米間に密約があったことは明らかだったにも関わらず、日本政府は一貫してこれを否定し続け、文書を廃棄し、上記訴訟においても文書がないと主張してきたとのことです。上記の最高裁判決はそのような経緯から文書が廃棄された可能性が充分あると立証したにもかかわらず、原告側に現在の文書の存在の立証責任を負わせ、当時文書があったという証明ができないから敗訴となったとのことで、西山さんはこのことについて、「官僚が文書を廃棄すれば開示を免れられるという不当なことを最高裁が認めてしまっている。」と批判されていました。そしてこの判決について知る権利の重要性と秘密保護法施行後への示唆を含んだ重要なものだった。そういう観点からの報道が全くなかったとも言われていました。また、西山さんは「知る権利の保障の前提は知らせる側がいることだ。ウォーターゲート事件やベトナム戦争のペンタゴンペーパーもそうだった。この秘密保護法は知らせる側を規制するわけだから知る権利が成り立たなくなる」と警鐘を鳴らされました。

4 パネルディスカッション

その後、田島教授、西山さんに、浦川修氏(歯科医、福岡県歯科保険医協会理事)と武藤糾明会員が加わり、パネルディスカッションが行われました。浦川氏は同法が予定している秘密取扱者への精神病歴等を中心とする適性評価制度は、精神疾患者への偏見を助長し医療を受ける権利を侵害するだけでなく、医師に患者情報の提供を求めるもので医師の守秘義務という根本原則を破壊し極めて問題であるとされ、武藤会員は国際比較、歴史に照らして見て日本の秘密保護法の問題であること、立法事実もないことなどを説明しました。

更に、今回のパネルディスカッションではパネリスト以外に4つの新聞社の報道部長クラスの方々からの会場発言がありました。

ある新聞社の方は、同法に「8割賛成2割留保である」とされ、「我が国の安全保障環境は悪化しているから、勿論プライバシーや表現の自由との関係で運用に慎重さが求められるにせよ、立法は必要だと思う。必ずしも戦前に逆戻りというわけではないと思う。適性評価制度等については危険なものを取り扱う人にはそれ相応の規制があってしかるべきでいわばフグの調理師免許の様なものではないか」との意見を言われました。

他方、反対する立場の方からは、同法による規制について「メディアがチェックできず、歴史的な検証ができなくなる」「副作用が大きすぎる」「現場の取材経験では、取材対象である公務員が「秘密保護法があるからね」などと言い、施行前なのに既に萎縮効果に似た影響が出ているように感じた」などの意見がありました。

5 最後に

今回のシンポの会場の雰囲気は独特のものがあり、参加された方の多くは、「こんな重要な問題について、必要性についての国民的議論の展開も充分な説明もないまま、さっさと国会だけで決められてしまっていいのか」と怒りと危機感を感じ「何とかせねば」「何をすればよいのか」と切実な思いを持っておられたように思います。11月22日にも当会主催の集団的自衛権に関するシンポが開催されましたが、そこでも同じような雰囲気を感じ、近年あまりにも憲法の価値観が疎かにされていることについて、国民的な怒りの胎動を感じたように思いました。
しかし、その後示された民意によれば、田島教授がおっしゃっていた流れが更に加速していく可能性が高いものと思われます。しかし、このような状況であるからこそ、諦めることなくなお一層これからの展開を厳しく注視し、立憲主義的視点から市民に分かりやすく訴えていく必要性を感じています。

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