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カテゴリー: 月報記事

あさかぜ基金だより ~異業種より学ぶ業務改善~

カテゴリー:月報記事

社員弁護士 西村 幸太郎(66期)

オフィスツアーへの参加

業務改善のため、民間の企業はどのような工夫をしているのでしょうか。

当事務所は、弁護士過疎地赴任をにらんだ弁護士を養成する事務所です。事務所を切り盛りするうえで、経営も学ばなければなりません。その一環として、複合機を扱うある会社のオフィスツアーに参加。目から鱗のツアーでした。

そこで参考になったこと、学んだことをご報告させていただきます。

ワークスタイルの変革を目指して

業務改善のためには、そもそものワークスタイルの変革が必要です。

(1) コストのかけ方:スペースコスト・紙コストの無駄が悩ましい。この会社は、印刷機の配置の工夫などによりこのコストを削る反面、セキュリティコストを増やします。パソコンの持出しを認めることで、社外にも活動のフィールドを広げることができ、業務効率があがります。セキュリティを厳しくすることで、さらなる効果もあります。最近、情報管理に厳しい企業が増加しており、そのような業者との取引にも十分対応できるのです。時流に即した変革です。

(2) 時間の使い方:データ処理や必要書類の探索に莫大な時間を奪われてしまう。ここでは、データ処理の時間を削る反面、コミュニケーションの時間を十分にとれるよう、時間配分を変革します。適切なデータにもとづく十分な議論は、意思決定の迅速性をももたらします。

限られたコストと時間で何をすべきか。やみくもに削るのではなく、必要なものには投資するなど、目的意識をもって業務改善にあたっています。

デスクのきれいさ

なにより驚くのは、この会社の社員のデスクがあまりにきれいなこと。

過去1年間使っていない書類をみる確率は1%未満。不要な文書は廃棄を徹底します。紙文書は減量化し、電子化を進めます。

悩ましいのは、放置プリント。しかし、これも、「パソコンの操作+複合機における社員証の提示」→印刷開始というシステムの導入で大胆に削減。印刷後、結局書類を取りに行くため、社員証の提示は余計な手間となりません。ミスプリはキャンセルできます。印刷を試みるも、間に合わず出社した際に放置されるプリントが散見されましたが、この場合も印刷されなくなり、無駄が省けます。このシステムでは、パネルに利用した印刷枚数・費用等が表示されるため、社員のコスト意識も高まります。

データの電子化にあたっては、そのファイルのネーミング、フォルダの仕分けにつき、全社で共通ルールをもうけます。ルールを実践すべく、ルールに沿って自動でネーミングと仕分けをしてくれるソフトを導入します。データ管理は自動で適切になされ、データ処理にかかる時間が圧縮されます。

ここでは、社員の付近にごみ箱を置きません。ごみ箱が近くにあると、ついつい書類を捨ててしまいます。別の社員が、その中にプライバシー情報を見つけます。その社員は、これを選別しシュレッダーにかけるという作業を強いられます。そのような手間を避けるため、ごみ箱は定位置に数か所だけ。ごみ箱から1番遠いのは上司であり、上司がごみ箱まで動いて捨てているなら私も・・・と配置を工夫しています。あえて移動して捨てる場合、適切な分別のうえ、必要なものはシュレッダーにかけるなど、適切な処理が促進されます。

無駄の排除により、「電話以外に何もないデスク」を実現。きれいなオフィスは、情報漏洩リスクが低い。生産性が高い。一方、必要以上に手間がかからないよう、ルールが定着しやすいよう、十分に配慮がされています。社員は、いきいきと仕事に取り組むことができます。

自戒もこめて・・・

ここで紹介したものは、氷山の一角。このほか、自動車の削減と公共交通機関のすすめ、グループ会社と同室にするメリット、地震対策など、さまざまな取組みにつき紹介してもらいました。

この会社の変革はBefore/Afterで示され、その変わりようには驚くばかり。Beforeの部分では、散乱したデスクがもたらすリスクなど、耳が痛い話も。しかし、工夫1つでここまで変われるのか!と感心しました。

これまでの自分を振り返ると、いたらない点ばかり。今回のツアーを参考に、ぜひとも、業務改善に取り組んでまいります。

みなさんも、機会があれば、民間の企業の取組みにつき、見学してみてはいかがでしょうか。きっと学ぶところが多いと思います。

「転ばぬ先の杖」(第24回) 犯罪被害に遭ったときには・・・

カテゴリー:月報記事 / 転ばぬ先の杖

犯罪被害者支援委員会委員長 藤井 大祐(57期)

1 ある相談電話

ある日、日本司法支援センター(法テラス)から一本の電話。「犯罪被害者の精通弁護士紹介ということで、傷害事件の被害について相談に乗って頂きたい」とのこと。

《法テラスは、犯罪被害者支援ダイヤル(0570−079714。http://www.houterasu.or.jp/higaishashien/)として、犯罪被害にあわれた方(ご家族も)に対して、被害後の状況やニーズに応じて、さまざまな支援情報を提供しています。そして、事案の内容等によっては、犯罪被害者の支援に精通した弁護士の紹介も行い、弁護士費用等の援助制度((1)加害者への民事での損害賠償請求等について法テラスが費用立替する民事法律扶助、(2)刑事手続における加害者との対応等について法テラスが費用援助する犯罪被害者法律援助)等も準備しています。(http://www.houterasu.or.jp/higaishashien/nagare/index.html)》

2 事案の内容

法テラスからの情報を元に早速、被害者の方と連絡を取ってお話を聞く。

事案は強盗致傷事件。相談に来られたのは被害者のお母様(被害者本人は未成年)で、加害者は20代の無職者。ナイフで斬りつけられるという凶悪な犯行態様であったが、不幸中の幸いにも後遺症等は残らなかったという事案。

起訴後、加害者の国選弁護人から被害者のお母様に対しては、加害者の親の捻出によるという、損害賠償金が提示されていた。

ところが、被害者のお母様としては、「加害者の刑が決まるまでは、受け取れない」として、損害賠償金の受け取りをいったん拒否し、そのまま裁判は進行。

加害者には、10年近くの懲役刑の判決が下され、一審判決で確定後、提示のあった損害賠償金を受け取りたいと、法テラスに相談されてきた次第・・・

3 手の平返し?

加害者本人は若く資力はない。では、加害者の親を訴えたところで、法的責任があるかというと、加害者本人は成人している以上、親の責任を認めさせるのはなかなか困難。

こんな説明をしつつ、一応、相談の延長ということで、加害者の国選弁護人に電話をしてみる。「いったん提示したんだし、払いませんか」と。

しばらくして回答。案の定「刑も確定したので、親御さんとしてはもう払えません」と。

4 「知らなかった」

被害者のお母様に上記報告の上、改めてお話し。

当時は、犯罪被害者の刑事裁判への参加制度も施行されたばかりであったが、参加手続は取られていなかった。被害者のお母様いわく、(今回の事件の刑事公判は全て傍聴されていたものの)そんな制度があるのは「知らなかった」、知っていれば「参加していた」とのこと。

《平成20年に施行された刑事裁判への被害者参加制度では、一定の犯罪類型について、法廷の中で検察官の横で審理を傍聴し、被告人への質問、情状証人への質問や事件についての被害者参加人としての意見を述べられるようになりました。また、この参加に弁護士の支援を受ける場合の費用援助も法テラスで受けられます(被害者参加人のための国選弁護制度 http://www.houterasu.or.jp/higaishashien/trouble_ichiran/20081127_3.html)》

もっと早く弁護士なりに相談してくれれば、参加するか否かや、(賠償金受領による減刑の可能性は視野に入れつつも)相手方から提示のあった賠償金を受け取るか、判断するという選択の余地はあったのに・・・

5 所感

犯罪被害の多くは、日常生活の中に突然訪れる。警察・検察の捜査等、普段全く経験しないことへの対応をしながら、日々の生活の維持に精一杯になる。

ただ、「転ばぬ先の杖」ということで、民間の支援団体への相談や、弁護士への相談も、被害に遭った早い段階で、行って頂ければと改めて思う。

《福岡県弁護士会でも、犯罪被害者を対象にした無料電話相談を行っています。匿名での相談も承っていますので、お気軽にご相談ください。福岡県弁護士会・犯罪被害者支援センターの無料電話相談=092(738)8363(毎週火曜と金曜の午後4時~7時)。

また、福岡でも民間の支援団体(http://fukuoka-vs.net/)が存在します。こちらにもご相談下さい。》

紛争解決センターだより

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会員 樋口 明男(46期)

本年2月15日、弁護士会事務局から「2月に申立が為された事件について仲裁人を引き受けることが可能か否か」打診があった。詳細に書かれた紹介状をみると、ドロドロした男女関係事件であり気が重かった。私は2013年に初めて担当したADRで和解を成立させている。専門性の高い建築紛争で一級建築士の助力を得ることが出来た上に当事者も冷静だったことにもとづく(月報13年9月号参照)。本紛争を容易に和解に導くことが出来るとは思えなかった。それでも仲裁人を引き受けたのは「誰かが担当しなければならない」という責任感による。

事案は夫と不貞行為をした女性に対する妻の慰謝料請求事件である。相手方女性の直筆書面(不貞行為の存在を認めた上で高額の金員を払う旨明記されている)が証拠として提出されていた。相手方には代理人弁護士が就いており、当該書面は事実に反して作成を強要されたもので、この書面により金員を請求することは恐喝に該当するとの主張がなされていた。私は「和解成立の見込みがなく1回で終了となるだろう」と予想した。

3月7日弁護士会館ADR室で双方の言い分を聞いた。双方当事者に母親が同伴していた。事案の性質上、双方ともに感情的だったが、とにかく最初はじっくり話を聞いた。その上で私が双方に言ったのは「仮にあなたの主張が事実だったとしても結論はあなたの思うようにはならないだろう」ということである。不貞行為慰謝料の成否や額については多くの議論がある。申立人に対しては「あなたの主張が事実であったとしても裁判所が認める慰謝料はあなたが思うほど高くないかも」と示唆した。相手方に対しては「あなたの主張が事実であったとしても先方は書証を有しているので訴訟に踏み切るだろう・その際に着手金が必要となる・あなたの主張が認められれば成功報酬が必要になる」と示唆した。弁護士費用の具体的議論は代理人の先生に委ねることにした。双方に話をした後「和解の見込みがなければ期日はこれで終わりますが、続行期日指定を希望されますか?」と聞いた。意外なことに双方とも期日続行を希望された。私は少し手応えを感じた。

3月17日第2回期日を開いた。先に相手方から話を伺うと代理人の先生はある程度の金銭を支払う和解案を用意されていた。私が考えていた水準と大差なかった。次に申立人から話を伺うと「和解案を出してきたことは評価するが、相手が自分の行為を恐喝と主張していたことが許せない」と怒りを表明された。私は数年前に被告側で受任した不貞行為慰謝料請求訴訟の経験を話した。当該事案で私は「美人局類似の抗弁」を主張していた。裁判所から示された和解案は高額ではなかった。この経験をふまえ「書面に記された金額に貴女がこだわることは良くないのでは」と示唆した。その前提の下、相手方提示案を示し「合理的な案だと私は思う」と付け加えた。申立人が持ち帰り検討することになった。

3月22日第3回期日を開いた。申立人は冷静になられており、母親も感情的な素振りを全く見せなくなった。申立人は最終的に和解案を受諾された。相手方に伝えるとホッとした感情が見受けられた。和解案を双方に示し双方から署名押印を得た。この作業は仲裁人弁護士ではなく職員さんが機械的に行うほうが手続がスムーズにいくようである。

弁護士会ADRにおける和解成立の場面では双方から成立手数料を払って貰う必要がある。支払の義務を負う相手方まで払ってもらえるのか不安があったが、事前に代理人から説明がなされていたようで相手方からも気持ちよく支払っていただいた。

こうして私は第2回目のADRも和解を成立させることが出来た。後から振り返れば事案に恵まれたと言うほかはない。紹介状を書いた弁護士の書面は的確なものだったし相手方に就いた代理人弁護士のスタンスの切り替えは「お見事」であった。

弁護士は紛争解決の専門家である。立場は違えど各自が役割を果たせば結果を残せるのである。

福岡市医師会とのパートナーシップ講演会

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会員 楠田 瑛介(66期)

平成28年3月30日に、福岡市医師会・福岡県弁護士会パートナーシップ協議会の主催による講演会「虐待と非行」が開催されました。

講演会の報告の前に、主催団体である医師会・弁護士会パートナーシップ協議会についてご説明します。

この協議会は、医師会、弁護士会が互いの専門的知識の共有を図り市民へのサービス向上に繋げることを目的として平成19年2月に立ち上げたものです。

協議会の具体的な活動を担う組織として「高齢者障害者権利擁護委員会」と「児童虐待防止対策委員会」が置かれ、勉強会や講演会を実施してきました。

児童虐待防止対策委員会は、発足以来、活発な活動を行ってきました。

具体的には、定例委員会を2か月に1回程度開催し、福岡市児童相談所(こども総合相談センター)、NPO法人ふくおかこどもの虐待防止センター(F・CAP―C)とともに、児童虐待に関する様々な知見や制度について学んできました。

また、平成20年以降、震災のため中止となった平成23年を除く毎年3月に、児童虐待に関する講演会を開催して、医療関係者や弁護士のみならず、行政職員、NPOの方々など一般市民に対して、児童虐待に関する啓発をしています。

さて、今年の講演会は、「虐待と非行、そして発達障害−被害と加害の臨床を考える−」として、花園大学社会福祉学部臨床心理学科の橋本和明先生にご講演いただきました。

まず、虐待と非行について、加害者の中にも過去に虐待などの被害を受けた者もおり、「被害と加害の逆転現象」あるいは「被害と加害の反復現象」に対応する必要性について強調されました。

虐待が子どもに与える影響について、様々な影響がある中で、橋本先生は、「解離」について詳しく話されました。

解離とは簡単にいうと、意識の連続性がなくなることです。トラウマ体験があると、その体験を「冷凍」しなければ自分を保てない、そのような体験を人格・意識から切り離す、そうした心理的メカニズムが解離です。解離にも一次解離から三次解離(健康な解離から解離性同一性障害)まで広がりがあります。

三次解離の具体例として【性的虐待を受けているのは別の女性で自分ではない】というのが挙げられます。

次に、虐待と非行のつながりについてのお話です。虐待から逃れようと、非行の一歩手前、回避的行動をとる、暴力粗暴型非行・薬物依存型非行・性的逸脱型非行という非行の種類によって様々な行動があり、それは解離状態ともいえる、この回避的行動にいち早く気が付き、別の手段を与えることが大切である、と、橋本先生は、具体例を交えながら説明されました。

次に発達障害についてです。すでに残り時間がわずか、DSM-5による分類など細かな話は省略です。

発達障害と非行について、「自我と枠」の関係を橋本先生が書かれた絵を参考にしながら、成長とともに自我と枠のバランスが悪くなり、逸脱が生じると説明がありました。なかでも、性に関するつまずきや逸脱が多くなる理由として、親密な仲間関係から知識が得にくいハンディキャップなどを挙げられました。ものの見方が違うようです。例えば、「(少しふくよかな女性)担任の先生に対して、『先生が浴槽に入っているのを見たい』と言った」という例を挙げられました。フツーは、「先生の裸を見たい」ととらえるのではないでしょうか?しかし、自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害−アスペルガー障害や自閉症)の子は、「先生が浴槽に入ったときの『水位』」に興味を持っているのです。

ここで時間切れとなってしまいました。最後に橋本先生は、虐待・非行・発達障害は本来関係が遠いはずが、それぞれへの対応によって距離が近くなる、と強調されました。

このように、分かりやすい具体例を交えてのお話だったので、抽象的になりがちなお話について大変わかりやすい講演でした。

橋本先生は、近年は、少年の裁判員裁判などでの情状鑑定に力を注いでおり、人材育成もされているようです。

みなさま、来年はどのようなテーマになるか分かりませんが、大変勉強になるので、ぜひ講演会にご参加ください。

連載/高齢者障がい者の権利擁護と弁護士~権利擁護法務の実務解説 第4回/地域包括支援センターの役割

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高齢者・障害者委員会 委員 大町 佳子(62期)

1 地域包括支援センターの概要

(1) 地域包括支援センターは、下記2で説明する事業を実施し、地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設です(介護保険法第115条の46第1項)。

(2) 地域包括支援センターの設置主体は、市町村、または市町村から委託を受けた者です(介護保険法第115条の46第2項、第3項)。

(3) 地域包括支援センターの職員としては、原則として保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員が配置されています(介護保険法施行規則第140条の66第1号)。

2 地域包括支援センターの役割(介護保険法第115条の46第1項)

地域包括支援センターの主な業務は以下のとおりです。

(1) 総合相談・支援業務(介護保険法第115条の45第2項第1号)

総合相談・支援事業は、地域の高齢者が、住み慣れた地域で安心してその人らしい生活を継続していくことができるようにするため、どのような支援が必要かを把握し、地域における適切なサービス、関係機関および制度の利用につなげる等の支援を行うものです。高齢者だけではなく、その家族、近隣に暮らす人などからの高齢者に関する相談も受け付けています。

(2) 介護予防ケアマネジメント業務(介護保険法第115条の45第1項第1号ニ)

介護予防ケアマネジメントでは、チェックリストにより「介護予防・生活支援サービス事業対象者」に該当すると判断される者に対して、その心身の状況、置かれている環境、その他の状況に応じて、その選択に基づき、訪問型サービス、通所型サービス、その他の厚労省が定める生活支援サービスから、対象者の状況にあった適切なサービスが包括的かつ効率的に提供されるように必要な援助を行います 1。なお、これらの予防サービスには、ボランティアなど住民が主体となった支援なども含まれます。

また、要支援者については、必要に応じて、介護予防訪問看護や介護予防福祉用具貸与等のサービスを利用することもできます。

(3) 権利擁護業務(介護保険法第115条の45第2項第3号)

権利侵害を受けている、または受ける可能性が高いと考えられる高齢者が、地域で安心して尊厳のある生活を行うことができるよう、権利侵害の予防や対応を専門的に行うものです。事業内容としては、高齢者虐待の防止および対応、消費者被害の防止および対応、判断能力を欠く常況にある人への支援などがあります。

例えば、高齢者に成年後見制度の利用が必要なケースについては、親族に制度の説明をして申立ての支援をし、申立てを行える親族がないと思われる場合や親族があっても申立てを行う意思がない場合は、市町村長申立てにつなげるなどしています。また、高齢者への虐待事例を把握した場合は情報の収集等を行って状況把握をしたうえで、緊急性が高い場合には養護者との分離を行ったり、養護者や家族の状況に応じた支援を行ったりします。

(4) 包括的・継続的ケアマネジメント業務(介護保険法第115条の45第2項第3号)

包括的・継続的ケアマネジメント支援業務は、地域の高齢者が住み慣れた地域で暮らすことができるよう、ケアマネージャーが個々の高齢者の状況や変化に応じた包括的・継続的なケアマネジメントを実現することができるように指導や支援を行うものです。

具体的には、地域のケアマネージャーに対する個別の相談窓口を設置する、ケアマネージャーの日常的業務の実施に関しケアプランの作成技術の指導等を行う、ケアマネージャーが抱える支援困難事例について、関係機関との連携のもとで具体的な支援方針を検討し、指導助言等を行うといった業務を行っています。

また、施設・在宅を通じた地域における包括的・継続的なケアを実施するため、医療機関を含めた関係機関との連携体制を構築し、地域のケアマネージャーと関係機関の間の連携を支援するといった業務も行っています。

(5) その他

上記(1)~(4)のほか、地域包括支援センターの業務として、在宅医療・介護連携の推進(介護保険法第115条の45第2項第4号) 2 、生活支援・介護予防サービスの体制整備(介護保険法第115条の45第2項第5号) 3 、認知症施策の推進(介護保険法第115条の45第2項第6号) 4 、などもあります。

3 福岡県内における地域包括支援センター

(1) 地域包括支援センターは、市町村の人口規模、業務量、運営財源や専門職の人材確保の状況、地域における保健福祉圏域(生活圏域)との整合性に配慮して、最も効果的・効率的に業務が行えるように、市町村の判断により担当圏域が設定されることとなっています。

(2) 福岡県には、平成27年11月1日現在、173カ所の地域包括支援センターが設置されています。

1 平成26年6月18日に「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(以下、「医療介護総合確保推進法」という。)が成立し、同月25日に公布された。これにより介護保険法が一部改正された。

この改正により、従来の介護予防給付によるサービスうち介護予防訪問介護と介護予防通所介護については介護予防・日常生活支援総合事業(以下、「総合事業」という。)へ移行されることとなり、平成29年度までに全ての市町村で実施されることとなった。

従来の介護予防給付によるサービスのうち、訪問介護・通所介護以外のサービスについては、引き続き介護予防給付によるサービスの提供が継続される。

また、総合事業のみを利用する場合については、要介護認定等を省略し、チェックリストにより「介護予防・生活支援サービス事業対象者」に該当すれば、サービスを利用することが可能となった。

2 医療介護総合確保推進法による介護保険法の改正により、平成30年度までに全ての市町村で実施されることとなった。

3 同上

4 同上

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