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カテゴリー: 月報記事

あさかぜ基金だより

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あさかぜ基金法律事務所 石井 智裕(72期)

福岡に来て1年たちました

あけましておめでとうございます。

私が福岡に転居し、あさかぜ基金法律事務所に入所してから1年がたちました。

新型コロナウイルスの影響で研修が行われる時期や方法が変わり、破産手続の進行が遅かったり、依頼者との打合せも電話やメールで行ったりと大変な1年でした。すでに修習や就職活動が終わっていてよかったと思っています(いま修習中の人、就活中の人ごめんなさい)。

福岡に来てよかったと思ったことは、大きい書店・図書館が近くにあることです。私の出身地では書店に行くには隣町まで行く必要があり、その本屋も小さく法律書は取り寄せなければなりませんでした。福岡に来て、歩いていける距離に大型書店があることに幸せを感じております。また、大きな図書館も近くにあり、個人で購入することが難しい全集なども読むことができ、頻繁に通っています。

福岡に転居して苦労したことは、言葉が違うことです。日本語では文末がとても大切なのに、福岡の言葉は語尾が地元である千葉の言葉と異なっていて、依頼者や共同受任の先輩弁護士の言葉がよくわからなかったことです。また、同じ言葉でも意味合いが少し違うと感じることがありました。

所員の入れ替わり

私があさかぜ基金法律事務所に入所したときは弁護士は6名いました。けれども、今は4名となりました。

昨年6月には小林弁護士が飛鸞ひまわり基金法律事務所(平戸)に赴任しました。小林弁護士は依頼者への対応が丁寧で、たくさんの依頼者から信頼を集めていました。私も早くそうなれるように心がけています。

昨年12月には西原弁護士が壱岐ひまわり基金法律事務所に赴任しました。私は入所して以来、西原先生の隣の席に座って執務をしていましたので、疑問点があると西原弁護士とよく相談して事件を進めていました。この原稿を書いているときは、まだ西原弁護士が退所してから間がないので、なかなか西原弁護士がいないという実感がわいてきません。

そのうえ、あさかぜ基金法律事務所に長く勤めていた事務員さんが辞め、事務員さんが入れ替わりました。事務所の機材が不調になっても、どこに問い合わせてよいのかわからなくなったりと、事務員さんの存在の重要性をあらためて感じました。

今月からは新しい弁護士があさかぜ基金法律事務所に加わる予定で、いま原稿を書いているときは、新しく入ってくる所員が使うロッカーを空けるため、過去の弁護士の事件記録をロッカーから出し、別の場所に移動させたり、法人登記の仕方の説明書をつくったりしています。次回のあさかぜ基金だよりは新しく加入する弁護士の自己紹介の予定となっています。ご期待ください。

今年の抱負

気がつくとすでにあさかぜ基金法律事務所で養成を受けられる期間が半分も過ぎてしまっています。

いまだに事件の処理に悩み、先輩に相談しつつ事件を進めているので、あと1年たったとき、本当に弁護士過疎地にて一人で事務所の運営ができるか不安ではあります。

けれども、日々の積み重ねでしか成長はできないのですから、日々の業務から少しでも多く学べるよう努めていくつもりです。

本年も引き続きのご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

法律相談センターだより 福岡県法律相談合同研修会報告

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法律相談センター運営委員会 委員長 池田 耕一郎(50期)
北九州部会法律相談センター運営委員会 委員長 田篭 亮博(60期)
筑後部会法律相談センター運営委員会 委員 田中 文(65期)

第1 はじめに

令和2年11月に、福岡、北九州、筑後の3会場で福岡県法律相談合同研修会が開催されました。同研修会は、自治体等の相談窓口担当者の法律知識や相談の技術・知識の習得を目指しています。

研修会を主催する「福岡県法律相談連絡協議会」は、1997年(平成9年)、福岡県弁護士会、福岡県、福岡市、各自治体、社会福祉協議会が呼びかけ人となり、設立されました。設立趣旨には、「各相談機関が連携を取りながら、より早く、より適切に助言し、問題の解決まで住民を導くことができるトータルなシステムづくりを行い、相談機関同志の相互協力によって一層充実した相談サービスを提供すること」とあります。その目的を達成するための重要な活動として、毎年、県内4地区において、研修会を開催しているものです。

以下、福岡、北九州、筑後の各研修会について報告します(筑豊地区については地元自治体の意見もふまえ本年度は開催を見送りました。)。

第2 福岡会場(池田)
1 概要

11月19日に福岡県弁護士会館(2階大ホール)にて福岡県法律相談合同研修会(福岡地区)が開催されました(司会進行:弓幸子業務事務局長)。

福岡地区では、日常の弁護士業務でDV被害相談に精通しておられる石本恵会員(福岡部会)に「DV被害者の法律相談を受ける際の工夫・留意点」と題して講演をお願いしました。当日は、DV被害の相談を受けることの多い相談窓口の担当職員をはじめ約40名にご出席いただきました。

2 講演の内容

講演の内容は、基本的な概念の整理から始まり、相談を受ける際の留意点、手続に関する説明に及ぶ実践的なものでした。石本会員の人柄を表すようなわかりやすく語りかけるようなお話ぶりに、参加された皆さんも、1時間半の講演の最後まで集中して聴講されていました。

まず、DVの代表的な類型(身体的暴力、精神的暴力、経済的暴力、性的暴力、社会的暴力)と内容(具体例)の説明があり、その後、実際に相談を受ける際の留意点の教示がなされました。DV相談の場合、事案によって緊急性が異なり、緊急性の度合いによって対応が異なることを理解してもらいたいとの指摘がありました(緊急性が高い事案の場合は安全の確保が優先、緊急性が中程度の事案の場合は安全性の確保とともに今後の生活再建の準備、緊急性が低い事案の場合は今後の生活再建準備を中心に助言する。)。

ヒアリングすべき事項としては、(1)暴力の類型と内容、時期、頻度、原因、(2)家族構成、婚姻生活のライフイベント、(3)職歴、収入、生活費の支払状況、(4)財産、(5)相談者の意思(別居するか否か、離婚するか否か、その時期等)があげられました。留意点として、DV被害者は、被害を受けていることを第三者に申告しない(隠す)ことや、そもそも被害を受けているという自覚を持っていないことがあるので、事実と異なる説明がなされないよう配慮したり、暴力の類型と例を示して確認したりすることが有益であるとの指摘がありました。ある事実が発生した時期が思い出せない場合には婚姻生活のライフイベントと関連づけて質問することも有益であるとのお話があり、この点は通常の離婚事件の場合にも参考になる点でした。

その他、DV被害者のための法制度の概要(一時保護、警察との連携、保護命令申立て)、離婚に関する流れ(離婚協議、調停、訴訟)の説明とポイントが示されました。

会場からは、証拠の収集にあたって考慮すべき点について質問がなされ、石本会員からは、ご自身の経験に即した実効的な証拠収集方法について回答がなされました(たとえば、SNS関連の証拠については、相談を受ける側がデータとして受信して証拠化するのではなく、スマートフォンの画面を撮影して証拠化することが、より正確な記録となり得るなど)。

法律相談センターだより 福岡県法律相談合同研修会報告
法律相談センターだより 福岡県法律相談合同研修会報告

3 法律相談事業の現状に関する報告

石本会員の講演の後、法律相談センター運営委員会副委員長(福岡部会小委員会委員長)の井手上治隆会員より、主として福岡地区における法律相談事業の現状(特に新型コロナウイルス感染症拡大に対する緊急事態宣言発出以降の対応、豪雨災害への対応等)について報告があり、派遣相談先を中心とした行政機関等と弁護士会との連携の必要性について共通認識の重要性をあらためて申し上げました。

第3 北九州会場(田篭)
1 はじめに

11月12日、北九州のウェル戸畑にて法律相談合同研修会が開催され、平尾真吾会員(北九州部会)に「身寄りのない高齢者に対する支援」をテーマに、柴田裕之会員(北九州部会)に「福岡における触法対応の始まりとその後の運用について」をテーマに講演をして頂きました。今年は各役所から23名の方に参加いただきました。

2 「身寄りのない高齢者に対する支援」

平尾会員は成年後見について部会きってのエキスパートになりますが、手持ち成年後見事件が40件を超えていると聞き驚きました。平尾会員からは身寄りのない高齢者の問題として、(1)緊急連絡先の確保、(2)入院費・施設利用料の支払い(特に保証人の問題)、(3)医療同意の問題(特に意識不明の医療的な同意)、(4)死亡時の遺品引き取りや葬儀の問題について話をしていただきました。私は知りませんでしたが、この分野については「身寄りのない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」山梨大学・山縣教授の研究が参考になると紹介をされました。身寄りのない高齢者の場合、どうしたらよいか実務上困るケースが多いと思います。困った場合はまず、この山縣研究を見てみるとヒントがあるかもしれません。もっとも、まだ答えが定まっていない分野でもあるので平尾会員も手探りで対応しないといけないケースもあるということでした。また、平尾会員が経験された具体的な事例に基づいたケース紹介もされましたが、大変勉強になりました。

3 「福岡における触法対応の始まりとその後の運用について」

柴田会員は北九州部会の高齢者・障がい者の分野で中心的な役割を担ってくれています。柴田会員からは、刑事事件において知的障害がある方の累犯率・再犯率は高い、これまでの弁護活動では弁護士も知的障害があることに気づかずに福祉的支援につなげることができていないケースが多いとの話がありました。知的障がいがある方は、捜査官の言うことに迎合してしまったり、自分の言いたいことがうまく伝えられない、刑務所でも罪を償っているという認識がないなどの特性があるとのことでした。知的障がいがある方が再犯を繰り返さないよう私たち弁護人が気づくこと、そして、福祉職と協力して環境を整えることが大切だと学びました。また、実際のケースをもとに事例紹介もあり、研修を受けている方も興味をもって聞いていました。

4 アンケート結果も好評で有意義な研修になったのではないかと思っています。来年も新たなテーマで開催したいと思います。

第4 筑後会場(田中)

11月27日、筑後部会で開催しました法律相談合同研修会についてご報告します。コロナ対策のため、久留米シティプラザ大会議室という従来よりも広い会場を確保の上、受付で手指消毒・体温測定を行い、会議室の扉や窓は開放したままでの実施となりました。

第1部は白水由布子会員(筑後部会)に「DVにまつわる法的問題」というテーマでご講演いただき、第2部として参加者の方々と弁護士の意見交換の場を設けました。

まず第1部ですが、DVの定義にはじまり、DVの構造、つまり、力で相手の嫌がることをして相手がこれを避けるだろうことを見越して加害者にとって都合の良いことをさせるコントロールであることを押さえた上で、相談を受ける際の心構えについて説明がされました。DV事件は被害者の安全第一であることや、住所の秘匿に留意すること、被害者にとって相談しやすい雰囲気を作ること等に加え、「助けてあげるという気持ちにならない(助けてあげているというのは上下関係であって、対等な関係ではない)」「解決は本人の意思で(当事者ではないのだから代わって決めてあげることはできない)」という点には、参加者の多くがうなずいておられました。また、被害者の行動のタイミングを制限せず、なにごとも自分で決めていいんですよ、という場面を繰り返すことが重要である、という点については、被害者を再びエンパワーメントしていくことへつながると感じました。

続いて第2部の意見交換会ですが、最初こそ参加者の方々は遠慮されている様子でしたが、徐々に場が温まり、「(1)客観的にはDVを受けていると思われるが、相談する気のない人に対し何ができるか」「(2)成人男性がその父親から暴力を受けている場合どうしたらよいか」といった質問が次々と飛び出しました。まず(1)については、その気になったときに相談できる制度等についての情報はきちんと示し、機が熟すのを待つしかないのではないか、といった回答のほか、無理やり引き離した場合には元に戻ってしまうこともある、といった経験談も聞かれました。(2)については悩ましい質問でしたが、被害者が何を望んでいるのか、家を出られないのであればその理由はどこにあるのかを探りつつ必要な支援を具体化していくのが良いのではないか、という回答がされました。

そのほかにも多数の質問が出され(紙面の都合上、ほんの一部しかお伝え出来ないのが残念です)、盛況のうちに終了となりました。

第5 最後に

弁護士会にとって、各地域の自治体等の皆様と交流することは、市民への法的サービスの拡充に必須の協同作業と考えます。今後も、ニーズに応える充実した研修会を企画・実行するとともに、日常的な情報交換についても意識的に取り組んでいきたいと思います。

法律相談センターだより 福岡県法律相談合同研修会報告
法律相談センターだより 福岡県法律相談合同研修会報告

来たれ、リーガル女子! in福岡2020

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両性の平等に関する委員会 山之内 明(72期)

1 はじめに

令和2年11月15日、福岡県弁護士会館において「来たれ、リーガル女子!in福岡2020」が開催されましたのでご報告いたします。本イベントは、昨年までは内閣府・日弁連主催のものでしたが、本年は、当委員会が企画・立案し、日弁連、九弁連及び鹿児島大学司法政策教育研究センターと共催し、執り行いました。主に女子中高生(もちろん男子中高生も大歓迎!)を対象として、進路選択をする上で法曹三者という選択肢の幅を広げてもらうべく、女性の弁護士・裁判官・検察官それぞれの魅力を知ってもらうためのイベントです。

2 今年ならではのZOOM開催

本イベントの企画立案を開始したのは、7月頃でしたが、当初は例年通り福岡県弁護士会館に女子中高生を集めて対面でのイベント開催を予定しておりました。しかし、本年全世界で猛威を奮っている新型コロナウイルスの影響で泣く泣くZOOM開催に変更となりました。当会のイベントとしてZOOMでのイベント開催というのは初であり、当日の講師側の機材の準備設置、参加者へのミーティングルームのお知らせ方法、参加者の入室管理方法等々事前に整理をしておかなければならない事が山ほどありました。事前には、鹿児島大学の米田教授よりZOOMの操作方法をレクチャーしていただいたり、当日の入室管理をスムーズに行うために参加者にも協力していただき、リハーサルを2回行いました。そして、初のZOOM開催に若干の不安を抱きながらもイベント成功の期待を胸に当日を迎えました。

3 当日の様子

当日は、本イベントは今年で3回目の開催になるにもかかわらず、47名(生徒42名、保護者3名、教員2名)もの方が参加してくださいました。中にはリピーターの生徒も複数いらっしゃり、驚きと共に本イベントを毎年楽しみにしていただいている事を嬉しく思いました。オンラインということもあり福岡県内からだけでなく、鹿児島、大分、長崎、熊本、宮崎からの参加がありました。参加者は主に女子中高校生が多い印象でしたが、中には女子大学生や男子学生も参加しており、本イベントの関心の高さがうかがえました。

(1) 第一部~対談「弁護士になってよかった!」~

第一部の対談では、内田敬子弁護士より「弁護士になってよかった!」とのタイトルで、ご自身の経験を踏まえ、弁護士になって良かったと感じたときのことや、女性ならではの結婚・育児のこと、弁護士として働くことの魅力についてお話をしていただきました。まだ法曹の女性人口が少なかった頃に弁護士となり、幅広くご活躍されている内田弁護士のお話は、(私達女性弁護士はもちろん)女子中高生にとっても非常に興味を引くものだったと思います。自然体でいながら、努力を惜しまない生き方にこんな人になれたらと憧れを抱きました。内田弁護士、貴重なお話をありがとうございました。

(2) 第二部~法曹になるための進路説明会~

第二部の「法曹になるための進路説明会」では宇加治恭子弁護士より、法科大学院、(2020年度から法学部に新設された)法曹コース、司法試験、予備試験の仕組み等、法曹になるまでのプロセスの説明をしていただきました。また、弁護士と検察官・裁判官とのライフスタイルの違いについても説明していただき、参加者達は興味津々に耳を傾けていました。

(3) 第三部~グループセッション~

第三部のグループセッションでは、弁護士・裁判官グループを2組、弁護士・検察官グループを2組の計4組を作り、生徒達をそれぞれ5~8名にグループ分けした上で、自由に質疑応答を行いました。私は、そのうちの弁護士・検察官グループ(主に刑事事件)において、司会進行を務めさせていただきました。事前に生徒達から出ていた質問をもとに私の方から講師に質問をし、お話してもらうという形で進めていきました。オンラインという生徒達にとっては質問をし辛い環境であったにもかかわらず、「質問が浮かんだら随時チャットで質問を送ってください」と呼びかけると、次々と質問が飛んできて60分では足りないほど充実した時間を過ごすことができたと思います。生徒からは「生活の中でどのような事に着目すれば法律をより面白いと感じる事ができますか?」との質問が飛び出し、法律を学ぶ事への意欲と楽しみたいという姿勢に私自身も刺激を受けました。

4 おわりに

私は、法科大学院運営協力委員会の委員として、両性の平等に関する委員会のメンバーからなる本イベントの実行委員会に加えていただき、お手伝いさせていただきました。私にとって、本イベントに携わるのは初めてでしたので、右も左もわからない上、初のZOOM開催ということで不安もありましたが、実行委員の先生方がみなさん親切でフォローしていただいたので、私自身も楽しんで本イベントに参加することができました。本イベントに講師としてお越しいただいた先生方、検察官、裁判官、実行委員の先生方に改めて感謝申し上げます。目を輝かせて弁護士達のお話を聞く生徒達を見ることができ、オンライン開催とはなりましたが、本イベントを開催できてよかったと思いました。

今後も本イベントのような法曹人口の女性割合を拡大するためのイベントを開催し、女性弁護士(裁判官・検察官)の仕事の魅力を多くの人に知っていただくために尽力していきたいと思います。来年は本イベントをオンラインではなく対面で開催できることを祈ってます。

あさかぜ基金だより

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あさかぜ基金法律事務所 所員 安河内 涼介(72期)

都市型公設事務所

あさかぜは、九弁連が設置した都市型公設事務所です。都市型公設事務所は全国に十数カ所設けられており、事務所ごとに様々な特色をもっています。刑事事件とりわけ裁判員裁判に力を注いでいる事務所(北千住パブリックなど)や成年後見業務を数多く行っている事務所(岡山パブリック)もあります。そのような中、あさかぜは、司法過疎地域で弁護士業務を行う弁護士の養成に特化した事務所で、これまであさかぜから九州各地の司法過疎地に多くの弁護士が赴任していきました。

あさかぜの受任事件

あさかぜは、公設事務所であるという性質上、顧問契約を締結することはできません。依頼者は法テラスや県弁護士会からの相談者が大半です。

扱う事件は、いわゆる「マチ弁」が取り扱うものとなりますが、その中でも、債務整理、遺産分割、相続放棄などの家事事件、刑事国選事件が多くを占めます。

もっとも、あさかぜは、司法過疎地域で弁護士業務を行う弁護士の養成を目的とした養成事務所であるため、養成期間の約2年間に幅広い事件を経験できるような体制が用意されています。具体的には、有志であさかぜに協力している先生方から事件の紹介を受けて共同受任をしたり、県外の先生方やあさかぜ出身の先生から事件の紹介を受けたりしています。共同受任事件・紹介事件では、交通事故、労働、消費者、強制執行などの事件を受任することができ、事件の種類はバラエティに富んでいます。このようにして、わたしたち所員は、養成期間中に数多くの類型の事件を受任し、きたるべき司法過疎地域への赴任に向けて研鑽を積んでいます。

庶務

あさかぜでは、様々な庶務があります。私が入所して最初に行ったのは、弁護士法人の変更登記手続でした。弁護士法人は、弁護士法上、社員の変更があった場合には登記しなければならないのですが、あさかぜは弁護士法人なので、所員の交代があると変更登記手続をしなければなりません。そのため、私は、過去の申請書類を参照したり、法務局へ問い合わせたりしながら、登記の申請をしました。

また、あさかぜで、私は事務員の採用担当者となり、事務員の採用活動を行っております。初めての経験ではありましたが、あさかぜに入ってから、ハローワークへの求人申し込みや、書類選考・採用面接も行いました。

さらに、あさかぜでは、ホームページの更新等も、最も期の若い弁護士がその担当者となり、業者を使わず行っております。現在は、私が担当者となり、インターネット等で方法を検索しながら四苦八苦してホームページの更新等を行っています。

その他、事務局の就業規則の作成等、労務管理についても、所員が執り行う必要があります。

こうした事務所の庶務も、きたるべき司法過疎地域への赴任に向けて、事務所運営に関わる様々な事務を学ぶ機会となるため、重要な業務の一つとなります。

今後の抱負

あさかぜには、現在、田中秀憲弁護士、西原宗佑弁護士、私と同じ72期の石井智裕弁護士・佐古井啓太弁護士と私の計5名の弁護士が在籍しています。西原宗佑弁護士は、12月に壱岐ひまわり基金法律事務所に赴任することが決まっておりますし、いずれも、ゆくゆくはあさかぜを出て、九弁連管内の司法過疎地に赴くことになります。

私は、あさかぜに所属して、もう約10月経過しています。1年、2年と経たないうちに赴任する可能性が高いものと思います。こうして自分を振り返ると、折り返し地点が迫ってきていることに、我ながら驚いてしまいます。あさかぜのOBで現在赴任している先輩弁護士を見ていると、いかにも頼もしく、まだまだとても及ばず心配してしまいます。あと1年程度で、本当に一人前の弁護士になれるのかどうか、いささか不安に駆られるところではありますが、あさかぜでの日々の業務を通じ、事務所経営・事件処理を学び、一つ一つ積み重ねていきたいと思います。

未熟な点も多い私ですが、これからも引き続き、より一層のご指導・ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

改正個人情報保護法における実務上留意すべき事項について

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情報問題対策委員会 委員 古賀 健矢(70期)

1 はじめに

令和2年6月5日、個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律が国会において可決され、同月12日に公布されました。

今回の個人情報保護法改正において、実務上留意すべき事項について取り上げたいと思います。

2 保有個人データの利用停止、消去、第三者提供の停止の要件緩和

まず、個人情報によって識別される本人が、個人情報を事業の用に供する個人情報取扱事業者に対し、保有個人データ(個人情報取扱事業者が開示、内容の訂正、追加又は削除、利用の停止、 消去及び第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有している個人データ)の利用停止、消去及び第三者への提供の停止を請求できる場合が拡大されました。

現行法上は、保有個人データの利用停止・消去を請求できるのは保有個人データの目的外利用、不正の手段による取得がなされた場合、また第三者提供の停止を請求できるのは保有個人データの違法な第三者提供がなされた場合に限定されています(法第30条第1項、第3項)。

改正法では、以上に加え、保有個人データを利用する必要がなくなった場合、保有個人データの漏えい等が生じた場合、その他保有個人データの取扱いにより本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合にも、利用停止、消去及び第三者への提供の停止を請求することができるようになりました(新法第30条第5項)。

現行法上は、保有個人データの漏えい等の本人の利益侵害が生じた場合でも利用停止等の請求に応じるかは個人情報取扱事業者側の任意の判断に委ねられていましたが、改正法は本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合という広範な要件を採用したことにより、利用停止等の請求は増加されることが予想されます。

3 仮名加工情報の新設

今回の改正で、ビッグデータの利活用のための制度として「仮名加工情報」が創設されました。

仮名加工情報とは、個人情報を他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できないように加工した情報をいいます(新法2条第9項)。

前回の平成29年の法改正において「匿名加工情報」(個人情報を特定の個人を識別できないよう加工して復元できないようにしたもの)が創設され(現法第2条第9項)、事業者による情報の利活用が期待されましたが、復元できないようにするという加工要件の厳格性から利用が進んでいませんでした。そこで、匿名加工情報よりも情報利用の自由度は落ちるものの、加工要件を緩和した仮名加工情報が新設されることになりました。

前回の平成29年の法改正において「匿名加工情報」(個人情報を特定の個人を識別できないよう加工して復元できないようにしたもの)が創設され(現法第条2第9項)、事業者による情報の利活用が期待されましたが、復元できないようにするという加工要件の厳格性から利用が進んでいませんでした。そこで、匿名加工情報よりも情報利用の自由度は落ちるものの、加工要件を緩和した仮名加工情報が新設されることになりました。

個人情報でない仮名加工情報には、個人情報に対する規制の多くは及ばないことになります。また、個人情報である仮名加工情報については基本的に個人情報に対する規制が及ぶことになりますが、本人からの開示・訂正・利用停止の請求の対象からは外れる等(新法第35条の2第9項)、個人情報取扱事業者にとって通常の個人情報よりも利用が容易となっています。

また、個人情報の場合、個人情報取扱事業者が個人情報の利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて変更することはできませんが、仮名加工情報は、個人情報に当たる場合でも、利用目的の変更に制限はありません(新法第35条の2第9項は第15条2項を準用していない)。すなわち、仮名加工情報に加工すれば、当初定められていた個人情報の利用目的とは合理的に関連性のない利用目的にも自由に利用することができるようになります。

ただ、仮名加工情報は、個人情報であると否とを問わず、原則として第三者に対する提供が禁止されており(同条第6項、第35条の3第1項)、内部における分析・利活用の促進が主眼に置かれています。この点で第三者提供が可能な匿名加工情報よりも利用できる場合が限定されていると言えます。

例えば、自動車販売店がマーケティングに使用するため、自動車整備工場から顧客データや車両データを買取る場合、自動車整備工場としては第三者提供規制を受けることなくデータを販売するには、データ内の顧客の氏名、性別、年齢、車両の色等の情報を、匿名加工情報に加工する必要があります。この際、氏名は削除、年齢は「20代」とするといった方法により、個人が特定できる状態に復元できないように加工することが必要になってきます。

他方、仮名加工情報に加工する場合、データを第三者に販売することは原則としてできませんが、復元不可能性は要求されませんので氏名を完全に削除するまでの抽象化までは必要なく、特定の個人IDに置き換える方法(IDと氏名が紐付いていれば復元可能)による加工でも要件を満たすのではないかと予想されます(後述のとおり詳細な加工基準は現時点で明らかでない)。加工後のデータは、当初の利用目的に定めていなくとも、分析・研究等に利用することができることになります。

なお、仮名加工情報とするための具体的な加工方法や加工基準については、今後、個人情報保護委員会のガイドライン等で明示されるものと考えられ、実際に利活用が進むかはガイドライン次第となると考えられます。

4 個人関連情報の新設

個人関連情報とは、生存する個人に関する情報であって、個人情報、仮名加工情報、匿名加工情報のいずれにも該当しないものをいい、今回の改正で新設された概念になります。

現行法上は、情報を提供する側の事業者において、生存する個人に関する情報であっても、情報を他の情報と照合しても容易に特定の個人が識別できない場合は、その情報は個人情報には当たらないことになり、第三者提供の規制(原則として本人の同意を要する・法第23条1項)を受けないことになります。

しかし、その情報の提供を受ける側の第三者において他の情報と照合すれば容易に特定の個人が識別できる場合は、その情報は当該第三者にとっては個人情報に当たるにもかかわらず、本人の同意がなくとも情報提供が可能であるというのは、法の趣旨を潜脱するものであり問題とされていました。

実際に、令和元年には、この問題が顕在化した事例が発生しており、個人情報保護員会の勧告も出されています。事例の内容としては、就職情報サイトの運営会社が、サイト利用者(就活生)について、個人情報である氏名の代わりにCookie(ウェブサイトにアクセスしたユーザーの情報)で突合し、特定の個人を識別しないとする方式で内定辞退率を算出して、サイト利用者本人の同意を得ずに、顧客企業に販売したというものです。この事例においては、顧客企業側は、提供されたデータを、保有する他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる状態にあり、このことを就職情報サイト運営会社も認識しながら提供していたことが問題となり、個人情報保護委員会は、このサービスについて、個人データの第三者提供の同意取得を回避しており、法の趣旨を潜脱した極めて不適切なサービスと評価し、就職情報サイト運営会社に対する勧告を行っています。

このように、インターネット上のユーザーデータの収集・蓄積・統合・分析を行うDMP(Data Management Platform)が利用される場面においては、CookieやIPアドレス(インターネットに接続された機器に割り当てられた番号)等の識別子情報の提供が、識別子情報の主体となる本人の同意を得ることなく行われることが多いのが現状です。DMPは、ターゲティング広告の実施に際するインターネットユーザーの行動分析においても利用されており、現在普及が進んでいるサービスでもあります。

以上のような社会的背景を踏まえ、改正法においては、事業者が個人関連情報を第三者提供する場合には、提供先の第三者が個人関連情報を個人データとして取得することが想定されるときは、当該第三者が個人関連情報を本人が識別される個人データとして取得することを認める旨の本人の同意を得る必要があるとされました(新法第26条の2第1項第1号)。

改正によりCookieやIPアドレス等の識別子情報をはじめとする、他の情報と照合しても特定の個人が識別できない情報についても規制が及ぶようになったことにより、特にDMPが利用される場面での実務への影響は大きいと予想されます。

5 その他の改正点

以上の他、実務上注意すべき改正点としては、これまで努力義務とされていた個人データの漏えい等が生じた場合の個人情報保護委員会への報告、本人への通知が義務化された点(新法第22条の2)が挙げられます。具体的にどのような事案が報告、通知義務の対象となるかについては、個人情報保護委員会規則の制定を待つことになりますが、制度改正大綱では、一定数以上の個人データ漏えい、要配慮個人情報の漏えい等、一定の類型に該当する場合とされています。

その他の改正点としては、6か月以内に消去する個人情報についても開示・利用停止等の請求の対象となった点(新法第2条第7項)、不適正な方法による個人情報の利用禁止の明文化(新法第16条の2)、不正な手段で取得した個人データ及び他の事業者から提供を受けた個人データについて本人の同意ない第三者提供を原則禁止とした点(新法第23条第2項)、外国の第三者への情報提供時の本人への情報提供の充実等(新法24条2項、3項)、電磁的記録の提供による保有個人データの開示請求が可能になった点(新法第28条第1項)、個人データの授受に関する第三者提供記録の開示義務化(新法第28条5項)、認定団体制度の多様化(新法第47条2項)、日本国内の外国事業者に対する規制の無限定化(新法第75条)、罰則の強化(新法第83条から第87条)があります。

運用については今後、個人情報保護委員会のガイドラインにおいて示される部分もあり、注意が必要となります。

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