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カテゴリー: 月報記事

『ゲートキーパー』問題に関する緊急講演会

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田村雅樹

1 去る7月29日午後6時から、福岡県弁護士会館3階ホールで「『ゲートキーパー』問題に関する緊急講演会」が開催されました。

当日は、講師として、この問題に関して、日弁連で一番詳しく、正確な情報を有しておられる「日弁連組織犯罪対策立法ワーキンググループ」事務局長吉峰康博弁護士をお招きして、質疑応答を含めて、約2時間講演していただきました。

2 ゲート・キーパー問題とは、国際組織犯罪対策としてのマネー・ロンダリング規制と密接な関連があり、従来的なマネー・ロンダリング規制のループホール(抜け穴)を塞ぐために、金融システムのゲート・キーパー(門番)ともいうべき弁護士、会計士等の専門職に対し、その顧客が「疑わしい取引」を行っていることを知ったときには報告義務を課そうとする問題です。

このような「疑わしい取引」の報告義務を弁護士に課すことは、弁護士が有する職務上の守秘義務との関係で重大な問題があり、弁護活動に深刻な影響を及ぼすものです。

3 しかし、国際的には、ゲート・キーパー問題について、無視できない動きがあります。

1999年10月にモスクワでG8各国の司法・内閣官僚が出席し、「国際組織犯罪対策G8閣僚級会合」が開かれ、ここで発表された「モスクワ・コミュニケ」では、弁護士、会計士といった国際金融システムの「門番(ゲート・キーパー)」によるマネー・ロンダリングへの種々の対処方法を検討するよう各国政府に求めています。

また、FATF(金融活動作業部会、1989年アルシュ・サミット宣言を受けて設立された政府間組織で、マネー・ロンダリングに関する包括的な検討等を行う作業部会)は、2003年6月には、これまでの40の勧告(マネー・ロンダリング対策のために法執行、刑事法制及び金融規制の各分野で各国が採るべき措置をまとめたもの)の改正案をとりまとめる予定で、その中で弁護士の「疑わしい取引」の報告義務についても結論を出す予\定です。

このような、国際的な流れをうけ、実際に各国で立法化が進んでいます。イギリス、スイスでは、すでに「疑わしい取引」に関する報告義務が課されていましたが、近年では2000年7月にカナダでも弁護士に「マネー・ロンダリングの疑いのある取引」に関する報告義務を課す内容の立法が成立し(ただし、カナダの弁護士会が憲法訴訟をして、法の執行が一時停止している)、2001年12月にはEUでも同様の取引について弁護士等の専門職に報告義務を課す内容のEU指令が採択され、今後EU各国はこれに従い立法化の義務を負います。

4 国際的に、弁護士に「疑わしい取引」についての報告義務を課す立法化が進んでいる中、日弁連は、2002年1月19日、ゲート・キーパー問題に対する意見を採択し、その中で、マネー・ロンダリング対策の必要性は認めつつも、法律で弁護士に対して疑わしい取引の報告義務を課すことに明確に反対しました。

今後は、FATFが前述した従来の40の勧告の改正のために、改正の方向を示した照会書に対する意見を8月末日締め切りで求めているほか、10月には日弁連など民間関連団体から直接意見聴取の機会を持つ予定となっています。日弁連の意見聴取は本件の帰趨を決める重要な会議となるもので、現在、この問題は、非常に緊迫した状況にあります。

5 ゲート・キーパー問題は、私選の刑事事件を受任して被疑者・被告人から弁護報酬を受け取ること、また依頼者の求めに応じて国際取引又は国際取引に関与し送金その他金銭のやりとりをすることも、そこに犯罪収益がかかわっていれば問題となりうる、という点で弁護士にとって意外に身近な問題です。

FATFは、弁護士に対して「顧客の確認」「疑わしい取引の報告」「報告したことを依頼者に内報することの禁止」を義務付けるだけでなく、処罰を科すことによって強制する立法を求めています。弁護士業務の基礎にある「依頼者からの秘密情報の取得とその共有」を根底から覆し、破壊し、弁護士業務が成立しないことになる極めて危険な法制が着々と準備されている状況です。

われわれ弁護士にとって、身近であり、かつ業務の根幹を揺るがしかねない重大な問題をはらむゲート・キーパー問題について、今回の講演会を契機に、福岡県弁護士会においても、各会員がしっかりとした認識を持ち,十分な議論をする必要があります。

第二東京弁護士会 仲裁センター合宿参加記

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大神昌憲

1 標記の合宿が、平成14年7月13,14日の両日、箱根湯本の「ホテルおくゆもと」にて開催され、当会からは、ADR委員会に所属する筆者と永田一志委員並びに犯罪被害者支援に関する委員会に所属する北村哲委員が参加しました。

2  初日は、弁護士以外の専門家が事件解決に関与した事例が2例紹介されました。

初めは第二東京弁護士会仲裁センターの事例で、夫婦間調整の事案にカウンセラーが関与したものでした。

この事案の家族構成は、50代の夫婦に、高3の長男、高1の長女、中1の二女というもので、専業主婦である妻が娘2人を連れて別居を強行し、会社人間である夫が復縁を希望して第二東京弁護士会仲裁センターに夫婦間調整の仲裁を申\し立てたというものでした。

妻が別居を強行した背景としては、妻が子どもを細かく管理していたため、長男が妻に反抗し、家庭内暴力を振るうに至った(不登校と成績悪化も)。ところが、夫は建築関係の会社に勤務する仕事一遍道の会社人間であったため、家庭内の問題にうまく対処できず、妻の悩みにうまく対応できなかったことにあるようでした。

夫から相談を受けた申立代理人の弁護士は、夫婦間のみならず、親子間の調整も必要だと考え、カウンセラーの役割に期待して、第二東京弁護士会仲裁センターに対する仲裁申\立を選択されたとのことでした。

この仲裁は、12回もの期日を重ねた甲斐なく取り下げで終了していますが(カウンセリングは13回)、申立人に対するカウンセリングを中心に、相手方や長男に対してもカウンセリングが実施され(取り下げ後も申\立人が4回カウンセリングを受けています)、親子間の調整は無事に図られた、また夫婦間についても関係修復のきざしを得ることができたとの報告を受けました。

なお、この事案でカウンセリングを行ったカウンセラーは、FPIC(社団法人家庭問題情報センター)という元家庭裁判所調査官の方々で構成されている団体に所属している方で、FPICは福岡市内にも相談室を展開しているとのことでした。

3 次は、名古屋弁護士会仲裁センターの事例で、建築紛争の事案に1級建築士が関与したものでした。

この事案の内容は、申立人が相手方工務店に既存建物の解体工事と移転先の新居の新築工事を発注したところ、申\立人は、相手方工務店の工事着手、進行の遅れ、工事代金の先行支払い、工事出来高の説明不足等の事情により相手方工務店に不信を抱くに至り、相手方工務店も申立人からの度々の仕様変更要求、解体材の使用を理由とする請負代金減額要求等から態度を硬化させ、双方は工事中止を合意、その結果、工事代金の精算問題と相手方工務店が保管中の旧建物解体材の処理問題が生じ、申\立人個人が名古屋弁護士会仲裁センターに仲裁の申立をしたというものでした(申\立日平成13年4月13日)。

仲裁センターは、まずは弁護士の仲裁人を選任しましたが、工事出来高の調査依頼が申立内容に含まれていたため、1級建築士を仲裁人に追加選任したとのことでした。

第1回の期日は、平成13年5月16日に実施されましたが、その翌日には1級建築士の仲裁人が現地調査に赴き、調査を実施した結果、新築工事の出来高は既払代金にまでは達していないこと、既存建物の解体状況は基礎部分が残存し完了とは評価できないとの判断が下されました。

相手方工務店は、申立人に対し、不足代金381万円及び解体材処理費用50万円合計431万円の請求をしていましたが、上記見解を基に説得を受け、申\立人が相手方工務店に200万円を支払うことで解決したとのことでした(解決は平成13年6月25日に実施された第5回期日)。

1級建築士の見解によると、申立人が相手方工務店に対し金員を支払う必要はないのですが、申\立人は早期に解決して新築中の建物を完成させたいという意向が強く、代理人弁護士が就いた後もその意向は変わらなかったとのことでした。

第1回期日から1か月余り、申立日からも2か月余りで解決というスピード解決の事例紹介でした。

4 2日目は、仲裁法やADR基本法の立法作業状況についての報告、討議、並びに各地の仲裁センターの取り組みについての報告を受けました。

ADR基本法について言えば、時効中断効と執行力を付与することに賛成の議論と反対の議論がなされていました。

賛成の根拠としては、ADRで審理中に時効が完成してしまうのは不都合であること、執行力が認められないと執行力を取得するために結局裁判所等を利用せざるを得ず簡易迅速な解決とは言えないこと等が挙げられていました。

反対の根拠としては、法的効果を付与するとなるとADRへ国家が規制を施すことになり私的で自律的な紛争解決というADRの理念、特徴を害することになること、ADRでは早期に執行の問題を残さず解決することが多いので時効中断効や執行力を付与する必要に乏しく、その必要があれば裁判所を利用すればよいこと等が挙げられていました。

5 1日目、2日目を通じて、特に第二東京弁護士会の萩原、波多野、原後の各先生方(失礼ながらかなりのご年輩です)が実に活発でユニークな議論を展開されていましたが、懇親会の席上、「二弁にはブラジルの3Rならぬ3Hがいる」との発言も出、一同爆笑した次第でした。

各地の参加者からは、「あの福岡県弁護士会にまだ仲裁センターがないとは知らなかった。何故ないの?」と聞かれる始末で、お尻を叩かれて帰ってきました。

各地先達のお話は、要は、我々弁護士が利用しやすい紛争解決機関を自ら持つことのすばらしさということに尽きると思います。

当会でも、年内に紛争解決センターを立ち上げるべく、当委員会で検討中ですが、会員の皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

「裁判員制度」について考えるパネルディスカッション報告

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黒木聖士

さる八月五日、弁護士会館三階ホールにて、福岡県弁護士会主催の「裁判員制度パネルディスカッション」が行われました。

パネリストは、日弁連司法制度改革実現本部事務局次長四ノ宮啓弁護士、日弁連刑事弁護センター副委員長美奈川成章会員、日本裁判官ネットワーク・福岡高等裁判所駒谷孝雄判事、九州大学法学部内田博文教授、県弁刑事弁護等委員会委員古賀康紀会員、コーディネーターは、春山九州男・大谷辰雄両会員という超豪華メンバーが勢揃いしたこともあって、当会会員はもとより当番弁護士を支える会など一般市民の方々を含め五〇名を越える参加者が集まり、酷暑の中、三時間以上にもわたる活発な議論が展開されました。

ところで、今回のシンポジウムは、司法制度改革審議会の意見書を踏まえて、司法改革推進本部事務局や各検討会において進められている司法「改革」が、従来、弁護士会が求めていた本来の司法改革の姿とは違う方向へ向かっているのではないかという危惧感を抱く会員ら(司法「改革」を考える会)が提案したものであるため、検討会の議論状況を踏まえつつも、現在の司法「改革」作業の抱える根本的な問題点を再度確認し、今後、どのように司法「改革」問題を考え、取り組んでいくべきかという趣旨を持ったものでした。誤解を恐れずに言えば、「絶望的な刑事司法」が、今回の「改革」によって、より「絶望的」にならないのかということだったのです。

藤井会長による開会の挨拶の後、コーディネーターからの世界的に前例のない「裁判員制度」とは一体どのような制度なのかという問題提起からパネルディスカッションが出発しました。

四ノ宮弁護士は、司法審は当初、刑事司法への市民参加は時期尚早と考えていたが、地方公聴会において次々と陪審制導入の意見が出されたため、市民参加をを検討することとなり、審議委員間の陪審説と参審説の激しい対立の中で「裁判員制度」という折衷案が提言され、重大な刑事事件から導入する、否認・自白を問わない、裁判員が量刑まで関与する、判決も書く等の骨格を基本にした上で、「裁判員制度・刑事司法制度改革検討会」において、具体的な制度設計が議論されているとの経過報告がなされました。

これを受けて、美奈川会員より日弁連司法改革実現本部や刑事弁護センター、検討会のバックアップ会議についての報告がありました。

駒谷判事は、個人的見解との留保付きで、国家予算の一%に過ぎない「弱い司法」を強くするには国民参加は必要であるとしながらも、裁判とは簡単なものではなく、裁判員に裁判官と同じ評決権を付与した場合、会議に時間がかかり、「定員法」を改正して裁判官の大幅増を図らない限り、現在の裁判所の体制では「裁判員制度」は過重負担であるという現場からの問題点が示されました。

内田教授からは、まず議論のフィールド設定として、1.司法審の意見書の枠内で議論するのか、2.刑弁センターの提案している枠まで(少し)広げるのか、3.司法改革の根本的問題点、「そもそも論」まで枠を広げるのかという分析がなされた上で、1で議論をする場合であっても、(1)裁判員に対する適正手続保障の説明・捜査報道によって生じる裁判員の予断の排除、(2)裁判員の比率の圧倒的多数の確保、(3)新たな「準備手続」によって生じる裁判官と裁判員の情報格差への対処、(4)伝聞法則の厳格化(要約調書によって事実認定が悪化する危険性への対処)、(5)証拠能力・違法収集証拠排除法則の厳格化は、「裁判員制度」導入の最低限の条件であり、もし、かかる条件整備をせずに導入した場合には、現状よりも悪くなるのではないかとの指摘がなされました。

古賀会員は、刑事司法の改革には捜査手続の改革こそが必要であるが、「裁判員制度」によって公判手続だけを変えても、従来通り、供述調書の証拠能力が付与される以上、結局、捜査手続は何ら変わらない、そもそも司法審の「意見書」は、刑事司法改革の目的を迅速な国家刑罰権の実現と捉え、捜査を賛美しており、裁判の利用者である刑事被告人の権利保障を目的としていない、無辜の不処罰に対する反省もないなど問題点も多く、現在の刑事司法よりも悪くなる危険性があるという指摘がなされました。

各パネリストからの発言を踏まえ、コーディネーターより、「裁判員制度」で調書裁判の弊害は除去されるのかとの問題提起がなされ、四ノ宮弁護士からは、自白調書に影響を受けるのは裁判員より裁判官であり、弁護人は裁判員を直接説得できる点で有利であって、公判証言が中心となる以上、供述調書は少なくならざるを得ず、連日的開廷となる以上、証拠開示が進むであろうというメリットが提示されました。

しかし、古賀会員からは、楽観的ではないか、二三日間の代用監獄における身柄拘束・取調を前提とする限り、調書裁判の弊害の除去されないという疑問が出され、美奈川会員からも、自白調書が採用されれば調書に引きずられる危険があるため、捜査の可視化(取調状況の録音)や伝聞法則例外の廃止(弾劾証拠に限定)などが必要であって、それは刑事弁護センターとして「譲れない条件」であり、司法審の意見書が提案している「取調の書面による記録化」では不十分であるとの指摘がなされました。

その後、参加者からは、司法の民主化のためには市民参加に重要な意義があるとの会員の意見がだされる一方で、刑事司法の抜本的解決が必要ではないかとの一般市民からの意見も出されました。

以上が本パネルディスカッションの概要ですが、この企画を通じて、改めて「裁判員制度」の問題点が浮き彫りになったと思います。

私個人としては、司法の官僚化によって被告人の人権が侵害されたり、誤判が生じうるからこそ、その弊害を防止するために市民参加・司法の民主化が必要であるという視点を持たない司法審の基本的立場には重大な疑問をもっています。司法審の意見書が、被告人の人権保障、誤判防止という観点から刑事司法改革を議論していないため、刑事司法にとって最も重大な問題である捜査手続にメスを入れることができず、結局、「裁判員制度」に多くの問題点が生じているということです。司法審の意見書を踏まえつつも、必ずしもその枠内にとらわれることなく、本来あるべき刑事司法改革を常に議論していくべきことが、在野法曹としての弁護士会のあり方だと思います。官僚主導の刑事司法「改革」が、より絶望的な「改悪」にならないように、議論の動向を常に監視していかなければならないでしょう。

なお、ディスカッション終了後の利花苑での懇親会でも三〇名近い出席者が参加され、刑事司法改革について熱い議論が闘わされておりました。

パソコンの使い方 

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上鶴和貴

ホームページ委員会から,パソコンの使い方をコラムにしてくれと指令が出されました。私も,他の方に比べて特殊な使い方をしているわけではありませんが,使い方の例をご紹介させていただきます。

私が入ったころは,事務所にはいわゆるワープロしかなく,印刷などは非常に苦労したものでした。それが,ここ2年ほどで急激にIT化して,今では見違えるように便利になっています。

基本的なソフトとしては,ワープロ,表\計算,メール,インターネットブラウザあたりでしょうか。

表計算ソ\フトは,計算作業が多いものでは必須となっています。特に,破産・管財・再生等では重宝します。小計,合計額を計算するのも一発です。

他にも,印紙代を計算するもの,税額を計算するもの,利率・残元金・毎月の返済額から返済期間を計算するもの(或いはその逆),個人再生で可処分所得を計算するものなど,色んなものが作れます。

メールは,使える環境にないという事務所が意外にもかなりあるようです。しかし,速く,簡単に多くの人に情報を伝達することができ,電子データをそのままやりとりすることができるというメリットがありますので,今ではメールソフトを使えることは必須となってきているように思えます。

たとえば弁護士間での情報交換や,文書ファイル等の電子データのやりとりには便利なものです。最近では各種のメーリングリスト(消費者事件のCAMなど)ができて,様々な情報を得ることができます。ホームページ委員会も,メーリングリスト上で会議をしています。これはなかなか便利でした。

依頼者と文書ファイルをやりとりすることにより,事務処理を迅速におこなうこともできます。

インターネットそのものも,やはりこれからは基本と言えるでしょう。これから弁護士会のページもどんどん整備され,会員にとって有益な情報を提供していく予定です。

弁護士としてインターネットで何ができるのかといわれると,幅が広いため,いろんなことができますという答えになるのですが,私の場合たとえば,新聞記事の検索,企業情報の取得,インターネットタウンページによる調査など各種の調査に使っています。むろん,息抜きに関心のあるページを見て回るのも面白いものです。

当事務所では,最近話題のADSLにより常時接続となっているため,いつでもメール受信やインターネット閲覧ができます。費用も大してかかりませんので,おすすめと言えます。

他方で,最近はコンピュータウイルスが蔓延しています。恥ずかしながら,私も一度やられたことがあります。そういった面での対策も必要となってくるでしょう。

事務作業の多い多重債務事件では,パソコンの活躍する場は大きくなります。利息制限法の引き直し計算は,ほとんどの方が表\計算ソフトでやっていることでしょう。(お持ちでない方にも,HP上で配布予\定です。)

私の場合には,データベースソフトを用いて債権者一覧やラベルを作成しています。もともとは,事務員さんが債権者一覧とラベルとを別々に作成していたため,住所等のデータを二度入力しなければならなかったのを見て,その手間を省きたいということで作成したものです。

いろいろと改善し,主な業者のデータは読み仮名で検索してボタン一発でデータが入力され,それを債権者一覧やラベルなどの形式で印刷できるようにしてあります。

判例検索をおこなうとき,検索ソフトは非常に役立ちます。キーワード,条文等から簡単に判例を拾ってくることができます。私としては,検索ソ\フトを使わないことはもはや考えられません。

事件管理にもパソコンを使うことは有益と思われます。この事務所ではロータスノーツというソ\フトを使っています(私個人としてはあまり使い勝手が良くないと感じていますが)。他の事務所では,データベースソフトを使って管理をしているところもありました。

こういうものがあれば,どの弁護士がどういう事件を何件持っているかなどがすぐにわかります。弁護士は自分の事件数等を把握していないことが多いので,システムとしてはあった方がいいのでしょう。

以上,基本的な使い方ということでご紹介しました。使い込んでいけば,いろいろな使い方がさらに見えてくると思います。

岡山仲裁センター訪問報告

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1 はじめに

平成13年12月18日、PT清水隆人委員長、塩田裕美子委員、そして私の3名で岡山仲裁センター(岡山弁護士会館内)を訪問。仲裁センター運営委員の方々から説明を受けた。以下はその概略であるが、統計的数字については、私が、仲裁統計年報(全国版)によって若干の補充をした部分があり、また、仲裁センター開設上の問題点については、岡山仲裁センター運営委員の意見を基本としつつ、私が福岡県弁護士会に引き直して述べた部分もある。

2 岡山仲裁センター実績
(1) 統計
平成 8年度 平成9年度 平成10年度 平成11年度 平成12年度
申立件数 15 92 80 153 190
応諾件数 8 71 63 102 125
応諾率(%) 53.3 77.2 80.8 71.3 75.8
受理事件対比解決率(%) 52.3 44.6 52.9 42.1
応諾事件対比解決率(%) 47.9 39.7 61.8 44.8
  • 受理事件対比解決率 (当該年度に受理したものの内、当該年度内に終結且つ成立したもの)
  • 応諾事件対比解決率 (当該年度に受理し且つ応諾があったものの内、当該年度内に終結且つ成立したもの)
(2) 紛争類型

交通事故、離婚、請負契約をめぐる紛争等が多い。(平成12年度仲裁統計年報(全国版)によると、岡山仲裁センターにおける交通事故事案の割合は受理事件中20%、解決事件中28.3%) [括弧内塩川]

(3) その他(平成12年度仲裁統計年報(全国版)による)

平成13年3月時で、全国に仲裁センター(示談あつせんセンター等を含む)は13箇所。二弁、大阪、新潟、東弁、広島、横浜、一弁、埼玉、岡山、名古屋、岡崎支部、岐阜、京都。[この部分塩川]

3 弁護士会のADRについて
(1) 「相談から解決まで」

法律相談を担当した弁護士が、その場で申立用紙に記入して申\立手続をできるようにしているので(仲裁センターマニュアル、仲裁ハンドブック等を配付)、市民の利便性が大きい。

(2) 期日

原則として、申立から2週間以内に第1回期日を入れ、以後、2週間に1回の割合で期日を設けるよう努力。理想型としては3回で具体的解決案に到達するのが目標。

(3) 職能団体の協力

仲裁に当たるのは弁護士であるが、より専門性を打ち出すため、不動産鑑定士、建築士、税理士、カウンセラー(命の電話スーパーバイザー、大学教授等)等の職能団体との間で協力体制を構\築している(協力の要否は仲裁人弁護士が判断)。なお、カウンセラーの協力は、親子関係事件、遺産分割事件等でも依頼する。

(4) 当事者の自主的解決

基本的に「説得」(解決の押し付け)をせず、当事者の自主的解決を目指している。

(5) 取扱事件

取扱事件の種類、及び、紛争の価額には制限なし。

(6) 法律相談前置主義

仲裁申立を行う前に、必ず弁護士による法律相談を受ける必要がある。これによって、仲裁センター取扱相当事案であるかどうか選別する。

(7) 夜間、土日祝日に期日を設けることもある(各弁護士の事務所にて)。
(8) 期日は基本的に当事者同席。但し、事案にってはタイミングを見計らうし、支払うべき金額をいくらにするかというレベルになったら個別に聞くこともある。
(9) 履行確保

解決に際し、履行の問題を残さないようにする。履行確保のため、即決和解を利用することもあるし、債務名義を取るため合意ができた内容を仲裁判断という形式にすることもある。

(10) 配点

配点は、運営委員の中から3人体制(1月交代)で配点を担当する。なお、仲裁センター発足当時、仲裁センター運営委員会は法律相談センター運営委員会の一部会だったが、現在は別個の組織となっている(但し、運営委員中2名は法律相談センター運営委員会委員が兼任)。なお、仲裁人は、法曹経験5年以上の者を宛てている。福岡県弁護士会の場合、天神センター職員が配点することも考えてよかろう[この行塩川]。

(11) 収支

開設1年目から黒字だった。

  1. 申立手数料 10,000円(申立人負担)
  2. 期日手数料 1期日毎に双方から5,000円
  3. 成立手数料 当事者双方で負担(原則折半)

    100万円以下の場合 8%

    100万円を超え300万円以下の場合 5%+3万円

    300万円を超え3000万円以下の場合 1%+15万円

    3000万円を超える場合 0.5%+30万円

  4. 仲裁人日当

    1期日2万円(開設当初は1万円だった)

    準備費用5000円

    成立報酬5万円(事案により運営委員会決定で増額可)

(12) 研修会

ロールプレイング方式等を導入。九州大学講師レビン小林久子氏の協力を得ている。2002年3月8日 17:30〜20:00研修あり。

4 仲裁センター開設上の留意点(今後の参考として)
  1. 仲裁センター立ち上げとその後の運営を円滑にするためには、仲裁センター開設に理解とやる気のある運営委員を最低でも10人程度確保することが必要であろう。他の弁護士会の運営状況を見ても、トップダウン方式では必ずしもうまく行かないようである。実際、仲裁センターの運営の中心となる人物がいないために十分にセンターの機能\を発揮できていないところがいくつか見受けられる。
  2. 比較的うまくいっている仲裁センターとして岡山と岡崎支部が挙げられるようだが、両センターとも交通事故事案の占める割合が多い(平成12年度統計によると岡山で20%、岡崎支部で24%)。これは、岡山・岡崎とも、紛セ等の紛争処理機関が近くにないことが大きく影響しているものと推測される。この点、福岡では紛セは福岡市にあるし、既に、天神センターその他で交通事故相談を扱っているので、仲裁センターのニーズがどの程度あるかについては慎重な検討が必要であろう[この段落塩川]。
  3. 弁護士持込事件をいかにして増やすかが成功の鍵であり、そのためには、準備の段階から、例えば月報等で仲裁センターの記事を載せる等の方法で、会員の理解を得ることも必要であろう。
  4. 一般市民へのアピールとしては、裁判所の調停と違って 1:期日が早く入ること 2:仲裁人は法律の専門家である弁護士であること 3:場合により、鑑定士、建築士等の専門委員の協力も得られること等の利点を知らしめる。
  5. 裁判所との協議
    1. 離婚事件の調停前置主義との関係で、仲裁センターを経た場合の扱いをどうするか。
    2. 即決和解申立手続の定型化・簡略化・管轄等
  6. 関係協力団体との協議
  7. 会計を特別会計にすべきか

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